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「非生産的でくだらないこと」を追求し、2,000万円を売り上げた、カバードピープルの世界観とは

企業や自治体によるNFTの活用事例が急増した昨今。それらを一過性の施策で終わらせないためにも、NFTの本質や社会から求められるコンテキストを理解し、「次の一手」を考えていく局面を迎えている。

特にコミュニティを形成するプロジェクトであれば、ユーザーの熱量を維持するためにも、オンライン施策に留まらず、NFTを保有する価値をRWA(現実資産)と紐づけるなどして、コミュニティに関わる楽しさやメリットを作り続けていく必要がある。

そうした中、独特の世界観を武器としたシュールなアートを基点にコミュニティを形成し、実生活に紐づく様々なプロジェクトを立ち上げているNFTプロジェクトが存在する。それが、「カバードピープル」だ。

「くだらないことにこそ価値がある」という理念を掲げる同プロジェクトは、鹿児島県薩摩川内市と連携したリアルイベントの開催や、離島でのビール工場建設、東京都内のサッカークラブとのスポンサー契約など、約800人を巻き込みながら同時多発的にプロジェクトを展開。

これまでに約2,000万円の売上を記録しており、まさに「コミュニティを基点とした独自経済圏を確立しているNFTプロジェクト」と言っても過言ではない。

さらに最近では、KDDIが提供するNFTマーケットプレイス「αU market」とのコラボを通じて地域に根付いた取り組みも展開しており、行政や自治体などからも大きな注目を浴びている。

同プロジェクトの創始者であるヒオキン(@hioking2010)さんは、「コミュニティの持続可能性を高めるためには、コンテンツが自然発生的に生まれるように『余白』がある環境を作り、個人が挙手した際に、それをいつでも実現できる体制を整えておくことが重要だ」と語る。

そこで今回は、ヒオキンさんに、コミュニティの熱狂を生み出す勘所から、RWAとNFTの掛け合わせ方、そして独自経済圏の構築方法までを詳しく伺った。

非生産的で非合理的な「くだらないこと」を徹底的に楽しむ意義

僕は、大学卒業後に個人事業主として数年間働いた後、現在の本業となる事業を立ち上げました。具体的には、採用候補者向けのWebサイトや動画の制作、またSNS運用支援などを行っています。

そして、Web3領域には2021年10月頃に参入し、翌年2月にNFTプロジェクト「カバードピープル(以下、カバード)」を立ち上げました。現在は、本業と半々くらいの比重で取り組んでいる形です。

カバードは、個々のキャラクターが猫や帽子、おにぎりなど、自分の好きなものを被ったPFP(Profile Picture)のアートである点が特徴です。

▼カバードピープルのNFTアート

立ち上げ当初から「こういう形にしたい」という理想があったわけではないのですが、潜在的にはずっとコミュニティを作ってみたいと思っていました。ただ、具体的なやり方がわからなかったのに加えて、自分に人を惹きつける魅力があるのだろうか…などと思いながら、なかなか行動に移せずにいたんです。

そうした中で、NFTへの世間の注目が集まり始めた頃、「クリプト研究所」と呼ばれるコミュニティでイラストを配布したところ、予想以上の反響がありました。そこから自然にコミュニティが形成され、「このプロジェクトを続けていれば、やりたかったことが実現できるかもしれない」と感じ、本格的に取り組むことを決めました。

そして現在、カバードは「くだらないことにこそ価値がある」をモットーに、「数百年後も繁栄し続ける経済圏を伴った生活圏をつくる」というビジョンのもと、同時多発的に様々なプロジェクトを立ち上げながら活動しています。

このモットーは僕の人生哲学の一つでもあって、最後の走馬灯がよぎる瞬間に残るのは「記憶」だと思うんです。人生は一度きりですし、楽しかった思い出がたくさんあった方が良いじゃないですか。

そうした楽しかった思い出は、学生時代に部室で仲間とだらだら語っていたような時間の記憶が色濃く残ると思っていて。AIが発達し、生産的な活動の価値が相対的に下がる現代では、むしろ、非合理的で非生産的な「超どうでもいいこと」を楽しめることの方が、人生を豊かにすると思っています。カバードには、このような考え方に共感する人が多く集まっているように思いますね。

「やりたい」と挙手した人の思いを尊重しコミュニティの経済性を高める

プロジェクトの運営においては、「くだらなさ」の追求と並行して「持続可能性」の構築も重視しています。

この考え方は、お笑い芸人「キングコング」の西野 亮廣さんの考えに大きく影響を受けているのですが、やはり好きなことを続けるためには予算を確保し、仕組みを作りながら経済性を高めていくことが必要不可欠です。

そのためにも、新しいコンテンツが自然発生的に生まれるような環境づくりを意識していて、「やりたい」と挙手した人の思いに応えられる方法を常に模索しています。

例えば、初期のカバードにはデザイナーやクリエイターが多く関わってくれていたので、アートの二次創作を許可し、「カバードピープル公式パートナーコレクション」を作りました。これにより、20種類以上のコレクションが生まれ、プロジェクト全体の成長にも繋がりました。

さらに、2024年4月の着工を目指して、現在KDDI様と推進している離島・甑島(こしきしま)ビール工房のプロジェクトは、甑島在住の松田さんというメンバーがオーナーシップをもって取り組んでいます。

彼自身に営業力や影響力があったこともありますが、「離島にビール工房を作ってみたい」という思いを強く抱いていたことや、コミュニティ内で既に信用があったことから、自然発生的に立ち上がったプロジェクトでした。

このプロジェクトに関しても、僕は基本的にサポート役に徹するようにしていて、プロジェクトの全体設計と広報活動を主に担当しています。

一般的に、コミュニティの熱量や結束力を高めていく方法として、リーダーが「この指とまれ」で人を巻き込んでいく形もあると思います。けれども、そのアプローチでは「自分には関係ない」と思ってしまう人が生まれる可能性があると思っていて。

その原体験として、僕は学生時代にクラスの中心にはいなかったタイプの人間で、同じような境遇の人の気持ちを少なからず理解できるからこそ、そうした人々を基準に考えた方が、組織全体として「ちょっとやってみようかな」という機運を醸成できると思っているんです。

また、自然発生的に何かを生み出していくために、「形から入らない」ことも意識していることの一つです。

例えばカバードでは、約30人の規模になり、集まる場所が必要だと感じたタイミングでDiscordコミュニティの運用を始めました。各人の役割に関しても、運営の役割を果たす人が暗黙の了解で決まっているだけで、具体的な役職は設けていません。

このやり方は、人数がそこまで多くないフェーズだから出来ているのかもしれませんが、僕自身、人を動かす意図を明らかに感じるようなインセンティブ設計はやりたくないですし、自由に出入りできる余白がある方が、コミュニティに所属することの楽しさに繋がるのではと考えています。

ネタとして受け入れてもらえる「余白」を作り、承認欲求を満たす

では、カバードのメンバーにとって何がインセンティブになっているかというと、承認欲求や自己顕示欲を満たす「ネタ」があるからではないかという仮説を持っています。そこで、企画を行う際には、くだらなさや面白さを軸に据えて「ネタ」として展開するよう意識しているんです。

例えば、コミュニティへの参加権の入手方法については、NFTアートの購入以外にも、X上で開催されている大喜利に参加し、最も面白かった人に配られるNFTを2体集めたら入手できるというルールを設けています。これがある種、その人がコミュニティに合うかどうかを見極める役割も果たしていますね。

▼実際に「ぜんりょく大喜利」が行われている時の様子

他にも、NFTの保有数による「階級」をいくつか設けているのですが、階級を上げても正直金銭的なメリットは何も設けていなくて。メンバーに対しても、あえて「NFTをたくさん買ってもらうため」と公言しているんです(笑)。

それでもなぜ、ネタに乗ってくれてコミュニティが盛り上がるのかといえば、「何もないものに対して、お金と時間をかけられる面白さ」を感じてもらえているからだと思います。

ただ、過去にはこの軸を忘れかけたこともありました。それは、カバードを初期から応援してくれている方々に還元したいという思いで、ジェネラティブNFTの「カバードヴィレッジ」をリリースした時の出来事です。

ジェネラティブNFTは巻き込む人がたくさん増える分、それに伴う責任が大きくなるわけで、フロア価格(流通市場で出品されている最低価格)を上げることが恩返しになると思っていました。

そうした中で、「ヒオキンさんがやりたいのは、フロア価格を上げることだったんですか」とご指摘いただいたことがあって。その時に、はっと気づいたんですよ。自分の考えと、みんなが期待しているものが必ずしも一致しないのだと。

この瞬間から、「くだらないこと」こそが最大の価値だというカバードの原点を、強く意識するようになりましたね。

NFTとRWA(現実資産)を紐付け、「所有感」を演出する

さらに最近では、NFTとRWA(現実資産)の掛け合わせにも注目しています。NFTはアートをはじめ、卒業証書、ブロックチェーンゲームのアイテムなど多岐にわたって活用されていますが、デジタルデータのみでは概念的なので、所有感が薄れがちです。

そこで例えば、奈良の大仏や渋谷のハチ公のように、現実世界に存在していて簡単には動かせないものをNFTと紐づけることで、所有感を醸成できると考えています。このアプローチも、キングコング西野さんの「NFTの本質的な魅力は所有感である」という考えを参考にしているものです。

離島ビール工房のプロジェクトでもこのアイデアを取り入れ、建物のブロックや壁、窓、屋根など約2,000個のパーツに細分化して、個々をNFTと紐付けることで所有感を演出しています。

今後このプロジェクトに注目が集まったタイミングで、 NFT所有者が自分のオブジェが飾られていることを、周囲に「ドヤり」ながら話してくれたら嬉しいですね(笑)。

また、プロジェクトの公式サイトで購入したNFTの番号を検索できる仕組みも導入しています。これは単に、自分が購入したNFTが建物のどこに使われるかを可視化したサイトにすぎないわけですが、数字が近い人同士で交流が生まれたりと、新たなコミュニケーションのきっかけになっているのも面白い点です。

さらに、ビール工房の建設地に24時間カメラを設置し、その映像をYouTubeで配信しています。改築工事はまだ始まっていませんが、配信の様子を見に来てくれる方から「宅急便が来ましたよ」といった声をもらうこともあって。着工前からある種の期待感の醸成につながり、プロジェクトの盛り上がりを作る一つの要素になっていると感じています。

リアルとオフラインを混ぜ、関係ない人を巻き込むことで持続性を担保

また、NFTコミュニティはある程度成熟した段階で、徐々に熱量が冷めていくタイミングがあると思いますが、そうした時にこそ、NFTを知らない層の巻き込みが良いきっかけを生むと思っています。

カバードに関しては、当初のカルチャーに基づいて「面白いことが好き」という人たちが集まれるような企画を展開しています。昨年の秋には、薩摩川内市で地元の事業者の方々と連携し、「大ハロウィン祭り」を開催しました。

「川内川におもろい出会いを​」というコンセプトのもと、とにかく自分たちが楽しいと思うイベントをやると決め、仮装だけでなく、ARを使ったゲームやアート展示、BBQ、打ち上げ花火など、少し変わったコンテンツを盛り込みました。

また、BBQ参加用のチケットをNFT化し、KDDIのNFTマーケットプレイス「αU market」内で5,000円で販売したこともあります。全100枚あったNFTのうち、半数以上は初めてNFTを手にする人たちによる購入だったのも、嬉しい成果でしたね。

このような入り口からコミュニティを拡大していくことのメリットとして、純粋に「面白いことをやりたい」という動機で参加される方が増え、結果としてコミュニティの熱量や純度の増減が起こりにくい点もあると思います。

今後の展望については、大きく2つ描いています。まず1つ目は、外貨を獲得することです。そのためにも、コミュニティの外部から仕事をいただいた際に、やりたい人同士でチームを組成し、案件に取り組める体制を整えていきたいと考えています。

そうして1、2年以内には、「カバードピープル」というブランドを通して生計を立てられる人が100人ほどいるような状態を目指したいですね。

もう1つは、今以上に「くだらなさ」を可視化し、独自経済圏の構築を加速させていきたいと考えています。

その一例として、「こけしトークン」というものを作り、SNS上でのツイートやボケ・ツッコミに対してトークンを配るという構想を描いています。その際に、ツイートした人には1本、ツッコミが上手い人には20本など、配布量に差を設けることで、カバードの価値観を明確に表現したいと思っています。

このカバードの経済圏を創り上げることは、今の自分にしかできない仕事だという使命感をもっていて、とてもやりがいを感じています。たとえ、僕が去った数百年後にも「この経済圏はヒオキンという人が創始者らしいよ」と話されていたら嬉しいなと。

完全な自己満足かもしれませんが、シンプルな野望を抱きながら、僕自身やカバードのメンバーの「やりたいこと」や「好きなこと」を追求しながら、プロジェクトの拡大に向けて尽力していきたいですね。(了)

取材・ライター:古田島 大介
編集:吉井 萌里(SELECK編集部)

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