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「順調に成長中」の新卒が25%→67%に。セールス・イネーブルメントによる育成改革の全貌

株式会社 BuySell Technologies

テクノロジーの導入や教育の整備などを通じて営業組織を強くする「セールス・イネーブルメント」。日本国内でも導入企業が増加する中、新卒メンバーの「成長の個人差」にアプローチし、大きな成果を上げた企業がある。

出張訪問買取「バイセル」等を運営する株式会社 BuySell Technologiesは、2017年末にセールス・イネーブルメントのプロジェクトを立ち上げ。営業データの収集から重要指標の可視化、評価の整備などを行ってきた。

そして2021年からは、新卒の査定員(※お客様の自宅に訪問し、買取査定を行う役割)の教育方法を、従来の「配属エリア別」から「成長タイプ別」に一新。「A:順調成長/B:アップダウンあり/C:伸び悩み」という成長タイプを規定し、それぞれに対して異なる教育施策を実施してきた。

結果、2020年入社の新卒査定員54名の中で、Aタイプの比率が3ヶ月間で24.5%から67.4%まで上昇。加えて、新卒査定員の営業成績が例年より大幅に改善し、第1四半期の営業利益に対して2,000万円の貢献につながったという。

同社でセールスイネーブルメント部長を務める久保 裕さんは、「人の成長は1人ひとり違う。置いてけぼりの人を作らずに全員が少しずつでも成長していくために、それぞれに合った教育を提供することが重要」と話す。

今回は久保さんと、同部データマネジメント課で課長を務める山下 力三さんに、データを活用した新卒育成の取り組みについて、詳しくお話を伺った。

年間20万件の「訪問買取」を行うリユース事業を展開

久保 BuySell Technologies(以下、バイセル)は、売りたい人と買いたい人をつなぐ、リユース事業を展開しています。私は現在、セールスイネーブルメント部の部長として、教育やデータ分析を通じて営業戦略を立案する業務を担っています。

前職では中古車販売の営業をしておりまして、そのときにバイセルと出会い、2014年に転職しました。

昨今、SDGsに代表されるように、環境問題に対する関心がより高まっていますよね。一方で、経済が成長すればするほどモノは生産されていきますから、それらを再利用につなげるリユース事業は、社会貢献性も高く、かつ世界最大のマーケットになる可能性を持っていると考えています。

弊社では訪問や宅配、またアプリなど、多様な商品買取のチャンネルを用意していますが、オフライン対面型の出張訪問のご依頼が最も多く、年間約20万件に上ります。商材としては着物や切手が多いのですが、販売先の約9割が法人であることが特徴です。

▼【左】山下さん 【右】久保さん

株式会社 BuySell Technologies

山下 私は2016年6月にバイセルに入社し、最初はお客様のところに訪問して買取を行う査定員をしていました。その後、営業企画を経て、2017年の下期にスタートした「イネーブルプロジェクト」にアサインいただき、そこから活動を続けてきた形になります。

現在担当している業務は、一言でいうとデータ分析です。例えば「どんな教育を受けたら、どのくらい営業の成果が上がるのか」といったことを分析し、担当者や責任者にレポーティングしています。また、データ的な観点から教育コンテンツの質の検証を行い、意見を出すような立場でもあります。

毎年60名以上が入社する「新卒査定員」の成長スピードが重要

久保 弊社には現在、子会社を含めると1,000名近くが在籍していますが、そのうちおよそ約300名が営業部です。弊社における営業部は、商品を売却してくださるお客様に向いた組織であり、実際に訪問買取を行います。

セールスイネーブルメント部は、この営業部の活動全般に対して、事業の成長に有効な戦略を生み出し、実行することをミッションとしています。

現在14名が所属していますが、チームは大きく3つに分かれています。まずは、営業マンである査定員への教育を行うトレーニング課、次にデータ分析を行うデータマネジメント課、最後に査定に必要な知識を体系立てツールとして提供するプロダクト課です。

山下 イネーブルプロジェクトが始まった当時は、営業におけるデジタル化が全く進んでおらず、営業実績のようなすべての情報をExcelで管理している状態でした。

そこでまずは、きちんとデータを取れるように環境を整備して、全員が見るべき数字について目線を合わせるための体系化を行っていきました。実際にデータを見ながら改善することが社内に浸透するまで、1年ほどはかかったと思います。

こうして重要な数値を可視化しながら、もともとあった「査定員の教育の仕組みが属人化している」という課題に対しても施策を行ってきました。

株式会社 BuySell Technologies

久保 セールス・イネーブルメントは「営業組織をより良くしていく活動全般」と捉えていますが、その中でも弊社がいま特に重視しているのが、新卒査定員の教育です。

査定員は、事業における重要な役割を担っているのですが、毎年60〜70名ほどの新入社員を迎えるんですね。従って、新卒査定員の成長スピードが少しでも速くなることが会社にとって非常に重要です。

査定員に必要なスキルを可視化し、定量評価で「成長タイプ」を分類

山下 以前の新卒査定員の教育は、地域によって担当を分けて取り組む形になっていて、あまりデータを活かしている…とは言えない状態でした。

そこで2021年に久保部長が入ってきたタイミングから、地域ではなく「成長タイプ」によってグループを分けていくことにしたのが、まずは大きく変わったところです。

今回対象としたのは、2020年4月入社の新卒査定員54名です。まずは過去のデータをもとに、「A:順調成長/B:アップダウンあり/C:伸び悩み」といった成長タイプの基準を作成しました。

▼成長タイプの基準

成長タイプ

そしてその後3ヶ月にわたり、各メンバーがどのタイプに該当しているかを毎月分類していきました。

成長タイプの診断においてまず活用したのが、ロープレや実際の査定の場で使う「評価シート」です。査定の流れを定義した「営業骨子」に沿って、項目ごとに、自己評価と上長や先輩といった評価者からの他者評価を記載します。

▼実際のロープレの様子

ロープレ

例えば、信頼関係を構築する「アプローチ」のフェーズでは、「マナー」「アイスブレイク」「声がけ」などの項目があり、それぞれに「◯・△・✕」で評価をつけます。その合計で、評点が算出される形です。

▼「評価シート」のイメージ(※同社提供の情報を元に、簡略化したものを編集部が作成)

評価シート

かなり細かいのですが、この営業骨子を可視化したことで、教育だけではなく商談の流れや必要なスキルを理解することにもつながっています。

この評価シートでは「技術面」を見ますが、加えて、実際の営業成績や、マナーやモチベーション等を含む精神面を踏まえて、担当イネーブル(トレーナー)が月に一度、ABCのグループ分けを行いました。

その上で、成長タイプごとに異なる教育施策を行っていった…という形になります。

成長タイプごとに教育を変え、「順調成長タイプ」比率が2.7倍に

山下 成長タイプごとに教育を変えるのは初めての試みだったので、最初はそれぞれのタイプごとにベストな教育は何か、仮説検証を繰り返していましたね。

久保 そもそも人の成長って、1人ひとり違うじゃないですか。すごく短期間で伸びる人もいれば、起伏が激しかったり、もしくは全く伸びずに早期退職が懸念されてしまう人もいます。

以前は、教育の結果として「全体として順調に伸びている」という風に見えてしまっていましたが、実際は個々の査定員を分解して見ていくと、すごく成長している人も伸び悩む人もいて。本来は、全員が少しでも成長していくことが非常に重要だと思っています。

置いてけぼりの人を作らずに、1人ひとりに合った教育を提供したい。またできるだけ退職を出さないために、懸念があるメンバーは早期に引き上げておきたい。こうした背景から、成長タイプ別の教育の仕組みを取り入れることにしました。

山下 実際にどう教育を変えていたかというと、例えば「A:順調成長」のメンバーは右肩上がりに成長をしているので、その人数を減らさないように、1on1を行って各自の悩みに直接アプローチするという形をとっていました。

一方で「B:アップダウンあり」のメンバーは、成長やモチベーションを安定させることが必要になります。そこで顧客心理の理解や、メンタルマネジメント等を、それぞれを得意とする担当イネーブルから提供していきました。

最後に「C:伸び悩み」のメンバーは、まずは自己評価と他者評価を合わせるためのトレーニングや、足りないスキルの研修を行いました。中でも最も時間を割いたのが、評価の認識合わせですね。

久保 この「評価の認識合わせ」が、施策の中では一番インパクトがあったと思います。

先ほど紹介した評価シートを使って検証していく中で、「自己評価と他者評価が全然違うメンバーがいる」という気付きがありました。自分はできているつもりでも、人から見たらそうではない。これを、誰が見ても同じになるよう、感覚値を合わせていくためのコミュニケーションを行いました。

こうした取り組みを通じて「何人が成長して、それが業績にどのくらいインパクトを与えたか」ということが細かく可視化できるようになりました。

結果的には、1月と3月末で比較したときに、Aタイプの比率が24.5%から67.4%まで引き上がりました。また新卒査定員の営業成績も例年より大幅に改善し、第1四半期の業績に対して、およそ2,000万円の利益貢献につながりました。

今後は、さらに1人ひとりに寄り添った教育を提供していきたい

久保 今回の取り組みによって、会社としてもセールス・イネーブルメントの存在がより認められてきたかな、と感じています。また部内においても、これまで自分たちのやってきたことが正解がどうかわからない部分もあったので、成果が可視化されたことが自信につながりましたね。

バイセル様

山下 セールス・イネーブルメントの中でも教育に特化して、データを活用しながら集中して改善していく環境を作れたことで、部内のメンバーのパフォーマンスもどんどん上がっていったのかなと思います。

セールス・イネーブルメント自体、まだ日本では幅広く普及している言葉ではないと思うんですね。その中で、こうして発信する機会などをいただくことで、これまで蓄積してきたノウハウを全社的に共有することにもつながるのかなと感じています。

久保 これまでは営業部に向けて活動してきましたが、他の部署に対してもできることがたくさんあると思っています。事業の「買取サイド」全体にビジネス戦略の創出を行っていくために、今後はもっと積極的に動いていきたいですね。

また営業部に対しても、新しい取り組みとして、さらに個人に刺さる教育を提供していきたいと思っていて。例えば性格診断を行った上で、成長に合う教育を分析しつつ、1人ひとりの改善点を処方箋的に出していく…といったことが次のチャレンジです。

山下 個人の特性やこれまでの教育履歴、現状の課題などを一括で管理できるような、カルテのようなものを作りたいなと考えています。最初は営業部の新卒向けに展開していくと思いますが、ある程度の体系化ができたら、全社的に影響を与えるものにしていきたいですね。(了)

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