- コラボレーター
- 加藤 章太朗
「Employee Experience(EX)」とは? 企業が「従業員体験」を向上させるべき理由
リモートワーク、クラウドソーシング、副業解禁など、以前よりも柔軟な働き方ができる時代となりました。
そして、従業員が働き方を選べるようになったことで、企業は優秀な人を惹き付けるためにより一層努力を求められるようになりました。
つまり、少しずつ企業から従業員へのパワーシフトが起こっているとも言えるでしょう。
そのような流れの中、一部の海外企業は「Employee Experience(従業員体験、通称『EX』)の向上」というキーワードを掲げ、従業員の惹き付けを強めようとしています。
日本でも、2017年12月21日放送のカンブリア宮殿にて、マクドナルドのCEOが「成功するためにはまず社員が満足しないといけない。赤字でも従業員の給料を上げるのは当然のことだった」という趣旨の発言をし、話題になりました。
これも「EXの向上」の一貫と捉えることができるでしょう。
今回は、EXという考え方の説明、それを高めるための海外ツールについてご紹介いたします。
ぜひ参考にしていただき、自社にも取り入れてみてください。
Employee Experience(従業員体験)、通称「EX」とは
プロダクト開発の現場では、User Experience(UX:ユーザー体験)という言葉があります。これは「ユーザーがプロダクトやサービスを通じて得られる体験」です。
企業は、ユーザーの目的が達成できるようなUXを設計し、デザインや機能に落とし、満足度を高めることを目指します。
そしてEXは、「UXの従業員版」と捉えることができ、「従業員が働くことを通じて得られる体験」のことです。
従業員の体験を意識している企業は、その体験を設計し、社内制度やルール、文化に落とし込むことで、従業員の満足度を高める努力をしています。
例えば、Airbnbでは総務をEmployee Experienceと呼び、従業員体験の向上を強く意識しているようです。
この画像では人事となっていますが、Employee Experienceの実際の求人を見ると、総務の仕事も含まれていることがわかります。
社員の面倒をいろいろと見る部署です。ヘルシーでおいしい社食の献立を組むのも仕事。
最新テクノロジーを揃えてやるのも仕事。ベスト&ブライテスト(超一流)な人材を引き抜くのも仕事。
社屋が最高の職場環境になるよう手配するのも仕事。社員エクスペリエンスチームはAirbnbの面倒をまるごと見る総務部です。
会社の健康と幸せの向上のために日夜働いてるんですが、これが結構楽しいのです。
Airbnb採用ページを参照
今でも多くの企業が、従業員が働きやすい環境づくりに努めていると思いますが、その流れは今後、より一層強まっていくと考えられます。
また、海外企業では、EXの責任者を立て、データをもとに従業員体験の向上を図っているケースも少なくありません。
今回は具体的に、下記の領域をピックアップして見ていきます。
- ストレスのないオンボーディング(入社受け入れプロセス)
- 従業員の学習サポート
- 快適で柔軟な労働環境
ストレスのないオンボーディング
オンボーディングとは、新しく入社した社員を事業部が受け入れるまでのプロセスです。それはまさにEXのスタート地点であり、プロダクトに例えると初回ログイン時の体験に近いと思います。
もし、プロダクトの初回ログイン時に悪い体験をすれば、ユーザーは戻ってきません。
つまり、入社後のオンボーディングの体験が悪ければ、その人はすぐに辞めてしまうかもしれません。また、その後のEXにも悪影響を与え兼ねません。
SELECKで過去取材をした日本オラクルでは、会社の印象は、入社後の最初の1ヶ月で決まると考え「5週間研修」を実施しているそうです。
新しく入社したメンバーの「オンボーディング」、つまり受け入れプロセスを、「全社員の仕事」として位置づけて取り組んでいます。
人の印象は出会ってから最初の3分で決まると言いますが、新しく入ったメンバーが会社の印象を決めるのは、最初の1ヶ月ほどだと考えています。その期間で関わった社内の人の態度や、学んだことによって会社の印象が決まります。
記事はこちらから
そして、このオンボーディング体験を向上させるべく、ツールを活用している海外企業もあります。
例えばKinを使うと、新しく入社するメンバーがスムーズに仕事を開始するために必要な情報を登録できます。
既存社員の情報も登録されているので、困った時に誰にコンタクトを取れば良いか一発でわかります。
仕事で使うツールの情報も登録できるので、新しいメンバーはツールについて学習ができます。
なお、入社が決まり情報が登録されると、受け入れるチーム側にやるべきことが自動的に送られるので、受け入れ側としてもタスクの抜け漏れが無くなります。
従業員の学習サポート
従業員の学習サポートへの投資を増やし、EXを向上させる企業も増えています。
例えば、海外では法人向けのUdemyが広がっています。
Udemyは、世界最大級のオンライン学習のプラットフォームで、日本でもベネッセとコラボレーションして展開しています。そして、このUdemyの法人向けサービスを導入する企業が増えています。
法人向けUdemyでは、従業員はビジネスに役立つ2,000以上のコースを受講することができます。IT、プロジェクトマネジメント、マーケティング、マネジメント、ファイナンス、などあらゆるジャンルの授業が用意されています。
従業員がどのくらいの時間、どういったコースを受けていて、何%終了しているのかも可視化されます。メンバーとの1 on 1などの際に、コース終了に向けて励ますこともできますね。
快適で柔軟な労働環境
働く環境も、EXを向上させる上で重要な要素です。いくつか、海外企業の素晴らしいオフィスを紹介します。
▼AirbnbのSan Franciscoオフィス
▼VansのCaliforniaオフィス
▼DropboxのSan Franciscoオフィス
※OFFICELOVIN’より
近年では、自宅などオフィス外で仕事をする人も増えたので、リモートワークの環境整備も重要になっています。
海外ではDoubleやBeamといった、リモートワークに役立つロボットのようなツールも開発・運用されています。
▼Double
▼Beam
DoubleやBeamを用いると、実際にオフィスを動き回り、会議や会話に参加することができます。あたかもその場で一緒に仕事をしているかのような体験を得ることができるのです。
価格は30万円ほどからで、Amazonでも購入できます。
今後は、更に柔軟で快適な労働環境が求められていきます。リモートワークをはじめ、労働環境に投資をする会社は従業員に選ばれていくのではないでしょうか。
「顧客満足度の向上」だけでなく「従業員満足度の向上」がより求められる時代において、企業は様々な施策を打っていくことが求められるでしょう。
皆様もぜひ、従業員の満足度を向上させるためのアクションを少しずつ試してみてください。
従業員体験を高めるコーチング
「明確な目標設定」や「目標に対する適切なコーチング」も、EXを向上させる重要な要素の1つです。
SELECKでは、目標達成へのコーチングの一部をbotが行う「Wistant(ウィスタント)」というツールを開発しました。
「目標達成するチーム」を作りたいとお考えの経営者・マネージャーの方は、ぜひ、チェックしてみてください。