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フォントはユーザーコミュニケーション!「Simeji」デザイナーのWebフォント活用法

今回のソリューション:【TypeSquare / タイプスクエア】
「Simeji(シメジ)」は、現在までに累計1,400万人以上がダウンロードしている無料の日本語文字入力アプリ(IME)だ。
そのプロダクトの初期から開発者・デザイナーを務め、Simejiの事業売却と共に中国のBaidu(バイドゥ)にジョインしたのが矢野 りんさん。現在は同社日本法人のプロダクト事業部でデザイナーを務めている。
同社が2015年3月に発売した「Simeji Pro」は、Simejiの有料版となるアプリだ。よりビジネスニーズにもマッチするような変換精度を持たせたことで、長文入力でもスムーズな変換が可能になったという。
矢野さんは、Simeji Proの開発にあたって無料版との差別化を行うブランディングのひとつとして、株式会社モリサワが提供するWebフォントの「TypeSquare(タイプスクエア)」を使用した。
今回は、TypeSquareによって実現された新しい価値と、今後のSimejiで描く未来についてお伺いした。

Androidアプリ「Simeji」の開発者 現在はBaiduでデザイナーを務める

Baiduに入る前は、フリーのデザイナーとしてWebサイトの制作やアプリの開発などをしていました。
同時並行で、趣味でSimejiというAndroid向けのIMEを作っていまして。日本にAndroidが上陸した時に、開発者が、日本語が入力できないのは不便だね、ということで作って。
彼はエンジニアなので、デザインのセンスがいまひとつで(笑)。ぱっと見理解しやすいようにアイコンを可愛くするとか、ロゴにするだとか、手伝いをするようになりました。
ユーザー数がそこそこ増えてきた3年ほど前に、BaiduからSimejiを買いたいという話があって、いい機会だし組織としても興味深いのでディールしてみよう、と。

そのタイミングの2011年12月から、Baiduでデザイナーとして働いています。こちらでは最初からSimejiのチームがしっかりとできていて、それでビジネスというのはこういうものかと知りました(笑)。

日中合同の20名のチームで、Simejiを運用

今のチーム体制は、iOSも含めて日中合同で20人以上います。その中でデザインに携わっているのは8人なんですが、私が産休に入った時にある程度任せたのもあって、自立して働くことができるメンバーが揃っていると思います。
デザインチームは日本に3人、中国に5人ほどですね。担当領域で言うとUI中心の人と、Web中心の人、着せ替えなどの素材を描くメンバーがいます。
ちなみにBaidu本社にはデザイナーの肩書きを持つ人間だけでも200人ほどいて、それぞれの階級もしっかりしています。
デザイナーだからと言って、ただ絵だけ描いていればいいわけではなくて、上に行けば行くほど、ビジネスと設計のバランスをとらなくてはいけないというのもわかってきますよね。
そこを自覚的にやるような仕組みがしっかりできている組織かな、と思います。

以前から「モリサワパスポート」ユーザー

以前からモリサワパスポートという、自分のPCでモリサワさんの1,000弱のフォントが使えるサービスを利用していました。
それは購入するとディスクを送ってくれて、その中から必要なフォントをインストールする仕組みになっています。そのうちにモリサワさんにTypeSquareというWebフォント(※)もありますよ、という話を聞いて、2年ほど前に一度使ってみたんです。

でも、正直その時は微妙だと思ったんです。何より、表示される速度の遅さに驚いて。
TypeSquareのフォントを使ったページを見ようとすると、まず画面に普通のフォントで文字が出てきて、しばらく溜めがあって、そのあとにべろっとフォントが変わって、「なんだこれ?」と思って(笑)。料金体系もわかりにくかったので、使っていなかったんですね。
※Webフォント:サーバー上にあるフォントファイルを参照することで、ダウンロード・インストールをしなくてもユーザーのPCに特定のフォントを表示させる仕組み

技術の進化でWebフォントも進化 TypeSquareを有料版Simejiに使用

ですが先日モリサワさんにお会いした時に、表示を高速化する仕組みが実現されたというお話を伺って、実際にやってみたら、なんのストレスもなくなっていて。フォントのサブセット化がうまくできるようになってダウンロードが速くなったらしいです。
日本語のWebフォントの場合、漢字の数が異常に多いので、その通信の量のコントロールが元々課題だったんですが、それが技術的に改善されたことで今のパフォーマンスが出るようになったと。
それで今回、実際にプロダクトに使ってみたんです。先日iOS版の有料アプリ、Simeji Proをリリースしたので、そのWebページでTypeSquareのフォントを使いました。

Simeji Proと無料版の違いは、オフラインでもしっかりと使えること、より変換精度を保証して、ビジネスシーンでも使えるようにしていることです。やや長いメールを打つようなことがある人にお使いいただくのがいいのかなと。
無料版とは、ロゴの書体もちょっと細くて丸くて違うのですが、サービスページのテキストにTypeSquareを使うことでロゴとも雰囲気を合わせることができました
ぱっと見、統一感があるように見えるんですよね。いい感じでいかにも有料アプリっていう風になって良かったです(笑)
####▼左:「Simeji」 右:「Simeji Pro」それぞれのサービスページ

やっぱりフォントが変わると、見栄えが変わりますね。無料版SimejiのページのフォントはMacで見ればヒラギノだし、Windowsで見ればそれなりに、というものなので。

フォント=ユーザーコミュニケーション プロダクトの差別化のため今後も活用

フォントって歴然としたユーザーコミュニケーションで、ブランディングに繋がってくる重要な要素だと思います。
今回のSimeji Proのリリースにしても、Simejiはもともと「おもしろおかしい」ところからやってきたプロダクトですし、それとの差別化をしていくために一生懸命、試行錯誤しているんです。
いわゆる高級感のような要素が重要なので、印象を良くするというひとつの手段として、Webフォントをきちんと入れていく、ということができて良かったなと。
TypeSquareを試してみたい方には、ChromeのExtensionで無料でテストすることができます。こんな便利なものがあるということを、私も最近知ったんですけどね。

より一層クリエイティブを高めるために、今後もTypeSquareを使う

今後もWebフォントは、サービス向上のひとつとしてチームで使っていきたいと思っています。特にAndroid中心で考えていますね。
iOSの場合はiOSというプラットフォームを通すと統一感が出てある程度綺麗に見えますが、Androidだとバラけるので。
Androidの初期は、本当にフォントはひどかったです。アジア系のフォントが一緒くたになっていて。そういったところでもっと統一感を出して、ぱっと見凝ってるな、という印象を持って頂けるようなクリエイティブを作っていきたいな、と思います。

Simejiに関して言うと、もうちょっと面白くカスタマイズできる機能を増やしたいな、と思っています。
カスタマイズ市場ってコミュニティがあって、若いユーザー層のすごく面白い、ニッチなコミュニティがあったりするので。
例えば私たち開発者同士だと、「西海岸って、最近こうだよね?」っていう話をするけど、実は1日中スマホを触っている子達には、そんな話はどうでもよくって。本当に自分達のコミュニティの中だけでやっている人がたくさんいるので。
だから、脱IMEしたいと思っています。文字入力を効率的にしたい、って積極的に思っている人は基本的にいないと思っていて、そう思ってない人に「デフォルトキーボードを入れ替えてみよう」と思わせたい。それをどうすればいいんだ、っていうのが今の私が個人的に考えていることなんです。(了)

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