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【特別企画】「4つの主語から考える採用広報」実践しました! TBM × ワンキャリア対談

〜「主語を散らす」ことで、採用広報の差別化を図る。SELECK読者に過去のインタビュイーがアドバイスを送る「SELECK、実践しました!」対談〜

特別企画「SELECK、実践しました!」対談は、読者の方がSELECKの記事を参考に実践した取り組みに対して、元記事のインタビュイーの方にアドバイスをいただくという企画です。

今回は、株式会社ワンキャリアのPR Director寺口 浩大さんに過去取材した「採用広報」がテーマ。

多くの企業は「コミュ障状態」にある? 「自画自賛」から脱却する、新しい採用広報

本事例をもとに自社の採用ブランディングの改善に取り組まれたのは、昨年、国内で6社目となるユニコーン企業の仲間入りを果たした、株式会社TBMの増田 稜さん。

「4つの主語」から情報発信することで他社との差別化を図る、新しい採用広報の在り方。考え方はわかるけれど、発信が弱い部分をどのように克服していったらいいの…?

実践の過程で生じてきたリアルなお悩みについて、寺口さんに答えていただきました。採用やPRに携わる方々、ぜひご覧ください!

教えて、寺口さん!「採用コミュニケーション」の相談ランチ

ーー本日はよろしくお願いします。増田さんと寺口さんは、以前からのお知り合いということですが、最初におふたりの自己紹介をお願いできますか?

増田 はい、本日はよろしくお願いします。寺口さんとこうして改めてお話しするのは少し緊張しますね(笑)。

私が勤める株式会社TBMは、石灰石を主原料としてプラスチックや紙の代替となる新素材「LIMEX(ライメックス)」及びLIMEX製品の開発・製造・販売を行う、ものづくり系のベンチャー企業です。2011年に創業し、現在は約160名の社員が在籍しています。

私が入社した2017年当時は、本社が30名〜40名ほどの規模感で、採用や組織開発の専任者がいない状況でした。そのなかで私がHR担当となり、採用を軸に、採用広報や組織開発を担当してきました。2019年にはチームを立ち上げ、現在は4名で新たな取り組みを進めています。

寺口さんと知り合ったのは、Twitterでお声がけさせていただいたのがきっかけなんです。「採用コミュニケーションに関してご相談させていただけませんか」とDMして、ランチをしたのが始まりでした。

▼【左】株式会社TBM 増田 稜さん、【右】株式会社ワンキャリア 寺口 浩大さん

寺口 そうそう、一昨年の秋くらいでしたよね。昨年の秋に、SELECKさんに取材いただいたコーポレートコミュニケーションに関して色々と考えていた頃だったので、増田さんからのご相談を受けて、アドバイスというよりは関心ごとが一致して盛り上がった感じでした(笑)。

増田 当時、採用力をいかに高めていくか、が弊社の課題だったんです。採用力を「会社が求める人材を、適切なタイミングで、迅速に採用できる力」と定義したときに、いくつかの課題が挙がってきたのですが、そのひとつが「コミュニケーション」でした。

弊社には、コーポレート・コミュニケーション本部という部署が存在し、製品に関する広報活動については以前から積極的に行っていたため、一定の成果が出ていました。

一方で、HRマーケットに対する組織や事業の魅力を伝えるコミュニケーションや、その前提となる、社員のエンゲージメントを高めるインターナルコミュニケーションについては、リソース不足もあり、本腰を入れて取り組めていませんでした。

参考資料を読んだりして理論はなんとなくわかるものの、実践となると正直なところ手がつけられていなくて。そこで弊社の執行役員CMOの笹木に相談をしながら、一方で寺口さんにもご相談したという経緯です。

「4つの主語」から現状の発信状況を整理。見えてきたものとは…?

ーー採用のコミュニケーションに関して、最初に何から取り組まれたんですか?

増田 最初に、会社として「各ステークホルダーに何を約束するのか」を言語化しました。候補者、従業員、ステークホルダーに対するブランドプロミスの定義です。

TBMに当てはまるキーワードを洗い出し、組織として提供できるファンクショナルベネフィット、エモーショナルベネフィット、ファクトを整理しながら議論した結果、候補者に対しては「サステナビリティ × グローバル × ものづくりベンチャー企業」というプロミスを定めました。

では実際に、どのようなコミュニケーションを取っていくべきなのかを考える際に、寺口さんの記事にあった「4つの主語」からの情報発信を参考にしました。

▼採用コミュニケーションにおける「4つの主語」

We…オウンドメディアやペイドメディアなどを通じた、自社主体の発信
I…SNSやブログなどを通じた、自社に帰属意識のある個人からの発信
It…主にオーガニックの外部メディアなどを通じた、第三者機関からの発信
He/She…採用候補者やアルムナイなど、自社に属さない第三者からの発信

詳細はこちら:多くの企業は「コミュ障状態」にある? 「自画自賛」から脱却する、新しい採用広報

これに倣って、自社の現状を4象限に整理してみました。すると、我々の場合は「It」にあたる外部メディアでの露出は十分にある。一方で、「I」や「He/She」からの発信量が少なかったり、「We」からの発信内容に偏りがあったりといった状況を可視化できました。

▼実際に、TBMさんが整理した採用広報の状況(2019年9月時点)

寺口 他社さんの相談をお受けしてよくあるのが、WeやIからの発信が多い、いわゆる「自画自賛」のような状態なのですが、TBMさんの場合は逆だったんですよね。なんというか「奥ゆかしいな」という印象でした(笑)。

増田 私も意識できていなかったのですが、この4象限に分けてみたことで、取り組むべきことが明確になりましたね。そこから、採用広報コンテンツのテーマ拡充や、CX(候補者体験)の向上といった施策を始めました。

昨年の11月に、日本経済新聞で発表された「NEXTユニコーン調査」において、TBMの時価総額が1,200億円を超えたというニュースもあり、2020年の前期は、採用の応募数が昨年比で約2倍以上に成長しました。中途採用を中心に、5,000名以上の応募を獲得しています。

課題は「I」からの発信の弱さ。どうやって強化すればいいの?

ーーすばらしい成果ですね!実践する過程で、つまずくようなポイントはあったのでしょうか?

増田 Weの拡充に関しては、比較的うまくいっているのですが、Iの発信がなかなか増えなくて。Twitterをしている5名前後の社員も、際立って発信力があるわけでもなく…。ワンキャリアさんは個の発信が強いと思うので、ここをご相談したいなと思っていました。

寺口 Twitterかぁ…。でも僕は正直、個人からの発信って「諸刃の剣」だと思っているんですよ。

個人アカウントは、あくまでコーポレートブランドの表現手段のひとつであって、本来コーポレートでは取り得ないコミュニケーションを埋めていくものだと思うんですね。にも関わらず、たまに個人が炎上しちゃってることもあるじゃないですか(笑)。これって本末転倒だと思うんです。

Weで発言した方がいいことはコーポレートとして発信すべきだし、個人ですき間を埋める必要がないのなら、すべてコーポレートでもいいかもしれません。ただ、なぜ「I」でも発信するのかを考える上で、2つの観点があると思っています。

ひとつは、時代の流れが「モノ消費→コト消費→ヒト消費」に移り変わっているということ。例えばコスメなどがわかりやすいと思いますが、何を買うかより、誰が使っているかで買ったりしますよね。

これはキャリア選択でも同じトレンドだと思っていて、まず会社で働く「人」が入り口となり、その人が働いている会社ってどんなだろうという興味から「企業」を知るケースが実際に増えている。

もちろんこれは意思決定における一要素でしかないですが、コーポレートのブランドで興味喚起できないところを個人が補う、というのは手段として持っていると強いと感じます。

もうひとつは、Weで語れることと、Iで語れることは違うということ。個人からストーリーを語ることで、コーポレートでは届かない層に興味を持ってもらえることがあります。

逆に言えば、コーポレートのブランドが身体に染み渡っていないと、ストーリーを語れなかったりブランドアクションができなかったりすると思うんですよ。なので、まずはコーポレートブランドを代弁できる人を増やすことが、第一歩なのかなと思いますね。

増田 弊社も「組織の一員」というエンゲージメントを持つ社員は多いと思うのですが、外部に会社を発信する時に、高い熱量を込めて話せるか、自分の言葉で語れるかについては、社員によって個人差があるかもしれないです。

ちなみに、寺口さんご自身が発信される際に意識されていることってありますか?

寺口 元々、シンプルに文章を書くのが好きだったんですよね。自分が書いたnoteを他の人が見てどう思うかを知りたいなと思って、Twitterに投稿したりして。そしたら共感や応援などの反応があったので、無理なく続けられている感じですかね。

逆にTwitterのフォロワーを増やそうと意図的にツイートするのは、本末転倒であまり意味がないと思っています。採用において、全員に好きになってもらう必要はないじゃないですか。

その意味では、好きになってもらうために自分を着飾るのではなくて、自然体で振舞っておくことが一番いいんじゃないかなと思います。

ニッチな候補者にアプローチする、コミュニケーション手段とは?

増田 中途採用に関しては、そもそもターゲットにあたる方々がSNSにいないという課題感もあります。というのも、求めるスキルセットがかなりニッチな職種もあり、Twitterをやっていない方も多くて。この辺りについては、どのようにコミュニケーションしていけば良いのでしょうか?

寺口 なかなか難しい問題ですね(笑)。今はどのように取り組まれているんですか?

増田 組織のカルチャーを伝えるオウンドメディアのコンテンツは増やしています。以前は、わりと職種に依らずジェネラルに使えるコンテンツを作っていたのですが、より製造現場にフォーカスしたものや、開発研究者にフォーカスしたものなどを追加で作っています。ただ、それが本当に届いているかはわからないなと思っていて。

寺口 いい取り組みですね。ひとつ言えるのは、オウンドメディアってコンテンツを溜める場所としてはめちゃくちゃいいのですが、新しい人にリーチするには結構難しいかなとも思います。

ここに関しては、コンテンツとデリバリーという2つの視点から、オウンドメディアとペイドメディアを使い分けることが大切かなと思っていて。

例えば、もともと興味を持っている人の関心をさらに深めるコンテンツであればオウンドでいい。一方で、新しい切り口で今まで関心のなかった人を振り向かせるコンテンツであれば、何かとブリッジをかけるようなアーンドやペイドを使うのがやはり効果的です。

まずは、ターゲットとなる人たちに刺さる名刺代わりのコンテンツをひとつ世の中に対して作っておく。それがしっかり出回るようにデリバリーする。オウンド以外のところで勝負を仕掛けるタイミングは、やはりどこかで必要になるんだろうなというのは思いますね。

採用ブランディングに対する投資は「KPIを握らない」ことが鍵?

増田 そうなると、次に難しいのがROIの判断ですよね。寺口さんの仰るとおり、WeやIだけではリーチできない層は確実にいると思うので、そこに投資するための判断材料が必要だなと。

寺口 難しいところですね。僕は、コンテンツを通じたブランド投資を、むやみにROIの議論に持ち込まない方がいいと思っています。

なぜかと言うと、ROIって「Return On Investment(投資対効果)」じゃないですか。投資は、基本的にアセットが生まれるものに対して行うものですが、ブランド投資はアセットが試算しにくいですよね。一応のフレームはあるけれど普及していない。

なのでROIの議論をしても、結局はCPA(獲得単価:Cost Per Acquisition)の話になってしまう。そうすると、ブランド投資が採用コストに加算されて、現場はどんどんしんどくなるんですよ。

だから僕は、むしろ初めはKPIを握らないことが採用ブランディングを成功させる鍵だと思っています。インプレッションやPVなど、最初は全部握らない。ただやっていくうちに指標は見えてくるので、そのときに適切な成果指標を置けばいいのかなと。

増田 KPIを握らずにブランド投資をするには、どうやって周囲の理解を得ればいいのでしょうか。

寺口 このような公式がない世界は、「何を言ったか」よりも「誰が言ったか」が一周回って合理的なのかなと思うんですよね。

というのも、これまで何かを言って何かをやってきた人が、その「誰か」になれる訳じゃないですか。誰でも言えるからこそ、どんな実績を出してきた人なのかが重要になる。

僕も初めて大型キャンペーンをやったときは、怖くて震えてましたから。これだけ投資してポシャったらどうしようって(笑)。

それでもブランドアクションを実行できた結果、その価値がちゃんと見えて次につながる。そしてそれは時間が経つとジワジワ効いてくることがわかってくる。その一歩を踏み出せる信頼があるかどうかが、結構大事かなと思いますね。

奥ゆかしい企業からの脱却。TBMが目指すコミュニケーションとは

ーーTBMさんが、今後取り組んでいきたいことについて教えていただけますか?

増田 ひとつは、今年の5月に開設した「Times Bridge Media」というオウンドメディアで、コンテンツを溜めていくことに注力したいです。

このメディアを通じて、候補者に対する情報発信と、インターナルコミュニケーションの改善につなげたいと思っていて。

組織の急拡大によって、会社の思想や過去の文脈などが、人と人とのコミュニケーションだけだと伝わりきらない部分が多くなってきたので、きちんとテキストに残すことで資産にしたいと思っています。

もうひとつは、候補者体験(CX)の向上ですね。先ほど話したようなニッチな候補者の方々にどうリーチしていくかを考えたときに、リーチできた人からどう広げられるかを考えることも大事だなと。

そこでTBMの採用活動に関わってくれた方々に最高の体験を提供して、そこから拡散してもらえるような設計をしたいと考え、今年の2月から「候補者アンケート」を導入しました。

今、数十問からなるアンケート回答を元にCXの改善を進めているところですが、この情報を整理して社内にアウトプットすることで、全社の採用力が上がってきていると感じます。また、採用に対する考え方や言葉が整理されていけば、自ずとIやhe/sheの発信量も増えてくるのかなと思っています。

寺口 TBMさんのすごいところは、ブランドプロミスのひとつにもあるように「サステナビリティ」だと思うんですよ。自社の魅力をいかに伝えるかをがんばる大会だと持続しなくて、候補者の本音を取りに行って最高の体験が提供できるように改善を続けていく。

組織の在り方としても、世代を超えて一緒に挑戦する体制を取っていて、それ自体がサステナビリティを体現するブランドアクションだなって思いますね。

増田 ありがとうございます。仰るとおり、20代〜90代のメンバーが一丸となって活動していますね。サステナビリティ領域のトップランナーになれるように、今後も邁進していきたいと思います。まだまだこれからですが、今日も本当に勉強になりました。寺口さん、引き続きよろしくお願いします!(了)

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