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成約率が30%上昇!日本HPの、B2Bでも「ヒトの心を動かす」動画マーケティング

〜B2Bでも感情的なつながりを。ストーリー性のある動画マーケティングで、営業の案件勝率を向上させた事例〜

PC・プリンティング事業に特化した米HP Inc.(エイチピーインク)の日本法人である、株式会社日本HP。

同社は、お客様との「エモーショナルコネクション(感情的なつながり)」を大切にした、デジタルマーケティング施策を強化している。

B2Bの領域では未だ主流の、「電話でアポイントを取り、客先に訪問する」というオーソドックスな営業スタイルからの脱却を目指しているのだ。

具体的には、お客様の「心を動かす」ストーリー性をもたせた動画を配信し、その行動履歴にあわせた適切な施策を打つことで、サイト訪問者からのリード(見込み顧客)の獲得率を15%上昇させることに成功

また、動画を視聴した見込み顧客からの成約率を、30%以上伸ばすことに成功した

▼同社の動画サイト「Tech & Device TV

今回は、日本HPでPC事業のマーケティング統括を務める甲斐 博一さんに、「最もハードルが高かった」という営業の巻き込み方を含め、動画マーケティングの導入から活用までを、詳しくお伺いした。

デジタル上での感情的なつながりを実現する、動画マーケティング

私はこれまで、IT業界でB2B、B2Cのマーケティングや営業に携わってきました。現在は、カントリーの代表として、マーケティングの統括を務めています。

弊社の法人向けPC事業のマーケットシェアは、国内2位です。そして、1位を目指す中で競合を分析してみると、他社の強みのひとつに「頻繁な客先訪問によりお客様と多くの時間を過ごし、お客様を理解する」営業スタイルにあることがわかりました。

しかし、こうした営業スタイルは、労働人口の減少やLINEなどに代表される現代のコミュニケーションスタイルの変化といった背景とあいまって、今後長くは続かないだろうと考えていました

そこで、別の営業スタイルでお客様を獲得していく必要があると考え、始めたのがデジタルマーケティングです。

弊社では、B2B・B2C問わず、お客様との「エモーショナルコネクション(感情的なつながり)」を、マーケティングの主軸にしています。

その中で、営業活動の一部をデジタルマーケティングに変えようとしたときに、これまで電話で行っていたコミュニケーションをただメールの文章に置き換えるだけでは、お客様に気持ちが伝わらないと感じていました。

デジタル上でもエモーショナルに繋がるためにはどんな方法があるか、そう考えた時、一番わかりやすい方法が動画だったんです。

動画を使えば、伝えたいことが「わかりやすいストーリー」で届けられます。さらに、デモを見せたり製品を開封したりといった、お客様の先に訪問しなければできなかったことを遠隔で伝えることもできますよね。

こうした理由から、2016年の2月より、動画を主体にしたマーケティング活動を本格的にスタートしました。

感動系からドッキリ動画まで!製品の紹介への伏線をつくる

実際の動画のストーリーは、弊社のマーケティングチームとエージェンシーが共同で制作しています。

働く女性をテーマにした感動的な動画から、真面目なもの、ライトに視聴できるおもしろ動画に至るまで、コンテンツは多岐にわたります。

例えば、ビジュアルハッキング(盗み見による機密情報の漏えい)をテーマにした動画を制作したときは、本物のドッキリを仕掛けました(笑)。

PCを使っている一般の人の近くで、若い女性が画面を覗き込んでハッキングするというドッキリを仕掛け、それを遠隔から撮影したんです。

▼実際に制作された「ドッキリ動画

一見、この動画はただのドッキリ企画のようですが、実は弊社のPC内蔵型プライバシースクリーン機能である「HP Sure View(シュアビュー)」を紹介する伏線となっています

HP Sure Viewは、ボタンひとつでスクリーンを正面からしか見えないようにする機能です。その製品情報をそのまま紹介するのではなく、お客様に受け入れられやすいストーリーの中で、この機能の必要性が伝わるようにしています

このようなシナリオを作ることで、製品に対するお客様の入り方が全然変わってきますね。

恋人同士の関係のように、お客様との関係を育成する

そして、私たちが動画を活用するタイミングは、大きく2つあります。

まずひとつは、お客様に初めてご挨拶した直後です。営業担当者がお客様の名刺を名刺管理ソフトに登録すると、自動メールでお礼とともに動画サイトのURLが送付されるようになっています。

▼実際に「ご挨拶の直後」に送付されるメールマガジンの冒頭部分

ここでの動画は、弊社のストーリーに共感していただくことで、見込み顧客の温度感を高めた上で営業に渡すという目的があります。

▼「ストーリーを伝えるような動画」へのリンクを送る

そしてもうひとつ、最も動画の効果が高いのが、私たちのことをある程度わかってくださった「商談開始」のタイミングです。ここでは、「日本HPの考えていること」が伝わる内容の動画を送ります。

▼商談開始のタイミングで送る、日本HPのサービスを紹介する動画の一例

出会って、相手に興味を持って、だんだんとお互いの理解が深まっていく。商談のプロセスは、それこそ「恋人同士の関係」のようだと思っていて

付き合い始めてみたものの、すぐに別れてしまっては意味がないですよね。そのため、まず私たちの考え方がわかるようなストーリーを動画で伝えることで、より私たち自身の良さをわかっていただけるようなシナリオにしています。

この動画の取り組みを開始してから2ヶ月で、動画視聴者からの案件発掘率は15%上昇しました

さらに、見込み顧客からの成約率においては、以前よりひとつの指標として追っていた「2ヶ月で11回以上の動画視聴」をした見込み顧客の場合で、30%以上も上昇しています

MAツール「Marketo」の活用で、顧客ごとの視聴情報を分析

また、お客様の心を動かすには、動画のコンテンツだけでなく、お客様に合わせた動画を届けるための「データ分析」と「シナリオ作り」が重要です。

弊社では、動画の視聴情報を、MAツールである「Marketo(マルケト)」につなぎ込んでいます。

このデータ連携によって、誰がどの動画を視聴し、どこで離脱したかもわかるので、これを元に動画の長さを修正したり、営業のシナリオを作ったりしています

例えば、動画Aと動画Bを連続して見た人は、ほぼ100%が動画Cを視聴するということや、ある動画に到達した人は80%の確率で商談にステップアップする、というようなデータも取れています。

そこから、この動画を見た人には次にあの動画を紹介しよう、もしくはこのタイミングでアポ取りの電話をかけよう、といったシナリオを組んで、営業の最適化を図っています。

ただ、リード獲得の時点から、顧客の属性に応じて動画を出し分ける…といった細かいセグメント分けは、行わないことが多いです。

確かにターゲティングして送った方が「反応度」は良いのですが、「絶対数」を稼がなくてはいけないことのほうが多くて

効率性は常に考えていますが、リード獲得については、出し分けをせずにボリュームを稼ぐほうが、今のところ効率が良い場合が多いと感じています。

営業を巻き込むには、お客様に「褒められる」経験が大切

今でこそ、動画マーケティングの成果が出てきましたが、動画を作り始めた当初は「営業を巻き込むこと」が一番の課題でした

営業担当者にとって、名刺データは自分の宝物みたいなもので、基本的に出したがらないんです。いわば、マーケティングのための箱はあるのに、その中にデータが集まらない状態でした

ただ、会社としては顧客情報を共有資産にしておかないといけないですし、データがなければ顧客管理やマーケティングもできません。

動画マーケティングを始める上で、この部分が一番のネックでした。ですが、実際に動画を見ていただいたお客様から「本当に素晴らしいですね」と言っていただくような事例がいくつか出てくるようになって

こうしたお客様からの直接の声が原動力となって、営業担当者も動画の良さをようやく理解してくれるようになり、名刺データを共有する文化ができました。

B2Bでも、「人の心を動かす」ための接点を増やしていきたい

これまでいくつもの動画を制作してきましたが、多くのお客様はそれらを会社のデスクで視聴されていることがわかっています。

ですが、私たちの狙いとしては、通勤中の時間にも動画を見ていただきたいと考えていて。おそらく東京に勤務する人であれば、朝の通勤電車の中で、片道で平均1時間弱くらいの時間があるはずなんです。

その時間の過ごし方をみてみると、ニュースサイトやゲーム、SNSなど、スマホアプリの使用が大半を占めています。

この時間に、いかに私たちの動画やそこで発信するメッセージに触れていただくかが、動画マーケティングの腕の見せどころだと思っています。

そのために、真面目な動画だけでなく通勤時間も視聴してもらえるような面白動画も作っているのですが、まだまだ挑戦段階ですね。

B2Bであっても結局はヒトが相手なので、「人の心を動かす」という意味ではB2Cと同じだと考えています

お客様との接点をより多くして、動画を通じて私たちのストーリーを伝えていく。お客様との「エモーショナルコネクション」を、さらに磨き上げていきたいですね。(了)

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