- リノベる株式会社
- コーディネーター
- 木村 大介
人との出会いが新規事業を導く 60人のブレストパートナーと出会えた「サンカク」とは
今回のソリューション:【サンカク】
新規事業を立ち上げる時、多くの人が直面する課題のひとつがその事業領域に関する「情報不足」ではないだろうか。
とりわけまだ世の中に存在しない全く新しい事業に取り組む際は、自分たちだけで考えていても限られた知識に基づくアイデアしか生まれてこない。そういったケースでは、インターネットで情報を集めたり、知見を持つ知り合いと話をすることなどが一般的なアクションになる。
そこに新たな一石を投じるのが、株式会社リクルートキャリアが運営するWebサービス「サンカク」だ。
サンカクは、何らかの課題を抱える企業と、仕事を辞めずに他社の経営や事業に触れたい個人をマッチングするサービスだ。現状はベータ期間につき、無料で利用することができる。
企業がサンカク上に募集記事を投稿することで、共にディスカッションをするパートナーを募集することが可能だ。そのサンカクのサービスをうまく活用し、新規事業に生かすことに成功したのがリノベる株式会社の木村 大介さんだ。
木村さんは、中古住宅のリノベーション事業を展開する同社において、新たにIoTショールームの立ち上げを行った。そのプロジェクトスタート時より、情報収集の手段としてサンカクを通じたディスカッションパートナーの募集を行った。
結果として総勢60名もの社外の人とブレストを行うことができ、新しいアイデアが生まれただけでなく19件もの新しい事業提携を獲得することにも成功したという。木村さんに、サンカクの活用法を詳しくお伺いした。
ハードエンジニア、アドテク営業を経てIoTショールーム立ち上げ
新卒で半導体の製造装置メーカーに就職し、1年間ハードエンジニアを務めた後、2年間は営業をしていました。それからアドテク業界に移り、2年間営業を務め、2015年5月にリノベるに転職しました。
リノベるを選んだ理由は、住宅のリノベーション自体が持つ可能性にシンプルに感動したからです。面接で話を聞いている中で、中古住宅をリノベーションして皆が憧れる新築物件のように変える、しかもそれに必要な業務はすべて巻き取る、という事業モデルにとても可能性を感じました。
まだまだ注目されていない領域ではありますが、これから流行っていくのではないかと思ったんですね。
現在は、私がほぼゼロベースから立ち上げたIoTショールーム「Connectly Lab.」の企画、運営を1人で担当しています。Connectly Lab.は、中古住宅をリノベーションして作ったショールームで、世界中のスマートデバイスを展示しています。
自作のデバイスやアプリの展示もできるので、プロトタイプの検証や、テストマーケティングにご利用いただくことができます。元々私は趣味的にハードウエアの開発を行っていて、リアルタイムで会議室が空いているかどうかを監視するシステムなどを作っていました。そこで得たIoTに関する知識を生かして、このショールームを開設しました。
▼世界中のスマートデバイスを展示する「Connectly Lab.」
情報収集のために人に会いたい! 活用したのは「サンカク」
Connectly Lab.を立ち上げることに決まった時点では、私もIoTに関してはまだまだ知らないことだらけでした。課題だったことのひとつは、情報収集の手段がインターネットだけだったことです。
それでは得られる情報も限られてしまうので、プロジェクトがスタートしてすぐに、とにかく片っ端から人に会って情報収集をすることにしました。IoT関連のイベントに参加したりして、5月から9月までの間に合計600枚ほどの名刺を交換しましたね。
新しい人に会うための手段のひとつとして、6月半ばから活用を始めたのが「サンカク」です。サンカクは、事業に関する「ディスカッションパートナー」を募集できるWebサービスです。
前職のときに他社案件に応募したことはあったのですが、募集する側に立つのは初めてで。本当に人が集まってくるのか、半信半疑の状態でした。
ただとりあえず今はベータ版で無料だから、ということで始めたのですが、募集記事を掲載したその週からどんどん応募が来て、最終的に3ヶ月で約60名の方とお会いできました。9月にConnectly Lab.がオープンしてからも、引き続きサービスを使い続けています。
▼「ディスカッションパートナー」を募集できるサンカク
サンカク上で興味を集める募集記事の作り方とは?
現在、弊社の募集記事に「興味あり」のボタンを押してくれている人は180人ほどで、サンカク内の全案件で最も多くの人に興味を持ってもらえている状態です(※9月30日現在/11月11日時点で269人まで増加)。
具体的にディスカッションパートナーの方と何をするのかというと、弊社の場合は事前予約制でディスカッションのための時間枠を設け、1回あたり4〜6人の方にお越しいただいています。
そして主に「Connectly Lab.に導入したい機器やアプリ」「Connectly Lab.の用途(イベント等)」「他社との協業案」の3つに対して、アイデア出しをお願いしています。
多くの人に興味を持ってもらえる募集記事を作ることができた理由としては、ポイントは3点あったかなと思います。まずは「IoT」という流行りの単語を入れたこと。次に、参画者に期待する内容をできるだけ具体的に書いたこと。
なぜ弊社に来てくださったのかを聞くと、「することが具体的だったから」とおっしゃる方が多いんですよね。
具体的に何をするのか、イメージがつきやすいことが大事かなと思います。そして最後に、募集要件を「IoTというテーマに関する、経験や興味がある方」と設定したことです。興味さえあれば誰でも来ていいですよ、という書き方にしたことで、いらっしゃる方の間口が広がったと思います。
実際にディスカッションパートナーの方にお越しいただくのは週1回・2時間程度と決めています。さすがに毎日対応していると、自分の業務が回らなくなりますので…。
いらっしゃる方の属性はエンジニアから新規事業の企画をしている方まで様々で、関わっている分野もスマートハウスからリノベーションまで多岐に渡っています。強いて言えば、20代、30代の方や、経営者の方が多いかもしれません。彼らの情報収集の意味でも役立っているのかもしれませんね。
社外の人とのブレストでは大きな収穫が! 19件の事業提携も獲得
実際に社外の方と一緒にブレストをすることで、めちゃくちゃ収穫があったんですよ!自分が知らなかった世界中の製品を教えてくれますし、1人では全く思いつかなかったようなアイデアも出てきます。
Connectly Lab.を運営していく上でも、具体的な収穫を得ることができました。まずは、ショールームに置くものを提案してもらったことで設置する製品の幅が広がりましたね。例えば、ソニーの電子ブロック「MESH」などの設置が決まりました。
また、「Double」という30万円以上する遠隔操作可能なロボットがあるのですが、「今はもう使わないので」ということでいらっしゃった方が無期限で貸してくださったり。
また、ショールームの使い方に関しても斬新で思いもよらない提案をいただきました。例えば、スマホで発光する色を自由に操作ができる「Hue」という照明システムの活用法です。
人間の感覚を取得するセンサーを組み合わせることで、感覚に応じてHueの照明の色を変え、それを使った人狼ゲームのアプリを作りたいというアイデアを頂戴しました。これは自分だけでは、絶対に思いつかなかったと思います(笑)。
さらに、他社との提携も進みました。アプリケーションの共同開発やIoT関連のツール提供、イベントの企画など、19件もの提携が決まったんですよ。
まだ世の中にないサービスを立ち上げるときにオススメ!
サンカクは、世の中にまだない新しいサービスを作ろうとしている人には本当にお勧めです。そのようなケースですと、「何が正解か分からない」という状態で始めるので、色々な方の話を聞き、市場の声を取り入れることが必要です。
自分もそうでしたが、サンカクを利用すると幅広いセグメントの方とお会いできるので、そういった場合に最適なんです。逆に、◯◯の店をオープンします、というような既にある程度の答えがあるものであれば、その領域の専門家に話を聞いたほうが早いかもしれませんね。
欲を言えば、サンカクでもより専門的な強みを持つ人にターゲットを絞った募集ができるといいですね。例えばエンジニアの方を募集して、Connectly.Labのサービスを体験していただき、アプリ開発などを一緒に進めていけると理想的です。
Connectly Lab.は9月にオープンしたばかりですが、今後はより多くの人にイベントの場所として使っていただければと思います。今はスペースマーケットに登録して誰でも無料で使えるようにしていて、平日は予約なしで10時-19時、土日祝日は予約制で利用可能です。
まあ、予約が殺到してしまうと私の休日が無くなってしまうのですが(笑)。今後もサンカクを活用して外部の方から知見をいただきながら、Connectly Lab.をどんどん盛り上げていければと思っています。(了)