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  • 井上 皓史

コミュニティ運営は「カスタマーサクセス」と同じ? 190人が参加する「朝渋」運営術

〜「1対n」ではなく「n対n」のコミュニティを作る。渋谷で活動する朝活コミュニティ「朝渋」の、熱量を維持するコミュニティ運営ノウハウを公開〜

コミュニティ運営において、規模の拡大と熱量の維持を両立させることは難しい。

2016年9月にスタートした渋谷で活動する朝活コミュニティ「朝渋」は、運営2年で190人を超える規模へと拡大。その一方で、参加者の熱量を下げないコミュニティ運営を実現している。

その運営のポイントは「カスタマーサクセスと同じ」であると、同代表である井上 皓史さんは語る。

例えばコミュニティ入会時には、新メンバーの志向性をヒアリングし、ファーストアクションを一緒に考えるというオンボーディングプランを設計。

さらに、コミュニティ運営のKPIを「オフライン活動への参加回数」として、メンバーの活動への参加実績をもとにステータスをつけ、適切なフォローを行っているという。

また、参加者を少人数制のグループに分け、新旧メンバーにそれぞれの役割を持たせることで、各メンバーが「当事者意識」を持った熱量の高いコミュニティを維持しているそうだ。

今回は井上さんに、朝渋の立ち上げから現在に至るまで、規模の変化に応じたコミュニティ運営のノウハウについて詳しく伺った。

「早起きの習慣」がコンテンツに。朝活コミュニティの運営を開始

僕は、渋谷で活動する朝活コミュニティ「朝渋」を運営しています。2016年9月に立ち上げ、現在では190名以上が参加するコミュニティへと成長しました。

元々、僕は早起きの家庭に生まれ育ったんですね。ですが、新卒で入社した求人広告の会社では終電で帰る日々を送っていて、「社会人ってこんなに夜型なんだ」という驚きがあって。

その後、テック系ベンチャーに転職して事業開発を担当していた頃、朝渋の共同運営者である西村 創一朗さんと出会いました。

当時はビジネスパートナーという関係性だったのですが、西村さんから夜23時に来るメッセージを僕が朝5時に返信する、というのを繰り返していたところ、「こーじ君はいつ寝ているの」と聞かれて。

それで「僕、25年間ずっと早起きなんですよね」と話したら、「それすごいコンテンツになるよ」と言われたのがきっかけで、まずは西村さん専属の早起きコンサルを試してみることになりました。

例えば、毎朝起きた時間をメールで報告する、寝る前に悩みがあったら何でも話す、といった形で1ヶ月間サポートしたところ、見事に5時起き生活に変えることができたんです。

それを彼は「29年間生きてきた中で、ものすごい感動体験だ」と言うんですよ。それを多くの人に広めたいという想いから、2016年の9月に「朝渋」の共同運営をスタートしました。

初期のイベントは「特技の発表会」?暗黒時代の乗り越え方とは

今では朝渋の認知も高くなってきたのですが、実は、最初の1年ほどは暗黒時代で(笑)。

当初はコンテンツもなかったので、朝の時間帯に集まり、各メンバー持ち回りで自分の特技を発表する、という会を開いていました。

▼当時の「朝渋」の様子

例えば、VCで働いている人には情報収集の方法を、文房具会社に勤めている人には文具の活用法を教えてもらったりして、毎週、誰かしらにプレゼンテーションをしてもらう形式でしたね。

当時は「早起き」の魅力に共感してくれた人が参加していたのですが、各回には多くて15人、少ない時は3〜4人くらいしか集まりませんでした。

ですが15回ほど開催すると、いよいよ毎回来るメンバーからはコンテンツを出し尽くしたと。これ以上何をしたらいいのか、運営側もしんどくなってきて、疲弊していく一方だったんです。

そんな中、当時の運営メンバー4人の共通点が「読書好き」だったので、毎週金曜の朝7時にみんなで集まって、黙々と本を読むというシュールなことを始めまして(笑)。

これがなかなか面白くて2ヶ月ほど続けていた頃に、ForbesJAPAN副編集長の谷本 有香さん出版の本をたまたま見つけて、著者を呼んだトークイベントをやってみようと。

そして、登壇の依頼をして開催できることになり、1週間で60人ほど申し込みがあったんです。今までの倍以上の人数が一気に集まったので「なんだこの化け物イベントは」と思いまして。

その後、集客が不安定な時期もありましたが、著名人の方々に登壇していただいたことで認知が高まっていき、今では100名満席が多発するほどの朝渋のコアコンテンツになりました。

グループは少人数・月1シャッフル!「自分ごと化」が継続のカギ

こうして、著者イベントが軌道に乗ってきた一方で、参加者に「これを機に早起きできそうですか?」と尋ねると「いやいや、この日だけだよ」という人ばかりで。

当初の目的であった「早起きの習慣化」が著者イベントだけでは実現できないと思い、2017年7月に「朝渋NEXT」という名のコミュニティ運営をスタートしました。

具体的な活動としては、著者イベントや、ランニングや読書など40〜50種類の部活動をはじめとしたオフラインの活動と、少人数制のグループで起床時間などを報告し合うオンラインの活動です。

▼実際の「チョコ部」の活動の様子

早起きって目的ではなく「手段」なんですよね。なので、早起きによって創出された朝の時間で活動をすることで、メンバー1人ひとりが自己実現できることを目的にしています。

また、コミュニティの運営は、新旧メンバーの交流を促す仕組みが大切だと考えています。

そこで、メンバーを6〜8人ずつ25チームに分けて、月1回はメンバーをシャッフルするようにしています。そして、各チームのリーダーには、新メンバーを任命しているんです。

というのも、コミュニティに入った瞬間に、いかに「自分ごと化」できるかが継続のポイントだと思っていて。

敢えて新メンバーにリーダーという役割を与えることで、「もっと朝渋のことをキャッチアップしなきゃ」という意識が生まれるんですよね。

一方で、リーダーを補佐する「バディ」という役割の人を、必ず各チームに置いています。バディには基本的に半年以上コミュニティに所属し、朝渋のことをよく知っている人を任命しています。

こうして、各グループ内で新旧メンバーに役割を持たせることで、メンバーの主体性で交流を楽しめる仕組みになっています。

コミュニティ運営は、「カスタマーサクセス」の役割と同じ

では一方で、運営者の役割は何かというと、顧客の成功のために伴走する「カスタマーサクセス」と同じだと考えています。

いくら良いサービスでも使えなければ意味がないのと同じで、いくら魅力のあるコミュニティでも、その活用法がわからないと人は離れていってしまうんですね。

例えば、新しいメンバーが入会すると、必ず一緒にオンボーディングプランを考えます。「朝渋で何をしたいですか」「趣味は何ですか」といったことをヒアリングし、その人に合った部活動やイベントを紹介しています。

入会した時って、その人の熱量が最も高い時だと思うんです。そこで一緒にファーストステップを作ることが重要だと考えています。

また、コミュニティ運営のKPIは、各メンバーがアクティブかどうかで測っていて。具体的には「月4回以上のオフライン活動への参加」をKPIに設定しています。

というのも、コミュニティの熱量を下げないためには、オンラインだけではなく、いかにオフライン活動に参加してもらうかが大切です。

そこで、メンバー全員の部活動や著者イベントなどへの参加回数は、すべてスプレッドシートで管理しています。そして、この人はサポートが必要そうか? という目線でステータスをつけていて。

例えば、参加頻度が高くてめちゃ楽しんでそうな人は、サポートのいらない「我が道」、そこそこ参加している人は「普通」、逆にほぼオフラインの活動に参加していない人は「退会」といった形です。

このステータスをもとに、運営側からのサポートの仕方を変えています。毎日、5名以上と個別にやり取りしていますね。

例えば「普通」の人に対しては、よりアクティブになってもらうべく朝渋でやってみたいことなどをヒアリングし、適切なメンバーと繋いだりしています。

コミュニティは「村」。1対nではなく、n対nの関係性を目指す

僕は、コミュニティは「村」みたいなもので、大きくしすぎない方がいいと考えています。最大でも、250人が限度かなと思っていて。

というのも、コミュニティが大きくなることで、どうしてもフリーライダーのような人が生まれてしまうんですよね。

実際、150人くらいを超えた頃に、一部のメンバーから不満のような声が出てきたんです。その話を聞いてみると、活動に対して非協力的な人がいると。

最近よくあるオンラインサロンなどのコミュニティって「1対n」だと思うんです。有名な方がファンコミュニティを作って、学びたい人が参加するような形ですね。

その形であれば、コミュニティのメンバーが何かを学ぶために参加するだけでも価値があると思うのですが、僕らが目指しているのは「n対n」の関係なんです。

この村における村長の役割は、方向性を示すことではなく、早起きの習慣化によって自己実現する人をサポートすることなんですよね。道路整備のような、完全なる裏方仕事のイメージです。

そのため、村の1人ひとりが「当事者意識」を持つことが重要だと考えていて。そこで、入り口を狭めて質の高いコミュニティを維持するために、今年の10月からエントリー制に移行しました。

今までは「朝渋に入れば早起きできそう」という人を育ててきたのですが、それだと今の規模ではなかなか前に進みません。

そこで現在のエントリー制では、テイクするだけじゃなく「何かしらギブできる人か」を判断基準としています。「僕は野菜が作れるので、この村に入りたいです」みたいなイメージですね。

結局、指示を待つ人ばかりを集めても何も動かないので、チームの崩壊を防ぐためにも、コミュニティに入る人を限定することが大切だと考えています。

コミュニティ作りに「ノウハウ」はない。熱量で広まっていく

最近よく、「コミュニティってどうやって作ればいいんですか?」みたいな質問をいただくことがあるのですが、小手先のノウハウみたいなものは本当になくて。めちゃくちゃ地道なんですよ。

僕も最初の3ヶ月くらいは、100人中97人には「早起き? 何それ」と言われていたんです。ただ、残りの3人は「これマジすごいね」と共感してくれました。

そこからオフラインやTwitterなどで点と点がどんどん繋がって、紹介の輪で大きくなっていって。それを振り返ってみても、まずは始める人の熱量がないとコミュニティはできないと思っています。

今後は、企業とのタイアップ等による朝渋の収益化にも取り組んでいきますが、コミュニティ自体については特に方向性も定めていなくて。

対外的には「日本の朝を変える」をミッションとして発信しているのですが、実はコミュニティ内には一切言っていないんですね。

なぜなら、運営側の目線が出てしまうと「それに乗っかっている」ような感じになってしまい、自分ごと化ができなくなると思っています。

主語は僕ではなく、あくまでコミュニティに参加するメンバーです。なので、その1人ひとりが早起きをすることで一歩踏み出せたり、チャレンジできる環境を用意することが全てだなと思っていて。

その実現を目指して、これからも熱量の高いコミュニティを作っていきたいですし、一緒に村をつくる新しい仲間も募集中です。(了)

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