• 株式会社ディー・エヌ・エー
  • 執行役員 ヒューマンリソース本部 本部長
  • 對馬 誠英

上司・人事の承認ナシで異動OK!3ヶ月で20人超が利用した新人事制度・シェイクハンズ

〜社員1人ひとりのチャレンジを促し、それぞれの能力を100%発揮させる!DeNAの斬新な新・人事制度をご紹介〜

社員全員の能力を最大限に活かすには、どうしたら良いのだろうか。

株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)では、その実現のため、仕事のやりがいや能力の発揮度合いを測る社員アンケートを2015年から運用してきた。

その結果を踏まえて、都度、新たなチャレンジや最適な役割へのアサインを行ってきたそうだ。

さらに、社員1人ひとりの意思(will)や情熱(passion)を尊重し、熱意を持って働ける環境を創出することを目的に、今年10月より人事プロジェクト「フルスイング」を立ち上げ。

第一弾として、本人と異動先の部署の合意さえあれば、人事や現上司の承認なしに異動ができる「シェイクハンズ制度」を開始した。結果、約3ヶ月で既に20件以上の異動が決定したという。

他にも、マネージャーに対しての記名による360度フィードバックや、副業の解禁、他事業部の役割に従事できる「クロスジョブ制度」の実施など、思い切った施策を次々と実行している。

今回は同社にて、フルスイングのプロジェクトを率いる對馬 誠英(つしま まさひで)さんに、詳しいお話を伺った。

シンプルな2つの質問で、組織の状態を定点観測

弊社では「優秀な人材にジョインいただいているものの、それを完全に活かしきれてはいないのではないか?」という課題感から、2015年よりキャリアマネジメントアンケートを導入しました。

毎月月初に「あなたは仕事で自身の能力を活用できていると感じますか?」「あなたは仕事をしていてやりがいを感じますか?」という、シンプルな2つの質問を送って、回答してもらうものです。

▼実際のアンケート

このアンケートを始める前から、社員全員が埋もれることなく輝いてほしいという気持ちはずっとありました。ですので、少しでも「くすぶっているかな」と感じたら、別の役割を提案してみるといったフォローは丁寧に行っていましたね。

ただ、社員の数が増えてくる中で、より正確かつ漏れなく状況を把握するために、アンケートでの定点観測を始めたんです。

この結果を人事とマネージャーで共有して、「今、お願いしている仕事がはまっていないかも」という風に、感覚で感じていることとアンケート結果をリンクさせて、何かしらフォローできないかということを考えています。

実際、アンケート結果を見てみると、やはり毎月数字が動くんですね。

▼2017年8月のアンケート結果

今年の8月でいうと、「やりがいを感じている」人が71%で、「能力を活用できている」人が84%です。

この数字をどう捉えているかというと、我々としては、まだ伸びしろがあると思っていて。「時折やりがいを感じている」人が21%いるのですが、「時折しか感じない人がこんなにいるのか…」という感じなんですよね。

個人ベースですと、もともとは点数が高かったのに、だんだん下がってきて最終的には回答しなくなる、というのが一番危ないパターンです。

人事として、こういった状態を許せないといいますか、もっと人材を輝かせることができるのではないかとずっと思っていたんです。そして色々と考えた結果、「フルスイング」というプロジェクトを立ち上げるに至りました。

人事と現部署の上司の承認なしに異動できる、シェイクハンズ制度

その第一弾として、今年の8月から、本人と異動先の部署の合意さえあれば、人事と現部署の上司の承認なしに異動が可能となる「シェイクハンズ制度」を立ち上げました。

もともと異動に関しては、通常の異動に加えて、半年〜1年に1回くらいのスパンで行う、キャリア公募制度がありました。手を挙げた人を選考して異動が決まるという、一般的な制度です。

ただ、やはり厳しい選考があったり、ポジション数が限られていたり、そもそも頻度も多くないので…。そういう制約がある時点で、異動のハードルが一段上がりますよね。

実際にそこまでの応募数があった訳でもなく、本当に社員のニーズに応えられているのかという疑問があり、この制度を立ち上げました。

シェイクハンズするプロセスとしては、本人が希望する部署に声をかけるケースや、逆に事業部側からオファーするケース、あるいは、全ポジションが公開されているWebからエントリーするケースなどがあります。

また、人事に相談ができるキャリア相談室があり、「自分は正直、何が強みなのかわからない」という話から始まって、強みの棚卸をした上で、異動先を検討するケースもあります。

▼申請時に提出する合意書


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異動の動機としては、新しいチャレンジをしたい、自分の情熱にフィットした役割にコミットしたいというものが多いですね。

実際に、私の部門から異動していったメンバーもいます。当然、人が抜けてしまうことでの痛手がない訳ではありません。

ただ、会社全体として「本人が異動することで、よりパフォ-マンスが上がるのであれば、それはチームDeNAとして喜ばしいことではないか」というベースの思想があり、本人のキャリアや、会社の成長を考えて、後押ししたい気持ちです。

また、現部署の人員が減ってしまうという点については、異動するまでの期間を最大6ヶ月として、その間に代わりの人材を調整するという対応をとっています。

結果的に、この制度を開始してからの約3ヶ月で、既に20件を超える異動が決まっています。

その中には私の所属するHR本部から新規事業チームや経営企画への異動や、逆に営業部署からHR本部への異動も含まれます。

結果的に異動が実現せずとも、キャリアを考えるきっかけを生む

また、異動によってチャレンジを促進すること以外にも、社員自身がキャリアを真剣に考え直すきっかけを生む効果もあります。

実際にあったのが、入社以来、同じ部署で働いていた新卒の社員に、複数の部署から「うちでやらないか?」と声がかかったんです。本人は悩んでいて、第三者的な立場である私のところに相談が来ました。

そこで、今までやってきたことを振り返り、今後のキャリアについて話した結果、本人はすっきりと、今の部署に残ってマネージャーを目指すという決断をしました。

ここでキャリアを転じるよりも、まだ課題の残る今の組織の強化にコミットすることが、将来の自分のキャリアのためにも重要だと考えたようです。その後の様子を見ていますが、一段ギアがあがった印象を受けますね。

また、実際に異動した社員から、「この制度がなかったら、多分、あと何年か同じことをずるずるとやっていたと思います。シェイクハンズをきっかけに、自分のやりたいチャレンジが見つかりました」という声もありました。

このように、それまでは少し埋もれていたメンバーがポジションを変えることでより輝くのは、本当にうれしいことだと思っています。

また、双方の合意を伴って異動が成立しているため、本人だけでなく、受け入れ側も育成にコミットするというのも大切なポイントです。

さらに、シェイクハンズを活用するしないに関わらず、メンバーとマネージャーが触れる時間は伸びていると思います。

1on1や評価面談の際に、今まで以上にマネージャーと本人がキャリアについて一緒に考えるようになっていることは、とても嬉しい変化です。

マネージャー向けに、実名での360度フィードバックを実施

また、人材の能力を活かすためには、近くにいるマネージャーが部下の伸びしろを引き上げられることが重要です。

そのため、今年の7月から全社約130名のマネージャー向けに、360度フィードバックを始めました。

弊社では、今期のマネージャー強化の重要テーマとして「レバレッジ」「@ピープルケア」をあげており、これに必要な要件として「ゴールを示す」「適切に任せる」「支援する」「結果を出す」「インテグリティ(※)が高い」の5つを定義しています。

※誠実さ、真摯さなどを表す言葉

そして、それぞれの実践度合いについて、コメント付でマネージャーは評価されます。

▼実際のフィードバックシート


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例えば、「プレイングばかりしていて、あまり見てくれない」「忙しいのは分かるが、背景説明が足りない」「個人の力量や思いを理解できているのか」といった声が上がったりします。

また、思ったことを清々しくダイレクトに伝えるために、全て記名式で行っています。誰からのフィードバックかがわかった方が、その後にコミュニケーションをとって改善をしやすいですよね。

この結果を踏まえて、マネージャーが部下を集めたディスカッションを行い、課題点や改善策の認識を合わせたりしています。中には、改善のコミットメントを宣言しているマネージャーもいますね。

この取り組みをより意義あるものにすべく、マネージャー間でフィードバックの活用法を話しあったり、実際に改善して、周囲からの評価が上がったマネージャーのインタビューを社内報に掲載したりしています。

副業制度、複数部署に所属できるクロスジョブ制度もスタート

また、シェイクハンズ以外にも、10月から「副業制度」をスタートさせました。事前に開催した説明会には約100名の社員が参加しており、既に30件を超える申請があります。

さらに、社内で他の事業部の役割に従事できる「クロスジョブ制度」も開始しました。

これらの取り組みはまだ始まったばかりですが、今後、社員のやりがいやパフォーマンスなども踏まえて、施策の効果検証を行う予定です。

フルスイングの中でスタートする制度は、思い切った施策だからこそリスクも伴うかもしれませんが、しっかりモニタリングをして、必要であれば柔軟にチューニングをしながら運用していこうと考えています。

今後はフィードバックの仕組み、チームワーク、オフィス環境、心身の健康など、よりトータルでいろんな打ち手を打っていきたいですね。

そして、全ての社員がやりがいをもって働き、能力を最大限に活かし、フルスイングできるような組織を作っていきたいと考えています。(了)

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