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助け合いのマッチングはほぼ100%!「生協」の価値を現代に、コープこうべアプリが目指す世界

助け合いのマッチングはほぼ100%!「生協」の価値を現代に、コープこうべアプリが目指す世界

一人ひとりが出資金を出し合って組合員となり、人と人のつながりを大切にしながら協同でくらしを支える組織「生活協同組合(生協)」。近年ではコロナ禍の影響もあり、食品宅配サービスとしても大きく業績を伸ばしている。

生協と一般的な小売業の大きな違いは、組合員自身が運営に参加し、より良い商品やサービス、地域づくりを共に実現できる点だ。しかし近年では、ネットスーパーと同じ感覚で利用されることも多く、「生協らしさ」に触れることなく離脱するケースも増えてきたという。

こうした課題から生活協同組合コープこうべが取り組んだのが、生協本来の価値を今の時代にフィットさせるためのスマートフォンアプリ「コープこうべアプリ」の開発だ。

2017年4月のリリース後、商品の注文機能に加えて、ボランティアへの参加や、地域の人との交流を気軽にできる機能を続々と追加し、ダウンロード数が50万を超えるなど利用者を増やしている。

▼商品の注文だけではなく、様々な機能を備えた「コープこうべアプリ」

コープこうべアプリ_top例えば「たすけタッチ」は、ゴミ出しなど日々の困りごとを手助けしてほしい組合員と、それを手助けできる組合員をマッチングする機能だ。その成約率はほぼ「100%」と非常に高く、組合員が日々の生活の中で自然と地域づくりに参加する体験を生み出すことに成功している。

また、気軽に意見を発信できる「投票」では、ひとつのテーマに1万人以上が参加し、1,000件以上のコメントが集まることも。生協の活動にわずらわしさを感じる人にも、「気軽さ」や「楽しさ」を感じられるコミュニケーションデザインが、新しい時代の地域コミュニティ醸成につながっているのだ。

こうした成長の背景には、常にユーザーである組合員の声に耳を傾けた上で、その利便性やニーズを中心としたアプリ設計を行う「人間中心設計(Human Centered Design)」の考え方があった。

今回は、コープこうべにてインターネット・デジタル推進の統括を務める浜地 研一さんに、詳しいお話を伺った。

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「モノがない」時代に立ち上がり、100周年を迎えた「コープこうべ」

私が所属するインターネット・デジタル推進は、生協の事業と活動のハブとして組合員の皆さんとの接点となるECサイトやアプリの企画運営、開発を担っています。2000年からずっとデジタルの領域に関わっている、生協ではとてもレアなケースです(笑)。

▼生活協同組合コープこうべ  インターネット・デジタル推進統括 浜地 研一さん

コープこうべ_浜地様(SELECK)われわれ生協は、いわゆる協同組合の一種で、ひとりではできないことをみんなの力を合わせて実現することを目指して立ち上がりました。「出資、利用、運営」という三原則があり、株式会社とは違って出資額の多い少ないに関係なく、参加している人が「一人一票」という形でみんな平等に声を上げ、組織を改善できます

ですが、最近ではこの協同組合の仕組みに価値を感じて利用されている方は、減ってきていると感じています。

コープこうべはちょうど昨年(2021年度)に創立100周年を迎えました。立ち上がった当初は本当に「モノがない」時代ですから、望むものを手に入れるためには意志をひとつにして頑張る必要があったと思います。そのための器として、協同組合には大きな期待が寄せられていたんです。

ところが、今はもうモノがどこでも手に入る時代となり、協同する意味や価値を感じることが少なくなってしまいました。ごく普通の宅配サービスとして、生協を利用いただいている方も多いと思います。

一方で、デジタル化が急速に進み、Uberを始めとするシェアリングエコノミーが広がる中、労働者より起業家や投資家が儲かる仕組みに対する反発から、海外では「プラットフォーム協同組合主義(※)」という動きも出てきました。

※労働者やユーザーが民主的に所有・運営するアプリなどを通じ、商品やサービスを提供するもの。利益のほとんどを運営する企業が得る、既存のシェアリングエコノミーへの対抗策として評価されている。

このような時代背景もあり、「ひとりではできないことをみんなで解決する」協同組合への期待の揺り戻しが起きているとも感じています。

「アプリ=単なる商品の売り場」ではない。地域の人への貢献を目指す

コープこうべでは、商品の供給だけではなく、地域や社会に貢献するための活動をたくさん行っています。くらしやすい地域づくりの推進や、環境活動、福祉など、「SDGs」という言葉が登場する前から長年に渡って取り組んでいるのですが、それらがうまく伝わっていないことが課題意識としてありました。

特に若い世代には、食品宅配サービスとして生協を利用してくださっている方も多いですが、我々としては、「モノをたくさん買ってもらう」ことが最終的なゴールではないんです。

ですので、スマートフォンアプリを単なる商品の売り場だけではなく、「たすけあいのプラットフォーム」として活用していただくことで、「くらしやすい地域づくり」が広がることを目指したいという思いがありました。

生協には「週に1回注文する」という特徴的な仕組みがあるので、毎週約16万人の組合員さんとWeb上で接点を持つことができます。その毎週の注文リズムの導線に、ちょっとした活動をレコメンドすることで、それが地域に役立つことにもつながればと。

「生協の運営に参加するぞ」と思う事はなかなか無いかもしれませんが、アプリを使っている中で自然に声を挙げていたり、地域のたすけあいに参加していたり…といったように、若い世代もいつの間にか運営に関わっているような体験が生まれたら、と思いながらアップデートを続けています。

「宅配+店舗+たすけあい+地域づくり」を担うコープこうべアプリ

「コープこうべアプリ」を開発するにあたっては、コープこうべがもつ店舗、宅配、その他の活動をアプリを通じて一覧化することで、組合員の皆さんに我々のさまざまな取り組みを知ってもらいたい、という狙いがありました。

▼実際の店舗の様子

コープこうべ_店舗写真-minとはいえ取り組みの数も多いので、最初からすべてを知っていただくことは難しい。そこで2017年4月の公開時には、出発点として、誰にでも馴染みのあるLINEのようなUIを採用し、コープこうべの機能やサービスをLINEの友達のように一覧で見られる形にしました。

ショッピングアプリというよりも、コミュニケーションアプリの雰囲気を出すためにこのようなUIが良いと考えたんですね。

最初に作った宅配の「品番注文」機能も、チャット形式を採用しました。そして、期待外れの答えが返ってくるチャットボットではなく、軽快に正解を返す信頼感の高いコミュニケーションの実現を目指しました。

▼「コープこうべアプリ」ホーム画面と、チャット形式で注文ができる品番注文画面

コープこうべアプリ_SELECK.001そしてコミュニケーション機能としては、商品の口コミに加えて、2018年に組合員が手軽に楽しく協同組合の「一人一票」を体験できる投票機能を備えた「コープTOUCH!」を追加しました。

例えばペットボトルのラベルデザインについての話題には1万2千件以上の投票と、1,000件近い真摯なコメントが集まりましたね。その一方で「おにぎりには焼のり?味のり?」といった軽い話題にも1万件以上の投票があって、私自身も、こんなに焼のりを使う人がいるんだと驚きました(笑)。

▼実際のラベルデザインの投票と、「おにぎりには焼のり?味のり?」の投票

コープこうべアプリ_SELECK.002また「この1年でうれしくて思わずにっこりしたことを教えてください」という企画でも、涙の出るような感動的なエピソードがたくさん集まりまして。「みんな組合員」という安心感の中、アプリのやさしいデザインと相まってとても穏やかでやさしい空気が流れているように感じます。

「コープTOUCH!」の中には、投票だけではなく、「たすけタッチ」という組合員同士のたすけあいの気持ちをつなぐ機能もあります。ちょっとした困りごとを手助けして欲しい組合員と、それを手助けできる組合員をマッチングするものです。

▼組合員が気軽に活動に参加できる「コープTOUCH!」と、困りごとを解決する「たすけタッチ」

コープこうべアプリ_SELECK.003コープこうべでは30年以上前から「コープくらしの助け合いの会」という取り組みをしています。1時間単位で部屋のお掃除や食事づくりなど身の回りのお手伝いをするのですが、とてもニーズの多い「ゴミ捨て」は朝が早くて時間帯が合わなかったり、短時間で済む要望は1時間単位では割高になったりして、お断りするケースが増えていました。

そこで「たすけタッチ」は約15分で100円というシンプルな価格設定で、ゴミ捨てなどの課題を解決しようと立ち上げました。

神戸市垂水区のエリアで実験を開始し、ご利用いただいている組合員さんからは、「これまで2年間ずっとゴミ出しのことで悩んでいたけれど、たすけタッチのおかげでいっぺんに解決した」といった嬉しいお声をいただいています。

常に目の前の組合員と向き合う「人間中心設計」を大切に

このようなコープこうべアプリのコミュニケーションデザインは、ユーザーである組合員を常に中心に考える「人間中心設計」の考え方に基づいて、機能づくりを行っています

ユーザーが使いやすく、馴染みやすいデザインやUI/UXが利用や参加につながると強く思っていますので、常に組合員さんの声を聞きながら、機能を開発・改善していっています。

実際には、「声を聞く」というよりも本当に組合員さんの隣にいて、「一緒に開発している」ような感覚です

視覚障害の方に使いやすい音声読み上げサイトをつくるときは視覚障害者のグループと一緒に開発をさせてもらいましたし、Webサイトの「デザインが良くない!」というお申し出をいただいた方の家にお伺いしてお話を聞いたこともあります。

コープこうべ_浜地 研一様_SELECK.004「たすけタッチ」についても約2年間、毎月現地の会合に参加させてもらい、サービスの立ち上げからアプリの改善までを一緒に行ってきました。

たすけあいや地域づくりとはほど遠いインターネット・デジタル推進という部署名から、最初はとても警戒されたのですが、通っているうちにざっくばらんに意見をいただける関係になりましたね。初めてゴミ捨てのマッチングが成立したときには、みんなで喜んで記念撮影をしました(笑)。

また、小学生までのお子さんがいる方に加入いただいている「コーピーくらぶ」にはメンバーが約2万人います。その中でアンケートを取ったりお話をお伺いしていくと、やはり子育てに関する悩みや心細さを感じられていて、なんとかできないものかなあと。そこでつくったのが、「きいて」というつぶやきコーナーです。

こちらでは投稿したメッセージが24時間で消える仕組みになっているので、ちょっと肩の力を抜いて、軽い気持ちでつぶやくことができます。Instagramのストーリーズと似ていますが、こちらではテキストによる対話がメインです。

「今何してる?」といった気軽な投げかけや子育ての質問、時にはグチが盛り上がることもありますが、すべて24時間で洗い流されて明日にはすっきりと晴れ渡るようなUI/UXを目指しました

これはアプリ全体に言えることなのですが、「人気(ひとけ)」が感じられることをとても大切にしています。

例えば「きいて」では今何人が参加しているのかわかるようにしていたり、「たすけタッチ」では「合計何回たすけたよ!」という表示をして、みんなどこかで一緒にいる気配をつくって安心感を持ってもらえたらと思っています。

このように組合員さんと向き合ってアプリを改善し続けてきた結果、今では「コープこうべアプリ」そのものが安心できる地域のコミュニティになりつつあります。

コミュニティへの参加が増えることで、結果的に利用(商品の購入)も広がることもわかってきました。生協は非営利の組織ではありますが、アプリのコミュニティをアップデートし続けるためには原資も必要となりますので、宅配事業や店舗事業における利用の拡大もアプリのミッションです。

アプリが組合員の生活の中に溶け込み、意識せず使われる道具に

私たちは日々の生活の中に、自然とこのアプリが溶け込んでいくことを目指してきました。

「私、生協の活動に参加します!」という感じではなく、生活している中で「知らん間にやってしまってる」くらいのコミュニケーションデザインをいつも意識しながら作りこむことで、毎日意識せずに使われる道具のようになりたいなと。

今後の挑戦としては、生協の伝統である「紙のカタログを見ながら注文する」スタイルが減っていく中、いかにアプリで楽しく注文いただけるのか、新しい注文体験を開発会社のみなさんと考え始めています。

▼「コープこうべアプリ」開発チームの皆さんと

コープこうべ様_集合写真②若年層は紙のカタログは不要という方が増えていますし、SDGsの観点からも紙媒体は減らさざるを得ません。その中で、カタログならではのレイアウトの楽しさや一覧性の高さを、いかにスマホの小さな画面で実現するのか、が大きな課題です。

UI/UXの作り込みももちろんですが、表示できる商品数も少ないので、AIなどを活用した個別の最適化も必要になってくるでしょう。とはいえ、その中でも、やはり生協らしくコミュニケーションを大切にした注文体験を実現していきたいと思っています。

また、商品を中心にして組合員だけでなく、地域担当(宅配の配達担当)やバイヤー、生産者などがつながる新しい体験を提供できればとも考えています。

生協には約1,500人の地域担当がおり、毎週各地域を網の目のように走っています。雨の日も風の日も、コロナ禍においても「いつも通り」商品をお届けすることで組合員のくらしの安心を守ろうとしています。

そんな地域担当の原動力となるのは、組合員からの感謝の言葉です。「ありがとう」ひとつで明日への希望がもらえます。

今は配達時に顔をあわせて挨拶することもありますが、約半数はお留守です。そこでアプリ上でお互いの感謝の気持ちをうまく伝えられるようなコミュニケーションデザインを実現することで、より良い関係性を構築できて、それがより良いサービスの循環につながればいいなと思っています。(了)

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