- 株式会社モバイルファクトリー
- コーポレート・コミュニケーション室 室長
- 小泉 啓明
つい後回しにしがちな「第二領域」にチームで挑む!生産性を本当に上げる組織の作り方
〜「緊急ではないが重要なこと」に着手し、生産性を上げる!第二領域に注力するための、「クリエイティブフライデー」「精神と時の部屋タイム」とは〜
仕事に打ち込んでいると、つい後回しにしがちなことがある。それが、緊急ではないが重要なこと、すなわち第二領域だ。
スティーブン・R. コヴィーが書かれた名著「7つの習慣」では、タイムマネジメントの鉄則は「第二領域への注力」だと書かれている。しかし、第二領域のための時間を意識的に生み出すことは容易ではない。
そんな中、株式会社モバイルファクトリーのコーポレート・コミュニケーション室では、組織として第二領域に注力することで、以前の3倍ほどの第二領域の活動を生むことに成功している。
その背景には、第二領域を後回しにさせないための、創意工夫に富んだ仕組み作りがあった。例えば、第二領域に着手する時間を確保する「クリエイティブフライデー」や、チームで第二領域の課題に取り組む「第Ⅱ会議」、集中してタスクを消化するための「精神と時の部屋タイム」といった施策だ。
今回は、コーポレート・コミュニケーション室の室長である小泉 啓明さんに、その取り組みの概要や、浸透のプロセスについて詳しく伺った。
ハイパフォーマーの退職で、業務のムダが放置されるように…
弊社のコーポレート・コミュニケーション室(CC室)では、2016年5月より、チームとして本格的に「第二領域」に注力し始めました。
僕らが第二領域に着手したきっかけは、とあるハイパフォーマーの退職でした。
CC室にはもともと非常に優秀なメンバーがいて、彼女はITリテラシーや能力が高く、かつ生産性を高める活動を自主的に行っていました。
僕もそれに感化され、金曜日は第二領域に時間を注ぐ「クリエイティブフライデー」という取り組みを、1人でこっそり始めたほどです。
ですが、ある日彼女が退職してしまって…。
その後、自分が久しぶりに現場に降りることになり、現場の業務を見てみると、そこにはたくさんの無駄があったんです。例えば、自分が過去に作ったマニュアルが放置されていたり、フローが今のチーム体制やメンバーにとって最適化されていなかったりしました。
ただ、ここで僕が改善してしまうと、こうした活動が属人化されてしまい、また同じことが繰り返されると思ったんです。
そこで、チームメンバーの1人ひとりから、第二領域の取り組みが自発的に生まれる仕組みを作ろうと考えました。
アポ・ミーティング・残業ナシの「クリエイティブフライデー」
はじめに行ったのが、部署全体への「クリエイティブフライデー」の導入でした。
第二領域に着手する時間の確保を目的に、毎週金曜日は原則ノーアポ・ノーミーティング・ノー残業にしようという試みです。
カレンダーもわざと休みの色で予定を入れて、メンバーと同期をかけました。このように社内外に周知することで、アポをブロックしようという意図がありました。
▼カレンダーに毎週予定を同期することで、他のアポをブロック
しかし、最初はほとんど浸透しませんでした。そもそも「この時間に何をしたらいいかわからない」という意見が出てきたんです。
「第二領域をやってください」とただ伝えても、メンバーはピンとこないんですよね。
1人ひとりが取り組むべきことを話し合う「第Ⅱ会議」
そこで、第二領域として何をするかをメンバー全員で話し合う「第Ⅱ会議」を、月に1度開催することにしました。
会議では、日々の業務で課題に感じていることを、粒度も関係なく全部出してもらっています。それこそ「会議室の張り紙がダサい」とか、些細なことまで話していますね。
今まではこのような意見が思いつきで出てくることはあったのですが、話が流れてしまったり、その取り組みが継続されなかったりしたんです。
一方で第Ⅱ会議では、メンバーの日々の気付きから、課題や解決策を話し合います。すると、「そもそもそれって課題じゃないかもね」という話にもなり、必要な取り組みを精査することができます。
会議の中で「やっぱりその課題は解決していこう」と決まったら、具体的なアクションまでを一緒に決めていきます。
次回の会議までに何をやるかも落とし込み、進捗が滞っていたら相談に乗ったりしていますね。その会議の内容は、全てドキュメント管理ツールの「
Docbase(ドックベース)」にまとめて共有しています。
▼Docbaseにまとめられた、第Ⅱ会議の目的とルール、議事録
「精神と時の部屋タイム」で、日々の業務にメリハリを
ただ、会議の場で進捗を確認するようになると、今度は「第一領域が忙しくて第二領域に全然着手できない」という人が出てきました。
そこで、月曜、水曜、金曜にそれぞれ1時間、集中できる時間として「精神と時の部屋(※)タイム」を設けることにしました。この時間はSlackや会話、電話や離席を禁止にしています。アポを入れる場合には、僕の許可が必要になります。
(※精神と時の部屋:「ドラゴンボール」に登場する異空間。短い時間で成長できる、修行に最適な環境。)
うちの部署は社内でもコミュニケーションが活発な方なので、「この時間は集中する」という機会を作ることで、メリハリを作ったんです。
また、ここで取り組む仕事は、あえて第二領域に限定していません。むしろ、第一領域を早く終わらせるための時間として使ってもいいと思っていて。
仕事の中で、まず大事なのはあくまで第一領域です。ただ、第二領域を放置しないことが、第一領域の圧縮に繋がると思っているので、第二領域に当てられる時間を意識的に作ることが重要になります。
ハイパフォーマー依存を脱却、チーム全員が第二領域に取り組む
クリエイティブフライデー、第Ⅱ会議、精神と時の部屋タイムといった施策により、「やらなきゃいけないよね」で終わっていたものを、実行に移せるようになりました。自発的な改善活動も、以前の3倍ほど実行されています。
第二領域の一例として、採用プロセスのマニュアル化を行いました。うちの部署で採用担当をしている人が昨年末から産休を取っていたので、ただ引き継ぐだけでなく、誰でもできるように仕組み化し、さらに改善することができたんです。
他にも、「キャリア支援制度」や「プレスリリースフローの短縮化」、「Slackbotの作成」など、様々な活動や成果が第二領域から生まれました。
個人的に一番良かったと思うのは、これまでハイパフォーマーな人に依存していた第二領域の取り組みを、チーム全員から生まれるように仕組み化できたことだと思います。
極端な話、僕がここにいなくても、今後も第二領域の活動は生まれ続けると感じていますね。
第二領域に取り組むことは、実は「本人のため」になる!
第二領域に力を入れることは、一見組織のためのように見えます。ですが僕は、「本人のためになること」こそが、一番のメリットだと思っています。
より大きな成果を出そうとすると、時間をかけるか自分の生産性を高めるかしか、方法はないと思っていて。
第二領域の取り組みは、生産性向上に繋がってきます。重要な仕事でも、緊急ではない第二領域の時に手を打っておけば、仕組み化などで工数自体を圧縮できるので。
効率の悪いやり方で進めて10の工数がかかっていた作業も、第二領域として根本的なフローを見直せば、5になるかもしれない。下手したら0にすることだってできるかもしれない。すると、いつもの仕事が楽になり、自分のスキルアップのために時間を使うことができます。
また、「仕組み化する力」そのものも、本人の市場価値の向上につながります。言われたことを言われた通りにスピーディーにやるだけではなく、根本的な課題を特定して解決する方が、本人にとって価値ある経験になると思っています。
この取り組みは部内でもかなり好評で、第二領域に着手する前からCC室にいたメンバーの1人は、「仕事のスタイルが全く変わった」と言っています。
そのメンバーはこれまで、依頼された仕事を受けるスタイルだったのですが、第二領域を強化してからは、何か課題を見つけたら、どう解決すべきかを自分の頭で考え、アクションするようになったんです。
その結果、お世辞の部分もあるとは思うのですが、「仕事がすごい楽しくなってきました」と話してくれて嬉しかったですね。
管理職がいなくても、それ以上の成果が生まれる組織を目指して
僕は、マネージャーの役割のひとつは「仕組み化」だと思っています。管理職がいなくても、管理職以上の成果が出せるチームを作れるのが理想だと思っていて。
僕だけが頑張るより、1人ひとりの能力を発揮できる仕組みができたほうが、チームとしてずっと価値が出せると考えています。
これからも、メンバーが楽しく働ける、生産性の高い組織作りをしていきたいです。(了)
「振り返りの習慣化」がチームの生産性を高める
当媒体SELECKでは、これまで500社以上の課題解決の事例を発信してきました。
その取材を通して、目標を達成し続けるチームは「振り返りからの改善が習慣化している」という傾向を発見しました。
そこで「振り返りからの改善」をbotがサポートする「Wistant(ウィスタント)」というツールを開発しました。
「目標達成するチーム」を作りたいとお考えの経営者・マネージャーの方は、ぜひ、チェックしてみてください。