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新卒が「定着する」組織の作り方!トレーナーとの「相性」も考えた配属の効果とは?

〜「リーダーの指導タイプ」からトレーナーとトレーニーをマッチング。1on1による振り返りとトレーナー共有会で1人ひとりに向き合う、アカツキの新卒育成法とは〜

新卒の育成に、課題を抱えている企業は多いのではないだろうか。

2010年に創業し、モバイルゲームとライブエクスペリエンスの両事業で成長を続ける株式会社アカツキ。同社では、2017年に入社した新卒社員の中から、休職や早期退職のメンバーが出てしまった。

それを振り返った時に、新卒社員と既存社員がお互いの「信頼関係」を築く前に実務に入り、周囲に相談できないまま離職を選択する、という傾向が見られたそうだ。

そこで18卒では、事業部の人員計画に基づいた配属ではなく、主観と客観の両軸による「相性の良い組み合わせ」で配属先とトレーナーを決定。

さらに、週1回の1on1では、新卒に求める行動基準をベースに振り返りを行い、その内容をトレーナー全員が集まる場で共有している。

このように新卒1人ひとりに対して、人事とトレーナー全員で向き合う体制をつくった結果、早期離職が昨年の3分の1にまで減少したという。

今回は、同社の人事部で新卒育成を担当する小原 彩さんと、現場のトレーナーを管轄する菅 隆一さんに、新人の配属から育成方法について詳しくお伺いした。

組織規模の拡大に伴い、17卒の育成で顕在化した課題とは…

小原 私は現在、人事部で主に新卒育成を担当しています。もともとは人材紹介会社でキャリアを積み、2年前にアカツキに入社しました。

人事部門には、業務委託の方々も含めると40名ほどのメンバーが所属しており、採用・育成・文化・評価制度など、役割ごとに専任をおく体制になっています。

弊社は2010年に創業し、現在は200名ほどの社員がいます。新卒に関しては、14卒の1名をはじめとして、15卒で5名、16卒以降は毎年30名ほどを採用しています。

15卒の頃はまだ30名ほどの組織だったので、代表が直接面倒をみるような育成体制でしたが、16卒の時に研修チームを立ち上げ、育成プログラムを作ったんですね。

当時は、上場前で100名に達しない規模だったので、いわゆるベンチャー感があったのですが、17卒の学生が就活していた2015〜16年にかけて、会社のフェーズが劇的に変化していきました。

マザーズ(現在は東証一部)に上場し、社員数も倍増する中で、世間的な見え方も「安定したベンチャー」に変わってきていたのだと思います。

そうした中で入社した17卒のときに、入社1年以内に休職や退職をするメンバーが出てしまって。

その傾向を見ると、新卒社員を既存社員がお互いに「信頼関係」を築く前に実務に入ってしまい、周囲に相談できないまま離職を選択する人が一定数いたことがわかりました。

信頼関係の土台を築くため、「相性の良さ」から初期配属を行う

小原 そこで18卒では、まずは信頼や安心という土台をしっかり築くような育成方針に変えました。

まず、全体研修の期間を1ヶ月に伸ばして、同期との横のつながりや先輩社員との斜めの関係も含めた「人とのつながり作り」にフォーカスする期間を設けました。

そして、大きく変更したのが「初期配属」の方法です。17卒までは、各部署の人員計画にもとづいて配属を決めていた部分が大きかったのですが、18卒では「相性のよいトレーナーのもとに置く」ようにしました。

具体的には、「主観」に基づいたトレーナーの指導タイプと、「客観」に基づいたSPIの2軸で、新卒とトレーナーをマッピングしました。

まず、主観軸については「1分間リーダーシップ」という本の内容に基づいて、「指示型」「コーチ型」「援助型」「委任型」という4つの指導タイプに、トレーナーを1人ずつ分類していきました。

▼4つのリーダーシップ・スタイル(出典:ダイヤモンド社「1分間リーダーシップ」)

さらに新卒側についても、全体研修での様子から1人ひとりの特性を主観で判断して、「この子はたぶんこの指導タイプの方が相性いいかな」といった形で分類し、色分けしていきました。

いずれも人事だけで判断するのではなく、現場と一緒になってホワイトボートにふせんを貼りながら議論して決めていきましたね。

その上で、客観的な軸を取り入れるため、18卒とトレーナー候補全員にSPIを受けてもらいました。その「組織適応性」の結果から「結果重視」「創造重視」「秩序重視」「調和重視」という4象限にマッピングしました。

これと先ほどの主観軸の組み合わせを照らし合わせて、同じ象限であれば決まりといった形でペアを組んでいきました。

中には、主観と客観で象限が異なったり、ある枠のトレーナーが不足するようなケースもありましたが、そこは主観の方で最終調整を行っています。

指示型と支援型など、対極にある指導タイプは相性が悪く潰れやすくなってしまうので、明らかに避けたほうがよい組み合わせなどを機能的に分けることができましたね。

トレーナーが育成計画を立て、受け入れ資料を作成

 僕は1年ほど前にアカツキに入社し、ゲームの企画業務と、企画の職能組織の部長を兼任しています。18卒のトレーナーを務めると同時に、トレーナー全体を管轄する役割を担っています。

全体研修を終えた新卒社員は、5月からジョブローテーションなどのOJT研修に移ります。

その際、トレーナー側はメンバーを受け入れる前に、育成方針や計画に関する資料を作成します。これは人事側の育成担当ではなく、現場で作成するんですね。

例えば、どういうところを大切にするのか、という育成方針から、1ヶ月ごとの状態ゴール、OJTのアクションプランについて、すべて言語化するようにしています。

▼新人受け入れ資料の一部

統一のフォーマットはありますが、人によって内容は様々です。というのも、どの事業部かによって何を任せるかが違いますし、成長のペースや期待する水準なども、その人の特性を踏まえて調整しています。

小原 また、現場にスムーズな受け渡しができるように、全体研修時の様子や、選考時の評価ポイントなど、1人ひとりの情報はすべて1つのドキュメントに集約してトレーナーに共有しています。

週1回・30分の1on1で、行動基準をもとにした振り返りを実施

 現場の業務が始まってからは、週に一度、トレーナーと30分間の1on1を実施しています。新卒に求める行動基準をベースに、業務の中でできたこと・できなかったことの振り返りを行っています。

トレーナーは面談の前に、行動基準ごとに「○×△」をつけ、その根拠となる行動と併せてスプレッドシートに記入しています。

例えば、「相手視点で考える」という基準に対して、「相手の期待と考えを推察する力が伸びてきたので、今度は自分から新しい提案をする際に、相手を想う力・伝える力をより高めていきましょう」といったフィードバックを行っています。

対話を通じて「なぜできなかったのか」「どう改善したらよいのか」を一緒に振り返ることで、内省を深めてもらいます。

小原 また、人事側とも定期的に1on1を行っています。頻度や話す内容は、本人の状況によって柔軟に対応していますが、直接トレーナーに言いづらいことを拾うようにしていますね。

トレーナー同士の共有会では、新卒1人ひとりに全員で向き合う

小原 また、新卒1人ひとりの状況を共有する場として、全トレーナーが参加する共有会を週1で実施しています。毎回、1人あたり15〜30分ほどかけてじっくり話しをするので、2グループに分けています。

ここでは、1on1のシートを時間軸で確認しながら、成長の兆しをピックアップして「何が変わったのか」「どういう気づきがあったのか」をシェアしています。

また、トレーナーの育成も目的としているので、フィードバックの質を高めるためのフレームワークを伝えたりすることもありますね。

 例えば、トレーナー・トレーニーのそれぞれが「できる」「できない」と思っていることで4象限にわける手法があります。この認識の組み合わせによって、どのような姿勢で相手と向き合うべきかが違うんです。

また、フィードバックの仕方としては、タスクの重要度・難易度と本人のスキルの2軸で、4象限にわけて考える方法があります。

こうした思考のフレームワークを教えつつ、実際に1人ひとりの変化を見ながら、全員でどこがハードルになっているのか、どういったフィードバックが適切かを議論しています。

他にも、1on1に課題を感じているトレーナーがいれば、他のペアの1on1に同席して勉強することもありますね。

セルフマネジメントの強化と、早期の抜擢を進めていきたい

小原 こうした活動によって、18卒の離職者数は、昨年の3分の1以下になりました。

何が良かったのかを振り返ってみると、時間がかかっても徹底的に1人ひとりと向き合うことだったかなと思っていて。

特にスキルが高くて自走力のある若手ほど、トレーナーに期待してもらいたいために、つらいことがあっても言えなかったりするんですよね。

それを、人事や他部署のトレーナーなどいろんなネットワークを使いながら状態を把握することで、適切に対処できたかなと思います。

一方で、課題として感じているのは、より早い段階での「セルフマネジメント」の習得です。

もともとアカツキには、大切な哲学をまとめたカルチャーブック「アカツキハート」があります。

その中で、成長には「スキル」と「人格」の2種類あると捉えており、人材育成の思想としては、より豊かで幸せな人生を送るための「人格の成長」も重視しています。

▼成長の定義(出典「アカツキハート」)

その人格を育てるためには、自律をベースにした行動が大切です。そこで19卒では、全体研修の内容をセルフマネジメントを中心に設計しました。

 また18卒は、全員の状態をしっかり見守る体制だったのですが、事業部として振り返ってみると、もっと早期から抜擢できたケースも多々あったと思うんですよね。

役割やポジションが人を育てることは絶対あると思っているので、19卒では適切に抜擢をして、より早期からチャレンジできる環境を整えていきたいと考えています。

小原 今回、入社の初期に安心感や信頼関係を醸成することが大事だということがわかったので、その18卒の育成の良さを活かしつつ、さらにブラッシュアップしていきたいですね。(了)

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当媒体SELECKでは、これまで600社以上の課題解決の事例を発信してきました。

その取材を通して、自律的な成長を促す「伴走型のマネジメント」が、組織づくりにおいて重要であるという傾向を発見しました。

そこで開発したのが、1on1の運用と改善で、メンバーの内省を促進し、パフォーマンスを最大化するツール「Wistant(ウィスタント)」です。

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