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  • 天沼 聰

スタートアップ ✕ トップ企業が起こす化学反応とは!?感動を生むコラボ企画の作り方

〜ソニー、伊藤園、エイベックス…スタートアップが大手企業とタイアップ企画を成功させた理由とは?パートナーの選び方、企画の立案、効果測定のノウハウを大公開〜

業界や分野の壁を越えて社外リソースを活用することで、新たな事業やサービスを生み出すオープンイノベーション。

近年では、スタートアップ・ベンチャー企業と、大企業がパートナーシップを組むケースも増加している。

オンライン・ファッションレンタルサービス「airCloset(エアークローゼット)」を運営している、株式会社エアークローゼットも同様だ。

同社は2014年創業のスタートアップにもかかわらず、「ソニー」「伊藤園」「エイベックス」といった大手企業と、タイアップ企画を続々と実現させている。

▼ソニー(株)とのタイアップ企画

数々の企画を実施するその裏側では、ユーザーに感動体験を届けるための企画立案や、そのデータドリブンな効果検証に、独自のこだわりを持っているという。

今回は代表取締役である天沼 聰 (あまぬま さとし)さんに、同社におけるタイアップ企画の考え方や、企画から運営について、実例を基に詳しくお話を伺った。

お客様の「感動体験」のため。業界を越えた積極的なタイアップを

弊社は、普段着に特化した国内初のオンライン・ファッションレンタルサービス「airCloset」を運営しています。

私たちが大切にしているのは、「ワクワクしたり、感動できるお洋服との出会いを作る」ことです。そのための施策のひとつとして、これまで様々なタイアップ企画を実施してきています。

例えば、キットカットさんやエイブルさん、アーティストのEvery Little Thingさんなど、様々な領域で企画を実現してきました。

もともと私の思想として、各社が個別に事業を展開するよりも、他社とコラボレーションする方が、お客様へ提供する価値や、訴求力が高まると考えています。

そうした背景から、私たちは既にサービスを使っているお客さまに、今以上の「ワクワク」や「感動する出会い」が届けられるのであれば、積極的にコラボレーションをしているんです。

▼タイアップ事業者を募る特設ページ

ですので、タイアップ企画は、新規のお客様を獲得するためのマーケティング施策としては考えていません。あくまで、既存のお客様の満足度を高めるために行っています。

「想い」を共にできるパートナーを見極めることが大切

タイアップ企画では、両社で共通のメッセージや価値を届けることが、とても重要です。そのため私たちは、「お互いが同じ方向を向いているか」を必ず見極めるようにしています。

以前、フラワーショップの青山フラワーマーケットさんと、「ファッション ✕ フラワー」というコラボイベントをさせていただきました。

その時、青山フラワーマーケットさんには「ライフスタイルの中に、フラワーを取り入れていく」というメッセージがあって。

私たちの「ファッションレンタルを、ライフスタイルの中であたりまえの存在にしたい」という想いと共感できたので、タイアップすることにしたんです。

その「想い」がズレている場合、コラボレーションが薄っぺらなものになってしまうんですよね。ですので過去には、タイアップのお話をいただいても、お断りすることもありました。

あえて非効率!?毎回「ゼロ」から企画を作るこだわりとは

こうしたタイアップ企画には、決まったやり方はありません。弊社とタイアップ先の企業様でプロジェクトチームを組んで、毎回ゼロベースからディスカッションしています。

企画は届ける価値やメッセージによって、全てオリジナルなものであるべきだと思うんです。

と言うのも、企画は1つひとつが、目的も違えば届けたいメッセージも違います。ですので、それらを全部一緒の「手段」のように捉えたくないと思っていて。

そのこだわりから、これまで2年半で約15社とタイアップしてきましたが、複数の企画を並行してお客様にお届けすることも行っていません。

あくまで「お客様に新しい価値に出会っていただくこと」が目的なので、多少効率が悪くても、1回ずつ行うようにしています。

「ELT仕様」にデザインされた、オリジナルボックスでサプライズ

タイアップ方法のひとつとして、お洋服が届くボックスのデザインをオリジナル仕様にする、というものがあります。

このオリジナルボックスは、Every Little Thingさんとタイアップをした時に、初めて生まれたアイデアです。

「ライフスタイルの中の小さなしあわせ」をテーマに、箱の表面のデザインは大きく変えずに、内側をEvery Little Thing仕様に変えました。

▼ボックスの「内側」がEvery Little Thing仕様

ボックスに入れたポストカードには、Every Little Thingのボーカリストである持田香織さんに、直筆のメッセージを書いてもらいました。

「いつもと違うじぶんを楽しもう」「ありがとう、新しい出会い」といったメッセージと写真を組み合わせて、全10種類のポストカードをランダムに同梱したんです。

お客さまは、箱の中身を開けたときに初めて企画に気が付くので、驚いてくれるだろうし、企画の印象も残りやすいと考えました。

その「宝箱を開ける感じ」の体験をお届けできたことが、良かったなと思っています。

試食会、実店舗、SNS…型にはまらない企画を続々と実現

オリジナルのボックスを使う企画は何回か行っていますが、ひとつとして同じ内容のものはありません。キットカットさんとのコラボレーションのケースは、「毎日の贅沢」がテーマでした。

▼キットカットのサンプルとポストカードが同梱

やはりキットカットを知ってもらうためには、その味まで知ってもらう必要があると思いまして。ボックスに、本物のキットカットのサンプルを入れたんです。

更にボックスの中には、弊社のロゴ入りポストカードも入れています。ただのタイアップやサンプルではなく、airClosetが自信を持って出会っていただきたい商品です、という意味を込めています。

併せて、キットカットを試食するイベントも開催し、その様子を公式SNSアカウントなどから拡散しました。

▼試食会イベントの様子

実際にボックスをお届けしたお客様からは、「箱を開けて、ワッ!キットカットだ~と嬉しい気持ちになりました!美味しかったので、また買って食べたいです」「中のデザインがキットカットになっていて、とても可愛かったです!」といった嬉しいコメントをいただくことができました。

もちろんボックスを使わないコラボレーションもあります。印象深い事例では、不動産最大手のエイブルさんの事例ですね。

エイブルさんには「賃貸女子のライフスタイルを応援したい」という想いがあって。弊社のお客様とも近しい層がターゲットであったため、一緒に企画を行うことにしました。

内容としては、エアークローゼットとエイブルのコラボショップとして「airCloset×ABLE(エアークローゼットエイブル)」 、通称「エアクロエイブル」を表参道にオープンしました。

▼表参道にオープンした実店舗「エアクロエイブル」

クリエイティブな企画を、データドリブンに効果測定する

実はこうしたタイアップ企画は、効果検証をかなりデータドリブンに行っています。

例えば「企画のメッセージが何%の方に伝わったのか」を検証するために、毎回個別のアンケートを取っています。

アンケートの内容は企画ごとに変えていますし、更にイベントの参加人数や、SNSの投稿数など、関係する数字は全てウォッチするようにしています。

正直、企画そのものは完全にクリエイティビティの世界だと思っていて。その中身の評価は、超定性的です。ですが、あくまでやろうとしたことに対しての結果は、数値で管理するべきだと考えています。

過程はどうであれ、「最終的にお客さまがワクワクしてくださったのかどうか」をデータドリブンに測っているということですね。

※同社のデータ活用の取り組みについては、こちらの記事もご覧ください。

オープンイノベーションが、未知の化学反応を生む

タイアップ企画を通じて、自社だけではできない化学反応が生まれるコラボレーションは、オープンイノベーションに近いかもしれないですね。

今後は「Connected Industries(※)」という考え方も広がっていくので、いろいろな企業同士で、データを連携した新たなコラボーレーションが生まれてくると考えています。

※経産省が提唱する、人と機械・システムが協働したり、国境を越えて企業同士がつながることで、新たな付加価値が創出される産業社会のこと。

これからもお客さまに「感動体験」を届けるコラボレーションを、積極的に実施していきたいと考えています。(了)

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