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遊んでいるエンジニアこそ偉い?ソニックガーデンの、向上心を引き出す新卒育成法

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〜ほとんどの社員がリモートで働くソニックガーデン。新卒を採用しながらも、社員には「育成の義務」を課さないという、その組織論とは〜

「納品のない受託開発」で知られる、株式会社ソニックガーデン。リモートワークを推進してきた同社は、2016年6月、ついにオフィスをなくした。

リモートワークを主体として、自立したプロフェッショナル集団を抱える同社だが、実は今までに3名の新卒を採用している。その上、社員には「育成の義務」が無いという。

プロフェッショナル集団を目指す同社が、なぜ新卒を採用し、育成しているのか。そして、リモートワーク主体という特殊な環境下で、どう新卒を育成しているのか。

今回は、新卒を一人前にするための育成手法や組織づくりについて、代表の倉貫 義人さんに詳しく伺った。

出社を「義務」ではなく「権利」にした、分散型ワークプレイス

ソニックガーデンは、2011年に設立したソフトウェア開発会社です。現在社員は24人いるのですが、日本全国に住んでおり、完全リモートワークのスタイルで働いています。社員は全員プロフェッショナルとして自立しているエンジニアばかりなので、リモートワークでも全く問題ありません。

そのため、2016年の6月、ついにオフィスもなくしてしまいました。

その代わりに、いつでも好きなときに使える分散型ワークプレイスという「権利」を用意しました。通常、オフィスへの出社は「義務」ですが、弊社では逆の考え方をしています。基本はリモートワークですが、家だと仕事しづらかったりする人は「権利」として、ワークプレイスを「いつでも使って良いよ」というスタイルです。

自由が丘、町田市、岡山県に、それぞれマンションの一室などを借りていて、社員はいつでも使えます。仕事だけでなく、家族で宿泊したり、社員同士の宴会もできるんです。

▼自由が丘のマンションの一室を借りた「分散型ワークプレイス」

自由が丘のマンションの一室を借りた「分散型ワークプレイス」

もう5ヶ月ほど経ちますが、全く違和感なく仕事できていますね。

上場もバイアウトも目指さないからこそ、新卒の育成を

そのような環境なので、意外に思われることもありますが、実は新卒で入社した社員が3名おります。あまり大々的に新卒採用はしていないのですが、中途採用の募集欄から応募してきたりして(笑)。

もし5年で会社をバイアウトするといったことを狙っているなら、新卒は採りません。ですが、僕たちは「プログラマを一生の仕事にする」ことを目指しています。

株式会社ソニックガーデン代表 倉貫 義人さん

そうすると、あと10年、20年、30年と会社を続けていくことになり、この、特殊なカルチャーも継承していく必要があります。であれば、一番カルチャーを受け継ぎやすい新卒を、数年かけてでも育成していくべきだと考えています。

新卒が目指すのは「めっちゃ遊んでいる」社員!?

普通の会社なら、偉くなればなるほど給料が増えていくと思いますが、うちの場合は「自由時間」が増えます。

というのも、人生の質を上げるために必要なものはお金じゃないと考えてるんですね。今の時代はもう生きていくのにそこまで困らないので、その中でさらにお金が欲しいって、どんだけ良いワインが飲みたいかなんだと思うんです(笑)。たまにおいしいものが食べられたら、それで良いんじゃないかと。

もちろん、給料はそれなりに出しています。ただ、その水準を維持できるなら、それで良いよねという考え方をしていて。給料が上がるよりも、仕事ができるようになって生産性が上がり、自由な時間が増えていくほうが良いと思っています。

そのため、できるエンジニアほど遊んでいます(笑)。弊社では、たくさん遊んでいる人が一番偉いんです。遊ぶと言っても、私たちにとっては、新しい技術の調査やプロダクトの開発など、プログラミングをすることですね。

業務時間は決まっていないので、午前中だけ仕事をして、午後から夜中まで好きなプログラミングをしても別に良いんです。普通の会社の労働時間と比べたら、圧倒的に少ないと思います。

「あの先輩、何社もクライアントを持っていて成果も上げているのに、めっちゃ遊んでいる」「遊んでいるやつはすげえ」というような文化が根づいています。

株式会社ソニックガーデン代表 倉貫 義人さん

新卒はこのような「自由時間をたくさん持てるデキるエンジニア」を目指して成長していきます。新卒を育成する上では、このような目指すべき将来像が重要だと思います。

一人前になるまでは、リモートワークをしない理由

新卒は一人前になるまで「弟子」と呼び、リモートワークではなく決まった時間に、ワークプレイスで仕事をしてもらっています。

弊社で働いているエンジニアは、市場の中で見てもかなり優秀なエンジニアばかりです。プロフェッショナルの集団なので、リモートワークでセルフマネジメントをしながらも、高い成果を出せます。

ただ、新卒は違います。社会人経験のない彼らにとっては、規則正しく出社して、自立性を身につけてもらうことが重要だと思っています。

「一生プレイヤー」を実現するため、育成の義務も無し!

弊社では、管理職は作らないようにしているので、弟子の教育は僕や取締役が担当しています。

管理職を作ってしまうと、後輩を助けるために、自分の仕事は残業して片付ける必要が出てきます。そうなると、「偉くなればなるほど自由な時間が増える」という仕組みが、うまく回らなくなるんです。ずっとプレイヤーでいたい人が管理職にされてしまうと、転職したくなりますよね。

なので組織は横割りで、同じレベルの人でチームを組みます。上から順に、「トップチーム」「修行中」「弟子」という3層に分かれています。

株式会社ソニックガーデン代表 倉貫 義人さん

同じスキルレベルの人と組むことで、切磋琢磨しながら仕事ができるので、気持ちが良いんですよ。下のメンバーの育成義務も無いので、代わりに取締役が育成してくださいという状況です(笑)。

弟子が「仕事のやり方」を身につける、振り返りの仕組み

弟子を教育する上でのゴールは、「一人前にすること」です。一人前とは、ソニックガーデンの会社の名前を背負って、お客さんから信頼感を得られ、1人で仕事を持てるようになることです。

そのための教育として一番大切にしているのが、「仕事のやり方」を身につけてもらうことです。

弟子は、毎週メンターと「振り返り」を行っています。ここでは仕事の内容ではなく、「自分の仕事のやり方」について、KPTフレームワークで振り返ってもらうんです。

その週の仕事の仕方について、今後も続けていくべき良かったこと(Keep)、問題だったこと(Problem)、来週から改善していくこと(Try)の3つを、弟子があげていきます。

▼実際の振り返りの様子

実際の振り返りの様子

そして次にメンターが、会社にとって良いことと悪いこと、つまりソニックガーデンの価値観を、振り返りの内容を踏まえて伝えていき、改善の仕方を一緒に考えていきます。

例えば、納期に間に合わせるために「残業して頑張った」というのは、残業がクセになってしまうので、僕らの会社では問題なんですよね。

また、見積もりに失敗した時のTryとして「見積もりの精度をあげるためにバッファを積む」という答えも、問題です。安全な方に倒して挑戦しないというのは、会社の価値観として正しくありません。

正解のない世界で生き抜くため、「考える力」を身につけさせる

振り返りを行う上でのポイントは、答えを教えないことです。「バッファを積むのはダメ」ということを伝えた後、別のTryを出してもらうのですが、それが価値観として悪いものでなければ、まずは1週間させてみるんです。

ここで、また失敗する可能性もありますが、そのTryで何がダメだったのかを、繰り返し考えてもらいます。

1回で正解を与えちゃうと、学校教育みたいに、なんでも正解があると思っちゃうんですよね。そうなると、3、4年目になってお客さんと1人で仕事をしなきゃいけなくなったとき、上司に正解を聞くようになってしまう。そうならないためにも、考える力を身につけさせる必要があるんです。

そうして自分で考えられる力を身に着けた後は、先輩たちのやり方を盗んで、自分流を身につけてもらいます。

やはりここは、マニュアル化できない部分ですね。人それぞれ、お客さんとのコミュニケーションの仕方も違うので、ただ真似してもダメなんです。

株式会社ソニックガーデン代表 倉貫 義人さん

お客さんのハートつかむときに、例えば画面を作るのが得意な人は、先に画面を作って見せたり、めちゃめちゃ腕が早い人は、すぐにソフトを見せて喜んでもらって信頼を得たり、色々な方法がありますよね。このような、いろんな先輩たちの方法を見る中で、自分に向いてる自分のやり方は何かを見つけてもらっています。

プログラマを一生の仕事にできる、新しい会社を実現したい

今後も、メンバーが自由で、幸せを感じられる組織づくりに挑戦していきたいですね。多くの会社は、人が多くなると官僚的にしたり、ルールを作っていくと思うんですが、そうではない、僕らの考える新しい会社の形を実現していきたいです。

そして、このカルチャーを次の世代に引き継いでいくことで、「プログラマを一生の仕事にする」というビジョンを叶えていければと思っています。(了)

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