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ロジカルシンキングを社内にどう浸透させる? 顧客の声を活かした、PDCAの回し方

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〜常にユーザーの声を聞き、常にロジカルに考える。Oisixの新規サービス開発と、2年以上にわたって運用される「設計フォーマット」をご紹介〜

有機野菜を中心とした食材宅配ネットスーパー「Oisix(オイシックス)」は、2000年のサービス開始後、現在は13万人の会員を有するまでに成長を遂げた。

その成長背景にあったのは、運営会社であるオイシックスドット大地株式会社(2017年7月に、オイシックス株式会社より社名変更)の、徹底した「ユーザーの声を聞く」「ロジカルシンキングを行う」というカルチャーだ。

同社で2013年7月にスタートし、現在5万人の会員を抱える「Kit Oisix(キットオイシックス)」。

主菜・副菜を20分で作れるレシピと食材をセットにした同サービスも、ユーザーの声から生まれ、また現在も徹底した顧客ヒアリングによる、サービス改善を続けている。

そして、ただユーザーの声を聞くだけではなく、そこから仮説を立て、検証を進めるPDCAのプロセスも確立されている

例えば新しいデジタル施策の立案を行う際には、共通の「設計フォーマット」を全員が用いる。あらかじめその施策の目的やKPI、スケジュール等を整理することで、論点のズレを防ぎ、次のアクションにつなげやすい仕組みを用意しているのだ。

今回はKit Oisixの開発者であり、またデジタル施策用の設計フォーマットを作成した執行役員の菅 美沙季さんに、同社の取り組みについて、詳しくお話を伺った。

「ゼロイチ」を担うサービス進化室で、Kit Oisixを立ち上げ

私は2009年6月にオイシックスに入社し、現在は執行役員と、サービス進化室の室長を務めています。入社してまずはモバイル事業部に配属され、ガラケー上での販促などを担当していました。

前職はカタログが中心で、私自身も完全に「紙の人」だったので、最初はCVR、CTRのようなWebの用語もまるでわからなくて…。宇宙に来たような感じでしたね(笑)。

そこからチャレンジ人材のような形で、色々な部署を転々としてきました。基本的にはお客様と向き合う、マーケティング的な役割が多かったですね。

その後2013年4月にサービス進化室に異動し、そちらでKit Oisixを立ち上げて、7月にデビューさせた形です。

Kit Oisixは主菜、副菜2品を20分で作れる食材がセットになった、ミールキットです。現在、会員数は5万人を突破しており、累計の出荷数も600万食を突破しました。

サービス進化室の役割は、Kit Oisixのような「今いないお客さまを連れてくる」新規事業を作ることです。既存事業の売上を担うEC事業部に対して、サービス進化室は「ゼロイチ」の部分を担っています

新しい事業を作るにあたっては、立ち上げ初期はうまくいくかどうかは全然わかりません。ですので、あくまでも少人数で、企画から商品の施策、Webページの制作まで、全部自分たちでやっています。

Kit Oisixはそこから生まれた事業の中でも、今のところ一番成功しているサービスですね。

新規事業は、お客様の声からあらゆるチャネルで情報を収集

KitOisixの元になったのは、もともとガラケーのチームで小さく展開していた、3日分の献立キットです。その販売実績が良く、熱狂的なお客様もいらっしゃったので、もっとエッジを立ててサービスを作ろう、ということになりました。

このようにサービス進化室では、既存のお客様の声から、事業が生まれるケースが多いです。そもそも弊社自体が、非常にお客様の声を大事にしているんです

メールやご注文完了ページでアンケートを取ったり、電話をかけたり。他にも、社長を含めて社員が自らお客様のご自宅に伺う、という活動もずっと続けています。

お客様と直接お話をする機会も多いです。例えば「コドモニター」という制度があります。お子さまに弊社にお越しいただき、商品を試食した上で「マルバツ」で評価してもらっています。

すると、「この長さのエノキは食べにくい」といった、リアルな声が聞けるんですよ。そういったお客様の声を肌で感じながら、サービスに活かしていく風土があります。

Kit Oisixに関しても、リリースからこれまで、ずっと同様の活動を続けています。私自身も、この1週間で15、6名のお客様とお会いしていますね。どんな施策であっても全てアンケートをとりますし、継続的なヒアリングは欠かしません

定量と定性のフィードバックを常に見ながら、どんどんPDCAを回していく、というやり方をしています。

実際Kit Oisixも、最初は分量も「2〜3人前」で固定していて、更に4メニューしかなかったんです。でもお客様の声を聞いていると、そもそもお子様をお持ちの家庭と、そうではない場合でニーズがまったく違うことがわかって。

そういった背景から、2人前と3人前のキットをそれぞれ作りました。またキッズメニューや、クイック10という10分で作れるタイプ、プロっぽい料理が作れるシェフのメニュー、さらに冷凍のフローズンタイプ、といった商品を追加してきました。

▼ユーザーニーズに合わせた、様々なメニューを展開

新しいデジタル施策を行う際には、まず共通フォーマットを埋める

弊社では、こういった新しいサービスや施策を展開していくにあたり、ロジカルシンキングを重要視しています。

具体的に言うと、まずはたくさんの仮説を出して、その仮説をお客様の声をもとに絞り込み、強そうな仮説を見極め、実行し、結果を検証する、ということですね。

やはり強い仮説をしっかりと見極めることで、成功確率は上がると思います。もちろん、失敗することもあるのですが。

このようにしっかりとPDCAを回すために、社内で新しいデジタル施策を立案する際には、起案の際に共通のフォーマットを使うようにしています

▼実際に同社で使われているフォーマット(※全体イメージ。詳細は後述)

こちらは2年ほど前に、私が作ったものです。最初はサービス進化室だけで活用していましたが、今では他の部署にも広まっています。

このフォーマットには、企画の目的、仮説、ターゲットユーザーやKPI、検証結果などを記入するようになっています。新しいことを始めたい人はまずこのフォーマットを埋めた上で、上長に企画を持っていく形です。

施策を進めていくにつれて、徐々に目的がズレていく事態を防ぐ

フォーマットを作った背景としては、新しい施策を進める際に、だんだん目的がズレていってしまうケースが見られたことです。

特定のユーザーの声に引っ張られてしまったり、頭が整理されない状態でとにかく突っ走って、結果「なんだっけ」みたいな

こういったことは結構、「あるある」だと思っています。それが起こらないように一度フォーマットを整理しようと考え、作ったものが2年以上も使われていますね。

このフォーマットを埋めることで、自分の考えを整理できます。何もない状態で新しい施策を持ってきても、「何をやりたいの」ということになりがちです。最初の段階で目的などをしっかりチェックすることは、とても重要だと思います。

またこちらには、実験が始まったあとに何をチェックするべきかも記載しています。

具体的には、新しい施策をアップした後、①木曜日の夜、②金曜日の朝、③月曜日の朝、④施策終了時、の4回数値を見ることを推奨しています(※売り場ページが、一部を除き毎週木曜の朝10時頃に更新されるため)。

▼実際の「チェックリスト」の一部

これにより、実験が始まったら安心してしまって、レビューをせずに放置してしまう、といったことも防げます。「どうなった」と聞いて「まだ見てません」みたいな感じになってしまうと、やはり施策を実行した意味がなくなってしまいますので…。

細かい改善を繰り返し、「使い続けられる」フォーマットができた

このフォーマットがずっと使われている背景としては、まず成果が出ていることが大きいですね

やはりこれを使うことで、明らかにスピード感が増しますし、出戻りを起こすことも少なくなります。やりたいことを確実に指標として見られて、データをベースに判断ができるからだと思います。

また、フォーマットが1枚に収まっていて、「これくらいだったら書ける」というボリュームであることも実は良いのかな、と感じています。皆が使うものなので、細かくしすぎない、難しくしすぎない、ということは大切ですね。

ただ、この2年間で、フォーマットそのものもかなりアップデートしてきています

例えばKPIも、最初は細かく色々な項目を設定していたんです。ただ、あまり指定してしまうと、それ以上のことを考えられなくなるというか。「この項目さえ埋めれば良い」という感じになってしまったため、チームに意見をもらって改善しました。

▼実験KPIは、起案者が項目と目標値を設定

他にも、「実験後のネクストアクション」の部分の「うまくいった場合の定義と次アクション」の項目は1年ほど前に追加しました。

▼「ネクストアクション」も企画の発案時に設計

と言うのも、実験がうまくいった、という場合でも、何をもってうまくいったと言うのか、という部分が曖昧になってしまうと意味がなくて。「検証はしたけど次はどうするんだっけ」みたいな感じになってしまうんです。

ですので、実験自体は小さく始めるにしても、最初から未来のことを設計するようにしています。実験を始める前から「うまくいった場合いかない場合」の次アクションを定義しておくことで、その部分を担保できます。

実験によって、意外なユーザー心理が発見できるケースも…

具体的にこのフォーマットを使うケースは様々ですが、とくにA/Bテストをやるような場合には、かなり有効かと思っています。

例えば以前に、「時短食材」を増やしていこうということで、カット野菜の実験をしたことがあって。そもそも当時は、カット野菜をどう売ったら良いのか、そもそもお客様はOisixでカット野菜を買ってくれるのか、といったことを検証しようとしていました。

ターゲットユーザーには、仕事や育児などで忙しい方を想定し、そういったお客様が時間をかけずにすぐに商品を選べるような、商品を並べただけの簡易的なデザインの販売ページと、それぞれの野菜にレシピを付けて、企画ページのように見せるパターン、どちらが良いか実験しました。

すると、明らかに後者のほうが良かったんです。CVRで言うと、1.5倍以上高くなっていました。それはどうしてかと言うと、時短したい、ということ以上に、「レシピが思いつかない」ということに課題感があったんですね。

この実験によって、このようなお客様のニーズが明らかになり、その後のページづくりに活かしていくことができました

Kit Oisixが、当たり前に食卓に上る世界を実現したい

これからのチャレンジとしては、やはりKit Oisixをもっと広めていきたいです。まだ「主流」と呼べるサービスではないと思っているので…。

食事を作るとなると、まずレシピサイトなどでレシピを見た上で、食材を買いに行って、自分で切って、という流れがまだ圧倒的に多いですよね。

イメージで言うと、カーナビに近いと言うか

昔は車に乗って、行き先を確認するために地図を見る、ということが当たり前でしたよね。でもカーナビが出てきたことで、カーナビの指示に沿って行こうと、そもそも人の行動が変わったじゃないですか。そういったことが起こせないかな、と思っています。

「Kit があるから料理ができる」「Kitを使って料理をするのが当たり前」という状況を実現したいという、大きな野望を抱いています(笑)。

その野望を叶えるために、引き続きお客様の声を聞きながら、サービスをどんどん良くしていきたいですね。(了)

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