- M.T.Burn株式会社
- 代表取締役
- 佐藤 裕介
情報共有する奴が偉い!「役割分担+日々発信」のエンジニア文化が組織全体を強くする
今回のソリューション:【Qiita:Team/キータチーム】
〜営業組織にも情報共有を浸透させることに成功した「Qiita:Team」の使い方〜
Googleを経てフリークアウトを上場させ、イグニスの上場にも関わっている佐藤 裕介さん。デジタル広告の分野で注目を集める佐藤さんが新たに創業し、代表取締役を務めるのが、エム・ティ・バーン株式会社だ。
同社はデジタル広告を美しく配信する技術を使い、ユーザーにとって役立つコンテンツに進化させることで、広告主に高い広告効果を提供している。
群雄割拠のデジタル広告業界でエム・ティー・バーンを立ち上げる際に、佐藤さんが最重視したことは「新しいものを生み出し続ける」チーム作りだ。そのためには個人が持つ情報を「全員の知」に昇華させることが重要なファクターだと考えたが、課題になったのはエンジニアと営業の情報共有文化のギャップだ。
エンジニアチームは、全員で1つのものを作り上げていく過程で「誰が何をしているのか」を常に把握する必要があるため、情報共有の文化が浸透しやすい。一方で営業チームは、各メンバーが個別に同じような仕事をしているため、情報を共有するモチベーションはどうしても生まれにくい。
この課題を解決し、営業メンバーにまで日々の情報共有を習慣づけるために導入したのが「Qiita:Team(キータチーム)」だ。佐藤さんにその背景と成果を聞いた。
※本記事の「その後」。情報共有を徹底した、次のステップとは。「『モノが悪いから売れない』とは言わせない。プロダクト価値を全員で高める組織作り」はこちらです。
「個人の脳にデジタル広告が認知されていない」時代を変える!
フリークアウトを創業して、イグニスの上場に関わりました。今はエム・ティ・バーンの代表もやっています。エム・ティ・バーンはフリークアウトとイグニスのジョイントベンチャーでして、デジタル広告の分野で、今まで僕たちが課題に感じてきたことを解決するために創業しました。
その背景は、デジタルマーケティングの20年ほどの歴史の中で、「誰に広告を打つのか」というターゲティングの精度はどんどん上がっているにも関わらず、クリック率は逆に下がり続けていることです。今や日本の人口のたった4%ほどが、クリックの7割を生み出している状況にあります。
個人の脳に広告が認知されない時代になってきていて、それを変えるためには広告枠に接する体験の品質をまったく変えてしまわないと難しいのでは、と考えました。例えばその点で、Facebookは成功している良い例です。
広告のデザインをUIと合わせてひとつのコンテンツとして発信することで、ユーザーの脳のエンゲージメントを取り戻しているんです。まずは広告に対する認知を取り戻した、という点が非常に重要ですね。
エム・ティ・バーンでも、そのようなネイティブ広告を提供しています。広告を配信先のアプリやサイトのデザインに合わせて美しく最適化し、ユーザーにとって煩わしい情報ではなく、価値ある情報のひとつとして認知してもらう。それによって結果的に、広告効果を上げることに繋げていこうとしています。
コンペティティブな市場で優位性を保つために重要な「情報共有」
今のデジタル広告の市場は本当に変化が激しくコンペティティブで、その時点において正しい打ち手が、正しい状態を維持できる期間が短いんです。そもそもそんな業界に参入するなという話なんですけど、そうも言ってられないので(笑)。
この市場において強い組織を作るためには、次の一手を早く考え、早く改善して、そして早く新しいものを生み出せる 。そんな構造のチームを持っていることが重要です。
その実現のためには、チームで情報をしっかり共有して、この新しい市場についてチーム内の誰かが理解したことを、チーム全体の理解とする必要があると考えました。エム・ティ・バーンが展開しているネイティブ広告の分野では、アメリカまで含めてもベンチマークできる企業が全然なくて。
「次に何を作るか」ということも先例がないので、全部自分たちで1から「発明」していかないといけないんです。そうなってくると、顧客から得られる生の情報をしっかりと拾って、短い期間の中で集約し、チーム全体の知識として議論の前提を揃えた上で、発明のための議論をすることがポイントになります。
エンジニアの「デイリービルド」の概念を組織の情報共有に導入
最初は情報共有のために、マンスリーで全社の勉強会や会議をしていました。ただ、これでは足りないと考えて、エンジニアの世界ではよくあるデイリービルドの考え方を取り入れることにしました。
デイリービルドは、エンジニアがつくっているものをビルドするときに、その間隔を長くせずに「毎日」ビルドした方が結果として全体コストが低くなる、という概念です。
組織としての情報共有についても一緒だと思います。特に理解が進んでいなかったり、情報がそもそも存在しない我々のマーケットについては、毎回の営業で何を話したのかというレベルまで共有することが重要です。それが業界の行く先を考える材料になります。この仕組みを作るために導入したのがQiita:Teamです。
情報共有のためにQiita:Teamを導入!しかし営業メンバーは…
現在社員は20名弱でエンジニアが6割ほどなのですが、今ではビジネスサイドも含めて社内全体でがりがりQiita:Teamを使って情報共有をしています。Qiita:Teamの良いところは、コミュニケーションが可視化されるところです。
UIが優れているので、書くのが楽しいものになっていると思いますね。Markdownで書くこともそこまで難しい仕組みではないので、営業メンバーもすぐに慣れることができました。
現在は主に日報を書くことにQiita:Teamを使っています。但し日報と言っても単に1日の中でしたことを羅列するわけではなく、業務の中で理解したことを書くことにしています。この作業にわりと多くの時間を使っていると思います。
ただ、エンジニアではない営業メンバーにここまで浸透させるにはかなりハードルがありましたね。
エンジニアの場合、それぞれがプロダクトの違う部分を作っていることが多いので、作ったものを1人ひとりマージしながら開発を進めていきます。そのために全員が全員のやっていることを理解する必要があるので、情報共有する文化があります。
ただ、営業の場合は全員が「売上を上げる」といった同じことを追いかけていくので、お互いにメリットをあまり感じない。報告で終わってしまい、情報共有まではいかないわけです。
役割分担によって生まれる情報共有のモチベーション
▼「ビジュアル重視のアプリ」のノウハウを共有(Qiita:Team画面)
そこで視点を変えて、ちゃんと個々の営業マンの「役割をずらす」ことで、情報共有する価値が生まれていくと考えました。並列で働いている営業マンでも、実際には役割が細かく分かれているんですよ。各自が「何を理解し」「何をするのか」を個人個人の役割として明確に定義し、しっかりと言語化しています。
例えば広告の設計やデザインであるアドフォーマットは、インダストリーやコンテンツの種類によって、たとえ同じパブリッシャーの中であっても最適なものが変わります。ビジュアル重視のエンタメ的なコンテンツなのか、タイムライン形式のニュースなのかで、提案が全く違うんですね。
こういったそれぞれの分野で担当を分けることによって、他の人がしていることを知りたくなるし、また知らなければいけない。更に自分自身も、他のメンバーが知らないことをしているので共有したくなるんです。
このように、「その人が共有しなければ、他の人にはわからない」という状態を作って、情報共有をしなければ皆のミッションが成り立たないようにしていきました。結果として早く作り早く改善し、新しいものを生み出せるチームが出来上がると思っています。
「情報共有した奴が偉い」社内文化づくりに成功
今では本当に皆、毎日ひたすらQiita:Teamに書き込んでいて、「ドキュメンテーションしない奴はバカ」というような社内文化ができてきていると思います。情報共有を本当に重視しているので、新しく聞いた話、解釈した情報、といったようなことは何でもとりあえず共有して「情報共有した奴が偉い」という雰囲気を作っています。
僕も重要なことは全部ここに書きます。コメントもさかんで、1コメントで1ブログくらいの文量があったり。重要な意思決定の背景なども書いているので、読まないと取り残されますね。 そこまで徹底できている組織にできたと思います。(了)
※本記事の「その後」。情報共有を徹底した、次のステップとは。「『モノが悪いから売れない』とは言わせない。プロダクト価値を全員で高める組織作り」はこちらです。