• 株式会社ピースオブケイク
  • デザイナー
  • 松下 由季・川井田 好應

サービス設計の指針は「noteさん」の人格。MAU1,000万突破・noteのブランディング術

~「noteらしさ」を、デジタル・リアル両面の体験で表現する方法とは? サービスブランディングを支える、デザイナーチームの取り組みを紹介~

2014年4月のローンチ後、5年でMAU1,000万人以上まで急成長を遂げている「note(ノート)」。

同サービスを運営する株式会社ピースオブケイクは、「だれもが創作をはじめ、続けられるようにする」というミッションの実現を最上位としている。それに伴い、noteの成長においても、売上のためだけに短期施策を行うことはないという。

サービスづくりで大切にしていること、それをひと言で表現すると「noteらしさ」だ。

サービスや会社が規模を拡大する中、社内にもともとあった共通認識をより具体的に定義するため、2018年3月にミッション・ビジョン・バリューを明確化。そして、2018年11月には、noteの「人格」づくりを開始した。

社員全員から意見を募る形で、noteの人格を絵と文言で表現し、それをサービス設計の目安にしているという。

▼実際に制作した「noteさん」の人格

さらに、サービスの機能改善から、オフィスの空間設計、グッズの制作まで、デジタル・リアルのあらゆる接触面において「noteらしさ」を追求しているそうだ。

今回は、デザイナーチームでnoteらしさの定義づくりを主導し、グッズなどの制作物も担当する川井田さんと、noteのサービス機能の改善提案や、施策管理を担当する松下さんに、noteのブランディングについてお話を伺った。

「売上」ではなく「noteらしさ」を実現するためのサービス改善を

川井田 僕は元々、広告やグラフィックデザインの世界に長年いたのですが、noteのブランディングに携わりたいと思い、2018年の11月にピースオブケイクに入社しました。

現在、noteには5名のデザイナーが在籍していますが、それぞれ経歴や得意領域が異なっています。

例えば、フロントエンドのコードを書くのが得意な人もいれば、デザインシステムの設計が得意な人もいます。それぞれの得意分野があるので、プロジェクトや施策ごとに自主的にメンバーが手をあげて、業務を担当するような体制で動いていますね。

▼左:松下さん、右:川井田さん

松下 私は川井田さんと同じ日に入社したのですが、前職でも事業会社のインハウスデザイナーとして、UI/UXデザインから施策の管理までを担当していました。

その経験を活かす形で、弊社ではnoteのサービス機能改善を担う「カイゼンチーム」で、実制作の作業に加えて、ユーザー調査からの施策提案や、出てきた施策の管理などを担当しています。

弊社では「だれもが創作をはじめ、続けられるようにする」というミッションと、それに紐づくビジョン、バリューを定めています。

▼同社のミッション・バリュー

松下 そもそもカイゼンチームでは、noteをグロースさせていくためのKPIとして「売上」は追っていません。

そうではなく、ミッションやバリューを指針として、「クリエイターがより楽しく、長く創作を続けられるにはどうすべきか」を最上位にカイゼン施策を回しています。

そのため、「noteらしさ」をとても大事にしているのですが、私たちが入社した時点では「『儲かる』や『売れる』という言葉は使わない」といった共通認識はあったものの、明文化した「noteらしさ」の定義がなくて。

そこで、細かい部分の認識を合わせ、新しく入ったメンバーでもすぐ理解できるように、川井田さんやデザイナーチームのメンバーとともに、noteの「人格」づくりに取り組みました。

「noteらしさ」を明確にするため、絵と文言で「人格」を定義

川井田 まず、社員全員に「noteがどのように思われたいか」「どのような世界観を目指したいか」という問いかけをして、ふせんに書き出してもらいました。それを誰が書いたか伏せる形で、壁に貼り出したんですね。

そして、「これはnoteっぽい」「これはちょっと違うかもしれない」といった感じで、各自でnoteらしいと思うものにシールを貼って投票しました。

例えば「明日の世界が、今日よりも明るく優しいことを望む。」は、一番多くの票を集めていましたね。こうして得票が多かったものを元に、noteの人格として、絵と文言でまとめました。

松下 noteの人格を決めると、サービスの文言ひとつに対しても「noteさんはこういう言葉遣いをするんだっけ?」といった判断ができます。

例えば「時々サンタの帽子かぶったりする」って一見冗談みたいなのですが、季節的なものがあったときに、noteはどういう言動をすべきなのか、というサービス思想の指針になるんです。

川井田 みんなで考えを出し合うプロセスにしたことで、noteの思想や価値観がよりメンバーに浸透する効果もあったかなと思います。

松下 実際にnoteを使っている人たちが触れている部分って、必ずしもプロダクトだけじゃないと思っていて。カスタマーサポートや、SNSの投稿も接点になります。

そうしたすべての接触面での印象が積み重なって「noteらしさ」が伝わっていくと思うので、人格の定義によって社内の共通認識を明確にできたことは、大きな一歩でしたね。

「noteがやっていて違和感がないか」を基準に、文言を変更

川井田 定義した「noteらしさ」をサービス上で表現するため、様々な機能のカイゼンに取り組んでいます。

例えば最近、通知の文言をがらっと整理したのですが、文字数をかなり減らしました。

今まではわりと長く丁寧に書いていたのですが、noteらしさって「丁寧さ」だけじゃなくて「わかりやすさ」にもあるんですね。そのバランスを考えながら、クリエイターに伝わりやすい文言に変えました。

例えば「〇〇さんがフォローしました」「〇〇さんがスキしました」といったように、主語・述語・目的語の文法を揃えたり、口語でよく使う漢字はひらがなで表記するようにして、見やすさを重視しています。

また通知以外でも、サービス上の文言がnoteらしいかどうかを社員にヒアリングして、意見を取り入れています。

実際に使われている文言をホワイトボードに貼り出して、通りがかった社員に「noteがやっていて違和感があるかないか」について、それぞれの意見をふせんに書いて貼ってもらったりしました。

▼実際に「サービス上の文言」を議論したホワイトボード

すると、「ここに違う人格の人いない?」みたいな形でブレが見えてきて(笑)。違和感があるものはどういう文言にすべきかを考え、順次修正しているところです。

松下 さらに、noteらしさの表現の発展として、クリエイターが楽しく創作し続けられるためのUX改善も行っています。

例えば、読者からの「スキ」に対して「ありがとう!私もスキ」など、クリエイターごとに特別なメッセージを表示できる機能だったり、最近では、「はじめての投稿」など創作活動の節目で獲得できる「バッジ」の機能を作りました。

▼noteに追加された「バッジ」機能

松下 こうしたクリエイター同士、あるいはクリエイターと読者間のコミュニケーションを生むような仕組みや、創作を通して楽しさや達成感を得られる仕組みをつくることで、創作を続けるモチベーションにつながるといいなと思っています。

デジタルに加えて、リアルの体験も。noteらしさを空間やモノで表現

松下 さらに、noteらしさを体現するには、「デジタル」だけでなく「リアル」の体験も大切だと思っていて。

というのも、noteってイベントの開催が多いんですね。クリエイターと社員でお話する「お茶会」や、クリエイター同士がつながれるイベントなどが定期的にあるので、そこでもnoteらしい心地よさを感じていただけたらと考えています。

川井田 そこで、お茶会で使えるようなコーヒーのスリーブだったり、非公式のミートアップを企画してくれたクリエイターに渡す用のピンバッジだったり、様々なnoteのグッズを制作しています。

川井田 リアルな場でnoteらしさを出すことは、デジタル以上に難しいなと感じていますね。まだまだPDCAを回している段階です。

ですが、グッズの制作の際には、プラットフォームになるというnoteの思想を大切にして、装飾しすぎないプレーンなものを作るように意識しています。

オフィスのエントランスや、会議室の装飾品なども、すべてシンプルなトーンで統一していますね。

すべてのクリエイターが住みやすい「街」づくりを目指して

松下 私たちは、noteという「街」をつくっていきたいと考えているのですが、今はまだ、街としては偏っている部分を感じるところもあって。守っていくべき部分と、拡張していくべき部分があるのかなと思っています。

守るべき部分でいうと、やはり「noteらしい雰囲気」かなと思っています。今でも、アンケートやお茶会などでクリエイターにお話を伺うと、よく「noteの雰囲気がいい」という声を聞くんですね。

この雰囲気ってすごくふわっとした言葉なのですが、サービス規模が成長していく中でも、そこをいかにブラさないで一貫し続けられるか、その良さをずっと感じていただけるかは、大事にしていきたいと思っています。

一方で、拡張すべき点としては、例えば今後noteが扱っていく作品の幅だったり、扱う内容の基準だったりがあるかと思います。

テキスト以外にも、音楽や写真、イラストなどを投稿できるのですが、すべての作品が最適な形で作られ、読者に届けられているかというと、今は決してそうではありません。

あらゆるクリエイターの方々が住む街になるためには、徐々に拡張していくべき部分なのかなと感じていますね。

川井田 街って「治安」も大事ですが、住みやすさで言うと「引っ越して来てすぐに友達ができるか」とか「何かを主張した時にその声が届きやすいか」といった要素なども大切だと思っていて。

どうしても、長くいるクリエイターの方が多くのフォロワーがいて、記事も発見されやすかったりするので、新しく入ってきた人たちも住みやすいと思えるような街を作っていきたいと思っています。

色んな人に出会いやすくする、好きなことがもっと自由にできるようにするなど、「よりみんなが居心地の良い街をつくるために何をすべきか」に正面から向き合って、今後も様々なチャレンジをしていきたいです。(了)

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