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オンボーディングに「奇策」なし。仕組みとハートを両立させる、アカツキの取り組み

〜受け入れ計画の作成と情報共有の体制を強化し、トレーナーのコミットで確実に戦力化!アカツキの「ハートドリブン」なオンボーディングとは〜

即戦力を期待されて入った中途メンバーを、思っていたように立ち上げることができない…といった経験はないだろうか。

モバイルゲーム事業を中心に、エンタメ領域で様々なサービスを展開する株式会社アカツキでも、期待値の掛け違いや文化への適合不足、現場のサポート不足により、中途社員をうまく立ち上げることができない、といった課題があったという。

そこで、オンボーディングの改善に着手。具体的には、受け入れ資料の作成をルール化して期待値を言語化し、人事・事業部(職能GM)・トレーナー間の情報連携の体制を構築。

さらに、日々のマネジメントにおいても「メンバーと徹底的に向き合う覚悟があるか」を大切にすることで、より高い意識を持ったマネジメントを実現している。

同社で企画の職能GMを務める菅 隆一さんは、「オンボーディングには、誰もが驚くような革新的な取り組みはない」と語る。

今回は菅さんと、同じくオンボーディングを担当する磯原 浩二さんに、アカツキの「ハートドリブン」なオンボーディングについて詳しくお伺いした。

職能組織に「人事の権限」を持たせる、アカツキの組織体制

 私は、複数のIT企業を経て、2018年2月にアカツキに入社しました。いまは企画職を統括する立場として、企画部長とHRBPを兼任しています。

現在、全社の従業員数は800名を超えており、ゲーム事業部では縦のプロジェクトと横の職能を組み合わせた、マトリクス型の組織体制になっています。

メンバーは普段、各プロジェクトチームで業務をしていますが、それを職能の面から横串でサポートし、あらゆる組織課題を解決することが職能組織の役割です。

その職能GMとして、私は現在、中途採用やオンボーディング、人材育成、評価制度の設計まで、様々な業務を人事とともに行っています。

磯原 私も現在、菅と同じような役割を担っていますが、どちらかというとやや現場寄りです。もともとガラケーサイトのディレクターをやっていたのですが、部署異動がきっかけで、当時黎明期だったソーシャルゲーム事業に携わることになりました。

未経験からプランナーを担当して、時代の変化とともにキャリアを歩んできた感じで。その知見を若いメンバーに伝えていきたいという想いがあり、2019年2月にアカツキに入社しました。

 磯原とは以前、同じ会社で働いていたことがあるのですが、そこで社員数名のベンチャーが1,000人を超える組織へと成長する過程をともに経験したんですね。

会社がうまくいかなくなる瞬間を見てきた中で、今度は自分たちが良い組織を創る側に回っていかなければと強く感じていました。

即戦力の人材を、うまく立ち上げることができない…その理由とは?

 私が入社した当時、組織が少しずつ拡大する中で、即戦力を期待されたミドル・ハイレイヤーの採用が全社的に増えていました。

しかし、入社後のフォローが十分でなく、うまく立ち上げられていない…という課題があって。特に大きな要素が、期待値の掛け違いと、文化への適合不足でした。

たとえば、面接時の情報が十分に現場で共有できておらず、受け入れ先で適切な期待値を設定できなかったり、前職との環境の違いを認識できておらず、早期に過度な自走を求め過ぎてしまったり。

そこで取り組んだのが、オンボーディングの強化です。まずは自分が現場のトレーナーを担当する際に、受け入れ資料を作り込むことから始めて、磯原と一緒に仕組み化を進めていきました。

具体的には、それまでのオンボーディング施策を整理した上で、情報共有の体制づくりと、受け入れ計画の策定を大きくアップデートしました。また、改善のPDCAを回せるように、定点観測のヒアリングを一連のフローに組み込みました。

▼一連のオンボーディングフロー

磯原 アカツキでは、採用の書類選考から職能のメンバーが関わっていて、オンボーディングも現場主導で進めています。

たとえば企画職は、医者が眼科なのか内科なのかで必要な経験や専門性が異なるのと同様に、どのようなタイトルで、どの事業フェーズで、企画のどこに関わっていたのか、によって強みが全く違うんです。

なので当然、プロジェクトによって欲しい人材も異なりますし、入社した後の期待値設定やサポートの仕方も様々です。採用からオンボーディングまで、一気通貫して設計することは大切だと思います。

受け入れ計画のフォーマットを統一し、期待値のズレを防ぐ

 受け入れにあたっては、現場のトレーナーが必ず受け入れ資料を作成しています。以前も、企画職能が受け入れ計画をつくってはいたのですが、人によっては「半年後には立ち上がるように進めていきます」くらいで、質も量もバラバラでした。

そこで今年から、私が個人で作成していた受け入れ資料を共通フォーマット化し、トレーナー全員が作成することにしました。

この資料の冒頭には、トレーニーにどのような期待をしているかについて、願いや感情を込めて文章を書いています。

▼実際の受け入れ資料(一部)

というのも、トレーニーやトレーナーが今後迷ったり悩んだりした時に立ち戻れる「原点」になるようなものにできたらと思っていて。会社としてハートドリブンを掲げているので、人の感情に寄り添い、支えることを大切にしたいと考えています。

加えて、3ヶ月間のオンボーディングプログラム終了時に到達していたい理想の状態を定め、1ヶ月ごとのマイルストーン目標を設定し、その到達条件や必要なアクションなどを記載しています。

▼マイルストーンの資料(資料を参考に編集部で作成)

資料の作成はトレーナーに任せていますが、必ず僕も目を通すようにしています。言語化の度合いなど、受け入れ資料の水準が下がらないように気をつけていますね。

関係者のレイヤーごとに場を設け、情報連携の溝を埋める

 さらに、個々の受け入れ計画だけでなく、組織としてフォローアップすることも大切です。そこで、人事、事業本部長、職能GM、トレーナー、トレーニー間の情報共有の仕組みを整えました。

具体的には、隔週で行う「職能定例」という会議で、事業本部長と職能GMが定期的に話し合う場を設けたり、Slackのトレーナーチャンネルで職能GMとトレーナー間でお互いのトレーニーの話を共有したりして、各役割が連携を密にし、スムーズに情報共有できる体制をつくりました。

▼オンボーディングを支える情報連携の体制

関係者によって場を設けると同時に、人事とすべての情報を接続することで、なにかあれば必要なサポートができる状態にしています。

磯原 他にも、トレーニーごとにオンボーディング用のSlackチャンネルをつくり、関係するメンバー全員を招待して、困ったことや異常がないかをキャッチアップできるようにしています。

また、トレーナーとトレーニー間では、任意の頻度で1on1を行っています。ここでは、当初の計画通りに進んでいるか、といった目標に向けたすり合わせをしたり、場合によっては適切な人にティーチングを依頼したりすることで、つまずきを取り除いています。

マネージャーの資格は「メンバーと徹底的に向き合う覚悟」があるか

 オンボーディングがきちんとできなかった時のインパクトって、かなりのコストを投じて採用した人が、次々と辞めていくことなんですよね。

弊社では作品を作ることのできる人を「バッター」と呼んでいるのですが、優秀なバッターでも、新しい文化に適合するのに時間がかかるケースってあると思うんです。なので、バッターがしっかりと打席に立てるようになるまでは、自分たちが責任を持つべきだと思っています。

磯原 私も同感で、適材適所に人を配置することの重要性を感じましたね。

仮に期待していたように立ち上げられていなかったとしても、1人ひとりと向き合って、チームの課題と本人のWillと強みをすり合わせながら、配置やキャリアの方向性を調整する。そうして伴走していくのが、私たちの使命だと思っています。

 私はオンボーディングにおいて、誰もが驚くような革新的な取り組みってそうそうないと思っていて。 仕組みを用意するだけでなく、現場の受け入れをフォローし、バトンを渡す風土を作る。そして、トレーナーの覚悟も大事です。

結局、毎週状況を確認しながら、1つひとつ改善して力をつけていくしかないんです。スナップショットのような、瞬間的な良さではダメだと思っています。

なので、マネージャーには「メンバーと徹底的に向き合う覚悟」を求めています。マネジメントは、そういう覚悟のない人が中途半端にやっていい仕事ではない。実際に、受け入れ資料にトレーナーの魂が入っていないと感じたら、それを指摘してやり直してもらうこともありますね。

トレーナーのできる人材を増やし、マネジメントを強化したい

 オンボーディングの施策は、現場の声を聞きながら、今後も改善を続けていきます。新たな試みのひとつとして、現場側が運用を始めてくれたのが「クエストスタンプラリー」です。

▼クエストスタンプラリー

磯原 これは、入社時のオフィス探検や自己紹介、目標設定など、オンボーディングのステップをスタンプラリーにしたもので、スタンプを集めると自社グッズがもらえる仕掛けになっています。

アカツキはやはりエンタメ企業なので、ゲーム性やデザインを通じてそのエンタメ性を伝えたいなと。「ここには〇〇があります」とただ案内するのではなく、トレーナーが一緒に探検するような形にすることで、わくわく感を持っていただけたらと思っています。

実際にスタンプラリーを体験した人からは「色々考えてくれていることが伝わる」という声があったり、トレーナーとトレーニー双方が、相手に対する向き合い方を考える時間を確保できたことが、一番の収穫かなと思っています。

 今後は、職能組織をさらに強化していきたいですね。事業の成長に合わせて、組織をサポートする体制も同じように成長しないといけない。今はその人材が足りていないので、採用にも力を入れていきたいと思っています。

磯原 私は、トレーナーを担うことができる人を社内で育てていきたいなと思っています。トレーニーを経験した人が、トレーナーの立場となって受け継いでくれるものもありますが、それだけでは適切なマネジメントは難しいと思うんです。

なので、外部研修なども取り入れつつ、今後さらにトレーナーの育成を強化していきたいですね。(了)

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