- 株式会社Cygames
- 広報チーム マネージャー
- 西尾 亮祐
全社2,600人の「カルチャー濃度」を保つ。社員主導で組織をアップデートし続ける方法
〜組織のカルチャーは「社員主導」で作り上げる。開発からバックオフィスまで、多様なメンバーが企業文化をアップデートし続ける「バージョンアップ委員会」の全貌〜
拡大する組織において、会社のカルチャーを薄めず隅々まで浸透させるためには、どのような打ち手が有効なのだろうか。
サイバーエージェントのグループ会社として2011年に創業し、「最高のコンテンツを作る会社」というビジョンの元、数々のヒット商品を生み出し続けている株式会社Cygames(以下、サイゲームス)。
現在、国内外に6拠点、2,600名を超えるスタッフを有する同社は、組織の拡大に伴って「会社が求めている水準ほどカルチャーが浸透していないのではないか」という懸念が生じていたという。
そこで、自社の組織文化の浸透を目的として2014年に立ち上がったのが「バージョンアップ委員会(以下、VUC)」だ。
その特徴は、開発からバックオフィスまで、幅広い職種のメンバーが半期ごとの完全交代制で集まる運営体制にある。現在は13期目を迎え、延べ130人ほどの社員が活動に参加してきたそうだ。
この社員主導の活動を継続するために、期ごとに注力する「テーマ」を決めて施策のマンネリ化を防ぐ、徹底的にクオリティを重視して参加メンバーの熱量を下げない、といった工夫を行っている。
今回は、第一期生としてVUCに参加した西尾さんに、その全貌について詳しくお伺いした。
組織が拡大しても、会社の方向性は「自分ごと」として考える
私は、2011年にサイバーエージェントに新卒で入社し、1年目からサイゲームスで勤務しています。現在は広報チームのマネージャーをしつつ、弊社運営メディア「Cygames Magazine」の編集長を務めています。
サイゲームスは2011年5月に5名で設立されましたが、この9年で約2,600名まで人員が拡大しています。
弊社は、創業当初から「最高のコンテンツを作る会社」というビジョンを大切にし、ゲーム作りをしてきました。
ですが、事業成長に合わせて組織が拡大してきた中で、新たにジョインするスタッフも増え、会社が期待している水準までカルチャーが浸透していないのではないか、という懸念がでてきたんです。
ユーザーに届けるクオリティに影響が出る前に、カルチャーの浸透を目的とした新しい取り組みを始める必要がありました。
また弊社の役員陣も現場のスタッフに対して、「会社の方向性を、自分ごととして考えてほしい」という思いを持っていたんですね。
そこで2014年に設置されたのが「バージョンアップ委員会(VUC)」です。
私は2014年4月に、第1期の委員長としてVUCの活動に参加しました。現在は13期目を迎えており、累計で130名ほどのメンバーがこの活動に参加しています。
「カルチャー浸透」をメインに、組織の一体感も醸成する
VUCは半年を任期として、完全交代制になっています。これは、様々なメンバーにカルチャー浸透を担ってもらいたい、という考えがあるからです。
実際、ゲームプランナーやデザイナーといった開発サイドから、人事や総務といったバックオフィスまで、幅広い職種のメンバーが毎回集まっていますね。
普段の業務ではあまり関わらない人と交流する機会にもなるので、任期満了時には参加メンバーが後任者を1名推薦する形で、なるべく部署や職種が被らないようにしています。
また任期中の半年間は、工数の10%〜20%ほどをVUCに使うことになるので、メンバーの選出にあたっては、事前に前任者が後任に推薦するスタッフの上長と話し合った上で、本人の希望も踏まえて参加するかどうかを決定します。
メンバーが決まると、キックオフとしてその期で何をテーマに取り組むかを話し合い、具体的な施策を考えます。その後、社長へのプレゼンテーションを行って、承認された案を実行に移します。
VUCは元々「カルチャー浸透」を目的としていましたが、代を重ねるにつれ、取り組みの幅が広がってきています。最近では、組織の一体感の醸成や、社内の環境整備といったような活動も増えていますね。
たとえば、サイゲームスの歩みをまとめた年表「ヒストリア」を作成する施策や、廃棄処分となる予定だった傘を「貸し傘」として貸し出す施策、球技大会や書き初めなどの季節イベントも実施され、これらは代をまたいで受け継がれる恒例の施策になっています。
▼七夕イベントの際の、同社のSlackの様子
社員が増えてくると、なかなか社長の想いに直接触れる機会って少なくなりますよね。ですがVUCでは、メンバーのみが集まる定例ミーティングに加え、社長とのランチミーティングも週1で開かれるので、会社が大切にしていることを直接感じられる良い機会にもなっていると思います。
活動のテーマを「2つの方法」で設定し、マンネリ化を防ぐ
こうしてVUCの活動自体がカルチャーになってきた一方で、代を追うごとに新しい案を出すのが難しくなってきて。「この案、過去にも似たようなものがあったよね」ということも増えてきました。
そこで現在は、期ごとに明確なテーマを設定し、そのテーマに関することに集中して取り組むようにしています。
その設定としては、主に2つの方法があります。ひとつは、全社総会で、社長から発表される全社目標に紐付く形で決める場合です。
例えば2020年の前期には、「スマホでもCygames!コンシューマーでもCygames!」という全社目標が発表され、それがVUCのテーマにもなっていました。これまでの主力であったスマートフォン事業だけでなく、会社としての新たな展開であるコンシューマー事業の両方を伸ばそうという方針です。
このテーマに沿ったVUCの施策として、それぞれの事業領域の代表者に対談をしてもらい、社内報に記事を掲載することで、テーマに対する理解を深めてもらうという取り組みが行われました。
もうひとつは、VUCメンバーが自ら感じた課題感を元にテーマを設定する場合です。第9期は「会社のことをよく知らないメンバーに対して、いかに会社のことを理解してもらうか?」という課題感から「What’s Cygames?」というテーマを設定していました。
当時の代表的な施策としては、社員が社長に聞きたいことをVUCが取りまとめ、回答を記事にして社内報で公開するというものです。この取り組みは、「普段、なかなか聞きづらい会社に関することを聞くことができてよかった」と社内でも好評でしたね。
熱量を上げるため、プロとして「クオリティ」に妥協しない
また、こうした活動は「社内のメンバーをいかに巻き込むか」が難しいところだと思います。その工夫のひとつは、メンバーを毎期総入れ替えすることが挙げられますが、もうひとつはクオリティに妥協しない、ということですね。
たとえば7期目から毎期恒例で実施されている施策で、社内限定のShadowverse(※)の大会「VUC Shadowverse Premier Cup」というものがあるのですが、優勝者には優勝カップが贈られます。
※同社より配信されているスマートフォン・
▼「VUC Shadowverse Premier Cup」で実際に贈られる優勝カップ
また、VUC発足時と任期満了時に、社内周知のためのポスターを作成するのですが、これもデザイナーの力を借りて本格的なものを制作しています。
さらに、代ごとの活動内容を社内報で公開したり、VUC専用の告知チャンネルをSlackに設けるなどして、VUCが社員の目に触れる機会を多く作っていることも、社内を盛り上げるきっかけになっていると思います。
弊社では、ユーザーの方々に「次はどんなことをしてくれるだろう」という期待感を持っていただくことを大切にしながら、日々お届けするコンテンツのクオリティを高めているので、「クオリティ」に対する目は元々とても厳しいところがあります。
そのため、VUCは社内向けの施策ではありますが、メンバーは各々の得意分野をもって全力で取り組んでいます。そういった施策を行う側の姿勢が、各施策における参加者の満足度を高く継続できている秘訣かもしれません。
社内で色濃くなっているカルチャーを、社外にも発信していきたい
こうしたVUCの活動などによって、弊社のカルチャーや会社が大切にしていることが社内全体に浸透してきているというのは強く感じます。
球技大会や季節イベントなどの各種施策に参加するスタッフも徐々に増えており、会社全体の一体感が高まっているなと、私自身感じています。
VUCの活動以外にも、「会社が大切にしていること」を朝会や昼会でマネージャーから共有することを推奨していたり、全社総会でも新卒メンバーが一体感を醸成するように準備に力を入れていたりと、カルチャーを浸透させるための工夫は至る所で行われています。
一方で、社外への発信ができているかというと、まだまだ足りないなと思っています。
今後は「Cygames Magazine」などを通じて、サイゲームスの社員がどんな想いでプロダクトを作っているのかを、より社外に向けて発信していきたいと思っています。(了)