- 一般社団法人PLAYERS
- ワークショップデザイナー
- タキザワ ケイタ
全員が「本業」アリ!自分を主語にして働くプロジェクトチーム「PLAYERS」の在り方とは
〜「ハイレベルメンバーの共創実験」からスタート。入り方・抜け方・関わり方までも自由なプロジェクトチーム「PLAYERS」の実態とは〜
「ティール組織」をはじめ、いわゆる「従来型」の組織運営の常識を覆す組織の在り方が注目されている。
LINE BOT AWARDSでグランプリを受賞し、東京メトロ銀座線での「立っているのがつらい妊婦と、席をゆずる意思のある乗客をLINEでつなぐ」社会実験でも話題になったサービス「&HAND(アンドハンド)」。
その発案者であり社会実装を推進しているのは、23名のメンバーそれぞれが本業を持ちながら活動するチーム、一般社団法人PLAYERSだ。
そのメンバーは、ワークショップデザイナー、UXデザイナー、コピーライター、アートディレクター、エンジニア、更に視覚障害者や聴覚障害者、弁護士など、多様性に溢れている。
更に関わり方にもルールはなく、各々が本業とのバランスを取りながら、自分のペースで活動しているのだという。
こうしたチームでプロジェクトを進めていくにあたり、PLAYERSでは全員の「スキル」と「ミッション」をシェアすることで、1人ひとりが自発的に動けるような環境づくりを行っている。
主宰者であるタキザワケイタさんは、「これをやりなさい、ではなくて、ワクワクすることを一緒にチャレンジする、というのがこの組織の在り方」だと語る。
今回はタキザワさんと、発足時からのメンバーであるカク コウキさんに、PLAYERSの組織の在り方と、自由であるからこそ必要な仕組みづくりについて、お話を伺った。
入るも抜けるも、関わり方も「自由」なプロジェクトチーム
カク PLAYERSは、現在(※2018年6月)23名が所属するチームです。
最初に集まったメンバーは10名だったのですが、今はその全員が残っているというわけでもなく。一方で、1回抜けて再ジョインした人もいますし、「抜け方・入り方」はかなり自由です。
全員が別の「本業」を持っているため、関わり方も人それぞれです。毎週木曜の夜に定例会議を設けていますが、それ以外は基本的にバラバラに活動しています。
▼とある木曜日の定例会議の様子
PLAYERSは「一緒になってワクワクし、世の中の問題に立ち向かう」というスローガンのもとにメンバーが集まっています。
こういったチームとしてのスローガンや考え方は、実は今年になってから初めて整理しました。と言うのも、組織としてもPLAYERSのブランドをきちんと整理し、シェアし、発信していくことが大事なフェーズになってきたからです。
これまでは「&HAND」を中心に活動してきていたので、「&HANDなのかPLAYERSなのか」ということは割と曖昧なままでした。
それでも着実に成果を出しながら活動してこられたのは、明文化されていなくても、ビジョン・ミッション的なことがメンバー間でずれていなかったからだと思っています。
最初はそれでも良かったのですが、メンバーが増え、活動の幅も広がっていく中で、事業における責任の所在や、各メンバーの関わり方を明確にする必要が出てきたんですね。
現在は、PLAYERSという場所で、メンバーがやりたいことにチャレンジできる環境を整えているところです。
「ハイレベルメンバーを共創させたら何が起きるか?」を実験
タキザワ PLAYERSが生まれたきっかけは、「ワークショップの成否は、参加メンバーで80%決まる」という自分の仮説でした。
この仮説をもとに、では参加者のレベルをマックスまで上げて共創させた時に、どんなアウトプットが生まれるのか? それを実験してみようと思ったんですね。
ちょうどGoogleが「Android Experiments OBJECT」というアワードを開催中でした。そのアワードで受賞することをゴールに定めて、知人に声をかけて10名のチームをつくりました。
その後、週1で計3回のアイデア創発ワークショップを行い、締め切りまでの10日ほどでプレゼンを作り、10案を応募しました。
結果として、4つグランプリがある中で、「スマート・マタニティマーク」と「Chronoscape」の2つでグランプリを頂くことができたんです。
▼「スマート・マタニティマーク」(※動画はこちら)
そして、このスマート・マタニティマークを発展させたのが、&HANDです。
共創実験は大成功だったのですが、あとで振り返ると「自分が心から実現したいことは何なのか?」ということを、問いかけられていたような気がしていて。
テクノロジーの進化によって「やりたいことを実現できる社会」になったからこそ、「与えられた仕事だけではなく、自分の意思を持って活動すること」が求められているなと。
その後、チームの解散や再結成、メンバーの増員などを経て、2017年11月から一般社団法人PLAYERSとして活動しています。
ビジョンに共感して集まった「超実践的な」チーム
タキザワ メンバーの出入りは基本的に自由なのですが、PLAYERSのビジョンに共感し、やりたいことを明確にした上で入ってもらっています。
なので、最初から全員のモチベーションが高いんですね。「本業ではできないことにチャレンジする」という、超実践的なチームだと思います。
定期的にメンバーにアンケートを取っているのですが、その中に「どうなったらPLAYERSを辞めますか?」という設問があります。
これがつまり、PLAYERSに参加している理由でもあるわけです。
「やりたいことができなくなったら辞める」「実現したいことが達成できたら辞める」「&HANDが形にならないのなら辞める」といった回答がありましたね。
PLAYERSの場合、一般的な企業で言うところの「給与」というものはありません。
ですが、本業ではできないチャレンジができる、それを協力し合える仲間がいて、大きく成長できるということは、お金には換えられない価値だと思っています。
カク スキルや人脈的なものを含めて、本業だと出会えないような人と出会って、一緒に仕事ができたり。個人的には、本業側のためのネットワーキングとして生きている部分も大きいです。
タキザワ チーム内では、役割のようなものはあまり固定していません。やれる人が率先してやってしまうみたいな感じで、互いにフォローし合っています。
皆、本業で忙しいということはわかっているので、フォローし合うというのは大前提ですね。
カク 役割としてタキザワさんがリーダーな感覚はありますが、組織的なヒエラルキーがあるというわけではないですね。
メンバーの中には「PLAYERSの運営を円滑に進めることがミッション」といった人もいます。様々なスキルやミッションのメンバーが集っているからこそ、噛み合う部分もありますね。
また、実際に発生しているプロジェクトで関わる様々な「外部」の企業や団体の存在が、PLAYERSにとっての「行動目的」を日々生み出してくれていることもあります。
コミュニティ全体が推進力を保ち続ける上で、外部とのつながりが大きな役割を果たしてくれている部分もあるのかな、と思いますね。
タキザワ PLAYERSは社会課題の解決をミッションとしているので、チーム外の存在というか「社会との関わり方、繋がり方」というのは非常に大事にしていますね。
チーム全員の「スキル」と「やりたいこと」をシェアし合う
カク 最近、名刺上に各メンバーの「スキル」と「マイミッション」を可視化するという新しい取り組みを始めました。
人数も増え、人によって関わり方の度合いも違う中で、できるだけ1人ひとりにその関わり方を「宣言」してほしいという意図があって。
スキルに関しては各人ごとに5つ決めるようになっていて。4つは自分が今持っているスキル、1つは「これから」PLAYERSでの活動を通じて身に着けたいスキルです。
▼名前の下に「スキル」が記載された名刺。
PLAYERSのロゴマークは星形になっているのですが、その各頂点にある5つの星を好きなように結ぶと、自分だけの星座ができるんです。
▼ロゴマークがデザインされたオリジナルTシャツ
タキザワ つまり、自分だけのロゴマークができるんですね。さらにはPLAYERS全体で見ると、メンバーの数だけ星があり、それらを結ぶことで新たな星座が現れます。
これは、ひとつでも光り輝いている星がたくさん集まることで、さらに大きな力になっていく。「スタープレイヤーたちが共創し、想像を越えたビジョンを描いていく」という思いを込めています。
また、マイミッションに関しては定期的にワークショップを開催し、PLAYERSで実現したいこと、チャレンジしたいことをメンバー全員でシェアしています。
ちなみに僕のマイミッションは、「こどもたちの将来のために 創造力あふれる未来をデザインする」です。
この名刺によって、全員の「スキル」と「やりたいこと」をチーム内外でシェアし、「じゃあこれを一緒にやってみよう!」という動きが自然に起きる場を作っています。
「自分」を主語に、描くビジョンへ1人ひとりが登っていく
タキザワ 僕は、「メンバー1人ひとりが自発的に動いている状態」がこのチームの理想だと思っています。
ただ、「チームとしてどこを目指すのか?」という方向性は必要なので、目指すべきゴールを設定しています。どういったアプローチでそこを目指していくかはメンバー次第、というマネジメントです。
これをやりなさい、ではなくて、目指すべきゴールに向かっていれば何をやってもいい。それを一緒にワクワクしながらチャレンジしよう! という組織の在り方ですね。
カク 価値観、働き方、生き方が多様化している中で、色々なことが「自分次第」になってきているのかなと思います。
これまでは、仕事に関しても「会社の地位を高めるためにやる」ものがほとんどだったのかなと。でも今は、個人の価値を高めるために仕事をすることもできるし、儲かることより情熱を注げることをやるという選択もできます。
ですので、あくまでPLAYERSでは、プレイヤーである「自分」を主語にして、本当に自分がやりたいことに情熱を注いでいきたいと考えていて。
そのような活動のことを僕たちは「プレイワーク」と呼んでいます。
そんなプレイワークをしている人たちが集まっているPLAYERSで、想像以上にワクワクする未来を創っていきたいですね。(了)