• 株式会社ビビッドガーデン
  • マーケティング統括 /ビジネスサイドマネージャー
  • 松浦 悠介

テレビCM放映後、新規注文数280%!「食べチョク」が挑んだマスマーケ施策の全貌

〜テレビCMは「放映」だけで終わらない。流入から購買までの一貫した体験を設計し、CMの効果を最大化させた「食べチョク」のマーケティング戦略とは〜

テレビCMの効果を最大化させるためには、どのようなマーケティング戦略を描き、実行すればよいのだろうか。

2016年に創業し、こだわりの生鮮食品に特化した産直ECサイト「食べチョク」などを運営するスタートアップ、株式会社ビビッドガーデン。

同社は、コロナ禍における生産者の販路拡大のニーズを受け、サービスの利用者を一気に拡大するために、テレビCMの放映を決意。

その制作にあたっては、ユーザーヒアリングとWeb広告による訴求軸の絞り込みを行った上で、それらが最も伝わるクリエイティブを制作。さらに、流入時に接触する面の統一や、サービス内のUI/UX改善、品揃えの補強など一貫してユーザー体験を高めることで、CMの効果を最大化させたそうだ。

その結果、サイト流入数はCM期間中で約2倍にベースラインが増加し、サービスを利用する生産者の数も、約半年で3倍以上に増えているというまた、CM放映中の新規注文数は、放映前のベースラインの280%を記録しそうだ。

今回は、同社でマーケティングを統括する松浦 悠介さんに、テレビCMの制作プロセスと、その効果を最大化させるための施策について詳しくお伺いした。

大打撃を受けた一次産業を救うため、TVCMで顧客獲得を目指す

私は、2018年11月にビビッドガーデンに入社しました。現在は、マーケティングの責任者を務めています。

私が入社した当時は、ほとんどマーケティングをやっていなかったんですね。そこで最初の1年ほどは、どのような訴求軸があり、どのようなユーザーに何が刺さるのか、の仮説検証を繰り返してきました。

その中で、おおよその方向性を掴み、2019年の秋頃からは「オーガニック野菜を買いたい」「子供のために体に良い野菜を食べさせたい」といったニーズが顕在化している層に対して、広告などのWebマーケティング施策を実行していきました。

こうして順調に新規顧客を増やしていた一方で、伸び率の鈍化が見えてきて。2020年からは「たまには普段より少しいいものを食べてみたい」といった潜在層にアプローチの舵を切り、PRにも注力し始めました。

その矢先に、新型コロナウイルスが発生したことで、状況が一気に変わったんです。イベントの中止や飲食店の一時休業などが相次ぎ、出品者である全国各地の生産者さんたちが販路を絶たれ、困っていました。

プロダクト開発や商品ラインナップを含むサービス改善に注力してきた結果、LTVが向上。マーケティングも踏めるようになってきたタイミングで、市場からの強いニーズが重なり、踏むなら「今」しかないと。

そこで5月から取り組んだのが、テレビCMです。というのも、生産者さんの状況を考えると、一刻も早くユーザーを増やし、購買活動につながる施策を検討する必要がありました。

また、在宅で過ごす方が増えたことで自炊や宅配のニーズが高まったことや、テレビへの接触時間が長くなると予想されたこと、さらにCMの出稿額が通常時より安価だったことなどから、ROIの観点からも見合うと判断して、テレビCMの実施に踏みきりました。

購買の動機になる「訴求軸」を探し、本質的な価値を検証

放映まで約3ヶ月という限られた時間の中で、効果的なCMを制作するため、段階的に準備を進めていきました。

まずはじめに行ったのは「訴求軸の絞り込み」です。

今までもWebでの検証はしていましたが、改めて「誰にどんな便益があるサービスなのか」を言語化するため、購入頻度の高いユーザーさんを対象としてインタビューを実施しました。

というのも、普段、ユーザーさんからは「美味しかった」「生産者さんを応援したい」といった良いコメントをいただくことが多いのですが、その根底にある「本質的な価値」が見えづらいと感じていたんです。

実際のインタビューでは、「安心安全」「チョク(生産者直送)だから新鮮、だからおいしい」などの4つの訴求軸で、それぞれイメージ写真とキャッチコピーをつけた用紙を用意し、どれが一番よいと思うかをヒアリングしました。

すると、食べチョクに対する第一印象と実際に購入したくなるときの訴求軸が違うことがわかってきて。同時に、Web広告でもそれぞれの軸を検証したのですが、クリックにつながる訴求と購買につながる訴求は異なることが見えてきたんです。

結果的に、より購買につながる訴求を重視して「チョクだからおいしい」「チョクだから生産者さんの応援になる」の2つの軸に絞り込みました。

また検証を通じて、思っていたよりも「日常使いの食材」として購入してくださっていることがわかったんです。そこで「チョクだから新鮮でおいしい」「イイモノがちょっぴりお得」「生産者さんも応援できる」という訴求軸で、CMを制作することにしました。

CMの成否を分けるクリエイティブを、検証結果をもとに作り込む

次に、CMのクリエイティブ制作に取り組みました。

テレビCMの成否は「クリエイティブで7割決まる」と感じていたので、今までの検証で得られたデータをもとに、外部のクリエイティブチームの方々と一緒に作り込んでいきました。

まず、「チョクだから新鮮でおいしい」という訴求軸に合わせて、「生産者さんが箱詰めした段ボールが、直接自宅に届く様子をCMにする」というアイデアを採用しました。

また、新鮮さを訴求するため、CMで使用する食材にもこだわりました実は、食材の種類によってWeb広告に対する反応が全然違うんです。例えば、オクラとピーマンを比べると、オクラの方がコンバージョン率が高い。一定の仮説は立てつつも、これはもうロジックじゃないので、数字と睨めっこするしかないんですよね(笑)。

また、夏を目前として「トウモロコシ」の注文数が増えていた時期だったこともあり、最終的に「トウモロコシ」「トマト」「オクラ」の3つをメインの食材に使用することにしました。

さらに「イイモノがお得」という軸に関しては、絵だけではなくメッセージとしても伝えることで、訴求を強調しました。

▼実際に放映されたCM

CMの放映中は、全体の成果を測る「注文数」と、曜日・番組・時間帯別のGRP(※)対効果を1時間単位で追っていました。

※GRP…Gross Rating Pointの略語で、特定の期間中に放映されたテレビCMの「世帯視聴率」の合計

具体的には、検索行動につながっているかを測る「指名検索数」や「SNS投稿数」、サイトに訪問しているかを測る「セッション数」、ユーザーとして定着するかを測る「会員登録数」「アプリDL数」「LINE友達登録数」などをGRPと掛け合わせて見ていましたね。

CMの効果を最大化させるため、一貫性のあるユーザー体験を設計

ただ、CMの放映だけでは購買までつなげるのはなかなか難しいと思っていて。そこで意識していたのは、流入から購買までのユーザー体験に一貫性をもたせるということです。

まずひとつめが「接触面の統一」です。CMのクリエイティブと一致するように、Webサイトのファーストビューを変更しました。

またブラウザ検索だけでなく、SNSやアプリから流入する方もいるので、すべての接触面におけるクリエイティブを揃えていきました。このタイミングで、流入の受け皿を増やすため、アプリも開発しましたね。

そして2つめが「UI/UXの改善」です。初めての方には、既存会員と別ルートを設けて、テレビCMで伝えきれなかった部分をコミュニケーションする設計にしました。

具体的には、生産者さんの想いを凝縮した5分程度の動画を制作し、会員登録後のページで公開したんです。

▼実際に公開されている動画

動画だけでなく、ユーザーさんからのメッセージや、生産者さんのブログを見られるようにすることで、食べチョクの特徴である情緒的な部分を伝えるようにしました。

やはり食べチョクは、単なる通販ではなくて、その背景に「生産者さんのストーリー」があるんですよね。CMの15秒という限られた時間では、食べチョクのビジョンや生産者さんの思いなどを伝えきれません。

そこでCMでは伝えきれないストーリーや私たちの世界観を、Webサイトやアプリ上で発信すると、生産者さん・ユーザーさん双方から大きな反響がありました。

そして最後に、購入体験を左右する「品揃え」が大切です。

当然ながら、CMをみて「買いたい!」と思った商品の在庫がないと、ユーザー体験を損ねてしまいます。なので、注文が増えるCMの放映中は特に、生産者さんと密に連絡を取りながら、とにかく在庫を切らせないように注意していましたね。

長く使っていただくための機能改善と、新たなユーザーを増やす

一連の施策によって、サイトへの流入数はテレビCMの放映期間中で約2倍、放映前後でベースが約倍に増えました。出品している生産者さんの数も、今年の2月末時点で750軒程度だったのが、8月頭の時点で3倍以上にまで増えています。

また、産直ECサイト12社の中で「お客様利用率」「Webアクセス数」「SNSフォロワー数」「生産者認知度」の4つの部門でNo.1を獲得することもできました。

これはCM放映だけでなく、本質的なマーケティングを愚直に実行し、PRを含めたすべての施策を連動させたからこその成果だったかなと思っていて。サービスの成長をさらに加速させていくため、生産者パートナーやエンジニアなど一緒に働く仲間も絶賛募集中です(笑)。

また、私たちはモノづくりをしてくれる生産者さんがいて初めて成り立つサービスなので、パートナーである生産者さんと密に連携することが大切だと思っています。

今後は、既存ユーザーさんに継続的に使っていただくためのプロダクト改善と、新たな層にリーチしていくマーケティング施策を行っていきたいと考えています。

従来は「ネット販売」に馴染みのなかった方も含めて、食べチョクに登録してくださる生産者さんの数がどんどん増えているので、一人当たりの売上を落とさないためにも、ファンになってくれるユーザーさんを増やしていきたいですね。(了)

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