- 味の素株式会社
- スポーツニュートリション部 マネージャー
- 工藤 剛
新規はWebで、リピーターはアプリで!アミノバイタルが目指す、顧客との関係の築き方
〜自社アプリの展開で、リピーター用コンテンツの訪問数が130%に!「380万人」のターゲットへ向けた、アミノバイタルのマーケティング戦略とは〜
1908年の「うま味」の発見を契機に、100年以上の歴史を誇る味の素株式会社。
同社商品の「アミノバイタル」は、スポーツ化学に基づき、うま味成分でもある「アミノ酸」の力でアスリートを長年支えてきた。
その特性上、同商品のターゲットは「運動強度の高い人」だ。そしてこの3〜4年は、雑誌からWebへとそのマーケティング媒体の重心を移してきたという。
だが、Webサイトの情報をいくら拡充させたところで、そのコンテンツが「読まれない」という課題を抱えていた。
そこで同商品のマーケティンググループは、アプリ制作・運営プラットフォームの「Yappli(ヤプリ)」を導入し、2017年に公式アプリをリリース。
競技者に特化した魅力的なコンテンツの発信により、着実に商品のリピーターを増やすことに貢献している。
今回は、同社でアミノバイタルのマーケティング全般の責任者を務める工藤 剛さんと、その実務を担当する豊泉 晴香さんに、アミノバイタルのデジタルマーケティングについて、詳しくお話を伺った。
「380万人」のコアターゲットに確実にリーチするマーケ施策を
工藤 僕は味の素に入社して以来、調味料や冷凍食品、パン屋といった複数の部署を渡り歩いてきました。現在は、アミノバイタルのマーケティング全般を司る部署で、マネージャーを務めています。
豊泉 私は同じ部署で、WebサイトやEC、アプリの運用など、デジタルマーケティング周りの実務を担当しています。
▼左:工藤さん、右:豊泉さん
工藤 「アミノバイタル」は、プロスポーツ選手も愛用するような、運動強度の高い人に向けた商品です。
そのため、マーケティングにおいては、その顧客ターゲットにしっかりリーチしていくことを目標に置いています。
具体的には、「週1回以上運動している方」で、さらに運動頻度と運動意識の面から、層別に分解してターゲティングしていますね。
日本人の中では、この条件に当てはまるコアターゲットは、およそ380万人と推計されています。
この380万人へ向けてきちんとメッセージを届けよう、ということで、3〜4年前くらいからマーケティングの重点をWebに置くよう、一気に舵を切ったんです。
元来スポーツの世界では、専門誌に根強いファンがついているので、以前は紙媒体がマーケティングの中心でした。
ですが、よりセグメントしたターゲットにしっかりと情報を届けることや、動画などコンテンツに柔軟性を持たせることを考えると、やはりWebが良いですよね。
そのため、現在は、広告予算の半分以上をWebに投下しています。
Webサイトだけでは、読まれるコンテンツに限りがある…
工藤 Webマーケティングを本格化し、様々な施策を打つにあたって、まずはWebサイトのコンテンツをひたすら増やしていきました。
ですが、実際にサイトに来てくれている方々の訪問ページを調べると、その7〜8割が、成分や配合、カロリーといった「商品情報」を見ていることがわかったんです。
▼アミノバイタル公式Webサイトトップページの「商品情報」
それであれば、Webサイトは新規のお客様に商品情報を見せる場として、最適化させた方がいいねと。
ただそうすると、せっかくリピーター用に作っていた、スポーツ選手へのインタビュー等のコンテンツがもったいないね、という話になりました。
そこで、リピーター顧客に向けて、より効率良く情報を届ける別の手段がないかと考えた時に、専用アプリを使えば可能性があるのではないかと思いまして。
いくつかサービスを比較検討した結果、アプリ制作・運営プラットフォームの「Yappli(ヤプリ)」を使うことに決めました。
▼アミノバイタルの公式アプリ
Yappliは、iOS/AndroidのアプリをWebブラウザから簡単に制作できるサービスです。
掲載するコンテンツもWebに掲載しているものを転用できたので、開発期間は1〜2ヶ月で済み、コストも最小限に抑えられましたね。
アプリを導入した結果、当初はサイト訪問者の2割ほどしかリピーター用コンテンツを見ていませんでしたが、今ではアプリとWebを合わせて、商品情報とほぼ五分五分の訪問数になっています。
ダウンロードの8割は、Webではなくリアルイベント経由!
豊泉 現在、アプリの総ダウンロード数は2万を超えています。そのダウンロード元としては、Web広告からの流入もありますが、実はその8割がリアルイベント経由なんです。
アミノバイタルでは、従来からマラソン大会などのスポーツイベントで、商品のサンプリングなどを行ってきました。
そのイベントを利用して、アプリのダウンロードキャンペーンを実施しています。
例えば、今年の11月に開催された自転車のスポーツイベントでは、「アプリダウンロードで、アミノバイタルゼリーをプレゼント」といった形で、出展ブース内でのキャンペーンを行いました。
3日間にわたるイベントで、合計3,000ダウンロードを目標に実施したのですが、初日だけで2,000近くもの人々にダウンロードいただけて。
2、3日目も、キャンペーンに制限が出るほどの反響がありました。
会場の方々に「アミノバイタルがアプリをやっています」とか、「こんな情報も見れますよ」といったことを直にお伝えすると、みなさん「知らなかった」とか「面白そうだね」と言って、次々にダウンロードしてくれたんです。
やはり、Web広告だけでなく、商品のコアターゲットとなるお客様に直接お伝えする方が、ダウンロード効果が高いことを実感しましたね。
SNSやメルマガ、Web番組まで!VITALISTを通じたコンテンツ発信
工藤 実際にコンテンツを発信していく上では、Webとアプリを通じて「VITALIST(バイタリスト)」への情報発信を強化しています。
VITALISTとは、「アミノバイタルの力を信じるユーザー」です。具体的には、プロアマ問わず、スポーツを通じて何かに挑戦するすべての競技者を対象として、3つの施策を行っています。
まずは、「バイタリスト マガジン」というメールマガジンです。オリンピック選手への取材や、競技大会レポートなどを記事にし、月1回配信しています。
▼実際の「バイタリスト マガジン」のメール冒頭
およそ5年前から始めたのですが、現在その購読者数は約20万人になります。開封率も、20%付近で安定していますね。
次に、自分の写真をSNS投稿して仲間と共有する「JOIN! #バイタリスト」という企画があります。
▼公式アプリ内の「JOIN! #バイタリスト」専用ウォール
これは、「# バイタリスト」をつけてInstagramやFacebookなどのSNSに自分の写真を投稿すると、公式アプリの専用ウォールに掲載され、仲間と共有できる仕組みになっています。
完全に自走式にしているのですが、月100件くらいの投稿があり、累計では3,000件ほど集まっていますね。
最後に、「バイタリスト TV」というWeb番組も配信しています。
これは、スポーツキャスターの荻原次晴さんに脚本監督すべてお任せして、アスリートの方々にインタビューをする番組です。
これらの施策では、商品の「宣伝」は行っていません。あくまで、自然な形での情報発信を大切にしています。
アプリを媒介して、流通とお客様のコミュニケーションに繋げたい
工藤 僕はマーケターとして、「アミノバイタルを買ってください」という表現は一切しません。というのも、「一度に大量に売れる」ということは、必ずしも好ましいことではないと思っていて。
例えば、明日野球の試合を控えていて、本当にアミノバイタルを必要としている選手がいるかもしれません。
その時に、テレビか何かの宣伝効果で欠品してしまい、商品が手に入らなかったせいで試合でベストなパフォーマンスが出せなかった、という事態があってはならないと思うんです。
なので、我々のKPIとしては、商品購入数よりもユーザー数の方が重要です。本当にアミノバイタルを必要とするお客様に、必要な分を継続的に購入していただきたいんですね。
そして、その「お客様との継続的な接点」を持つためのツールとして、アプリがあると思っています。
そのため、今後はアミノバイタルを実際に販売してくれている流通、つまり店舗側との連携を強化していきたいですね。
例えば、アミノバイタルアプリに店舗で使える月替わりクーポンが配信されて、商品購入で小さなタオルをプレゼントしたり。このように、アプリがひとつの交換ツールになれば、よりお客様も流通店舗も嬉しいですよね。
このように、アプリをターミナルとして、アミノバイタル単独ではなく流通も巻き込んだ面白い仕組みを作っていけたらと思っています。(了)
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