- 株式会社ネオキャリア
- 経営企画 マーケティンググループ グループマネージャ
- 山本 長武
ゴールは「会員登録をなくす」こと。Facebookの「会話型」広告を活用したWebマーケ術
〜「個人情報の収集」ではなく「ユーザーと繋がり続ける仕組み」を目指して。UI/UXの「連続性」を重視したLP改善と、SNSの「会話広告」を活用したマーケ術〜
2000年に創業し、人材関連事業を中心とした幅広いサービス展開を通じて、急成長を続けている株式会社ネオキャリア。
同社の保育士に特化した転職支援サービス「保育ひろば」は、2015年からのマーケティングの強化により、月3,000人以上の新規会員の獲得に成功し、現在9万人を超える会員を有している。
▼「保育ひろば」のWebサイトTOPページ
しかしその一方で、会員登録が完了した後の「面談」へのステップアップに課題を感じていたという。
そこで、従来の「電話」による営業の一部代替として、オンラインで完結する「Web面談」を導入。会員登録のランディングページから繋がる「連続性のある体験」にすることで、メインユーザーとなる20〜30代の面談率を、約120%増加させることに成功した。
さらに、同社のマーケティングマネージャを務める山本 長武さんは、「マーケティングの究極のゴールは、会員登録をなくすこと」だと語る。
その実現に向けた第一歩として、Facebook Messengerの会話広告サービス「fanp(ファンプ)」を2018年3月から導入し、新たな挑戦を始めている。
今回は、保育ひろばのマーケティング施策から、顧客とのコミュニケーションデザインの在り方に至るまで、山本さんに詳しいお話を伺った。
会社の「売上・利益を上げる」視点から、マーケティングのKPIを設定
僕は新卒でネオキャリアに入社して以来、Webマーケティングの営業やアドテク領域の新規事業立ち上げなどに携わってきました。
入社当時は、まだ100人くらいのベンチャー企業で「とにかく営業力なら負けない」といった社風でしたが、2014年頃から全社的にマーケティングを強化する動きがありまして。
そこで、2015年の4月に経営企画のマーケティンググループに異動し、現在は、新規事業のプロダクトマネージャーを兼務しながら、保育士特化型の転職支援サービス「保育ひろば」のマーケティングを統括しています。
マーケティングのチームは、集客が2名、SNS運用が1名、残りの1名がオウンドメディアの立ち上げやWeb周りの改善を担当しています。
この担当ごとにKPIを設定していますが、そこで僕が大切にしているのは「会社の売上・利益を上げる」という視点です。
というのも、インハウスでマーケティングをするからには、会社の売上・利益に繋がることが最上位であって、そこから「自分は何をすべきか」に目標を落とし込むことが重要だと考えているんですね。
例えば、KPIのひとつとして「新規会員の登録数」があるのですが、これも都道府県ごとの月次の営業目標に紐づく形で、マーケティング側の数字を定めています。
また、SNSの運用においては、「エンゲージメント数」をKPIにしています。
以前はFacebookのいいね数などを追っていたのですが、売上へのコンバージョンから考えると、ただのフォロワーではなく「ファン」の数を増やすことが重要です。
そのため、「そのファンを増やすためにはどの数値を追うべきか?」という目線で、コメントやシェアといった「エンゲージメント数」を指標として運用しています。
月の新規会員数を3倍に!ユーザーとの親和性が高いSNSを強化
現在、サービス開始からおよそ4年で、登録会員数は9万人を超えています。これは、全国の有資格者のうち、保育施設で就業されている方の5人に1人が利用している数字に相当します。
ですが、僕が携わるようになった当時は、サービスを立ち上げて1年が経ち、ようやく月に1,000人ほどの新規会員数を獲得できてきたような状況でした。
そうした中で、サービスの成長をより加速させるため、月の新規会員数を3倍にしたいという相談が事業責任者からあったんですね。
そのため、まずは集客の部分をより強化すべく、従来のリスティング広告に加え、SNS広告や広告代理店との連携の強化を始めました。
当時は「10個試して2〜3個あたればいい」くらいの感覚で、半年スパンで色々な施策を試していきました。
その中で特に効果が高かったのが、FacebookやLINE Ads PlatformなどのSNS広告でした。というのも、保育士さんのメインは20〜30代の女性になるため、SNSの親和性が高かったんです。
こうして、SNS広告をはじめとした集客に注力した結果、2017年の3月には、月3,000人の獲得目標を無事にクリアすることができました。
電話でのヒアリングを「Web面談」に代替!CVRが120%増加
一方で、集客の次のステップである「面談」へのステップアップがなかなか上手くいかなくて…。
というのも、新規会員を獲得した後は営業から直接お電話するという流れだったのですが、登録から数分以内にご連絡しても、繋がらないことが多かったんです。
特に若い方ですと、知らない番号からの電話は取っていただけないですし、そもそも電話自体が連絡手段として主流ではなくなってきているんですよね。
この課題を解決するため、お客様の視点から考えた際に、「会員登録→面談→紹介を受ける」という一連の体験を、「連続性のあるもの」にすることが大切なのではないかと考えました。
従来ですと、会員登録まではWeb上のランディングページで行い、その後はアナログの電話という連続性のない体験だったんですね。
そこで、会員登録後の「電話」に代わる「Web面談」の新機能を開発し、2018年の3月にリリースしました。
具体的には、「希望勤務地」「希望年収」「次回の連絡日時」といったような今まで営業が電話でヒアリングしていた項目を「Web面談フォーム」でお伺いし、オンラインで完結する形に変えました。
また、質問項目は、営業にとって十分に価値のある情報でないと意味がありません。
そのため、営業で聞きたい項目を予め確認した上で、「必要項目をすべて盛り込んでも、どういったUI/UXであればお客様が使いやすいだろう?」といった視点から設計を考えました。
そして、違和感のない「連続性のある体験」にするため、会員登録フォームとWeb面談フォームのUI/UXを揃えることを重視しました。
▼UIの揃った入力フォーム(左:会員登録、右:Web面談)
また、Web面談フォームでは、質問の項目数は減らさずに、とにかく使いやすさを重視して、タップした時の反応速度や、ページ遷移のスムーズさなど、挙動の1つひとつを改善していきました。
その結果、Web面談を導入する以前と比べ、メインユーザーとなる20〜30代の面談へのコンバージョン率が、約120%上がりました。
ユーザーと「繋がる」ために、FB Messengerの会話広告を導入
こうして、Web面談フォームの導入によりコンバージョン率は向上しましたが、これはあくまで通過点でしかないと思っていて。
そもそも企業とお客様との「コミュニケーションデザイン」を、マーケティングの観点から変えていきたいと考えています。
というのも、今や電話やメールなどでお客様にアプローチするのは効果的でないと思っていて。それよりも、時代に合わせた形で「お客様と繋がる」コミュニケーションの在り方に変化していくべきだと思うんです。
そこで、次の一手として、Facebook Messengerでお客様と繋がることのできる、会話広告の「fanp(ファンプ)」を2018年の3月に導入しました。
fanpは、Facebook広告とメッセンジャーを連携した、新しい概念の会話広告です。従来のFacebook広告との一番の違いは、ランディングページではなくメッセンジャーに遷移することで、 botによる「会話」が可能になることです。
そのため、例えば会員登録であっても、お客様からするとbotと会話している内に登録が済むような体験になります。
▼実際の、Facebook Messenger上でのチャット画面
ただ、僕たちはfanpを通じて、「会員登録のCVR改善」や「離脱ユーザーへのリターゲティング」だけでなく、最終的には「ユーザーと繋がるコミュニケーション」を目指しています。
現在は、まだ一歩目の段階なので、会員登録ページの入力項目をメッセンジャーbotで自動化して、お客様と会話のようなやり取りをしています。
運用する中で、「すべて選択式にして手入力させない」などの細かい改善を重ねた結果、従来のFacebook広告に比べると、会員登録率は138%増加しました。
究極のゴールは「会員登録をなくす」こと
次のステップとしては、登録の途中で離脱されたお客様に対して、どのようにアプローチしていくか? という部分ですね。
それも従来のリターゲティングのような考え方ではなくて、Facebookで「繋がっている」状態の自然な会話の中で、「続きどうですか?」といったような形で、リテンションを図る仕組みを考えています。
例えば、「質問の8分の3回答しているから、残りの5つ答えてください」みたいなことって、もはや会話になっていないじゃないですか。
なので、完了していない何らかの理由を解消してもらえるように、自然な会話の流れで行った上で、保育ひろばのサービスをご利用いただけたらと思っています。
そして、将来的な究極のゴールとしては「会員登録をなくす」ことだと考えています。
結局、登録って何のためにやっているかというと、企業側が個人情報のリストを作りたいだけなんですよね。
ですが、実際には電話番号やメールアドレスを持っていても、お電話やメルマガなどで適切なアプローチができているかというと、必ずしもそうではないと思っていて。
僕は、「個人情報をどれだけ多く集められるか」ではなくて、「どれだけ多くの人と繋がり続けられるか」ということの方が大事だと思っています。
その上で、重要になってくるのが、声がけする「タイミング」だと考えていて。
そのための手段として、Facebook Messengerでの会話広告や、LINEトークなどを今後より活用していきたいですし、お客様のタイミングや意向に合わせたコミュニケーションの在り方を目指していきたいですね。(了)