- 日本オラクル株式会社
- 理事 社員エンゲージメント室 室長
- 赤津 恵美子
会社の印象は1ヶ月で決まる!?社員エンゲージメント85%に挑む、日本オラクルの挑戦
〜社員満足度85%への挑戦!毎年、全体の1割が中途入社する日本オラクルの、エンゲージメントを高める組織づくりとは〜
社員にとって「働きやすい」会社を実現するために、企業はどのような活動をしていくべきなのだろうか。
世界中に13万人以上の社員を有するオラクル・コーポレーションは、全世界で、クラウド事業を推進するための人材を大量に採用している。
同社の日本法人である日本オラクル株式会社でも、年間100名規模で、中途の営業社員を採用しているそうだ。
そんな同社にとって、新しい人材にいかに会社に慣れてもらい、実力を発揮してもらうか、は大きな課題だったという。
そこで、社員の働きがいを高める専門チーム「社員エンゲージメント室」は、中途入社の社員向けに5週間にわたる研修プログラムを提供。他にも社員満足度85%を目指し、様々な取り組みを行っている。
今回は同室長を務める、赤津 恵美子(あかつ えみこ)さんに、日本オラクルの社員エンゲージメントの向上施策について、詳しくお話を伺った。
社員の貢献意欲を高める専門組織「社員エンゲージメント室」
日本オラクルは今年で32年目を迎え、現在は約2,500人の社員がおります。
そして私たちは、2020年に「業界で最も賞賛される企業」になること、つまり、社員が誇りを持って働くことができ、同時に市場からも評価される企業でありたいと考えています。
そのための活動の一環として、2016年1月に「社員エンゲージメント室」を立ち上げました。
「2020年に、85%の社員が、この会社で長く貢献したい、家族や友人にも勧めたい」という状態を実現するための、専任の組織です。
現在は5名の組織で、採用活動や入社者の受入れ支援、組織活性化やダイバーシティの促進、働き方の改善といった様々な施策に取り組んでいます。
変わるオラクルの営業スタイル!チーム営業から1人営業へ
その中でも、中途入社者の受け入れ体制に関しては、今年から大きく変えています。
弊社では毎年、200~300名規模で中途入社の社員を採用しています。
その多くが営業職になりますが、弊社のサービスに近しい商材の営業経験を持つ方から、初めてクラウドに触れる方まで、バックグラウンドは様々です。
しかし、以前は「中途採用は即戦力」という認識が強く、3日間の研修の後、すぐに現場にアサインしていました。
ただ、それだけでは思うように成果が出せなかったり、組織に馴染むことができず、中には短期間で辞めてしまうようなケースも出てきました。
弊社はいま「クラウド No.1」を掲げ、以前はオンプレミス主体だった商材を、クラウドを軸に転換していこうとしています。
それに伴い、営業スタイルも変化しています。以前は大手のお客様を複数名で訪問し、オンプレミスの製品をご紹介することが多くありました。
しかし今では、比較的安価なクラウドサービスの利用を検討している中小企業のお客様に、電話やメールでの営業活動をひとりで担当する部署ができて、人数も増えました。
例えていえば、チームでクジラを捕るスタイルから、1人でカツオを釣るスタイルへの変化です。したがって、これまで以上に1人ひとりが、より幅広い知識や能力を身につける必要が出てきました。
このような課題感から、中途入社の社員の受け入れ体制を、大きく変えていくことにしたのです。
会社の印象が決まる1ヶ月間で、中途入社の全員をフォローする
具体的には、新しく入社したメンバーの「オンボーディング」、つまり受け入れプロセスを、「全社員の仕事」として位置づけて取り組んでいます。
人の印象は出会ってから最初の3分で決まると言いますが、新しく入ったメンバーが会社の印象を決めるのは、最初の1ヶ月ほどだと考えています。その期間で関わった社内の人の態度や、学んだことによって会社の印象が決まります。
そうであれば「急がば回れ」で、その1ヶ月という期間でしっかりと会社や製品の基礎を身につけ、一緒に働く人とも打ち解けて、活躍できる下地を作るべきだと思っています。
具体的には、営業社員向けの「5週間研修」を実施しています。
1週目は集合研修で、会社や組織、ルールなどオラクルの基礎を学習します。それは同時に、社内の関係者と「つながる」ことを意図した構成になっています。
2週目からは時間割に沿ったOJTとなります。上司がグローバル標準のテキストを使って教えたり、eラーニングで単元ごとに自己学習しながら、オラクルの営業手法を学びます。
3週目は、自分が担当する製品を中心に、機能からツールまでをOJTで学びます。
4週目は再び集合研修で、ロールプレイを通じて、これまで学んだことの習熟度を確認しています。
そして5週目はいよいよ現場に出る直前なので、上司と習得状況を確認し、お客様とのコンタクトの取り方などを練習して、実践に備える内容になっています。
新メンバーの成功にコミットする「サクセスマネージャー」の存在
OJTでは現場の上司だけでなく、ナビゲーター、サクセスマネージャーが、新しいメンバーをサポートしています。
ナビゲーターは、現場の先輩社員が務めます。経費精算や勤怠管理の方法から、この件はこの人に聞くとよいなど、わざわざ上司に聞かなくても良いような細かい部分をサポートする役割です。
そしてサクセスマネージャーは、社員エンゲージメント室が担当しています。
入社者の「成功」にコミットする役割で、研修期間である5週間の間は毎週、1時間ずつ全員とミーティングをし、上手くいっていること、そうでないことを共有します。
例えば上司やナビゲーターの出張が多く、カリキュラムが思うように進まない、と相談されたときは、2人目のナビゲーターを指名してもらったり、上司にペースアップを頼んだりしています。
やはり最初の5週間は大切な期間なので、うまく進んでいないときは、私から積極的に働きかけています。
オラクルの「ベストプラクティス」をいつでも学べる環境作り
効果的に学べるように、研修に使う教材は、ほとんど自社のポータルサイトからダウンロードや視聴ができます。
例えば、中途研修で使う、商談のチェックシートなどのテキストは、誰でもサイト上で閲覧することができるようになっています。
また、社員が各自のニーズに合わせて、自分で研修を検索して受講することができます。
例えば「リーダーシップ」を学ぶコンテンツは100以上ありますが、中にはYouTubeに上がっている外部サイトのコンテンツもあります。そうした情報も自社サイトにまとめておくことで、社員が探す手間を省いています。
ポータルサイト上では、自分が受講した研修記録を確認したり、受講した講座に「星3つ」などの評価やレビューコメントをつけることも可能です。より効率的に学べるよう、工夫されていますね。
社員同士が「つながる」環境を作り、強い組織を目指していく
また、弊社では研修以外にも、全ての社員に長く働いてもらえるような取り組みをしています。
これは既存の社員にとっても同様に重要なので、こちらは、「Open Campus(大人の文化祭)」と称して、社員エンゲージメントを高める取り組みを率先する社員が、四半期ごとに「社員同士がつながる」イベントを開催しています。
▼外部講師を招いたトークセッション
内容は、海外で活躍する日本人社員との対話、イクメンの時間術、外部専門家のトークセッションなど多岐にわたります。
冬と春の2回で合計450名を超える社員が参加し、「本当の意味で人脈構築ができます」など、大変好評でした。
また、オフィスに社内カフェテリアを設けました。朝8時から夜8時まで、ヘルシーな食事メニューを用意しており、毎日1,000名もの社員が利用しています。
食事の他にも、ひとりで集中して業務を行ったり、ミーティングを行うなど、用途は様々です。役員や他の部門の上司など、普段は接することがない社員とも、気軽にコミュニケーションが取れる場所になっています。
▼毎日1,000名もの社員が利用するカフェテリア
今後は、就業環境だけでなく、より社員同士が刺激しあい、互いの成長や貢献を実感できるような強い組織を作っていきたいです。
日本の企業において、社員のエンゲージメントは非常に低く、2011〜2012年のGullup社の調査によれば7%だそうです。
その中で弊社の「社員のエンゲージメント85%」は、やはり非常に高い目標ではありますが、これからも挑戦を続けていきたいですね。(了)