• 株式会社ウェブライダー
  • 代表取締役 Webプロデューサー
  • 松尾 茂起

年間たった80記事でも劇的な成果を!「量より質」を追求するウェブライダーの制作体制

〜Webライティング本のベストセラーとなっている「沈黙のWebライティング」の制作を支えたのは、徹底したフィードバック体制。年間80本、徹底的に考え抜いたコンテンツだけを配信する、ウェブライダーの制作フローを公開〜

「沈黙のWebマーケティング」「沈黙のWebライティング」「ナースが教える仕事術」で知られる、株式会社ウェブライダー。

前回の記事では、その魅力的なコンテンツの根底を支える、「伝わるコンテンツ」の作り方を伺った。

だが、同社が魅力的なコンテンツを発信し続けられるその裏には、コンテンツに対する思想だけではない、徹底して質にこだわる制作プロセスがある。

読者の「なぜ?」を徹底的になくすためのマインドマップや、スタッフ全員で行われる細やかなフィードバックなど、最高のコンテンツを作るために「考え尽くす」制作現場について、代表の松尾 茂起さんに詳しく伺った。

「月間6本」のコンテンツに全力を尽くす!?

弊社は、コンテンツプランニングを中心としたWebマーケティングの支援を行っています。

現在は、ライター兼編集者が社内に3人、外部ライターが2人、そして代表の私という6人体制で、コンテンツを制作しています。案件によっては、ここに監修者が入ることもあります。


この体制で、2015年は約80本のコンテンツを作ってきました。1ヶ月あたり、6本から7本というペースです。

これだけ本数が限られているのは、ひとつのコンテンツに相当な時間をかけているからです。コンセプトの策定からコンテンツの公開までに、100時間以上かかる場合もあります。

時間をかけることが必ずしもよいとは言いませんが、弊社では自分たちが「本当に読みたい」と思えるコンテンツを作れるまで、何度も試行錯誤を繰り返します。

コンテンツをただ量産し続けても、質は高まらない

私たちは、どこよりも「わかりやすい」コンテンツを目指すことを、制作のポリシーとしています。

検索向けの記事の場合、読者は記事を読みたいわけではなく、「情報を取得したいだけである」というのが弊社の考えです。であれば、わかりやすいコンテンツというのは、読んでいて「なぜ?」という疑問がわかないものです。


情報をどのように伝えたら、読者にとってのメリットがあるのか。それを考え抜く上で重視しているのが、読者が抱くであろう疑問に先回りして答えることです。

自分がひとりの読者だったら、自分がわからない情報が載っていないコンテンツのほうがうれしいですよね。

そのため、読者の立場に立って考え抜くことを大切にして、「この情報はもっと掘りさげなくてもよいか?」「この表現がベストか?」といったことを徹底的に考えるようにしています。

よく、コンテンツのクオリティを上げるためには、たくさんアウトプットしたほうがよいという意見を聞きますが、弊社では単純にアウトプットを重ねるのではなく、アウトプットする前の「思考」の量を大切にします。

わかりやすいコンテンツを作るため、たくさんの思考を頼る

この思考の量を高める方法としては、ひとりの思考に頼るだけでなく、たくさんの人の思考に頼る方法もあります。

たとえば、弊社ではコンテンツに対するフィードバックを複数人でおこないます。

ひとつのコンテンツに対して、できるだけ多くのスタッフで「このコンテンツはわかりやすいか?」という評価をするんです。

そして、もし、たったひとりでも「わかりにくい」という意見が出たのであれば、その意見をスルーすることなく、「では、どうすればわかりやすくなるか?」を徹底的に考えます。

このフィードバック体制を維持するためには、「どんなことであっても気になれば言う」という文化を浸透させることが大事です。弊社ではその文化を徹底しているため、それぞれのスタッフがひとつのコンテンツに対して、ガンガン意見を出します。

たとえば、ひとつのコンテンツに対して、200件以上もの意見が集まることもあるんです。

▼ひとつのコンテンツに対して書き込まれた意見の一部

まずはマインドマップで読者の検索意図を読み解く

制作全体の流れでいうと、まずコンテンツのコンセプトを決め、次にマインドマップで情報を整理し、そこから執筆、ブラッシュアップを行って公開となります。

その過程では、チャットツールの「チャットワーク」を使ってコミュニケーションを取っています。

コンテンツ1本につきチャットルームをひとつ作り、そこにライターや編集者だけでなく、すべてのスタッフを入れ、いま企画しているコンテンツがどのようなものなのか、情報共有をします。

弊社では検索流入を意識したコンテンツを作ることが多く、そこでマインドマップが役立ちます。マインドマップを使い、あるキーワードで検索する人が「どのような情報を欲しているのか?」ということを掘りさげていくんです。


具体的な作り方でいうと、たとえば、看護師求人サイトに「看護師辞めたい」と検索する人を集客するとします。

この場合、「看護師辞めたい」と検索する人がどういう意図で、どのような情報を求めて検索するのかを、徹底的に掘りさげていきます。

その上でオススメしたいのが、現在検索で表示される上位1位~10位のコンテンツを分析することです。

Googleは、ユーザーが支持するコンテンツを上位表示させています。ですので、実際に検索で表示されるコンテンツを分析することが、上位表示の近道になるんです。

そういった情報をマインドマップにまとめていけば、どのようなコンテンツを作ればよいかの骨格が見えてきます。

▼詳細に作り込まれた「看護師辞めたい」に関するマインドマップの一部

「看護師辞めたい」というワードは、「自分は看護師に向いていないのかもしれない」といった悩みを抱えていたり、職場での人間関係に悩んでいる方が感情的に検索していることがわかります。なぜなら、上位に表示されているコンテンツには、そのような悩みが多く掲載されているからです。

ちなみに、感情的に検索されるワードの場合、まずは相手の感情に寄り添う必要があります。

感情的に検索してきた人は共感を求めているケースが多いため、ただ論理的に「こうするといいですよ」と伝えるコンテンツはミスマッチなのです。この考え方は何かのサービスを訴求する場合に大事です。

フィードバックを言語化することで、再現性が生まれる

マインドマップが完成したあとは、「Microsoft Word」で執筆をして、完成した原稿に対してできるだけ多い人数でフィードバックをしていきます。

よく使うツールは「Adobe Acrobat」です。Acrobatの注釈機能を使って、コメントを書き入れていきます。また、フィードバックが多そうな場合は「Google スプレッドシート」にまとめていきます。

▼スプレッドシート上でフィードバックを行う様子


フィードバックをする側は、その文章がなぜダメなのかを、必ず言語化して伝えるようにします。「なんとなく」といった漠然とした言葉でのフィードバックは、フィードバックを受けた側を混乱させるだけなので、わかりやすい言葉に言語化することを徹底しています。

つまり、フィードバックする側もとても大変なのですが、この言語化を徹底することにより、ノウハウとしての再現性が生まれます。

フィードバックを受けたライターは、リライトして再度提出し、またフィードバックを受けつけます。この流れを繰り返すことで、コンテンツはどんどんわかりやすくなっていきます。先日出版した「沈黙のWebライティング」も、私が執筆したものにスタッフからフィードバックをもらい、リライトを繰り返して完成させました。

ちなみに、弊社ではこれまでのフィードバックで言語化してきたノウハウをツールに落としこむことを始めました。ノウハウが増える一方で、それらのノウハウを各人が覚えておくことに限界を感じたためです。

ツールで対応できるフィードバックはツールに任せたほうが早い。そうして開発したのが、「推敲支援ツール」です。ツールに任せて空いた時間で、さらにコンテンツの質を高めるための施策を打つ。そのためのツールです。

▼過去のノウハウが詰まった推敲支援ツールで、コンテンツを自動推敲

コンテンツに求められるのは読み手への愛

このような制作体制のため、弊社では1年間で作れるコンテンツに限りがあります。ただ、何度も言う通り、コンテンツを作る際に大事なのは「量」ではなく「質」だと思っています。

弊社では、たったひとつのコンテンツがたくさんの人の心に届き、商品やサービスの訴求につながったケースをたくさん見てきました。

大事なのは、コンテンツに込めた読み手への愛です。愛があるから、人の心は動くんです。ベルトコンベアーのように、機械的に作られるコンテンツに愛があるとは思えません。

ただし、その愛は一方通行の愛ではいけません。相手にとってどういうアプローチが喜ばれるのかを、徹底的に考え抜くことが大事なんです。

弊社のポリシーは、最少の記事数で最高の成果を生み出すこと。

これからも一つひとつのコンテンツに向き合いながら、不器用ながらに地道に進んでいきたいと思います。(了)

※松尾さんの「伝わるコンテンツの作り方」についてはこちら

;