• 東宝株式会社
  • 映像本部 宣伝部 映画宣伝企画室 プロデューサー
  • 林原祥一

顧客に「会いに行く」広告が必要な時代。最新アドテクを用いた、映画「亜人」のPR戦略

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〜コンテンツ数が増え続ける映画市場の中で、広告を「風景」にせず、作品を顧客に届けるノウハウを紹介〜

あらゆる情報が溢れる現代社会。その中でマーケターの腕の見せ所は、いかにして競合との差別化を図り、ユーザーに「選ばれる」情報発信を行うかだ。

累計発行部数750万部を突破の原作コミックスが実写映画化される形で、2017年9月30日に公開された実写版映画「亜人(あじん)」。

同時期に「銀魂」「東京喰種 トーキョーグール」など、同様のコミックス原作作品が公開される中、そのプロモーションにおいては、顧客を飽きさせない、エッジを効かせた情報発信が求められたという。

そんな中、オンライン施策としては、スマートフォン画面の最大90%を使用する動画アドネットワークサービス「LODEO(ロデオ)」を採用。結果、広告想起を138%向上させることに成功した。

今回は、亜人のプロモーションを担当した東宝株式会社の林原 祥一さんに、映画宣伝における戦略の立て方と、実際に取り組まれた施策についてお話を伺った。

映画の宣伝は、時代背景で変わる受け手の感覚を捉えることが重要

僕は宣伝プロデューサーとして、映画「亜人(あじん)」のプロモーションを担当しました。

本作品は、死んでも生き返る、絶対に死なない新人類「亜人」同士が、終わらない戦いを続けるというアクションエンターテインメントです。

公開の約1年前から、「誰に対して、どのように作品を伝えるか?」というプロモーションの企画を考え始めたのですが、今回は特にターゲット選定が難しかったですね。

というのも、亜人は原作のコミックスがあり、それがアニメ化もされている作品なのですが、それぞれのファン層が異なるんです。原作は30代以上の男性がメインですが、アニメは声優ファンを含む、10代を含めた若い女性なんですね。

この前提がある中、キャスティングとしては、主演の佐藤健さんを始め、綾野剛さんや玉山鉄二さんも出演されている訳ですから、そこを推して女性ファンを狙いにいくこともできます。

一方で、佐藤 健さんは、映画「るろうに剣心」で、身体能力の高いアクションが高く評価されていたこともあり、アクション作品として男性に訴求するという考え方もできました。

この「すでに作品についているどちらのファンを狙うか?」という観点に加えて、時代背景を読むことも大切にしました。

なぜなら、映画は「その年代によって受け手の感覚がかなり変わる」という特徴を持つコンテンツだからです。

亜人の場合、「銀魂」「東京喰種トーキョーグール」など、少年漫画を実写映画化した作品の発表が多い2017年に公開されるという時代背景がありました。

ですので、映画館で多くのコミックス原作作品が予告編として紹介される中、どういう打ち出し方をすれば、マンネリ化させずに面白そうだと感じてもらえるのか? とう点を強く意識する必要がありました。

馴染みのある表現と作品の要素を重ね、顧客との距離を近づける

検討の末、最終的にはアクション性を推しながら、10代後半〜20代の層を狙っていくことにしました。

「亜人の死なない人生とは?」という作品の哲学的なストーリー性を掘り下げる選択肢もありましたが、「佐藤 健が不死身の体でスタイリッシュなアクションをする映画です」と、シンプルにわかりやすく伝えた方が良いという判断をしたんです。

これは、多くのコミックス原作作品が公開される中、アクションという部分でエッジを立てて、差別化を図りたいという狙いがあったためです。

一方で、「アクション映画です」と訴求してしまうと、どうしても引いてしまう女性もいると懸念していました。

そこで考えたのが「ゲーム感」というコンセプトでした。「映画館へ行って、斬新な映像を2時間浴び続けて帰ってくる」という体験を楽しんでもらいたいという伝え方をしました。

例えば、予告編の構成も、難しい設定の説明はすべて省き、音楽と映像のテンポ感で魅せるよう工夫しました。また、前売券の特典に実際に遊べるARミニゲームをつけたりなど、若年層にライトな印象を与えられる「ゲーム感」を特に意識していました。

ターゲットと作品の訴求ポイントを決めた後は、実際のキャッチコピーを考えます。考え続けた結果、「DEAD and ALIVE」という言葉を採用しました。

「死んでも生きる」という亜人の特徴を、「Dead or Alive」という馴染みのある言葉をもじって伝えるのが良いのではないかと、シャワーを浴びている時にパッと思い付いたんです(笑)。

また、単に「アクション映画です」と言うのではなく、死んでも生き返って戦う様を「エンドレス・リピート・バトル」という造語で表現することで、見た人が「それは何だ?」という興味を持ちやすいような工夫もしました。

▼「亜人」のポスター

さらに「絶対に死なない男」と「絶対に死なない男」の戦い、という作品のテーマを踏まえて、日本各地でタイアップ企画を実施しました。

「絶対◯◯しないもの vs 絶対◯◯するもの」を対比させる「ほこxたて」という番組がありましたよね。このような打ち出し方をすることで、ストーリーの設定をスムーズに理解してもらえるかなと考えたんです。

▼日本各地とタイアップしたポスター

このように、亜人という死なない人間がいて...という作品の説明をするのではなく、出来るだけ馴染みやすい伝え方をすることで、お客さんとの距離を近づけようとしました。

広告を「風景」にさせない。タテ型広告により、認知の拡大を狙う

また、各種メディアを通した情報発信においては、パブリシティとアドバタイジングの使い分けを大切にしました。

パブリシティでは届かない層へ向けては、アドバタイジングを仕掛けました。YouTube、Twitter、LINEなどのチャネルに加えて、今回はスマホ動画広告サービス「LODEO(ロデオ)」を活用しました。

LODEOは、スマホ画面上の最大90%の面積を使って、タテ型動画を配信することのできる広告サービスです。

▼2種類のフォーマットを活用して、動画広告を配信

今の時代、スマホ上にはたくさんの情報が溢れています。その中で普通に情報を投げかけたところで、風景になってしまい、なかなかユーザーに伝わらないと思うんです。

ましてや、多くのコミックス原作作品が公開されるタイミングでしたから、広告についても、いかにエッジを立てるかがポイントでした。

その点、スマホ画面上で大胆に情報を配信できるLODEOのフォーマットは、他の広告と明確に差別化を図れる点が魅力的でした。

さらに、高いアクション性をもった映像の力強さに加え、バトルシーンでクラブミュージックを使っている点も今作の特徴でした。そのため、この映像と音を伝えるために、スマホ上で90秒間の予告編を配信しました。

また、予告編だけではなく、作品の中で登場する多角的な映像をアピールしたいという思いもありました。

そこで、タテ型のフォーマットに加えて、画面上部で動画を再生し、下部に複数の動画をパネル形式で掲載するタイプのフォーマットも採用しました。

パネル内では、予告編だけでなく、MX4DやIMAX(※)といった上映タイプごとのPR映像を配信しました。

※MX4D:風、ミスト、香り、ストロボ、煙や振動など、五感を刺激する特殊な演出を行う上映システム

※IMAX:床から天井、左右の壁いっぱいに広がるスクリーンにより、リアルな臨場感を演出する上映システム

また、今回は成果指標として、視聴完了数やクリック率ではなく、「いかに広告を想起したか」「鑑賞意欲が上がったか」という態度変容を計測しました。

広告に接触したユーザーと、接触していないユーザーに対して「あなたは過去10日以内に、亜人に関する広告をモバイル端末で見ましたか?」という形でアンケートを取り、その回答の差分を成果として計測するというものです。

配信セグメントも調整しつつ、約1ヶ月間の運用を行った結果、非接触者と比べた広告想起は138%増という成果をあげることに成功しました。

今回は90秒の尺で動画を配信しましたが、例えば、5秒間でインパクトのある動画を配信して、興味を持ったユーザーを別のリンクに案内するといったパターンも試していきたいですね。

綾野 剛さんが自分の頭を撃ち抜くシーンだけを見せて、「衝撃注意」みたいな打ち出し方をするイメージです。

今後も、ユーザーにインパクトを与えられるアドバタイジングのあり方を、工夫していくことができればと思います。

投げかけるのではなく「会いに行く」広告が必要な時代

今回の亜人のプロモーションを通して、こちらが良いと思っているものを投げかけるのではなく、相手に受け入れられる形で伝える必要性を強く感じました。

ターゲットが欲しがっている表現を考えた上で、広告の方から「会いに行く」という考え方です。

ひとつのメッセージをマスで投げかけて、10人中10人が反応する時代ではありません。ですので、いかに細分化して、欲しいと思っている情報を欲しい形で提供できるかが、とても難しいと感じましたね。

日本の映画市場の中でも、作品数はどんどん増えている状況なので、選ばれるために、どのような伝え方をするのかが非常に重要です。

そんな中でも、作品を少しでも多くのお客様に届けるために、今後も試行錯誤を続けていくことができればと思います。(了)

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