• 株式会社グレンジ
  • マーケティング担当
  • 藤原 哲哉

本当に成果が出る「YouTube広告」とは? CPAを半分にした、YouTuber起用ノウハウ

〜動画マーケティングの最前線!「YouTuber」を起用した広告の制作ノウハウとは?企画から改善プロセスまでを大公開〜

Webマーケティングの手法が拡大する中、既存のWeb広告のような画一的な手法では、効率的に成果を上げることが難しくなっている。

そんな中、注目を集めている媒体のひとつが、YouTube上で自作の動画を公開する「YouTuber」とのタイアップ動画広告だ。YouTuberの個性を見極めることで、最適なターゲットに対して、ダイレクトかつ効果的に商品・サービスの訴求を行うことができるのである。

しかしその一方で、彼らは個人で動画制作を行っているため、内容や作風、視聴者まで千差万別だ。そのため、「どのYouTuberと、どういった企画でタイアップしていくかの判断が難しい…」と、YouTuberの起用をためらってしまう方も多いのではないだろうか。

サイバーエージェントグループの1社として、なぞるRPG「ポコロンダンジョンズ(通称:ポコダン)」を展開する株式会社グレンジ。

▼なぞるRPG「ポコロンダンジョンズ」の公式HP

同ゲームのマーケティング投資はもともとスマートフォン広告が中心だったが、YouTuberを起用した動画広告へシフトした。そして、ファンの属性やチャンネル登録数からベストなYouTuberを見いだし、二人三脚で企画を考え、PDCAを回すことで、広告の費用対効果は2倍以上になったという。

今回は、ポコダンのマーケティングを担当している藤原 哲哉さんに、詳しくお話を伺った。

「リーチしたい層」を抱えるYouTubeに勝機を見出す

私は大学を卒業した後、商社、広告会社の営業を経て、サイバーエージェントに入りました。そして、ゲームのプロジェクトマネージャーを経験後、現在はグレンジで広報とマーケティングを担当しています。

以前のポコダンでは、新規ユーザーの方のほとんどを、FacebookやTwitter等のSNSや、スマートフォン広告から集めていました。

他社に先駆け、2015年頭頃から動画施策も実施しており、そこからCPI(※)、CPA(※)でその広告効果を分析してみると、YouTuber施策が最も効率的だということがわかったんです。そこで、私が前任者から引き継いだタイミングでさらに動画広告、特にYouTuber施策を強化することが決まりました。

※CPI:Cost Per Installの略。アプリケーションをインストールし、起動するまでにかかる1件あたりの広告コストのこと。

※CPA:Cost per Actionの略。ユーザーがコンバージョンするまでにかかる1件あたりの広告コストのこと。

またYouTubeは、視聴者間での情報の拡散力が非常に高い媒体だと実感していました 。リーチしたい層も絞りやすいので、そういった点で見ても魅力的です。

それから私たちは、ゲーム実況者以外のYouTuberさんの起用も積極的に行っていました。

ゲームの広告を目的としてYouTuberさんを起用する場合、一見「ゲーム実況者」と呼ばれる人たちとタイアップすることが、お客様に情報を届ける近道のように見えます。

確かにゲーム実況者のほうが、ゲーム好きのファンがフォローしている可能性は高いです。しかし、私たちがリーチしたいお客様をファンに持つYouTuberさんは、ゲーム実況者以外にもたくさんいらっしゃいます。

そこで私は、面白い動画さえ作ることができれば、ゲーム実況者でないYouTuberさんがゲーム動画を投稿しても、視聴者は嫌がることはないのではと考えました。むしろ、好きなYouTuberさんが楽しんで遊んでいるゲームなら「ちょっとやってみようか」という気持ちになるだろうと考えたんです。

YouTuberの選定のためには、「視聴者」を見ることが重要

タイアップの候補先となるYouTuberさんは、私たちがリーチしたい層を、ファンとして多く抱えている人です。それを確認するため、タイアップしたいと思ったYouTuberさんのコメント欄は、ひたすらチェックしています。


コメント欄にいる視聴者の方を見ると、趣味嗜好などが見えてくるようになり、チャンネル登録の状況から、その人が普段どんな動画を見ているかがわかります。

例えば、とあるYouTuberさんの動画は、ゲームではなくエンタメ系の動画が中心でした。ところがよくよく調べてみると、その動画にコメントしている視聴者の中には、他のゲーム動画のチャンネルに登録している人が多くいました。つまり、そのYouTuberさんの視聴者の一部はゲーム好きで、ポコダンのファンになってもらえる可能性がある、と推測できます。

他にも、それぞれの動画の「Good」「Bad」の評価の割合や、過去に投稿した動画が安定して再生されているか他の企業とタイアップしたときの再生数はどうかといったことも見ています。判断する材料は、YouTube上に山ほどあるんですよね。

YouTuberのリソースは有限!オフラインでの情報収集も重要

実際にYouTuberさんをプロモーションに起用するときは、彼らに直接声をかけているわけではなく、代理店を通しています。

サイバーエージェントのグループに、株式会社渋谷クリップクリエイトという、YouTuberさんとタイアップした動画広告の企画や制作を行う代理店があります。彼らに、最近のトレンドやYouTuberさんごとのファン層について聞きながら、アサインプランを決めています。

他にも、別の代理店の営業の方ともお会いして情報を探っています。とにかく情報収集が重要なので、自分から情報を取りに行っていますね。いま活躍しているYouTuberさんの中で、ポコダンとマッチする方をいかに探すか、ということが大切です。

企画を押し付けず、狙いを伝えてWin-Winの関係を

YouTuberさんとタイアップする上では、同じ動画制作でも、広告とはまた違った視点が必要です。

広告の場合、内容はもちろん、サムネイルからタイトルまでを自分たちで考えます。しかし、YouTuberさんはクリエイターなので、私たちの考えた企画をそのまま全てやってくれるわけではありません。そこで、こちら側で企画をいくつか用意し、提案をしています。私たちの狙いも伝えつつ、YouTuberの方と二人三脚でコンテンツを考えるよう意識しています。

そして、YouTuberさんにとっても、再生回数が伸びたりチャンネル登録者が増えれば嬉しいはずなので、「視聴者が面白いと思う動画」かどうかを意識して企画を提案しています。

例えば2月にポコダンがゲーム上で「バレンタイン企画」を実施した時には、当時、チャンネル登録数、再生数を伸ばしていた「ゲーム実況者ではない」YouTuberさんとタイアップしました。そして、実際の動画ではポコダン色を強く出さず、「とある会社からやばいもの(チョコパック)が送られてきたww」というバレンタインに関連したストーリーで、面白さをメインに押し出していったんです。

▼チョコパックを2人で塗り合う、シンプルかつ見た目にもインパクトのある企画

その結果、視聴者からは「面白い!」という反響を多くいただくことができました。今回はゲーム実況ではなく、企画を中心にした動画だったのですが、アプリのインストール数も大きく伸びたんです。

視聴者に面白いと感じてもらうことが重要なんだと、その時改めて感じました。

結果として、現在は新規ユーザーの約半数を、動画広告から獲得できるようになりました。CPAも以前の半分ほどに下がっているので、今後はさらに改善していきたいですね。

しっかりと振り返りを行い、ナレッジをためていく

現在、マーケティングは私を含めた数人で行っておりますが、最重視しているのは「振り返り」です。週に1回は、これまでの問題点をしっかりと振り返り、改善策を決めています。それだけではなく、日々、自分が立てた仮説と結果を比べて、改善を繰り返しています。

このように、新しい施策をどんどん実行していけるのは、社内のカルチャーもポイントだと思っています。弊社では、「やらせてください!」と提案したら、固定概念に縛られず、「まずは一回やってみようか」と言ってもらえます。だからこそ、YouTuberさんの新たな起用の仕方も成功につながったんだと思っています。

今後も私たちが大切にしたいのは、短い期間の中で仮説を立て、挑戦したことへの振り返りを徹底することです。まだまだ「正攻法だ」と確信を持って言えることは少ないので、これからもどんどんチャレンジして、よりナレッジを貯めていきたいですね。(了)

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