- 株式会社アーバンリサーチ
- 事業本部 WEB事業部 部長
- 坂本 満広
販促費を最適化し、購入率の向上も実現。アーバンリサーチのアウトレットEC戦略
〜需要が大きい一方、利益確保が難しい「アウトレット」。EC売上高150億を誇るアーバンリサーチの、販促費を抑えて売上を伸ばす取り組みをご紹介〜
フリマアプリが人気を集めるなど、特にアパレル業界においては「新品を定価で購入する」以外の消費傾向が強まっている。
そんな中、株式会社アーバンリサーチでは、2016年11月にアウトレット専用EC「URBAN RESEARCH OUTLET」をオープン。当初の予想に対して、倍以上の売上をあげているという。
一方で、「割引価格で販売する」というアウトレットの特性を考えると、いかに不要な販促費をかけずに運営を行なうかが重要なポイントとなる。
そこで同社では、「アイジェント・レコメンダー」や「ZenClerk(ゼンクラーク)」といったツールを活用し、個々の消費者ニーズに合わせたWeb接客を実現している。
また、店舗と比べて圧倒的に顧客接点の多いEC上のデータを、店舗づくりやブランド戦略にも活用しているそうだ。
今回は、同社でWeb事業部を率いる坂本 満広さんに、オムニチャネル戦略の概要や、販促施策の最適化について、お話を伺った。
ECでの顧客接点は「ブランド認識のズレ」を把握するキッカケに
私はアーバンリサーチで、2004年からWeb事業に携わりました。
その後、事業は順調に成長し、昨年度のEC売上高は150億、全売上高に対するEC比率は20%程となりました。さらに今年度は、200億・30%程までの成長を見込んでいます。
ECの特徴は、店舗と比べて圧倒的に購入客数が多いことです。そこで弊社では、顧客接点の多いECでデータを取得し、それに基づいて店舗づくりを最適化させていく、という形でオムニチャネル戦略を考えています。
例えば「Webではシーズン外の商品がどれ位売れるか?」といったデータに基づいて、店舗側の戦略を考えていますね。
また、ECは我々の「ブランド認識のズレ」を把握するキッカケにもなります。
例えば、「店舗の調子はいまいちだけれど、ECは好調」ということがあったとします。その理由を探ると、「ECで購入している顧客の年齢層は30代が多い。けれども、店舗では20代向けの売場作りをしていた」といったことがわかります。
であれば、出店する場所や店のつくり、販売員の年齢層などを、色々と考え直すことができるんです。
プロパーとアウトレットでは、明確に顧客層が異なる
売上のシェアで言うと、まだまだECより店舗の方が高いです。しかし、その成長率の高さを踏まえて、弊社はECに注力していく方針をとっています。
その流れの中で、2016年11月にアウトレット専門EC「URBAN RESEARCH OUTLET」をオープンしました。
▼アウトレット専門EC「URBAN RESEARCH OUTLET」
C to Cやレンタルなど、定価で購入する以外のアパレルの買い方が増える中、「新品をリーズナブルに買いたい」という方々も多くいらっしゃいます。
弊社では数年程前からアウトレット店舗の出店を積極的に進めてきたのですが、ある程度、出店する場所が限られてきたんですね。
そこで、倉庫にある商品を常にお客様が購入できるチャネルを増やそうと考え、アウトレット専用のECをオープンしました。
また、アウトレット専用ECにこだわったのは、プロパーとアウトレットの店舗の顧客層が、明らかに異なっていたためです。
実際に店舗に足を運んでみてわかったのですが、来店されている層が全く違うんですね。
プロパー商品を購入されるお客様は「このブランドの商品が欲しい」という動機で来店されます。
一方で、アウトレットの場合は「白いシャツが欲しい」「今欲しい」といった、より実需に基づいた購入動機が多いんです。
このように、そもそもの顧客層が異なる為、通常のオンラインストア内にアウトレットコーナーを設けるのではなく、アウトレット専門のECという形を選びました。
販促費の最適化がカギ。購入を迷っている人のみにクーポンを配布
当初は、年間で3億程の売上を見込んでいましたが、今のところ、その倍以上のペースで売上が伸びています。
とはいえ、アウトレットECの運営においては、決して売上高を最重要の指標として追っている訳ではありません。
売上高も当然、重要ではあるのですが、そもそも、その上限額は通常販売で売れ残った商品の数に左右される為、本質的な目標にはなりません。
そのため、いかに商品を売り切るか? という点がポイントになってきます。その中で、まず取り組んだこととしては、表示する商品の最適化です。
「アイジェント・レコメンダー」を活用して、お客様の購入履歴に基づいたおすすめ商品の表示や、メルマガコンテンツの最適化に取り組みました。
また、そもそも定価から割り引いて販売しており利益確保が難しい為、販促費の最適化も重要です。もともと価格が下がっているところに、必要以上の販促費をかけてしまうと赤字になってしまいます。
そこで、クーポン配布を最適化するWeb接客ツール「ZenClerk(ゼンクラーク)」を導入しました。
ZenClerkは、人工知能によって「購入を迷っている人」のみにクーポンを配布することのできるWeb接客ツールです。
販促費は抑えたいのですが、やはりクーポンの配布は、購入率を大きく向上させます。ですので、以前は全てのサイト訪問者にクーポンを配布していました。
しかし同時に、果たして全員がクーポンを配布しないと購入しないお客様なのか? という疑問もあったので、サイト上での施策を最適化すべく、ZenClerkを導入しました。
値引き施策ではなく、「送料無料」でもCV率が向上
ZenClerk導入後、まず「500円オフ」のクーポンを配布したところ、スマホのCV率が約200%上昇しました。
しかし同時に、通常施策でも1,000円オフのキャンペーンを実施していた為、施策内容が重複している状態だったんです。
その為、配布するクーポンを「送料無料」にした所、スマホのCV率が約250%と更に向上しました。
▼送料無料のクーポンを配布
やはり、アウトレットということで既に安価になっているため、お客様は価格に不満を持っているわけではないんですね。
それよりも、送料にお金を払うことに対する抵抗が強いんだなと。「◯◯円オフ」ではなく「送料無料」でも十分、購入されるお客様が多いということは、すごく勉強になりました。
また、これらの施策を、運用コストをかけすぎずに実施できたことも良かったと感じています。
というのも、弊社の場合、販促施策を運用する担当者のリソースが限られていた為、複雑なシナリオを設定して施策のPDCAを回していくことが難しいという事情がありました。
そんな中、ZenClerkは様々なデータに基づいて「購入を迷っている人」を最適に判断してくれるんですね。
▼施策ごとの結果が一覧化されたZenClerkの管理画面
私たちの場合は、デザインを自社サイトのテイストに合わせるため、自前でバナーのクリエイティブを作りましたが、テンプレートも用意されています。
クリエイティブを決めてしまえば、特別なシナリオ設定なしに施策を回せるため、運用コストを非常に抑えることができました。
今後は「2点購入で10%オフ」などの新たな施策も試してみようと考えています。
多くの顧客接点を作り、新たなサービス開発を目指す
こうして、アウトレットECという新たなチャネルを立ち上げてきましたが、今後はより顧客接点を増やして、新たなサービス開発を目指していきたいと考えています。
というのも、オムニチャネルというのは、決して「ECと店舗を連携させること」だけではないからです。
アプリやSNSなどのオンラインメディア、あるいはアーバンリサーチグループが持つ各種ブランドも、それぞれがメディアであり、顧客接点と言うことができます。
例えば、DOORSというブランドのECで、小規模な家具の販売を始めました。そこから少しずつお客様に認知され、売上が増えていけば、より本格的に家具のECを展開するビジネスチャンスも生まれてくるわけです。
そうなれば、今、アパレルを買っていただいているお客様に、「アーバンリサーチでは家具も買えますよ」とコンタクトすることができます。
あるいは逆に、家具から知っていただいて、アパレルにも関心を持っていただくことができるかもしれない。それがオムニチャネルなのかなと考えています。
このように、今後も様々なチャネルで顧客接点を作り、新しいサービスの開発に取り組むことができればと思います。(了)
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