• 株式会社オプテージ
  • 経営本部 モバイル事業戦略部長
  • 上田 晃穂

「お客様は神様ではなく、同志だ」満足度No.1の格安スマホ・mineoのコミュニティ運営

〜ユーザーと事業者の「関係性」が決まれば、コミュニティの方針も決まる。レッドオーシャン市場から抜け出す、mineoのコミュニティ運営法〜

格安スマホを提供するMVNOサービス。国内に1,000社ほどの事業者が存在するレッドオーシャン市場の中で、高い顧客満足度を誇るのが「mineo(マイネオ)」だ。

その裏側には、契約者のうち2人に1人が加入している「マイネ王」というコミュニティサイトの存在がある。

▼コミュニティサイト「マイネ王」のトップページ

同サービスを提供する株式会社オプテージは、海外のMVNO企業をベンチマークとし、国内ではまだコミュニティ黎明期であった2015年1月にマイネ王を立ち上げ。

その運営を推進し、現在mineoの事業責任者を務める上田 晃穂さんは、「お客様は神様ではなく、我々の同志である」と話す。

同コミュニティが戦略とするのは、「共創」。月100件以上のアイデアが投稿される掲示板「アイデアファーム」やオフラインイベントを起点に、新機能の開発やTVCMの制作など、これまでに多くの共創事例を生み出している。

その結果、解約率を以前の0.7ポイント減にあたる約1.0%まで改善し、かつ新規顧客の3~4割を既存ユーザーからの紹介経由で獲得するまでに至っているそうだ。

今回は上田さんに、mineoのコミュニティ戦略から共創を生み出す運営のポイントまで、熱量の高いコミュニティ運営の全貌をお伺いした。

レッドオーシャンから抜け出すカギは「情緒的価値」にあった

私は1997年に関西電力に入社し、2016年7月にグループ会社のケイ・オプティコム(現オプテージ)に出向しました。現在は、MVNOサービス「mineo(マイネオ)」の事業責任者として、事業戦略やマーケティング全般を統括しています。

弊社では、コミュニティをマーケティング活動の中心として位置付けており、モバイル事業戦略部の40人中、6人のメンバーがその運営に関わっています。

MVNOの市場は年々拡大していて、現在では国内に約1,000社ほどの事業者が存在しています。mineoは2014年の6月に開始したのですが、市場の中では少し後発気味の参入だったんですね。

当時は、どの会社も「価格の安さ」という、いわゆる「機能的価値」ばかりを売り文句にしている状態でした。

その環境下で、いかに差別化を図るかを考えていた時に、より「情緒的価値」を大事にしたいなと思いまして。そこで海外のMVNOサービスを色々と調べてみたところ、イギリスのgiffgaffというおもしろい会社を見つけたんです。

giffgaffは2009年の設立以来、ユーザーとのコミュニケーションを軸として大きく契約数を伸ばしていて、直感的に「これだ」と思いましたね。

その日本版を作りたいと思い、mineoのサービス開始から約半年後にあたる2015年1月に、コミュニティサイトの「マイネ王」を立ち上げました。

コミュニティのKPIは、事業成長に直結する数値で測る

当初はスタッフブログしかありませんでしたが、新サービスやキャンペーンなどの情報だったり、その背景に込められた思いなどを発信することから始めました。

その記事に、ユーザーさんがコメントを書き込んでくれて、少しずつ双方向のコミュニケーションが生まれていった形ですね。

▼「お試しチップ体験」のスタッフブログに対するコメント(一部)

一方で、コミュニティを差別化のカギとして考えてはいたものの、当時はこれといった目標や成果指標がなかったんですよ。

とりあえず、会員数やPV数などのよくある指標をKPIにしていたのですが、これですとコミュニティがどう事業に貢献するのかが見えづらい、という課題がありました。

そこで、事業への貢献度をより明確にするため、満足度、NPS、解約率、紹介率、アイデア提案・実現数の5つを、コミュニティのKPIとして設定しました。

▼コミュニティの、5つのKPI

これらの指標は相互に関連しているのですが、すべての起点は顧客満足度ですね。

満足度を高めることがNPSの向上につながり、そこから口コミとなって紹介が生まれる。さらに、解約率の低減や、ユーザーからのアイデア提案数などにもつながっています。

MVNOの特性として、実店舗をできる限り持たずに運営しているので、新規申し込みのチャネルは、基本的にWebサイトか口コミ、紹介なんですね。また、機能的価値の差別化が難しいので、いかに解約を防ぐかも重要です。

なので、紹介率や解約率の改善が事業に与えるインパクトって、実はかなり大きくて。2016年からの2年で紹介率は20%から40%近くに増え、解約率は1.71%から1.11%まで下がりました。

こうしたKPIを置いたことで、事業戦略としてもコミュニティを中心に据える意思決定ができましたね。

「お客さまは神様じゃない」ユーザーとの関係性が方針を決める

コミュニティの運営をする際に大事なことは、ユーザーさんと我々がどのような関係性なのか、という認識を揃えることだと考えていて。

mineoにおいては、語弊を恐れずに言うと、我々にとってお客様は神様ではない、と考えています。というのも、「神様」だと思ってしまうと絶対的な存在になってしまって、主従のような関係に囚われてしまう。

けれど本来、我々とユーザーさんは一体であるべきだと思うんですよね。どっちが作るとかではなく、一緒に作るんです。

そこでmineoの場合は、「Fun with Fans!」 というブランドステートメントを定めています。

この「with」には、同志や家族、友達といった関係性でありたい、という私たちの意思が込められているんです。

▼ブランドステートメント「Fun with Fans!」の一部

この関係性が定まると、コミュニティの方針や施策も、おのずと決まってきて。ユーザーさんを「同志」と捉えているので、コミュニティの方針として「共創」を掲げています。

実際、ユーザーさんからアイデアを募る「アイデアファーム」という掲示板がマイネ王にあるのですが、月100件以上の投稿があるほど盛り上がっています。そこから、今までいくつものアイデアが実現していますね。

共創を生むポイントは「情報の開示」と「ユーザーとの対話」

実際に生まれた共創のひとつが、mineoアプリの新機能「mineoさんぽ」の開発です。

▼「mineoさんぽ」のアプリ画面

これは「ファンの集い」というリアルイベントの場を利用して、「mineoアプリでほしい機能」というテーマでアイデアを出し合うところから始まりました。

その中で、人気の高かった「万歩計」にアイデアの方向性を決めた後、マイネ王の「アイデアファーム」で機能に関するディスカッションを継続しました。

例えば、「歩数に応じてポイントが溜まったら嬉しい」とか「バッテリーをなるべく減らさないでほしい」といった声をいただき、機能の仕様を固めていきました。

もちろんすべての声を反映することはできないのですが、情報を全てオープンにし、ユーザーさん1人ひとりに対してきちんと返答する、ということを意識していましたね。

これも、同志という関係性に基づいて「共に創る」ということを考えれば、当然のことだと考えていて。最終的には、新機能の名前もユーザー投票によって決定しました。

他には、今年放映したTVCMの制作も、ユーザーさんと一緒に取り組んだものです。

▼共創によって生まれたTVCM「マイネオのリアル篇1」

これは、mineoのサービスについてノーギャラ・台本なしでユーザーさんに語ってもらう、という企画でして(笑)。

撮影する前はこれで成立するのかな、という不安も正直ありましたが、いざ始まってみるとすごくいい雰囲気で、どんどん率直な意見を出してくれました。

今の時代、企業が自社のサービスを宣伝したとしても、一般消費者の心には届かないじゃないですか。なので、実際のユーザーさんに自分の言葉で話してもらったことに価値があったかなと思います。

ユーザー同士の交流や相互扶助が、コミュニティの熱量を高める

また、熱量の高いコミュニティを維持していくためには、私たち事業者とユーザーさんの関係だけでなく、ユーザーさん同士のつながりも欠かせません。

例えば、マイネ王のQ&Aページは、まさにその典型ですね。

これはユーザー同士で疑問を解決する掲示板なのですが、総回答数は1万件以上にのぼり、mineoの全問い合わせの約1割をカバーしています。

また、サービス特性を活かした施策として「フリータンク」という仕組みを2015年12月から始めました。

これは、余ったパケットや期限切れで消えてしまうパケットを、他のmineoユーザーとシェアして、必要な人が必要な量を引き出せるという相互扶助の仕組みです。

自分が預けた以上に引き出すことも可能な仕組みなので、フリーライダーの人が多くなる可能性もあるのですが、枯渇することなく全国のユーザー同士の助け合いで支えられています。

さらに、役立った情報への「ありがとう!」や良いアイデアへの「いいね!」といった、日頃のちょっとした気持ちを伝える「感謝のチップ」もあります。

▼「謎解きゲーム」企画で贈られた908枚の「感謝のチップ」

また、累計210万枚以上になる感謝のチップや、マイネ王上で交わされたポジティブなコメントについては、「HAPPY METER」という機能で毎日カウントし、ユーザーさんから見える状態にしています。

▼過去30日間の「HAPPY METER」の推移

1回のチップで10MBのパケットをプレゼントすることができるので、オンライン上でもユーザーさん同士の新たな交流を生むきっかけになっていますね。

「mineo way」を制定し、ユーザーに応援されるサービス作りを

格安スマホ業界って技術的な流れも早いし、契約の縛りも厳しくないので、何もしなければ解約されやすいサービスだと思うんです。

そこで継続していただくためには、サービス改善のスピードを上げていくだけではなく、「mineoを応援したい」と思ってもらえるかどうかが大事だと考えていて。

そのために、mineoらしいコミュニティを、より強くしていきたいと考えています。

サービスが拡大し、コミュニティに関係する人が増えてきた中で、サービスやコミュニティの方向性に対する認識のズレを感じてきたんですよね。

そこで2019年2月に、運営側やユーザーさんなどの意見を集めて、「mineo way」と呼ばれる行動指針を制定しました。

こうして、行動指針についての共通認識を持つことで、今のmineoらしさがより深まるかなと思いますし、今後仲間が増えていってもコミュニティの色が薄まらないといいなと思っていて。

今後も、ユーザーさんと一緒に、いろんな挑戦をしていきたいですね。(了)

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