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  • 人事部長 シニアマネージャー
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人事は組織の「プロマネ」。社員の8割がサイドプロジェクトを推進する自律型組織とは

〜「組織貢献」を正しく評価するには? 社員1人ひとりが自発的に会社の課題に向き合う組織づくりを紹介〜

昨今、ティール組織やホラクラシーなど、自律分散型の組織への関心が高まっている。

その中で、「全員で経営する」といったスローガンを掲げ、社員に対して組織貢献を求める企業も多くなっているが、それを実行する難易度は高い。

ピアボーナスサービスの「Unipos(ユニポス)」など、広告事業やSaaS領域で複数のサービスを展開する、Fringe81株式会社。

同社では社員のおよそ8割が、現在20以上存在するサイドプロジェクトに主体的に参加し、組織を改善する活動を行っているという。

そしてこの仕組みを支えているのが、「組織貢献」を評価に組み込む人事制度と、入社前後のコミュニケーションを通じたカルチャー醸成だという。

今回は、同社の人事部長を務める浦川 雄志さんに、人事の役割から、ハード・ソフト両面から支える社員主導の組織作りまで、詳しくお伺いした。

人事の役割は、現場と経営を相互に「翻訳」すること

私は、2013年に新卒で入社し、現在6年目になります。最初の4年ほどはWebマーケティング領域に携わり、2017年4月に人事部を立ち上げたタイミングで、人事部長に就任しました。

私が入社した当時はまだ30名足らずの組織だったのですが、人事を立ち上げた頃には140名ほどに増えていて。

ただ、弊社にはそれまで「採用チーム」はあっても、組織周りを含めた「人事」がいない状態だったんです。

そのため、現場で何かしらの問題が起こった時には、基本的に役員やシニアマネージャーがその課題に対して対策を打っていました。

ですが、今後の組織拡大を見据えて専任を作ろうということで、私ともうひとりの2名で人事部を立ち上げました。

当時、経営から最初に課せられた人事のミッションは、「現場と経営の翻訳をしてくれ」という、かなりふんわりしたものだったんです。

そこで「翻訳」の意味って何だろう、と自分でかみ砕いていった時に、現場で起きている事象から組織の課題を特定して、それを経営に伝えることなのかな、と。

また、それを人事がどうにかするのではなく、「解決するにはどうすればよいか?」という問いを全社に投げかけることが、人事の役割だと考えました。

そこで弊社では、この「現場主導でプロジェクトを動かし、全員で組織を良くしていく」という考えをもとに、組織運営を行っています。

プロジェクト数は20以上!採用から教育研修、福利厚生まで

現在、採用から教育研修、福利厚生まで、全社で20以上のサイドプロジェクトが存在しています。

すべて任意の活動ですが、全社員のおよそ8割が何かしらのプロジェクトに携わっており、なかには3つほどプロジェクトを兼務している人もいますね。

▼オフィスのあらゆる場所で、プロジェクトの打合せが行われている

各プロジェクトは、基本的に人事からの投げかけでスタートします。

Slackの全社チャネルで「全社でこういう課題があると思うので、それに対して一緒に考えてくれる人は手を挙げてください!」といった感じで公募するんです。

毎週の全社会議の場を利用して、直接の呼びかけも行っています。

すると、その課題を解決したいメンバーが自発的に集まってきます。これまでに立ち上がったプロジェクトの例を挙げると、研修制度から受付フローの改善、社員食堂の設立まで様々です。

一方で、人事からの投げかけではなく、現場のメンバーが業務の中で感じた課題に取り組んでいく、というパターンもあります。

例えば採用活動の改善は、その代表例です。Webマーケを担当するメンバーが採用に携わると、採用プロセスを改善したくなっちゃうみたいなんですよね(笑)。

なぜなら採用とWebマーケティングって、そのプロセスに似通ったところがあるんです。

実際に採用ステップごとのデータを集計して、「数字を改善するために募集の文言をこういう風に変えよう」とか、「担当しているメンバーごとに通過率が違うからこうしよう」といった改善案をくれましたね。

人事は「プロマネ」として、進捗管理とファシリテーションを行う

このように、プロジェクトは社員主導で推進されていますが、その管理は人事が担当しています。

いわば、人事は「プロジェクトマネージャー」のような立ち位置で関わるんです。

各プロジェクトで行われる会議には、基本的に人事が出席することはありません。

その代わりに、日々のやり取りや会議の内容は、チャットツールのSlackや、ドキュメント共有ツールのOneTeam上で確認しているので、状況の把握に困ることはありませんね。

また、その進捗はスプレッドシートで管理し、「緊急度」「重要度」の2軸で、全社的に優先順位の高いものから取り組んでいます。

その中で進捗が思わしくないな、と思われるプロジェクトがあれば、私の方から声がけをしています。

例えば、具体的なスケジュールやタスクが決まっていない場合には、「これって今何がto doになっているんですか?」とSlackでメッセージを送ったり。

また、議論しているようで何も議論されていないような場合には、「そもそもの議論の目的って何でしたっけ?」とオンライン上で投げかけています。

一方で、ブレーキ的な役割も、プロジェクトマネージャーの仕事です。

例えば、主業務の仕事とサイドプロジェクトの活動のバランスを、私が間に入って調整することもあります。

各部署のマネージャーとプロジェクトリーダーと相談して、「今営業に力を入れないといけないので、少し〇〇さんの負荷を下げられないか?」といったことを話すような感じですね。

見えづらい「組織貢献」の活動を可視化し、評価制度に組み込む

こうした活動は任意ではありますが、「組織貢献」という軸できちんと評価される仕組みになっています。

そのため、上長とメンバーとの月イチ面談の中でも、主業務だけでなく、「組織貢献」に対する目標も設定するようにしています。

▼実際の、目標管理シートの一部(項目のひとつに、「組織貢献目標」がある)

また、この仕組みが機能する前提には、上司がメンバーの自部署以外の仕事をキャッチアップできる仕組みが必要です。

というのも、プロジェクトが乱立してしまうことの弊害は、「レポートラインの上司から、何をやっているのかが見えづらくなる」ということだと思っていて。

なので、弊社の場合はUniposという自社サービスを活用して、見えづらい行動を拾えるようにしています。

▼実際に、Uniposでやり取りしている様子

そうすれば、主業務以外の活躍に対する第三者からの評価ログが溜まるので、組織貢献の活動を可視化することができます。

また、そのレベル感については、弊社のグレード制度に紐付けて評価を行っています。

G1、G2、G3、G4の4段階に分かれているのですが、例えばG1のメンバーが、G2の人がやるべきレベルのことにチャレンジしていたら、高く評価するような形ですね。

メッセージを強く発信し続けることで、組織貢献の文化を浸透

こうした動きが実現できているのは、評価の仕組みだけでなく、私たちが持っている「会社の在り方」の価値観がベースにあると考えています。

私たちは、一般的な「雇う・雇われる」という従属関係みたいな会社ではなくて、「お互いに価値を提供し合うフェアな関係」で成り立つ会社が素敵だよね、という考え方を根底に持っています。

採用の時にも、このあたりのメッセージはめちゃくちゃ強く投げていますね。

最初の会社紹介の時から、「弊社は実務領域で成果を出すだけではなく、+αの組織貢献も合わせて評価する会社です。それでも良かったら握手しましょう」という風に伝えています。

また社内に対しても、同様のメッセージを継続して伝えるようにしていて。

組織貢献に取り組んでいる人達にフォーカスした情報発信を、私から意図的にしています。

例えば、全社会議で少しだけ時間をもらって、「今このプロジェクトで、こういう人達がすごく活躍しています!」といったことも毎週話すようにしています。

ですが一方で、弊社は自律性をすごく大事にしているので、押しつけにはならないように気をつけていますね。

これらの様々なシーンでのメッセージを通して、「自分も手を挙げてみようかな」と思ってもらうきっかけになればいいな、と考えています。

プロマネスキルを伸ばし、より「機会」を提供できる人事に

今後は人事として、メンバーが「そのプロジェクト、やりたいです!」と手を挙げてもらえる機会を、もっと提示できるようになっていきたいなと思っています。

異なる部署で起きている異なる課題も、根本的には同じ課題に集約されることもありますよね。

それが表面的な対処療法になってしまうと、元も子もないと思うんです。

なので、現場で起きている個別の課題をちゃんと吸い上げて、そこから問題を抽象化し、どれだけ提案の機会を作れるか、ということが、全社を俯瞰して見ている人事としての大きなチャレンジですね。

これから社員数が増えていくことを鑑みると、機会の数がもっと多くないと「全員が組織貢献をしましょう」という考えに対応できなくなる可能性もあります。

なので、自分のプロジェクトマネジメントのスキルもさらに高めて、より良い機会をもっとたくさん社内に提供できるようにしていきたいです。(了)

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当媒体SELECKでは、これまで600社以上の課題解決の事例を発信してきました。

その取材を通して、自律的な成長を促す「伴走型のマネジメント」が、組織づくりにおいて重要であるという傾向を発見しました。

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