• 公益社団法人ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ
  • 常務理事 事務局長
  • 葦原 一正

1年で来場者数140%増!「若者と女性」に向けて4つのSNSを操る、Bリーグのマーケ戦略

〜「2020年までに来場者数300万人」を掲げて、マーケティング戦略を展開。4つのSNSを使い分け、潜在顧客とコアファンの来場を増やす方法とは〜

2016年9月、男子プロバスケットボールリーグ「B. LEAGUE」が開幕し、日本バスケ界は新たな一歩を踏み出した。

全面LEDコートでの印象的な開幕から始まり、初年度の入場者数は、旧リーグ時の140%増となる226万人を達成。

その裏側には、全国700万人の「観戦意向者」のペルソナ化と、ターゲットとなる「若者」と「女性」に向けた、SNSを中心としたマーケティング戦略があった。

具体的には、TwitterInstagramを「認知」や「試合の観戦意向」を高める目的で運用。一方でLINEFacebookを、「チケット購入へのコンバージョン経路」のひとつとして活用しているという。

今回は、同リーグで事務局長を務める葦原 一正さんと、広報・SNSマーケティングを担当する新出 浩行さんに、2シーズン目を迎えたBリーグのマーケティング戦略について、詳しいお話を伺った。

認知から観戦意向へ。2020年までに「来場者数300万人」を目指す

葦原 男子プロバスケットボールリーグ「B. LEAGUE(以下、Bリーグ)」は、2つの旧プロリーグを1つにする形で、2015年4月に設立されました。

2016年9月に開幕後、現在は2シーズン目を迎え、全国の36クラブが所属しています。

私自身は、7年ほどプロ野球チームの事業戦略立案やマーケティングなどに携わってきた経験から、Bリーグの立ち上げ時に参画しました。現在は、事務局長を務めています。

新出 僕は、広告会社を経て、葦原と同時期にBリーグに入社しました。以来、広報に従事し、マスプロモーションからSNS運用まで、メディア関連のオペレーションを担当しています。

【左】新出さん、【右】葦原さん

葦原 Bリーグでは、「デジタルマーケティングの推進」と「権益の統合」を事業の2大方針に掲げています。

その中でリーグ全体では、「2020年までに、来場者数を300万人にする」ということをKGIに置いています。

この「300万人」は、B1リーグ戦の全試合が満員となる人数に相当するのですが、達成のためには、毎年、来場者数を10%増加することが必要です。

これは、2〜3%増が通常と言われるスポーツの世界では、かなりアグレッシブな数値です。

新出 また「認知」の部分は、広報部のミッションになります。昨年度は「リーグ認知度」をKPIとして活動し、結果として旧リーグ時の約150%増となる、65%まで認知度を向上させることができました。

ですが、今課題に感じているのは、実際に「観戦したい人」の割合が、認知している人の2割ほどしかいないということです。


そこで今シーズンからは、KPIを「観戦意向者数」に見直しました。この人数を増やすためには、プロモーションだけではなく、ブランディングが重要になってきます。

そこで、潜在来場者となるターゲット層を定めた上で、Bリーグの魅力を伝える媒体としてSNSの運用に注力しています。

ターゲットは「若者」と「女性」。SNSを活用し、観戦意向を高める

葦原 もともと、Bリーグ立ち上げ当初に、バスケに対する意識調査を実施しました。

すると、観戦してみたいと回答した「観戦意向者」が、全国におよそ700万人いることがわかったんです。

そして興味深いことに、開幕戦の年代別テレビ視聴率において、12歳以下の男女や、20〜30代前半の男性といった「若い世代」の数値が、非常に高いという傾向がありました。

50代以上を主な視聴者層とする野球やサッカーと比べると、その差は明らかだったんです。また、他のスポーツに比べると、観戦意向者の女性比率が高いことも特徴的でした。

その調査をもとに、「若者」と「女性」をコアターゲットとして、「SAMIT」という観戦意向者のペルソナを定義しました。

▼ 観戦意向者のペルソナ「SAMIT」


このペルソナは、ひとりよりも集団観戦を好み、オシャレで、お出掛けが好きなアクティブな人。また、情報収集の媒体はスマホや専門誌を中心とし、流行にも敏感で、自らも積極的に発信を行うといった特徴をもっています。

そこで、TVや雑誌などのマスメディアを利用して一気に認知を広めた後は、SNSや「B. HAPPY」というライトユーザー向けのWebページなどを活用して、潜在層の観戦意向を高める施策を始めました。

また同時に、コアファンへの適切なアプローチも重要だと考えています。

というのも、初めて来場した人を対象に、「なぜ来場したのか?」という1対1のインタビュー調査を実施したことがありまして。その際に質問を深堀りしていくと、全員が「誘われたから」という理由に辿りついたんですよ。

そこで、潜在層の観戦意向を高めるだけでなく、「コアファンにどのような情報を提供すると、周囲の人を誘いたくなるのか?」という目線が大切なんだなと気づきました。

そのため、会員アプリの開発では、購入チケットのシェア機能など、コアファンが「誘いやすい」UX設計を意識しています。

コアファンにシェアされやすい投稿を。Twitterが一番の拡散の場

新出 SNSは、Twitter、Instagram、Facebook、LINEの4つを中心に、公式Webサイトと連携させながら、最適なチャネルで情報を出し分けています。

その中で、最も「拡散」を見込める媒体は、やはり若年層のユーザーが多いTwitterですね。この投稿では、コアファンが「シェアしたくなる」ようなコンテンツ作りを意識しています。

例えば、ファインプレーやかっこいい選手のプレーなど、試合のハイライトを自分たちで編集し、ショートクリップ動画でアップしたりしています。

▼実際のTwitter投稿

また、ソーシャル上のお客様の反応は、毎試合チェックするようにしています。Twitter上の主なコメントを中心に集約して、スタッフ全員にメールでフィードバックしています。

SNS上で話題になっていることに対しては、Bリーグとしての対策や意向を伝えたりして、双方向のコミュニケーションを取っていますね。

インスタは女性を意識!ファンを巻き込んだ「バレンタイン企画」も

新出 また、若い女性をターゲットにした情報発信では、Instagramをメインに運用しています。

ここでは、Bリーグを知らない人々へも認知を広げるため、バスケと全く関係のないコンテンツも投稿しています。

例えば、節分の日には、「# 節分」のハッシュタグ付きで、可愛さを意識した写真を投稿しました。他にも、料理を作ってアップしたりなど、いわゆる「インスタ映え」するような投稿を意識しています。

▼節分の日の、Instagram投稿


Instagramのアカウントって、検索で探すか、外部リンク経由でないと見つけることが難しいじゃないですか。

そのため、ハッシュタグを活用して外部からの流入機会を作り、気に入った投稿が「たまたまBリーグのアカウントだった」というような接点作りをしています。

さらに、Instagramでの投稿に加えて、女性向けの「バレンタイン企画」もSNS上で展開しました。

これは「モテ男No.1決定戦」というタイトルで、「#Bリーグバレンタイン」という共通のハッシュタグをつけて、自分の好きな選手に投票するという企画です。

投票期間を2週間ほど設けたのですが、SNS全体で前年の約7倍となる23万票以上が集まり、とても盛り上がりましたね。

▼Twitter上での「バレンタイン企画」の結果発表

LINEとFacebookの活用で、SNSからのチケット購入比率が3割に!

新出 このように、TwitterやInstagramは、主に認知や観戦意向を高める目的で運用していますが、一方のLINEFacebookでは、チケット購入へのコンバージョンにも活用しています。

特にLINEでは、プッシュ通知でダイレクトに届けたい情報を伝えられるので、4つの公式SNSのうち、チケット購入へのコンバージョン率が最も高いですね。

2017年の9月に公式スタンプを配信したこともあり、2016年11月のアカウント開設以降、早くも420万人以上の友だち数を獲得しています。

コンテンツの投稿は、あまり頻繁にするとブロックされてしまうため、週に1回のペースで、大体1メッセージだけ送るようにしています。

また、送信メッセージの内容はできる限り簡潔にして、欲しい情報に自分でアクセスしやすいようなクリエイティブにしていますね。

具体的には、各SNSや試合スケジュール、ECサイトなどのメニューボタンを、トーク画面の下に固定表示しています。

▼LINEトーク画面の赤枠で囲んである位置に、メニューボタンを固定

一方のFacebookでは、インタラクティブなコミュニケーションが生まれやすいライブ配信を積極的に取り入れるなど、コアファンが一緒にチケットを購入して友だちを誘いやすくなるコンテンツを意識しています。

こうした施策により、昨シーズンのB.LEAGUE FINALの先行販売では、チケット購入数のおよそ30%がSNS経由となり、主要なコンバージョン経路のひとつとなっています。

バスケを通じて、リアルなコミュニケーションを豊かにしたい

葦原 デジタルマーケティングを推進している中で、個人的にすごく思うのは「スポーツはコミュニケーションツールのひとつに過ぎない」ということです。

誰でも、ボールひとつあるだけで友達と仲良くなれたり、応援しているうちに隣の人と盛り上がったりした経験を持っていると思うんです。

そのように、スポーツを通じて人と人が繋がったり、楽しくなったりする世界を作ることが大切だと思っていて。

なので、デジタルをやる上でも、最終的に意識しているのは常に「リアル」なんです。「みんなで一緒に見に来てね」「色々な人と仲良くなってね」というメッセージは、ずっと心に抱いていますね。

新出 今年の3月から4月にかけて、「バスケに、卒業はない。」というテーマで、「B.FES 2018春」を開催します。

▼「B.FES 2018春」のトップページ画像

新たな出会いと別れを迎える「春」という季節に、新しい環境でもバスケをプレーしたり観戦したりしていただけるよう、全国各地のクラブでSNSを活用した統一の企画を行います。

この企画を通じて、例えば高校の部活で「同窓会やりませんか」といったように、仲間で集まるきっかけ作りができれば嬉しいですね。

今後も、バスケの世界をもっと盛り上げていって、人と人とのリアルなコミュニケーションを、より豊かにしていきたいと思います。(了)

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