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目先のCPA・LTVは無視!?会員40万人のReluxを支える、SNSマーケティングの考え方

〜InstagramなどのSNSに早い段階から投資し、潜在顧客との関係性を強化するマーケティングの方法論〜

じゃらん、楽天トラベル、一休、Booking.com、エクスペディアなどの競合がひしめき合う、オンライン旅行業界。そこに2013年に参入し、会員を約40万人にまで伸ばしている会員制の宿泊予約サイト「Relux(リラックス)」。

同サービスのマーケティングで重要な役割を果たしてきたのが、Facebook、Twitter、LINE@、Instagram、といったSNSだ。それらをフル活用し、「旅行」に対するニーズが顕在化していない潜在ユーザーをプールする「カスタマープラットフォーム」を作り上げることで、大きく成長してきたという。

今回は、同サービスを運営する株式会社Loco Partners(以下Loco Partners)で執行役員を務める宮下 俊さんに、「カスタマープラットフォーム」という考え方、FacebookをはじめとしたSNSの運用について、詳しくお話を聞いた。

▼会員制の宿泊予約サイト「Relux」

「後発」ながら潜在顧客へのマーケティングで40万人の会員を獲得

リクルートに新卒で入社し、カーセンサーやポンパレモールといったWebサービスを手がけました。そして2015年11月にLoco Partnersに執行役員として参画し、「Relux(リラックス)」というサービスのプロダクト統括部長を務めています。

Reluxは、顧客の満足度が高い一流旅館やホテルを予約できる、会員制宿泊予約サイトです。現在の会員数は約40万人なのですが、マーケティングにおいては「カスタマープラットフォーム」という考え方を持ってSNSをフル活用することで、後発でありながら会員数を伸ばしてきました。

「カスタマープラットフォーム」とは、Facebook、Twitter、LINE@、Instagram、などのSNSにReluxの潜在顧客をプールしておき、いざ「旅行に行きたい」とニーズが顕在化した時にReluxを使ってもらう、というマーケティング手法です。

顕在ニーズの刈り取り領域は、競合ひしめくレッドオーシャン

マーケティングの世界ですと、潜在ニーズより顕在ニーズを刈り取っていく方が、ユーザーのアクションも早く効率的です。例えば「そのうち旅行に行きたいなー」と思っている人よりも、「来週旅行に行きたい」と思っている人にアプローチしたほうが、すぐに成果が出ますよね。

ただし、すでに競合プレイヤーが多くいる領域では、顕在化したニーズを刈り取る競争がとても激しいんですよね。Reluxの旅行領域はまさにそのような市場で、じゃらん、楽天トラベル、一休など、ものすごく強いプレイヤーがひしめいています。

グローバルでもBooking.com、エクスペディアなどの大手がいて、このようなプレイヤーが日々、顕在化したニーズをSEO対策やリスティング広告で刈り取りにいっています。

そんな状況下で、Reluxは2013年にできた「超後発」サービスだったこともあり、顕在化したニーズを取りに行くのは難しい状態でした。

新興SNSを運用し、ニーズの潜在層と「つながり」を作っていく

そうした背景から、僕たちはニーズ潜在層に対して、リーチしていくことに決めました。ニーズ潜在層とは、ターゲットユーザーではあるものの、今すぐ旅行に行きたいわけではない人、ですね。

Reluxができた2013年当時は、Facebookがちょうどビジネスに使われ始めているタイミングだったので、まずはFacebookのReluxページで潜在層の「いいね!」を集めるため、コンテンツ発信を行っていきました。現在では、1日に6〜8回は投稿をしています。

▼ReluxのFacebook投稿

結果的に、Facebookの「いいね!」数は順調に増え、現在は50万ほどです。Reluxで予約するユーザーの流入経路もFacebookが一番多く、潜在ユーザーをプールしておき、旅行ニーズが顕在化した時にReluxに誘導する「カスタマープラットフォーム」戦略は、成功していると言えます。

カスタマープラットフォームの良いところは、会員になったユーザーと常に接点を持てることです。例えばリスティングなどで会員を獲得しても、旅行の予約が終わってしまうと、その後はなかなか接点を持てないんですよね。

一方で、カスタマープラットフォームは、SNSで互いにつながるので、継続的にユーザーと関係性を持ち続けることができます。

CPA・LTVを無視し、新しいSNSに投資していく

「カスタマープラットフォーム」を成功させるポイントは、CPA(1人の顧客を獲得するためのコスト)やLTV(1人の顧客が生涯どのくらいの利益をもたらすか)を無視して、新興SNSにもどんどん投資をすることです。

例えば、僕たちがFacebookに投資し始めた頃って、「いいね!」の増やし方、「いいね!」獲得にいくらかかるか、「いいね!」したユーザーのうちどのくらいが予約をするのか、などはまったくわかりませんでした。

つまり、CPAやLTVなんて考えようもないし、基本的には見合わない。ただ、それは競合も一緒なので、普通はこの段階で投資をしません。CPAやLTVが明確な、ニーズ顕在層にアプローチしますよね。

逆に言えば、短期的なCPAは見合わなくても、敢えてそれを無視して先行投資することで、競合より早くSNSアカウントのフォロワーを増やすことができます。実際にFacebookの「いいね!」獲得を早めに始めたことで、現在は業界で一番「いいね!」数が多い状態になっています。

新しいSNSであっても、ある程度投資をすれば、フォロワーの増やし方、特性、CPA、LTVが解明できてくるので、そうすればどんどん投資していけるようになります。

例えば今では、Facebookについては、「いいね!」をしたユーザーのCPAやLTVがすべて分かるようになり、コストパフォーマンスが正確に判断できるようになったので、安心してマーケティング予算を投下してPDCAを回せる状態になっています。

現在はFacebookに加えて、Instagram、LINE@、Weibo、WeChat、などにどんどん投資をしているところです。

各SNSの性質に合わせて、使い方を切り替えることが重要

運用しているSNSは、互いに送客し合っています。例えば、Facebookページに「Instagramやってます」「LINE@やってます」と投稿する感じです。このようにすると、ユーザーとの接点の密度が濃くなります。

▼facebookからInstagramに送客

それぞれのSNSによって、ユーザーの反応は全然違います。例えば、Facebookだと通常の投稿は2,000ほど「いいね!」が取れてリーチ数も伸びるのですが、キャンペーンの投稿への反応はものすごく悪くて。通常の4分の1ほどになってしまいます。

一方で、LINE@はキャンペーンへの反応がすごくいいですね。今はまだ5,000人ほどしかフォロワーがいないのですが、キャンペーンを1回ポストするとフォロワーの15%ほどはエントリーまでいきます。これってすごいですよね。例えばメルマガだったら開封で15%、そこからエントリーとなると1%以下になったりもするので。

▼ReluxのLINE@

このように各SNSの特徴を解明して、正しいアプローチをしていくことが重要だと思います。

Instagramは、ハッシュタグの運用とプロフィールページが肝

最近は、特にInstagramに力を入れています。フォロワー数は現在20,000人ほどです。最初は、Facebookの投稿からInstagramのアカウントに送客をしていきました。

そこからは、本当に地道に増やしましたね。投稿に色々なハッシュタグをつけて反応を試したり、類似アカウントやユーザーをフォローしてフォローバックを狙ったり、本当に地道な活動です。

▼ReluxのInstagram

ハッシュタグの運用には、ビックワードによって多くのフォロワーを取りに行くパターンと、コアなワードによって確実にフォロワーを捕まえるパターンがあると考えています。

各ハッシュタグのページ上位には、人気の投稿トップ9が表示されます。

▼人気の投稿トップ9

ここに表示されてフォロワーを増やすことを狙うわけですが、「京都」みたいなビックワードだと、すぐに表示されなくなってしまうんですよ。多くのユーザーの目に触れる可能性はありますが、その代わり競争も激しいので…。

一方で、自分たちのサービスに合うコアなワードをつけて投稿し続けると、ターゲットとしているユーザーにフォローしてもらえる可能性が高くなると思います。

ちなみに、Instagramの投稿には、URLを貼ることができません。これは流入させたいページにユーザーを誘導できないということなので、ビジネス的にはきついですよね。

ただし、軽視されがちな「プロフィールページ」にはURLを貼ることができます。そのため、プロフィールページにリンクを貼っておき、Reluxへの流入を狙っています。これが意外に入ってくるんですよね。

▼URLが貼れる軽視されがちな「プロフィールページ」

また、「検索」ページにも注目しています。

検索ページはユーザー毎にパーソナライズされているので、恐らく今後運用をしていくと「旅行」
に興味があるユーザーの検索ページに、僕たちの投稿が表示されるようになるんじゃないかと思っています。そうなれば、自然とフォロワーが増えていく状態になるのではないかと。ここにいかに表示されるのかを今後研究していきたいですね。

目先の数字にとらわれず、「確実に来る未来」へ投資する

カスタマープラットフォームの考え方は、CPAを無視するなど非合理的とも思えますが、実は逆で。「確実に来る未来に投資する」という、合理的な考え方だと思っています。

過去で言うと、Facebookが拡大していくのはある意味確実でした。今なら、InstagramやSnapchatが日本で広がるのはもう確実な未来だと思います。そのため、今は社内のメンバー同士でSnapchatをいじり倒しています(笑)。あと、VRを通じて旅館の様子を見れるような試みも始めています。

今後も「今への投資」と「確実に来る未来への投資」を平行して、Reluxの会員数を伸ばしていきたいと思っています。(了)

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