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コミュニティマーケティングをどう始める?「営業ゼロ」で成長を続ける #Backlog の挑戦

〜セールスや広告投資なしでも「ユーザーがユーザーを呼ぶ」仕組みを作る!200名以上が参加する、Backlogのコミュニティ「JBUG」の運営をご紹介〜

サービスや商品の購入前に、消費者がWeb上の「口コミ」を検索することは、もはや当たり前のこととなっている。その中で注目を集めるのが、「コミュニティマーケティング」という手法だ。

お金をかけて広告を打つのではなく、サービスをフェアに評価できるユーザー同士の「コミュニティ」を運営。その内部でリアルな情報が信頼度の高い口コミとして伝わる結果、ユーザーが増えていくという概念だ。

2004年にリリースされ、約80万人(2017年11月末時点)のユーザーに利用されるプロジェクト管理ツール「Backlog(バックログ)」。

福岡に本社を置き、同サービスを運営する株式会社ヌーラボでは、社内にセールスやマーケターがほとんどいなかったことから、マーケティング施策のひとつとしてユーザーが運営するコミュニティ「JBUG(Japan Backlog User Group)」を立ち上げた。

その後、およそ1年間の運営を通して、Twitterなどを通じて認知が広まり、徐々にコミュニティの拡大が進んでいるという。

今回は同社で広報とコミュニティマネージャーを務める五十川 慈さんと、Backlogユーザーとしてコミュニティ運営に携わるフリーランスエンジニアの永野 英二さんに、コミュニティマーケティングの魅力や難しさについてお話を伺った。

「ユーザーがユーザーを連れてくる」コミュニティマーケティング

五十川 弊社ではBacklogを運営する中で、2017年5月頃から、ユーザーが主体となって運営するコミュニティをスタートしました。

その内部では、サービスに感じている魅力や不満、あるいは「こうなったらいいよね」といった生の声が共有されます。

結果として「ユーザーがユーザーを連れてくる」という状態ができるのが、コミュニティマーケティングの考え方です。

従来のマスマーケティングは、大きな池に向かって、企業が打ち出したいメッセージを一方的に発信するものでした。

ただ、時代の変化で、消費者は今や自ら情報を得られるようになり、企業が思うように情報をコントロールしづらくなっています。そんな中で、注目されているのがコミュニティマーケティングです。

弊社は、ほぼエンジニアだけの組織でセールスは現在に至るまでおらず、マーケティング担当者も私が入社するまで1人しかいなかったんですね。

一方で、既に多くの方が国内外でBacklogを利用していました。なので弊社では、以前からこの手法がぴったりなのではないかと注目していたんです。

そんな中、とあるユーザーさんがFacebookで「Backlogのこういう所がちょっと面倒…。」というような投稿をされたんです。

すると、その方と知り合いではない方も含めて、150件以上のコメントがついて「こういう風に使ったらいいですよ」と盛り上がっていたんです(笑)。

▼きっかけとなった投稿(実際の投稿はこちら

まさにコミュニティが生まれる兆しが見えていたので、その投稿をされたユーザーさんが主催する形で、一度オフラインで集まろうということになったんですね。

運営者探しは「お願い」ではなく「頼ること」がコツ

永野 僕はそのイベントに参加したことをきっかけに、2017年7月から、BacklogユーザーのひとりとしてJBUGの運営に携わっています。

主に他2人のユーザーさんと五十川さんを含めた4人で運営しており、福岡と東京でそれぞれ、2〜3ヶ月に1回のペース、20〜50人ほどの規模感でイベントを開催してきました。

もともと、僕もフリーランスエンジニアとして、セミナーを運営したり、色々なコミュニティに参加したりしていました。

そんな中、そのイベントで五十川さんに初めてお会いしたのですが「どうやってコミュニティを運営していけばいいのか?」と困っていらっしゃったんですね。

そこで「ウチはこうやっているよ。他のコミュニティはこうやっているよ」というのをお話ししていたら、いつの間にか運営側に回っていたという感じです(笑)。

五十川 コミュニティマーケティングを始める際、最初に誰をどうやって巻き込むかはとても大切であり、難しい点です。

私は運営を「お願い」するのではなくて、どちらかというと「頼って相談する」ということが、運営してくださるユーザーさんを見つけるスタンスとしては良いのではないかと感じています。

例えば、Backlogのガントチャートの使い方がとても上手なユーザーの方に「色々教えてください!」とお願いして力をお借りしていたら、だんだん運営側に回ってくださるようになる…という感じです。

コミュニティはユーザーさんの主体性によって運営されるものなので「頼まれたから」という理由で運営していただくのは避けるべきです。

ではなくて、本当の意味でサービスを愛してくださり「サービスのここが良い、ここが悪い」をフェアに言ってくださる人に運営してもらうことが大切だと考えています。

イベントのネタ探しと満足度チェックはTwitterでオープンに

永野 そして、僕が運営に参加してから1回目のイベントを「Web制作者のBacklogの使い方、最適解を探す夜」というテーマで開催し、Backlogの使い方について、グループでディスカッションをしてもらいました。

▼イベントの様子

ただ、やってみてわかったこととしては「結局、Backlogの使い方って使う人によるよね」みたいな感じになったんですよね。

会社の規模によるプロジェクトの性質の違いや、使い手の能力によって変わってくるので、皆が参考にできる汎用的なノウハウがたくさんシェアされた、というわけではなかったんです。

このように、同じサービスのユーザーでも、色々な使い方をしている人がいるということは、当然、知りたい情報のニーズも異なります。

そのため、イベントを開催する時は「誰を対象にどんな話をする会なのか」を、イベントページでしっかり示すことが大事だということを学びましたね。

五十川 また、ユーザーさんの期待に応えるという意味では、興味をもっていただけそうなネタを探すために、よくTwitterでエゴサーチをしています。

ある時、「そろそろBacklogのアンチパターンみたいな事例が欲しい」と呟いていたユーザーさんがいたので「俺みたいになるな!Backlogのアンチパターン」というテーマで、第2回を開催しました。

▼Twitter上での呟きがイベントテーマを考えるヒントに

このようにTwitterはネタ探しに便利ですし、このようなツイートをされている方に、登壇のご相談をすることもあります。

また、参加者の感想もコミュニティという性質上、オープンであるべきです。

そのため、会場でアンケートをとるのではなく、Twitterで「#JBUG」というハッシュタグをつけてもらって「ここがよかった!」「もっとこういうのが知りたい!」という率直な意見を発信していただいています。

そうすることで、私たちとしては参加者の満足度を知ることができますし、ツイートを見た方がコミュニティに関心を持つきっかけにもなると考えています。

人の善意に甘えすぎず、少しでも「お返しできること」を考える

永野 また、Twitterに加えて、いかにイベントレポートをブログで発信してもらえるかも、コミュニティ運営においては重要です。

ただ、お金を払ってブログを書いてもらっても「Backlog万歳」の記事しかあがってこないので…。良いところ、悪いところを全部シェアするというコミュニティの原則から外れてしまいます。

ですので最近は、ブログレポートを書いてもらう参加枠を作って、ヌーラボのTシャツをプレゼントするということを始めました。

五十川 人って、「あいつがやってるなら行ってあげよう」といった善意や、一時的な興味だけだとやっぱり限界があると思うので、運営・登壇・シェアの全てにおいて、その人にとってのメリットをちゃんと用意する必要があると考えています。

例えば、Twitterで感想を書いてくださっている方がいたらリツイートしたり、ブログを書いてくださったら、Backlogのブログで紹介するなどして、少しでも拡散するようにしています。

とても地道なことですが「お金以外で、何をお返し出来るか?」を考えることが、コミュニティ運営においては大切な気がします。

コミュニティ運営は「続けること」が大切。効果計測はほどほどに

五十川 約1年間の活動を通して、だんだん認知が広まったことで、岡山や広島などのエリアでも「JBUGとしてイベントをやりたい」という声があがるようになりました。最近では、神戸でも初めてイベントが開催されましたね。

このような変化は見え始めてはいるものの、コミュニティマーケティングを考える上で難しいのが、効果計測です。

マーケティング施策の一環なので、当然、どれだけ新規ユーザーが増えたかや、継続率がアップしたかなどは測るべきです。

ただ、私は現場で動いているコミュニティマネージャーは、あまり成果を追うべきではないと考えています。運営者が、その目標数字にぎらついて、懇親会で営業をかけまくっているようなコミュニティには誰も行きたくないじゃないですか。

また、中長期的に続けないと意味がない手法なので「1回やりました。集客何人で、そこから何人が新規登録してくれました」みたいな話じゃないんです。すぐに成果がでないので、数字を追っていると、心が折れてしまうと思うんですね。

なので、私はピュアに「プロジェクト管理って、仕事の生産性を高めて、みんなをハッピーにするよね」ということを、ユーザーさんと一緒に広めていきたいという気持ちで運営しています。

その一方で、KPIとして、たとえばイベントの回数などの、目標というよりも、アクションの「目安」はちゃんと掲げてはいて、それを私の上司がウォッチしています。

プロジェクト管理をもっと「カジュアル」に

永野 プロジェクト管理で悩んでいる人は、日本中にいると思います。今後も色々な地域でイベントを開催することで、そういう人達の拠り所になれればと考えています。

また、どのようなテーマだと満足いただけるのか? という点については、多分、10回位やらないと見えてこないと思うので、色々なテーマで開催して、反応を見ていきたいですね。

五十川 今は40〜50代の参加者が多いのですが、より若い人にも参加してもらえるコミュニティにしていきたいなと思います。そして、そのためには、オンラインのコミュニティを充実させていく必要があると考えています。

というのも、20代の人って、分からないことがあれば、わざわざイベントに行かなくても、「オンラインですぐに解決できればいいじゃん」という感覚の強い世代なのかなと思っていて。

なので、オフラインのイベントだけではなく、オンラインでBacklogの使い方を詳しく教えてくれるユーザーさんがいて、質問ができるという環境を作っていきたいですね。

そして、その人がイベントに登壇する時に、「じゃあ行ってみようかな」と思ってもらえるような形にできればいいなと考えています。

プロジェクト管理は開発に限らず、例えばプライベートで引っ越しをする時にも、タスクの抜け漏れをなくすために必要だと思うんですよね。

なので、皆がプロジェクト管理をもっとカジュアルに捉えて、ノウハウをどんどんシェアするような世界観を作ることで、プロジェクト管理という言葉を民主化していきたいですね(了)。

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