• 株式会社ジョブウェブ
  • 代表取締役社長
  • 新治 嘉章

労働集約型の営業スタイルから脱却!ジョブウェブのマーケティング自動化術

今回のソリューション:【Sales Cloud/セールスクラウド】

テクノロジーは常に人の生産性向上に貢献し、あらゆる企業は多かれ少なかれその恩恵にあずかっている。しかし、どれほどの企業が徹底した生産性の向上に取り組めているだろうか。

大学生向けの就職活動支援コミュニティサイトや企業向けの新卒採用支援を展開する株式会社ジョブウェブでは、2013年に経営体制を変更して以来、組織力の強化と生産性の向上に注力していた。

それは、「就活の仕組みを変える」というビジョンの実現に向けて、スピード感を持って数多くの試行錯誤を繰り返す必要があったからだと語る。

そのために同社が活用をしているのが、株式会社セールスフォース・ドットコムが提供する「Sales Cloud(セールスクラウド)」だ。

同サービスをインバウンドマーケティングと組み合わせてマーケティングを自動化したことで、飛び込み営業や大量の新規テレアポを廃止できるほどの大幅な営業フローの効率化を実現したという。2013年から同社の代表取締役社長に就任した新治 嘉章さんに詳しいお話を伺った。

合同説明会をすべて廃止し、理念を体現する新規サービスをスタート

私は2006年に新卒でジョブウェブに入社しました。2013年7月に代表取締役に就任してからは、「人と組織の新しい関係を創造し、自己実現を支援する」という私たちの理念を体現し、現在のビジョンである「就活の仕組みを変える」に直結することのみに集中すべく、会社の変革に取り組んでいます。

「理念を体現する」ことは、大きく2つあり、まずは学生個人の支援を中心に置くこと。次に誠実な採用支援会社であることです。

例えば、10年以上続けていたオフラインの就活セミナーと合同説明会の開催を2014年7月以降すべて止めました。

オフラインの就活セミナーの開催を辞めた理由は、単純に東京だけでなく日本全国、さらには、海外で活動する学生も支援したいと考えたからです。

そして合同説明会に関しては、それによる売上拡大を狙うと、学生個人の支援を中心に置くことが難しくなる一面があります。

学生と企業がフラットに本音で話す30〜40名の小さなコミュニティとして開催し始めたのが私たちの合同説明会でしたが、売上拡大には、構造的に、1回あたりの学生数、企業数の増加が効率的なアプローチが必要になります。これでは理念を体現できないと判断し、開催を辞めました。

このように新卒採用支援の市場では、同様の構造的な問題により、コンセプトを維持しながら売上拡大をすることが難しいサービスが多くあります。

営業フローを改革するためにSales Cloudの新たな活用方法を実践

そのような戦略の見直しの中で、新たに始めたのが、「Jobweb Profile」です。これは学生の生活を支援することで、就職先を探す時間を短くするツールです。企業の方からすると、ダイレクトリクルーティング、リファラルリクルーティングを実現するツールになります。

ただ、当時は始めたばかりでしたし、合同説明会事業の撤退によって売上の1、2割を失った中で、経営を成り立たたせていくためには、スピーディに試行錯誤をすることができる高い生産性が必要でした。

そこで私たちが行なったのは、Sales Cloudの活用方法を変えることでした。システムの導入自体はセールスフォースが日本で展開を始めて間もない2006年からでしたが、利用していたのは顧客管理や会員管理の基盤としてのみでした。

それに加えて、この2年は営業フローの改革にも活用しました。

会わずに人事担当者の悩みを解決する、コンテンツマーケティング

営業フローの改革で実現したかったことは、意図のない新規のテレアポをなくすことと、探りあいのような初訪をなくすことでした。そのためには、まずは惜しみのない価値ある情報のGiveが必要だと考え、人事担当者向けのWEBサイトで採用ノウハウを提供するようにしました。

そのゴールは「ジョブウェブへの問い合わせ」ではなく「会わずして人事担当者の悩みを解決すること」です。そうすることで、初めて対面での打ち合わせを行なう時には、WEB上ですでに一定の関係性を構築している状態を作りたいと考えました。


コンテンツの内容は、新卒採用活動の定点調査の実施やその集計結果を報告書に整理し、配布しています。「今、採用は順調か」「何月頃に採用を終えられそうか」「次はいつから始めるか」などの他社の状況が気になる内容を共有する役割を担えればと考えています。

他には、合同説明会などのセミナー運営のノウハウも、マニュアルに整理し、オープンにすることや、素晴らしい採用活動をされている人事の方とお話したことをコラムにしています。

▼オウンドメディア上でコンテンツマーケティングを実施

関心度合いの高い見込み客をシステムが自動で抽出

コンテンツ・マーケティングを実施していると、サイトを多く活用頂いている方がわかってきます。私たちは、その興味関心の度合いが高い方だけに連絡をするようにしています。連絡をしても無理にお打合せのお時間をいただくようなことはしません

もしかしたらWEBには掲載がない何かを探している可能性がありますので、そこをケアするようなイメージで連絡しています。この興味関心度合いを測るために、Sales Cloudを活用しています。具体的には、Sales CloudのCRMの基本機能に加えて、関心度合いを数値化できるように自社で開発しています。

外部サイトとの連携も容易なので、「コンテンツを閲覧する」「アンケートに回答する」などのアクションを自動で集計できています。その数値が一定値を超えたらインバウンドチームからプランナーのチームに引き継ぐフローを構築しています。

関心度合いを数値化するロジックは、日々インバンドマーケティングチームと営業サイドであるプランナーチームがやり取りを行い、PDCAを回してロジックの精度を高めています。

人が人としてやるべきことに集中するためにシステムを活用

このインバウンドマーケティングの体制ができてから、営業メンバーは「人としてやること」に集中できるようになったと思います。人材業界は、飛び込みや大量のテレアポの営業が今でも一般的な業界です。

弊社では元々飛び込み営業はしていませんが、新規開拓のテレアポは一部リストを作成し行っていました。しかし、そのような業務は一切行なっていません。さらに、事前にジョブウェブが発信する情報に価値を感じていただけていた場合が増えてきたので、初訪の段階で深い話ができることが増えました。

Sales Cloudを導入したことで、営業フローだけでなく、会議などの社内コミュニケーションも効率化を図っています。例えば、社内の共有や報告を目的とした会議はゼロにし、会議を実施する場合は、議論に集中。

最近は議論もオンライン上でできるようになってきました。たまに驚かれるのですが、ジョブウェブの正社員は十数名です。しかも、岡山には、システム開発をするメンバー、広島にはマーケティングを担当するメンバーが1名ずついます。子どもがいる女性には在宅での勤務を奨励しています。

そのため、オフラインでできることはオフラインでやるようにしています。

今後は少しずつ組織も拡大していきたいと思いますが、この働き方で組織を統合できていること、この人数で業務ができている環境はSales Cloudなしでは実現できなかったと思います。

今後も理念を体現することを忘れずに、試行錯誤をスピーディに繰り返しながら、学生生活や就活を変える仕組みを作っていきたいと思います。(了)

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