• 株式会社セゾン情報システムズ
  • 常務取締役 CTO テクノベーションセンター長
  • 小野 和俊

隣の部署は他の会社!?縦割り組織に風穴を開ける、老舗SIerのSlack活用術とは

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〜堅い組織に風穴を開ける!?老舗SIerがSlackを導入し、事業部を超えたコミュニケーションを加速させ、その風土を一新させた事例〜

どんな企業にも、少なからず存在する「組織の壁」。その弊害により、本来の人材やリソースを十分に活かしきれない企業は多い。

ファイル連携ミドルウェア「HULFT(ハルフト)」の開発や、金融、流通領域におけるシステムインテグレーション(SI)事業を手がける株式会社セゾン情報システムズ。

▼ファイル連携ミドルウェア「HULFT」

1970年に創業した同社は、長らく課題であった事業部間の「壁」を越えて、昨年からは事業部を横断した新規事業に意欲的に取り組んでいる。

その大きな後押しとなったのが、ビジネスチャットSlack(スラック)の導入をはじめとする、組織の風通しを良くするための風土改革だったという。

今回は同社でCTOを務める小野 和俊(かずとし)さんに、同社で組織改革を担う「テクノベーションセンター」の取り組みについて、詳しくお話を伺った。

老舗SIerに変革を起こす「テクノベーションセンター」

弊社はクレジットカード・流通業界のシステム開発を行う、システムインテグレーション(SI)事業と、「HULFT」というファイル転送ミドルウェアの開発を行っています。

私は4年前からセゾン情報システムズのCTOとして全社の技術分野を見ています。また新設の部署である、「テクノベーションセンター」のリーダーも務めています。

テクノベーションセンターとは、社内にイノベーションを生むための新しい技術を研究して、各事業部をサポートする組織です。現在、7人ほどで運営しています。

ただ、単に「イノベーションを」と言っても、そもそも会社にそういった土壌がなければ、アイデアも出てきませんよね。ですので、そういった風通しの良い企業文化の醸成も、自然と業務の中に入ってくる形になっています。

弊社の場合、事業部が「流通」「クレジットカード」「HULFT」といった形で分かれているので、そういった事業部間のコラボレーションを生み出すことも仕事のひとつです。

隣の事業部は別の会社?堅い社風が、コラボレーションの妨げに

しかし私が着任した当時は、社内に新しいコラボレーションが生まれにくい環境でした。なぜなら組織の風通しが、あまり良いとは言えなかったからです。

システム開発においては、エンジニアの稼働が、そのまま利益に直結します。ですので以前は、各事業部がそれぞれ、自分たちの稼働率を高めることに注力していました。

その弊害として、事業部を横断した交流が希薄になっていたんです。多くの社員が、隣の事業部をまるで「別の会社」のように捉えていました。

他にも、開発の現場で、悪い報告を上げにくい空気もありました。

例えばシステムのバグ修正や、仕様の見直しが必要になったとき、他の社員や部署に迷惑をかけないよう、自分たちだけで何とかしようとしてしまって。結果的に、大きな問題になってしまったこともありましたね。

こうした課題の根源的な理由は、やはり社内の空気が「堅い」ことだと考えました。そこでまず、社内の雰囲気を柔らかくする施策に取り組んでいくことにしたんです。

社内の「キャズム」を越える!「Slack」が自然と組織に普及

そのために、それこそ服装の自由化など、色々な施策を多角的に行っていきました。その中でも特に影響が大きかったものが、ビジネスチャット「Slack(スラック)」の導入です。

Slackを入れたのは、1年ほど前ですね。元々私が前職で使っていたこともあり、どんなものかはわかっていました。社内の風土を変える手段になるのではないかと思い、最初はテクノベーションセンター周りの15名ほどで使い始めました。

その後、全社に拡大させていったのですが、全社員にIDを一斉に配布することはしませんでした。

組織を超えたコミュニケーションに喜びや価値を感じてくれる人に、自発的にSlackを使ってもらいたかったんですね。そこでまずは、有志の全社交流会に参加した社員にだけ、IDを発行していきました。

▼毎月一度、金曜日に行われる交流会の様子

そのうち、次第に口コミでSlackが社内に広がっていき、毎月の交流会に参加する社員も増えていきました。

新しいサービスを世の中に普及させようとするときに、「キャズム」を越えられるか、という話がありますよね。キャズムの手前のイノベーターとアーリーアダプターが全体の16%で、そこを越えると、以降はマジョリティーに向けて、サービスの利用が爆発的に拡大していくという理論です。

この考え方に沿って、Slackの利用者が全社員の約16%を超えたとき、社内の特に関心の高い層は十分に取り込めたと判断しました。そしてそれ以降は、希望者にIDを配布する形式にしたところ、さらに利用が進むようになったんです。

この、 キャズムを超えたあたりから、実際に仕事でもどんどんSlackが使われるようになっていきました。

Slackの各機能は英語表記ですが、基本的な使い方は「LINE」や「Facebook Messenger」とそれほど変わらず、直感的に扱えるため、大きな抵抗もなく受け入れてもらえましたね。

(※これからSlackを使いたい方、もっと使い方を知りたい方は、ぜひこちらの記事もご覧ください。)

業務連絡から拡張機能まで、社員に委ねるSlack運用

Slackを導入して一番変わったのは、情報が共有されるようになったことです。

以前は、例えば朝会のメモや議事録のようなものは、それに関わるメンバーしか見られない場所に書いてありました。けれど今は、Slack上でそれらがオープンになっているので、隣の部署から「それちょっと大丈夫?」といった声がけができるようになりました。

今では日々のコミュニケーションだけでなく、勤怠の連絡や、日報、業務連絡など、目的にあわせて約30のチャンネルを使い分けています。

Slackはエンジニア向けのツールと思われがちですが、弊社では営業の社員も多用しています。例えば商談の場で、専門的な技術について相談されたときに、リアルタイムで全社のチャンネルに投稿して、詳しい人から情報を募る、といったユースケースがあります。

▼出展したイベントの状況をSlackで共有する

Slackは高機能で、カスタマイズ性も高いのですが、利用の方法は厳格に決めていません。あくまで誰でも自然に使えるように、運用は社員に任せています。

現場でよく使われている拡張機能としては、重要な連絡を誰が読んだのかチェックできる「must-read」というbotや、Slack上でちょっとしたアンケートが取れる「Simple Poll」があります。

▼Simple Pollを使った簡単なアンケート(画像は編集部作成)

もちろん、開発系のツールとも連携しており、「JIRA(ジラ)」のようなプロジェクト管理ツールからの通知も、Slack上に届くようにしています。

「認定PM評議会」が、事業部を超えて社員を導く

テクノベーションセンターではSlack導入と合わせて、「認定PM評議会制度」「モダン開発推進室」という、社員のスキルを引き上げる取り組みを行っています。

「認定PM評議会制度」とは、全社員の中から特に優秀なPM(プロジェクトマネージャー)7名が、社員をサポートする制度です。

顧客との交渉から、プログラム言語の文法まで、事業部や組織を問わず社員の気になった投稿に、認定PMがSlack上で都度アドバイスしたり、相談に乗ったりしています。

▼先輩社員がプログラミングの相談に乗る

「モダン開発推進室」はペアプログラミングやスクラム開発といった、最新の開発手法を研究する部署です。こちらもSlack上で、社員からの技術的な相談の窓口を設けていますね。

Slackが育む「やわらかい」空気が、組織を新しいフェーズに導く

今では、全社員の6割ほどがSlackを利用しています。テクノベーションセンターではコミュニケーションは全てSlackで行っており、メールを使う機会は月に1、2回しかありません。

Slackの魅力は、チャンネルという「場」に投稿するので、メールのように「誰に報告を上げるか」や「細かい言葉遣い」を気にしなくて済むことだと思います。コミュニケーションの敷居を下げることができるんですね。

今では「◯◯が懸念です」と、社員からもいち早く相談が上がるようになり、それを事業部・組織を問わず、認定PMを中心にサポートできるようになりました。

他にも、メンバーが新しい資格を取ったときに社長が一言「おめでとう!」とコメントしたり、わざわざメールするほどではない、うれしい報告もSlack上に共有されて、弊社の風通しはかなり良くなったと思っています。

▼資格取得をSlack上で祝い合う

実際に昨年、Slackでの投稿が発端となり、全事業部から多くの社員が協力して、ブロックチェーンとカード決済、流通を組み合わせた新規事業を発足させることもできました。

これからも社内をオープンにして、社員が笑顔で出社できるような、いろいろな施策に取り組んでいきたいですね。(了)

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