- 株式会社プレイド
- Customer Experience Designer
- 安藤 紗織
「社内会議」もコンテンツ化。累計1,700名が参加した、KARTEのコミュニティ運営術
〜CX(顧客体験)の最大化を目指し、コミュニティ運営専任チームを発足。ユーザーへ学びの場を提供しながら、共にプロダクトを創り上げる、新たなコミュニティ運営の形とは〜
近年、顧客のコミュニティを形成し、マーケティングやPR、CS、商品開発などに活用する企業が増えている。コミュニティを通じて顧客のロイヤリティを向上させつつ、事業成長にも貢献するためには、どのような工夫が必要なのだろうか。
CXプラットフォーム「KARTE」を展開する、株式会社プレイド。
同社は、「KARTE」のユーザーである「KARTE Friends」の体験を向上させ、共にプロダクトを磨き上げていきたいという想いから、2019年4月にコミュニティ運営専任のチームを新設。
それまで不定期で開催していたオフラインイベントを月1〜2回に高頻度化。KARTE Friendsが能動的に参加できるように、参加者同士のグループワークなどもコンテンツに組み込んだそうだ。
その後、より効率的かつ効果的に学べる場を提供するため、オンラインコミュニティを開設。コロナ渦の現在においては、「自社の社内会議にユーザーも参加し、ディスカッションする」といった、非常に距離感の近いオンラインイベントを実施しているという。
今回は、同社のコミュニティ運営を担う平岡 志織さんと、安藤 紗織さんに、コミュニティ立ち上げ期のポイントやオフライン・オンラインでの運営の工夫について、詳しくお伺いした。
コミュニティ運営専任のチームを新設。7Pフレームで戦略を定義
平岡 私は2017年にプレイドに中途入社し、セールスとカスタマーサクセスに携わった後、2019年にコミュニティ運営専任のチームを立ち上げました。現在は、その取り組みを拡張したカスタマーエクスペリエンスチームのマネージャーを務めています。
安藤 私は2018年にプレイドに中途入社して、2019年から平岡と同じチームに所属し、主にコミュニティ運営を担当しています。
▼左:安藤さん、右:平岡さん
平岡 弊社は、オンライン上の顧客行動や感情をリアルタイムに解析・可視化して、顧客体験の向上を可能にするサービスを提供していることから、「CXの最大化」を追求してきました。
以前からユーザーであるKARTE Friends向けに、有志メンバーが不定期にイベントを開催していましたが、「顧客体験をより良くしていきたい」という想いから、2019年4月に専任となるコミュニティチームを新設しました。
その立ち上げにあたっては、社内から「今まであったものは全て壊しても問題ない。プロダクトの価値をどのように広めていくかを考えて、ベストなコミュニティを立ち上げてくれ」と託されました。
全てが手探り状態の中で、まず最初に行ったのは「コミュニティ戦略の再定義」です。そこでは、コミュニティマネージャー向けの世界的カンファレンス「CMX Summit」で提唱された、7Pのフレームワークを活用しました。
▼コミュニティマーケティングのフレームワーク「7P」
それぞれの項目をKARTE Friends側と弊社側の2軸で定義したのですが、その中でも特に重視したのは「Purpose(コミュニティの存在意義)」です。
それは、KARTE Friendsにとっては「同じ悩みや目標を抱えた仲間と出会え、良いCXを目指すために学びあえる場であること」。弊社にとっては「社員がお客様から直接意見をもらえる機会が増え、サービスの差別化に繋がること」というものです。
全社のメンバーやKARTE Friendsに対しても、この7Pを基に「どんなことをしていきたいか」を伝えていますし、社員なら誰でも7Pが記載されたドキュメントを閲覧できるようにしています。
ここで定めた7Pが私たちの活動指針となり、悩んだ時に立ち戻る場所となりました。
グループワークを取り入れ、参加者全員が能動的に学べる場を創る
平岡 その後はまず、イベントの開催頻度を2〜3ヶ月に1回から月1〜2回に増やしました。通常のイベントの他に「KARTE Friendsの業種・職種別」「KARTEで利用している機能別」といったテーマ性のあるイベントも開催しました。
それまではKARTEの活用事例の発表がメインだったので、参加者も受動的な姿勢になっていましたが、私たちはコミュニティを「能動的な学びの場」にしたいと思っていて。
そこでイベントの構成を見直し、KARTE Friendsによる事例登壇とグループワーク、新機能などのお知らせ、懇親会というパッケージにしました。
この鍵となるのは、40分〜50分ほどかけて行うグループワークです。1回のイベントに約30名が参加するので、各グループで事例の感想を共有した後、複数のテーマについてディスカッションする時間を設けました。
例えば「身近なCXを考えてみる」というお題では、「自分が感動した体験や、嫌だと感じた体験を思い出してみましょう」という問いかけで盛り上がり、そこから深掘りしていきました。
あえて、KARTEを使ったコンテンツではなく、参加してくださった皆さんの業務におけるスタンスや手法を学び合えるような、大きめのテーマを設けることが多いですね。
イベント参加後のアンケートでも、「どんな学びがありましたか?」「自社にどのように活かしたいですか?」といったように、能動的に考えられる質問項目にしています。
オンラインコミュニティを開始し、日常的な接点を強化する
安藤 イベントの運営が軌道に乗ってきたところで、より効率的かつ効果的に学べる場を提供するため、オンラインコミュニティの検討を始めました。
オンラインコミュニティは一度始めると不可逆性が高いため、事前にコミュニティマーケティングに詳しい方々にお話を伺ったところ、認識齟齬を生まないためのルールの明文化や、打ち出す軸を明確に定めることが重要だと学びました。
それらを定めた上で、コミュニティマーケティングに特化したツール「commmune(コミューン) 」を活用する形で、オンラインコミュニティをスタートしました。
ここでは、イベント時のセッション内容を蓄積したり、日々の情報発信や社員紹介などを行い、日常的なKARTE Friendsとの接点を強化しています。
▼(一例)コミュニティに向けて、KARTEの細やかな機能アップデートを発信
立ち上げた当初は、オフラインイベントの参加者に限定していましたが、今は徐々に参加者の間口を広げているところです。
平岡 こうした新しい施策にも挑戦できるようになった一方で、少人数のチームだとリソースやアイデアが不足するといった課題がありました。
加えて、専任のチームができて良い感じに回せていると周囲が認識したことで、一気にサポートが減ってしまって。これはまずいなと思い、社内の巻き込みをより意識するようになりました。
そこで、全社ミーティングでの進捗共有に加えて、週報のような形でSlack上で「イチオシFriends」の紹介を開始しました。
例えば、「KARTE Friendsの〇〇さんと言えば、〇〇でお馴染み」といったように、社内メンバーにFriendsの方々を紹介して、心理的な距離感を縮めるような内容ですね。これによって、実際に対面した時により会話が弾むようになりました。
また、ユーザーイベントは他部署のメンバーにとっても学びが多い場だと思うので、「本当にKARTE Friendsの悩みを分かっていますか」「聞けるのはここしかないよ」と、積極的にイベントに参加するように声を掛けていましたね。
KARTE Friendsが社内会議に参加するイベントで、繋がりを強固に
平岡 専任チームを立ち上げてからの約1年で、オフラインイベントの型もでき、満足度の高いものをご提供できるようになってきたなという自信も出てきました。
しかし新型コロナウイルスの影響で、同じ形式での開催が難しくなってしまって。これまでのコンテンツをオンラインで実施するのを想像した時に、私だったら参加したくないなと思ったんです。
そこで、この環境下で同じコンテンツをオンライン化するのではなく、今年の1月からちょうど開始していたオンラインイベントを生かす形で、現在は運営しています。
安藤 始めた当初は色々な企画に挑戦してみたのですが、特に「社内会議にKARTE Friendsが参加する」というコンテンツの反響が良かったです。
例えば、弊社のCX体験について取り上げるメディア「XD(クロスディー)」の編集会議に加わってもらったり、チームでXDの記事を読む「輪読会」に参加してもらったりして、実際にディスカッションにも混ざっていただきました。
また、KARTEの機能開発チームから社内メンバー向けに、機能アップデートの共有を行う場があるので、それをKARTE Friendsに向けて実施したりもしましたね。
オンラインイベントは一気に大人数を集められるメリットがありますが、自発的に学べる場を作ろうと思うとやはり少人数の方が良いです。そのため、参加人数は増やさずに実施回数を増やしたり、内容を変えるなどの工夫をしています。
特に輪読会の反応がとても良かったので、今後も定期開催しようと思っています。
1,700名を超える参加者と共に、ベストな顧客体験を追求したい
平岡 私は、KARTEというサービスは、Friendsと一緒に作っていくものだと考えています。
これまで開催したイベントには累計で1,700名以上がご参加くださり、日常的にオンラインコミュニティでの情報交換もしているので、弊社とKARTE Friendsの両者が接点を持つことで化学反応が起きれば良いなと思っています。
また、コミュニティ運営によって色々な変化が起きているのですが、例えば新しい機能をリリースする際に、社内の開発メンバーから「次はいつ皆さんにお知らせできるかな」みたいに聞いてくれるようになったのは、すごく良い変化だと思っていて。
コミュニティで直接KARTE Friendsと触れ合う中で、機能について質問をもらえること自体が学びになるので、開発メンバーからも「新機能について直接伝えたい」という気持ちが高まったのだと思います。
安藤 実際に発表する時は、開発秘話のような裏側のストーリーを語ってもらうようにしていますね。「まずこういうお問い合わせがあって」とか「こういうことが今まで課題としてあったので、このように解決することにしました」と言った形です。
単に「新しい機能が出ました」と聞くと、「また覚えることが増えた」といったように拒否反応が出ることがあると思うのですが、開発の裏側も聞くことで納得度が増したり、早く触ってみたいと感じていただける方が増えているように思います。
私自身は、今はオンラインイベントのブラッシュアップなどに追われていますが、日々アップデートされるKARTEをフル活用して、今後はKARTEを生かしたコンテンツも検討したいと思っています。
平岡 カスタマーエクスペリエンスチーム全体としては、コミュニティはあくまで施策のひとつかなと思っていますが、私たちが考えるベストな顧客体験というものを、今後もコミュニティを通じてお伝えできればと思っています。(了)