• 株式会社ミラティブ
  • co - Founder CCO(Chief Community Officer)
  • 小川 まさみ

配信者数100万人突破!サービス改善に直結する、ミラティブのコミュニティ運営術

〜ユーザーの声をどう吸い上げる? 「3ヵ月で500人のユーザーに会う」OKR目標を達成した先に見えてきた、コミュニティマネジメントと課題とは〜

近年、マーケティングにおける「コミュニティ」の有用性が注目され、運営する企業が増えてきている。だが、コミュニティの機能価値は、マーケティングだけではない。

2015年8月にリリースし、スマホ1台でゲーム実況ができる手軽さから、爆発的にユーザー数を伸ばしている「Mirrativ(ミラティブ)」。

アバター機能「エモモ」を利用することで、誰でもVTuberのようにライブ配信をすることができるという、独自のサービス体験を提供している。

同サービスを運営する株式会社ミラティブでは、コミュニティを「ユーザーの方々に意見や要望をお伺いする場」として積極的に活用しているという。

具体的には、「オフ会」「グループインタビュー」「1on1インタビュー」の3つのチャネルを活用し、それぞれの特性に合わせた形でユーザーへのヒアリングを実施。

その内容を、週1回のユーザーフィードバックという全社ミーティングで共有し、これまで多くのサービス改善に活かしてきたそうだ。

また、同社では目標管理にOKRを導入。3ヵ月ごとに明確な目標にコミットすることで、コミュニティ運営のPDCAサイクルを回しているという。

今回は、過去に「スプリングまお」として動画や生放送の出演を経験され、現在Mirrativのコミュニティマネージャーを務める小川 まさみさんに、同コミュニティ運営について詳しくお伺いした。

ゲームを爆発的に成長させる、コミュニケーションの力

私は前職で、「パズドラ」や「モンスト」などのゲーム攻略アプリのディレクターを務めていました。

ゲームに関しては全くの素人だったのですが、人気YouTuberである「マックスむらい」さんに誘われて、YouTubeでのゲーム実況やニコニコ生放送の番組に出演するようになりました。

そこで初めて、自分でもゲームをするようになって。最初は上手くできなくて正直しんどかったのですが、視聴者さんやTwitterのフォロワーさんから、「まおちゃんのランク抜かしたよ」「アイテムお揃いだね」みたいな言葉をいただいて、徐々にゲームの楽しさにひき込まれていったんです。

ソーシャルのユーザーコミュニケーションが、ゲームを爆発的に成長させるんだな、というのをリアルに実感した体験でした。

その後、2016年にDeNAに転職し、リリースして半年の「Mirrativ(以下、ミラティブ)」チームにジョインしました。

ミラティブは、スマホ1つで誰でも簡単にゲーム実況ができるアプリです。2019年3月時点で、配信者数は100万人を突破し、右肩あがりで成長を続けています。

私が入る前の話にはなりますが、ミラティブの初期に成長の手応えを感じた瞬間は、代表の赤川がユーザーコミュニケーションを徹底的にやり始めたときだったそうなんです。

例えば配信開始時のツイートに対する「いいね」だったり、DMで来た質問だったり、1対1のコミュニケーションを取ることで配信者さんが増えていきました。

私がジョインした後は、赤川とともにプロダクトの要件定義からマーケティング、ユーザーサポートまで、ありとあらゆるMirratvの成長に紐づくビジネス全般の仕事を分担していきました。

そして、2018年2月にミラティブ社として独立したタイミングで、私がコミュニティマネージャーに就任しました。現在のコミュニティチームは、兼務のメンバー4名とインターン生2名の、計6名から構成されています。

コミュニティチームのOKRは「3ヶ月で500人のユーザーに会う」

ミラティブ社では「OKR」を導入しています。これは、四半期ごとに全社で目標(=Objectives)と成果指標(=Key Results)を定め、それに紐づく形で各チームのOKRを定める目標管理の手法です。

このOKRの導入によって、「目標に対して3ヵ月間コミットし、その結果をもとに次アクションを決める」というサイクルが回り始めてきました。

その中で、2018年10〜12月期に定めたコミュニティチームの目標が「3ヵ月で500人以上のユーザーさんに会う」でした。

この直接的なきっかけになったのは、2018年の夏に東京と大阪で開催したオフ会で。

もともとDeNAから独立することでユーザーさんに不安を与えてしまわないか、という懸念があっての開催でしたが、大阪出張からの帰り道で「これ、めちゃくちゃすごくない?」という話になったんです。

ユーザさんの熱量がものすごく高いし、自分たちもめちゃくちゃ元気をもらえて、「この人たちのためにサービスやってるんだ」と強く自覚できる。帰りの新幹線の中で、「よし、やるぞ」みたいな決意を固めていましたね(笑)。

そこで、3ヵ月で500人以上のユーザーさんに会うというストレッチ目標を設定し、オフ会とグループインタビューという2つの形式で活動計画を立てました。

オフ会は、10月の東京と、12月の名古屋と東京の2箇所で、計4回ほど開催しました。それに加えて、今回新たに取り組んだのがグループインタビューです。こちらは3ヶ月間、ほぼ毎週末行いました。

結論から言うと、この目標は無事に達成しました。また、ただ会うだけでなく、形式の違う場を運営したことで、ミラティブとしてユーザーさんから意見をお伺いする方法が体系的にわかってきましたね。

オフ会は「総和」、グループインタビューは「個」の意見にフォーカス

例えばオフ会では、ユーザーさん同士がオフラインのコミュニケーションを深めることで、ミラティブの配信・視聴体験がより楽しくなることを目的としています。

1回で40〜50人が参加するため、より多くのユーザーさんに会えるというメリットがある一方で、個別のコミュニケーションが取りづらく、いただくご意見もチームごとの「総和」に近いんですね。

そこで、ユーザーさん1人ひとりとのコミュニケーション濃度を意図的に高くするため、グループインタビューを取り入れました。

▼実際のグループインタビューの様子

実際のインタビューでは各回10名前後にご参加いただき、「ミラティブで起きた嫌なこと」「ミラティブに変えてほしいこと」など、ネガティブな体験や改善要望を必ず聞くようにしています。

オフ会ではネガティブな話が出てきづらいのですが、グループインタビューでは運営からの質問をベースにユーザーさん同士での共感が生まれるので、より本音の部分を引き出すことが可能です。

もうひとつ、グループインタビューには別のメリットもあると感じています。

例えば「特定の配信に視聴者が集まりすぎているから、改善してほしい」といった要望があったとします。これに対して、別の配信者さんが「いや、それはちょっと違うんじゃない?」みたいな感じで、意見が対立することがあるんですね。

これって、まさに運営の中で起きていることが可視化されている状態だと思っていて。

つまり、配信者・視聴者という立場や、配信者さんの中にも規模感の異なる方々がいらっしゃる中で、「どうしたらより良いサービスにできるだろう」と私たちも苦悩しながら作っている、ということが間接的に伝わるんです。

運営としては、ファシリテーションに徹して話しやすい場づくりをしたり、真摯に受け答えすることを大切にしていますね。

実装した機能は、毎月の「運営だより」でユーザーに共有

そして、いただいたご意見やご要望は、週に1度の「ユーザーフィードバック」と呼ばれる全社ミーティングで共有しています。

この場には、開発からビジネスサイド、バックオフィスまで全職種のメンバーが参加していて、改善要望の共有や、ユーザーさんからの嬉しい言葉などをフィードバックしています。

例えば、「10時間を超えて連続配信すると途切れてしまうので、その前に何かしらの形で教えてほしい」という要望をいただき、配信の途切れる15分前にお知らせする機能を追加しました。

▼ユーザーの要望をもとに実装された機能

もともと10時間以上も連続配信する方はいないだろうという想定での仕様だったのですが、実際には「24時間配信するぞ!」という配信者さんたちもいらっしゃるんですよね。

こうした自分たちでは気が付けなかった部分も、ユーザーさんとのコミュニケーションを通じて、開発の優先順位をあげて反映することができました。

さらに、実装された機能は「運営だより」の形でユーザーさんに共有しています。

▼先月の運営だより(一部)

これは月1で配信していて、今月のアップデート内容や、よくある質問、オフ会やグループインタビューの告知などを掲載しています。

ユーザーさんから意見をお伺いした後に、実際にどう機能に反映したかという双方向のコミュニケーションが大切だと考えていて。

私たちが考えていることや今後の方向も伝えることで、もっとミラティブに期待してもらえたらな、と思っています。

検証したい課題のペルソナを対象に、1on1インタビューを実施

ミラティブは「エモさ」を大切にする一方で、プロダクトアウトでKPIをしっかり見ることを大事にしています。

そこで現在は、2019年1〜3月期のOKRとして、KPIドリブンでの数値改善に注力しています。

というのも前期を振り返ってみた結果、目標は達成したものの、成果指標であったオフ会やグループインタビュー前後での「配信アクティビティ」の変化が、短期的にはそこまで見られなかったんです。

そもそも、オフラインの場に参加してくださる方々って元から熱量のベースが高いんですよね。もちろん、将来的な離脱リスクが軽減するといった効果はあると思うのですが、短期的なKPIとしては上がっていなかったと。

なので今期は、より検証したい仮説や課題に対する意見をすばやく収集し、KPI改善に活かすため、1on1インタビューを導入しました。

例えば、「コアユーザーの配信者さんが今後もミラティブを継続的に利用してくれるか」という仮説に対しては、100日以上の連続配信をしているユーザーさんを対象としたインタビューを実施しました。

仮説のペルソナとなるユーザーさんにヒアリングすることで、生活環境の変化によってどうしても抗えない離脱要因がある、といった課題のインサイトが見えてきたりしましたね。

また、1on1インタビューはチームメンバーで分担し、1月だけで20〜30人のユーザーさんとオンライン面談を実施しました。

誰がインタビューをしてもきちんとお話をお伺いできるように、気をつけるポイントを「インタビューシート」にまとめてメンバーに共有しています。

例えば、「インタビューで聞きたいことを明確にする」「それに合った属性のユーザーさんをデータを元に洗い出す」「オープンクエスチョンで話を引き出し、流れの中で必要な部分に触れていく」などがポイントです。

また、話しやすい雰囲気づくりも大切なのですが、こちらが感情をのせてしまうとバイアスが生まれてしまうので、「やわらかいロボットのように対応すること」なども意識していますね。

ユーザーの「出口」を作り、1人ひとりのストーリーを伝えたい

ミラティブでは2018年8月にエモモの機能をリリースしてから、雑談などの今までと違った配信スタイルが生まれ、配信者さん1人ひとりの才能が開花する幅がすごく広がってきていると思うんですよね。

今後は、配信者さんたちがここに居続ける価値を感じ、成長した先の「出口」のようなものを作っていきたいと思っていて。

最近では、ユーザーインタビューを記事にして公開しているのですが、それも出口のひとつだと考えています。

▼ユーザーインタビューの記事

そうした配信者さんたちの喜びにつながるような様々な出口があれば、1人ひとりのストーリーが生まれますし、きっとモチベーションになると思っていて。

さらに、ミラティブを楽しんでいるユーザーさんのことや、サービスが生み出している価値などを、社会により知ってほしいと思うんですよね。

今後も、ユーザーさんの要望を取り入れながらサービスを改善しつつ、コミュニティとして出口までのステップを作っていって、1人ひとりのストーリーを世の中に伝えていきたいと思います。(了)

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