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1年で新規獲得数が10倍に!UGCの活用で「自分ごと化」させるBULK HOMMEのマーケ戦略

〜SNS画像収集ツール「Letro」を活用し、ユーザー投稿を一括収集!メンズスキンケア業界を切り拓く、バルクオムのマーケティング戦略とは〜

未開拓の領域で、マーケティング戦略を立てるにはどうしたら良いのだろうか?

2013年に事業を開始し、メンズビューティーの世界でNo.1を目指す、株式会社バルクオム。そのスキンケアブランド「BULK HOMME」は、20代の若年層を中心とした幅広い年代で人気を高めている。

▼メンズスキンケア「BULK HOMME(バルクオム)」

同社は、「メンズ × 美容」という未開拓の市場でのマーケティングを展開するため、20〜40代の年代別に、1,200人以上を対象としたアンケート調査と日記調査を実施。

そこから可視化された男性の生活動線の分析から、メインターゲットとなる20代前半の男性に向けたSNS広告に注力し、結果としてCPAを3分の1に、新規獲得数を10倍にすることに成功した。

その施策のカギは、実際のユーザーがInstagram上に投稿した写真、いわゆるUGC(※)を、SNS広告のクリエイティブやランディングページでのユーザーボイスとして活用したことだという。

※User Generated Contents:企業ではなく一般ユーザーが制作・生成したコンテンツのこと

今回は、同社でWebマーケティングを担当する高橋 文人さんに、未開拓領域におけるユーザー調査からUGCの活用に至るまで、詳しくお伺いした。

男性ユーザーには「啓蒙」から始める。BULK HOMMEのWebマーケ

私は前職で、女性用の美容家電や化粧品を取り扱うメーカーに勤めておりまして、複数ブランドのWebマーケティングを担当していました。

そこで4年間ほど経験を積んだ後、「ワンブランドで世界を獲っていく」という思いを持ち、メンズスキンケア商品を立ち上げていたバルクオムに魅力を感じ、2017年8月に入社しました。

当時は、新規顧客の獲得のため、アフィリエイトやリスティング広告を通じて検索からの獲得数が増えてきてはいたのですが、その要因や流入経路などの分析ができておらず、再現性のある施策がない状況でした。

そこで、「獲得経路の最適化」「コンバージョン率(CVR)の改善」「再現性のある施策の発見」を軸に、マーケティング施策をイチから見直しました。

最初は、前職の経験をもとに著名な媒体とのタイアップや口コミサイト周りの運用などを始めたのですが、これがあまり上手くいかなくて…。

というのも、女性ユーザーであればすでに美容に関する知識があるため、媒体や口コミを通じた「商品比較」や「外部の評価」をもとに意思決定する傾向があります。

それに対して、男性ユーザーはそもそもスキンケアの知識がないので、「啓蒙」から始める必要があったんですね。

そこで媒体とのタイアップなどをやめ、交通広告や自社サイトなどを活用して「スキンケアを通じて人生を豊かにする」というブランドメッセージの発信から始めました。

また同時に、各年代の男性ユーザーの生活動線やどのような肌の悩みがあるかをきちんと把握するために、ユーザー調査を行うことにしました。

1,200人へのアンケート調査から見えてきたものとは…

ユーザー調査は20〜40代の男性を対象とし、定量的な「アンケート調査」と、日常の行動ログを残す「日記調査」の2種類を行いました。

まず、アンケート調査では、各年代400人ずつを対象に、スキンケアに対する意識や購入動線、肌に関する悩みなどの項目に回答いただきました。

すると、仮説の裏付けとなるような事象が、定量データとして可視化されたんです。

▼実際のアンケート集計結果(一例)

例えば、「男性はスキンケアに対する意識が低い」という仮説に対しては、実際に3〜4割の方が日常的に洗顔をしていないことがわかりました。

また、スキンケアの正しいステップを選択してもらう項目の正答率は、50%ほどだったんです。こうしたデータから、やはり「啓蒙」から始めることが大切だという確信を持ちましたね。

さらに、商品の購入場所としては、予想以上にドラッグストアやコンビニが多く、回答の8割近くをそれらが占めていました。

ここから、Web上でのコンバージョンを上げるためにも、日常生活の中でのタッチポイントが必要だなという気づきを得ました。

一方で、定量的なアンケートでは把握できない定性面については、日記による調査を実施しました。

具体的には、各年代10人ずつを対象に、1週間の行動ログを、1時間単位で記載してもらうというものです。

どの時間帯に、どのような場所で、どのデバイスを使い、どのような情報に接しているのか、といった記録を日記につけてもらいました。

そして、日々の行動を可視化することで、Webマーケをする上でのタッチポイントや、どのような動線でアプローチをすればお客様にメッセージが伝わるか、といったことを探っていきました。

例えば、20代であればYoutubeを暇つぶしによく見ていたり、30代であれば通勤時にNewsPicksなどのニュースアプリを見ていたり。

Facebookはわりと広範の年代に当てはまっていたのですが、Instagramも含めると特に若い世代におけるSNS利用が顕著でしたね。

こうした一次情報をもとに、年代別に顕在層・潜在層にわけて、Webマーケティングのアプローチ手法を再度検討していきました。

ユーザーが投稿したインスタ画像を「Letro」で収集し、SNS広告へ

施策を考えるにあたっては、はじめに過去データを分析し、CVRが一番高かった「20代前半」をメインターゲットに定めました。

この年代は、先の調査からSNSに接する時間が長いことがわかっていたため、ユーチューバーによる動画投稿とSNS広告を、新たな施策として始めました。

そして、SNS広告のクリエイティブには、男性ユーザーにスキンケアを身近なものとして感じてもらえるように、実際のユーザーさんのInstagram投稿(UGC)を活用しています。

このUGCは、「Letro(レトロ)」というツールを使って一括収集しています。

Letroは「# BULK HOMME」などのハッシュタグがついた写真を収集するツールで、ユーザーさんの投稿写真をシステム上で一覧することができます。

▼「Letro」の管理画面(該当のハッシュタグごとに収集)

その中から使いたい写真を選んで、「許諾リクエスト」を画像元のユーザーさんに送り、OKであれば自社のSNS広告やランディングページ(LP)などに使うことが可能です。

このツールにより、UGCを活用した広告運用を効率化させることができた一方で、「どの写真を使うか」はあくまで自社の判断になります。

そのため、いくつかの仮説を立てて、パターンに応じた写真を収集し、A/Bテストによる改善を重ねました。

例えば、はじめは「商品がよく見える」ような写真を選んでいましたが、何のための商品なのか? が伝わりづらく、CTRも良くなかったんですね。

そこで、隔週でA/Bテストを繰り返した結果、「男性が手にしている」「洗面台の近くにある」という要素を満たす写真が、最も良い結果になることがわかりまして。CTRで言うと120〜150%ほど上昇しました。

▼左:CTR改善前、右:CTR改善後

一方で、CTRだけではなくCVR、CPAの3指標からモニタリングすることが重要だと考えています。

というのも、例えばインスタグラマーさんの投稿写真を使うと、CTRは良くてもCVRがあまり良くなかったりすることもあるんですね。

これは、商品というよりも人への興味が高いことでCTRが上がった事例なので、そこは最適なクリエイティブを選ぶ際の判断を誤らないように気をつけています。

一連の改善を重ねた結果、SNS広告のCPAは運用開始時の3分の1ほどになり、新規獲得数も約10倍に増えました。

LP制作は「入り口のイメージを統一する」ことが大事

また、Letroで収集した写真とコメントは、バルクオムのLPにも活用しています。

以前からLP自体はあったのですが、当時はどちらかと言うと「かっこいい」というメッセージ性が強かったんですね。

ですが、ユーザー目線から考えた時に、それって本当に正しいコミュニケーションなのかな、と疑問に思っていまして。

そこである時、メインのビジュアルを自社で撮影した生活感のある素材に変更した際に、少し改善の兆しが見えたんです。

であれば、実際にお客様が撮った写真を使えばより良くなるんじゃないかと思い、ユーザーボイスとしてLetroで収集したUGCを使うことにしました。

▼UGCを活用した「ユーザーボイス」

私は、LPの制作においては「お客様と弊社側での入り口のイメージを統一する」ことが大事だと思っていて。

SNSを通じて、日常生活に溶け込んだ写真に興味を持って入ってきた人に対し、ブランド色を全面に押し出しているLPで迎えてしまうと、「なんだこれ」って離脱されてしまいますよね。

そのようなギャップをなくすために、LPの目立つところにUGCを使ったユーザーボイスを置き、イメージを崩さないようにしました。

また、ヒートマップ解析ツールの「SiTest(サイテスト)」を導入して、LP内で離脱を招いている箇所の分析も行いました。

▼「SiTest(サイテスト)」のヒートマップイメージ

すると、それまでメインビジュアルのすぐ下に置いていた「こんなお悩みありませんか」という課題訴求系のコンテンツが読み飛ばされていることがわかりまして。

そこで、そのコンテンツを下げ、代わりにスキンケアの3ステップを説明する啓蒙系のコンテンツを上位に置きました。

こうして、お客様が知りたい順にコンテンツを並べたLPを作り上げることによって、LP経由のCVRは1年前と比べて160%改善しました。

「自分ごと化」してもらうマーケティングを目指して

UGCを活用することの利点としては、「自分ごと化」してもらえることだと思っていて。

すべてのコミュニケーションに通ずることなのですが、やはりスキンケアという男性にとって馴染みの薄い商品を扱っているので、まずは自分ごと化してもらえるかどうかが重要なんですね。

こうした考えのもと、UGCを活用して徐々に成果が出てきている状況ですが、次の挑戦としてはインタラクティブ動画を活用していけたらと考えています。

というのも、ある意味「LPが必要ない状態」が理想だと思っていて。

例えば、BULK HOMMEの商品を使用している動画の中でボタンが出てきて、自然な流れで商品購入まで到達できれば、LPの説明も必要ないと思うんですよね。

今後も「これ使って」と押し付けるのではなく、「スキンケアで自信や活力をつけ、人生をより豊かにしていきましょう!」みたいな自然なコミュニケーションを通して、BULK HOMMEを広めていきたいと思っています。(了)

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