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「ゼロ」からの挑戦!メガネメーカーからイノベーションを、JINS MEME・5年半の軌跡

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〜「何となく」では、本気の働き方改革とは言えない。生産性を見える化するプロダクト、JINS MEMEの商品開発〜

「働き方改革」や「生産性の向上」というキーワードが叫ばれるようになって久しい。だが、実際に「生産性が上がった」という事実を数値に基づいて検証し、効果を上げている事例は非常に限られている。

そんな状態に一石を投じるのが、株式会社ジンズが開発した世界初の「集中」を可視化するメガネ型ウェアラブルデバイス「JINS MEME(ジンズ・ ミーム)だ。

JINS MEMEでは、眉間と鼻あてにある3つのセンサーによって、人の「頭・心・体」の状態を計測し、「集中」の度合いをアプリ上に可視化する。実際に、テレワークの導入による生産性の変化を定量化するなど、そのビジネスシーンにおける活用も拡大中だ。

同社は、もともと「メガネメーカー」から始まった小売企業だ。従って、JINS MEMEの開発を行なう以前は、その分野での経験やノウハウはほぼ「ゼロ」の状態にあったという

実際に商品の発案から発売までには、5年以上の時間を費やした。社内にはないノウハウを持つ多くの外部企業と協業しながら、現在の姿にまでたどり着いたという

今回は、その開発初期からプロダクトに関わってきた井上 一鷹(かずたか)さんに、JINS MEMEのプロダクト開発について、詳しいお話を伺った。

何となく、を可視化する!生産性を本気で考えるための「JINS MEME」

今、「働き方改革」ということが叫ばれていますよね。でも結局「残業を減らす」という話しかしていないと思っていて。

本当は、労働人口が減っていく中で残業時間を抑えていこうとしたら、生産性を上げないといけないんですよ。けれど、その生産性と呼んでいるものがそもそも計測できていないのが、現状だと思います

言うなれば今の状態は、体重計に乗ったことのない人が、痩せようとしているようなものです。数字での目標設定ができておらず、「何となく」痩せようとしているんですね。

ですので、生産性が低い状態というものを特定して、ムダな時間を削減しましょう、さらに、生産性を上げる方法を知りましょう、と。このふたつを見える化するのが、JINS MEMEだと考えています。

現在、様々な業種で、JINS MEMEを活用した生産性向上の取り組みが実施されています。それによって、世界で初めて「集中」というラベルのついたデータが蓄積されてきているんです。その結果を見ていると、色々なことがわかりますね。

▼まばたき、目の動き、姿勢の状態を計測する「JINS MEME」

例えば、ビジネスマンが最も「深い集中」に入れている割合を計測すると、やはり週の半ばである水曜日が高くなる傾向があります。

ただ、この「水曜が高い」というデータを人に見せると「水曜にノー残業デーって、もったいないんじゃないか」という議論が始まります。でも逆に「水曜はノー残業デーだから、生産性が高いんだ」と言う人もいて。

そのどちらが正しいかって、わからないですよね。ですので、測ればいいんですよ。今週はノー残業デーやる、来週はやらない。その差を、JINS MEMEで計測すれば良いわけです。

これによって、「何となく」がきちんと可視化され、働き方改革におけるKPI管理ができるようになります。これで初めて、生産性を上げるということを本気で考えられるのではないかというのが、僕たちの提案です

先日7月25日には、経済産業省及びIoT推進ラボが主催する「HR-Solution Contest ―働き方改革×テクノロジー―」にて、グランプリを受賞することもできました。その日は本当に嬉しくて、翌朝の3時半まで寝られませんでしたね(笑)。

目の動き、まばたき、姿勢の計測によって「集中」を可視化する

JINS MEMEは、頭・心・体の3つを100点満点で計測することで、「集中」している状態を可視化するデバイスです。

▼JINS MEMEのアプリのスクリーンショット

僕がジンズに入社したのは2012年の1月です。しかし製品のアイデア自体は、それ以前にニンテンドーDSの「脳トレ」で有名な、東北大学の川島 隆太教授からいただいていました。

その時は、「集中の可視化」を打ち出してはいなかったですね。川島先生に、「眼電位(がんでんい)」というものの測定技術を教えていただいて、それを認知症対策に活かせるのではないか、ということが始まりでした

実は目は、微弱ながら電荷を帯びています。黒目の奥の角膜側がマイナス、表面の網膜側がプラスになっているんです。

それをずっと計測し続けると、目の動きを検知できます。具体的には、弊社で特許を取得している「3点式眼電位センサー」を用いています。

これが左右上下の目の動きだけではなく、まばたきも検知します。まばたきの回数と強さを計測することで、眠気の推定集中の度合いを測れるというロジックですね。

さらに、加速度、角速度センサーによって、目の動きのスピードや、装着者の姿勢も計測しています。

▼3種類のセンサーで「集中」を測るJINS MEME

このような技術を用いることによって、リラックスして何かに没頭していて、更に姿勢が安定している状態を、「集中」と定義しています。

自分たちだけではできない!多くの外部企業と、協業で商品を開発

ただ、実はアイデアをいただいてから実際の商品発売までに、5年以上もかかっているんです。

と言うのも、弊社はもともと小売ですし、研究開発なんてやったこともありませんでした。製品の部分で言っても、電子部品をどう配置するか、回路設計は、意匠デザインは…。すべてにおいて経験がなくて

更に、まばたきの計測から眠気をどう推定するのか、ソフトウェアやアプリケーション、システム運用はどうするのか…。弊社だけでは、絶対にできないことだらけだったんです

そこで実際の商品開発においては、各フェーズで多くの外部企業と協業を行ってきました。今でも、社内の開発チームには純粋なエンジニアはいません。技術的な部分は外部の企業さんと協力しながら、少しずつ、製品化へと進んでいきました。

▼JINS MEMEの製品開発フロー

ひとつ特徴的なのは、商品発売の1年半前に、大々的な商品発表会を実施したことです

普通、何か新しいプロダクトを発売するときは、発売の直前に発表しますよね。でも僕たちの場合は、まだ「まばたきの判定率」がものすごく低い状態だったにも関わらず、発表会をやってしまったんです。

その目的は、協業先を見つけることにありました。と言うのも、当時、サービスとしてJINS MEMEを世の中に広めていこうとしても、自分たちだけではできないと考えていたからです。

例えば、JINS MEMEで「眠気」が推定できるので、それを運送会社で働くドライバーさんに使っていただきたいと考えたとします。でも、いきなりメガネ屋のジンズが運送会社さんに行って「これをかけてください」って言っても、難しいですよね。

ですので僕たちは、まず、ドライバー向けシステムの提供会社にどうアプローチして、どうやってJINS MEMEをシステムに入れてもらうか、ということを考える必要があります。

つまり、業界の「ラストワンマイル」を埋められる協業先が必要になってくるんです

そこで、そういった自分たちと繋がりがない業界の門戸を開くために、「こういうコンセプトの商品を来年出すから、みんな乗ってこい!」という形で、商品発表会を実施しました

正直、デモンストレーションが成功するかわからない状態だったので、みんなドキドキでした。ですが、弊社の社長の田中がJINS MEMEを装着して壇上に上がったところ、きれいにまばたきが検知できまして(笑)。

結果的に、それをきっかけとして本当に多くの企業からお問い合わせをいただきました。でもまだ不安定な検出率だったので、電子部品のメーカーさんも「どうすんの、ジンズさん!」みたいな(笑)。そこからよく、ここまで持ってこられたなと思います。

「商品開発」だけでは足りない。「情報開発」の重要性とは…

その後、色々な企業さんに入っていただいて製品の差別化を進め、最終的に2015年11月にJINS MEMEを発売しました。

現在は、例えばトラックやバスの運転手さんの安全運転サポートといった労務管理に使っていただいたり、フィットネス業界でランニングマシーンで走っている際の姿勢の測定であったり、様々な業界でご利用いただいています。

こういった事例は、弊社のサイトで事例として積極的に紹介しています。

▼JINS MEMEの可能性を、様々な事例で紹介する「JINS LAB.」

このように、情報発信にも力を入れているのですが、これにはJINS PC(現:JINS SCREEN)を開発したときの経験が生きているんです

JINS PCは、「情報開発」の部分にすごく難しさがあったんですね。ブルーライトをカットするプロダクトができました、と言っても、そもそも「ブルーライトって何?」という情報がなければ、そのプロダクトの価値が伝わらないからです

そこで当時は、ブルーライトの啓蒙と、JINS PCの販売を同時に行っていったわけです。商品開発と情報開発がすごく巧みにできたと、僕たちは捉えていて。

JINS MEMEって、説明するのがすごく大変なんですよね。ですので、プロダクト自体のイノベーティブな部分と、もっと端的に「これって何するの」という部分、どっちも伝えていかなければいけないと思っていて。

ですので、色々な取り組みを行って、それをどんどん発信し続ける、ということには強く意識して取り組んでいます。

730年間、形が変わっていない「メガネ」にイノベーションを!

弊社の社是は、現在は「Magnify Life(マグニファイ ライフ)」という英語表記になっていますが、もともとは「あたらしいあたりまえを」という言葉でした。

まさにプロダクトイノベーションを起こしていく、ということを掲げているので、JINS MEMEのような新しい挑戦にも、社内の理解があるのだと思いますね。

もともとメガネって、およそ730年前にイタリアで発明されたものなのですが、当時からほぼ形が変わっていないんですよ。

個人的には、身の回りのモノの中で、メガネと傘が一番イノベーションが起きていないと思っていて。これは、何かしないともったいないですよね

JINS MEMEの開発時に、色々な先生方と「メガネの優位性」について話していたんです。そのときに思ったのは、メガネが一番すごいのは「パンツの次に、身に付けている時間が長い」ということではないかと。

つまり必需品であり、さらに毎日替える下着とは違って、メガネは毎日同じものをかけ続けるんです。

ですので、実はその人に対して一番触れ合っている時間が長いのが、メガネなんじゃないかと。しかも、頭部というかなり有用なデータが眠っている場所になるので、それってすごく価値がある可能性が高い。

こうした背景から、世界初の「自分を見るアイウエア」としてJINS MEMEが生まれました。本気で、働き方改革を根本から支えていけるプロダクトだと思っています。これからもより多くの人に使っていただけるように、頑張っていきたいですね。(了)

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