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  • 加藤 章太朗

プラットフォームビジネス(リボン図)につきまとう「ニワトリと卵」問題の解決法

ユーザーとユーザーを結びつけるプラットフォームビジネスが世界で伸びている。配車サービス「Uber」は時価総額6兆円超。空き家と旅行者をマッチングする「Airbnb」は3兆円超に成長している。

これらはユーザーとユーザーを結びつけるプラットフォーム型のビジネス。このようなビジネスを立ち上げる時に問題となるのが「ニワトリと卵」問題です。今回は、「ニワトリと卵」問題を解決するポイントについて見ていきます。

プラットフォームビジネスにおける「ニワトリと卵」問題とは

プラットフォームビジネスには、需要側と供給側が存在します。この両側を増加させていくことがサービスの成長となります。

配車サービスUberを例にあげます。Uberは時価総額6超円を超えるモンスター企業で、スマートフォンアプリでタクシーを呼べるサービスです。海外では一般の人がドライバーとしてUberに登録しており、隙間時間に運転手として稼げるサービスになっています。ユーザーはUberのアプリでタクシーを呼び、アプリで決済をします。この体験が素晴らしいことから全世界で広がっています。

Uberの場合、需要側は車で移動したい人です。供給側は運転手です。両者が増えていくとビジネスは伸びていきます。ただし、魔法を使わない限り、需要側と供給側が同時に増えてバランスすることはありません。

では、両者のどちらから増やしていけば良いでしょうか。そして、需要と供給をどうバランスさせていけば良いでしょうか。この問題を「ニワトリと卵」問題と呼びます。

重要なのは、需要側が増えるまでの「時間稼ぎ」

Uberの場合、需要側と供給側を増やす方法として、下記の2パターンが考えられます。

1.車に乗りたい人が集まる→(車に乗りたい人が集まっているので)運転手が集まる→(運転手が沢山いて車が捕まるので)車に乗りたい人が集まる→・・・

2.運転手が沢山集まる→(運転手が沢山いて車が捕まるので)車に乗りたい人が集まる→(ユーザーが集まっているので)車に乗りたい人集まる→・・・

需要側、供給側、どちらを先に集めるべきでしょうか。結論としては、供給側を増やすのが王道です。需要側であるユーザーだけを集めてきても、そこのプラットフォームに何もなければすぐに去ってしまい忘れ去られてしまうからです。

その際に問題となるのが、需要側が増えるまでの「時間稼ぎ」です。

例えば、あなたが車を持っていて、Uberからドライバーになって欲しいという営業をかけられるとします。

「今からUberというサービスが始まります。まだユーザーはいませんが、運転手を300人集め、ニューヨークの街でいつでもアプリで配車ができるようにするので、必ずユーザーが増えます。登録してくれませんか?」

このように言われ登録したとして、いつまでたってもユーザーが増えている様子がなければ、興味を無くし違う仕事を始めてしまうでしょう。そうなれば、ユーザーが増え始める頃には、プラットフォームから運転手がいなくなってしまいます。

つまり、「ニワトリと卵」問題を解決する上で肝になるのは、需要側が増えるまで供給側に対して「時間稼ぎ」をすることと言えます。「時間稼ぎ」さえできれば、需要と供給がバランスしながら増加していく流れに乗ることができます。

では、「時間稼ぎ」をする上でのポイントを見ていきましょう。

「時間稼ぎ」に重要なのは「供給側の稼働率」

Uberが、需要が増えるまでどう時間稼ぎをしたのかを考察します。UberのCEOのTravis Kalanick氏はSalesforce.comの年次プライベートコンファレンス「Dreamforce 2015」で、下記のように語っています。

米国のタクシードライバーは、勤務時間の半分しか稼働していないという調査結果がある。タクシー1台の維持費は1日で140ドルが必要だ。さらに、タクシードライバーライセンスに関する費用やその他の固定費などは、利用者の運賃に上乗せされる。

ZD Net Japanより引用

供給側(タクシードライバー)の稼働率が低いなら、とりあえずUberに登録しておいてもらい、通常業務をしていてもらう。その間に需要側(車に乗りたい人)を集め、少しずつアプリ内の配車が増えていく、という状況が成り立つ。

一方で、供給側(タクシードライバー)の稼働率が100%に近い状況なら、Uberから今の仕事より魅力的な仕事が次々に入ってこなければ、タクシードライバーはそっぽを向いてしまうでしょう。つまり、Uberは稼働率が低い部分に注目し、需要が増えるまでの時間稼ぎをした、と考えられます。

Airbnbも稼働率に注目

Airbnbも同様に、稼働率の低さをポイントに時間稼ぎをしたモデルだと考えられます。Airbnbは、空き部屋と旅行者をマッチングするサービスです。時価総額は3兆円を超し、全世界34,000の都市で展開されております。

このモデルは、供給側が空き部屋、需要側が旅行者です。Airbnbが現れるまでは類似サービスがなかったため、供給側(空き部屋)の稼働率は低い特性があったと考えられます。

Airbnbは初期、Craigslistという世界最大級の掲示板に「空き部屋を貸します」と掲載している人を供給側として集めたそうですが、Craigslistも空き部屋を貸し出すサービスではありません。あくまでも掲示板なので、空き部屋を貸し出すプラットフォームとしてはそこまで強くなく、供給側である空き部屋の稼働率は低かったことが予想できます。

稼働率が低ければ、Airbnbに登録した後にしばらく宿泊申込がなくても問題ありません。少し時間が経った後にAirbnbを通じて旅行者から連絡が来ても、貸し出せる可能性が高い。つまり、需要が増えるまで供給側に対して時間稼ぎができるモデルと言えます。

稼働率に注目してプラットフォームビジネスを考えよう

以上見てきたように、需要側が増えるまでの時間稼ぎをするためには、供給側の稼働率に問題がある領域を見極めないといけない。供給側がものすごく忙しい領域であれば、需要側が増えるまでの間にそっぽを向かれて、プラットフォームは成り立たないでしょう。

是非、新規事業を作る時の参考にしてみて下さい。

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