- 株式会社ミクシィ
- XFLAG スタジオ XFLAG ARTS 3Dアートグループ マネージャー/テクニカルアーティスト
- 下田 淳
ミクシィ「XFLAG スタジオ」の3Dアセット制作/進行管理。150時間も削減した、ゲーム開発に欠かせないツールとは
〜ゲーム開発の煩雑な進行管理に「SHOTGUN」を導入し、150時間の工数削減に成功!ゲーム開発に最適な環境をつくり出した事例を紹介〜
スマホ向けゲーム市場は高品質化が進み、何百ものキャラクターが登場するものが主流になっている。その分、デザイナーやプロデューサーの負担は増加しているが、効率的なプロジェクト管理手法はまだ確立されていない。
株式会社ミクシィ内の「XFLAG スタジオ」。人気ゲーム「モンスターストライク(通称モンスト)」を始めとしたゲームを制作している同社でも、3Dを扱う新規ゲームのプロジェクトにおいては膨大なアセット(キャラクターのコンセプトアート画像や3Dモデルデータなどの素材)の管理に苦戦していた。
いまだにGoogleスプレッドシートやExcelでプロジェクトやアセットの管理を行っている会社が多い中、同社ではプロジェクト管理ツール「SHOTGUN(ショットガン)」を導入した。制作作業に特化したSHOTGUNは、プロジェクト管理のみならず、アセット情報の一元管理や、レビュー機能などを備えている。
導入の結果、1ヶ月あたり約150時間、実に19.5人日もの工数の削減に成功したという。
今回は、XFLAGで3Dアートグループのマネージャーを務める下田 淳さんに、SHOTGUNの導入に至った経緯や、その具体的な活用方法について、詳しく伺った。
進行管理のスプレッドシート更新のため、毎日残業する人が…
私は、映像会社のクリエイターや、ゲーム会社でのテクニカルアーティストの経験を経て、2014年の6月に株式会社ミクシィに入社しました。
その翌年に、「ケタハズレな冒険を。」をスローガンに掲げ立ち上がった、ミクシィ内の「XFLAG スタジオ」にて、3Dアートグループのマネージャーをしています。
モンストをはじめとした、2Dアートを多く扱うプロジェクトでは、当時から他社製の管理ツールを使用することで効率的な進行管理ができていました。しかし、新規3Dモバイルゲームの開発プロジェクトにおいては、製作プロセスが複雑なこともあり、「Googleスプレッドシート」を使って進行管理がされていました。その状況に驚きまして…。
スプレッドシートの管理に専任の人が1人ついて、更新作業をしていたのですが、その負担が重く、毎日残業して張り付かなければならないほどでした。
職種の数だけシートが増える。それを解決するツールとは?
ゲーム制作をしていると、職種ごとに必要な情報が変わってくるんですよね。アートディレクターはキャラクターごとに情報を見たいし、企画の人はリリースごとに情報を見たい。
そのため、スプレッドシートは、「キャラクターリスト」や「リリース予定リスト」など、職種ごとに必要なシートを作る運用になっていたんです。
すると、「キャラクター」のような情報が、複数のシートで管理されているような事態になっていまして…。
情報を更新するときに、複数のシートを変更する必要があり、「こっちは更新されていないけど、結局どっちが正しいの?」という状態になることがありました。
▼当時使用していたスプレッドシート
その状態を改善するために、プロジェクト管理ツール「SHOTGUN(ショットガン)」の導入を決めました。
10もの工程があるアセット制作も、「SHOTGUN」なら管理できる
SHOTGUNの導入は、他の仕事と平行して1人で進めたため、2〜3ヶ月ほどかかりました。ただ、データの移行自体は非常にスムーズでした。SHOTGUNではCSVの読み込みができるため、基本的にはスプレッドシートのデータをCSVに書き出し、調整するだけで済みました。
SHOTGUNの使い方ですが、私達のプロジェクトでは、主にキャラクターのアセット制作の工程管理をしています。
あるプロジェクトでは、3Dモデルのアセットが完成するまでに「コンセプトアート作画」「3Dモデル製作」「実装」など、10工程にも渡るプロセスがあり、各工程で承認も必要です。
SHOTGUNなら、工程が複雑な3DCG制作のパイプラインも問題なく管理できるんです。タスクの切り分けが非常に楽で、全体の進捗状況も、正確に把握できるようになりました。各ステップでのレビューと承認の機能も備えています。
▼パイプラインで複雑な工程管理が可能に
また、工程だけでなく、キャラクターごとの外見やボイス、ファイルパスなどの情報も、一括で管理できます。あるキャラクターに紐づく情報だけに個別にアクセスできる上、「レア度5のキャラクターのみ表示」といったフィルター機能や、「レア度4の行のみ色付けする」といったExcelの条件付き書式のような機能も便利です。
▼アセットに紐づく情報だけに個別にアクセスできる
150時間の工数削減!権限管理で、ヒューマンエラーも防止
SHOTGUNを導入したことによる一番の効果は、煩雑な業務の大幅削減です。
情報が一元化されたことで、進捗管理にかかるコストが、以前の半分程度になりました。1ヶ月あたり、約150時間、19.5人日の工数削減に繋がりましたね。
ヒューマンエラーが少なくなったのも良いですね。万が一、誰かが間違って編集してしまっても、ログを追うことで解決できるんです。そもそも担当者ごとに、細かな権限設定をかけられるので、そういったヒューマンエラー自体がまず起きないのですが。
「Design Page」機能で、メンバーが自分で進捗を管理するように
もう1つ導入後の効果として言えるのは、みんなで進捗を管理するようになったことですね。
以前は、進捗管理は専任の人頼りになっていて、その人に聞かないと状況が把握できませんでした。それが今では、メンバーそれぞれ、自分のステータスを確認・更新するようになっています。
これは、「Design Page」というSHOTGUNの機能のおかげです。SHOTGUNの画面上に、自分好みにカスタマイズしたページが作れるんです。自分専用のダッシュボードのようなページに、必要なウィジットをレイアウトしたり、不要なフィールドは非表示にしたりといったカスタマイズが可能なんです。
▼個人に合わせてカスタマイズ可能なDesign Page
例えば担当者レベルなら、見るべきものは自分の「タスク管理用のページ」だけで十分ですし、そこでステータスを変更すると、管理者が見ている「全体のスケジュールを把握するページ」の情報も更新されます。前述のとおり、従来手法では複数のシートにまたがって更新を行う必要がありました。しかし、強力なデータベース構造を持つSHOTGUNのおかげで、情報のリアルタイム性や信頼性が格段に増したんです。
生産性を高め、より驚きを与えられるコンテンツ創りを
まだまだSHOTGUNには活用できていない機能がたくさんあります。同じAutodesk製の3DCGツール「Maya(マヤ)」のファイルをタスクと連動させたりできるので、そういった機能も使いこなしていきたいですね。
また、外部の会社とのやり取りにも使っていきたいです。今までは納品のチェックも、スプレッドシートからPDFを書き出して、それを「Chatwork(チャットワーク)」で送るという流れだったので。SHOTGUNなら、外部の人のタスク管理も行えますし、SHOTGUN上で納品のチェックもできるので、よりスムーズに開発できると思います。
今後プロジェクトが増えるにつれ、より効率的な開発が必要になってきます。プロジェクト間で、コンテンツパイプラインやノウハウを共有することで、XFLAG スタジオ全体の生産性を上げていきたいですね。
そして、メンバーがより「クオリティ」の部分に時間を割けるようにすることで、ユーザーに驚きを与えられるようなコンテンツを創出し続けたいと思います。(了)