• 株式会社メドレー
  • 執行役員 CLINICS事業部
  • 田中 大介

過去の慣習に囚われない!「慣性の法則」から脱却し、常に進化を続けるチームの作り方

〜今の業務オペレーションやKPIの管理、本当に最適ですか? 従来のプロセスを見直して業務改善に成功した、メドレーCLINICS事業部の改革とは〜

動き続ける物体が「慣性の法則」で運動を続けるように、業務オペレーションにおいても、つい改善を後回しにしてしまう…という経験をお持ちの方は多いのではないだろうか。

2009年に創業し、医療介護の領域で数々のインターネットサービスを展開する、株式会社メドレー。

同社のオンライン診療システム「CLINICS」では、2018年4月の「診療報酬改定」を背景として、従来の業務オペレーションを見直し、組織体制を再構築する必要があったという。

そこで、今までのサイロ化したフローを見直し、取得すべき情報の取捨選択を行い、データの管理をすべてSalesforce上に統合した。

しかし、この改善プロセスにおいてはまさに「慣性の法則」によるハードルが生じていたと、CLINICS事業部でオンライン診療システム事業の責任者を務める、田中 大介さんは話す。

その「慣性」から脱却するには、共通の課題認識とメンバーの意思のもとで、理想イメージに対する解像度の高い人が「理想の状態を描ききる」ことが大切だという。

今回は田中さんに、CLINICS事業部の迎えた転換点から、慣性の法則からの抜け出し方、そして進化を続けるチームマネジメントの手法に至るまで、お話を伺った。

「演者」としてのキャリアを積み、新規事業の立ち上げに参画

私は、2016年7月にメドレーに入社しました。以前は、金融機関やソフトウェアテストの会社で、営業や事業企画などを経験しました。

前職のGoogleでは、法人向けのクラウドサービスを扱う部署で、セールス全般を幅広く担当していました。最終的には、いわゆる「エバンジェリスト」のような立ち位置で、サービスの素晴らしさを伝えるセミナーや講演会に、年100回以上登壇していましたね。

長年、営業系のプレーヤーとしてキャリアを積んできて、マーケの仕組みやイベントの企画・設計をする人は別にいる状態でした。なのである意味、私はずっと「演者」だったんです。

舞台をどう設計しているのか、どうやって大道具を作っているのかを傍らで見ながらも、自分自身は「舞台の上でどのように振る舞うか」というところにフォーカスしてきました。

そんな中、同級生だったメドレー社長の瀧口とたまたま会う機会があり、「うちに来て手伝ってくれない?」と誘われて。その熱意と可能性に惹かれて、リリースしたばかりのオンライン診療システム「CLINICS」に携わることになりました。

入社当初は、社長の瀧口がCLINICSの事業部長を兼任していて、他にはCTOと、医者しかいない体制だったんですよ(笑)。そこに、医者ではない初めてのビジネスサイドとしてジョインしました。

CLINICSは、診療所向けのSaaS事業です。最初の頃は、いわゆる営業と、契約後のフォローをする人、という大きく2つの役割しかなかったのですが、私がマーケティング全般を担当することになりました。

そして、事業のフェーズに応じて、2016年の夏頃までにマーケティング、インサイドセールス、フィールドセールスの組織化を進めていきました。

こうした組織化や、オンライン診療に対するマーケットの関心も高かったおかげで、順調に契約数を伸ばしていたのですが、導入後になかなか使ってもらえないという問題に直面して…。

そこで2016年の秋頃にカスタマーサクセスの部署を作り、現在の組織体制の原型が出来あがりました。現在は、事業部全体で50人ほどのメンバーがいて、機能別に分かれたチーム編成になっています。

個の能力への依存を脱し、最小工数・最大リターンの体制作りへ

CLINICS事業の大きな転換点になったのが、2018年4月に施行された「診療報酬(※)改定」でした。

※患者が保険証を提示して医師などから受ける医療行為に対して、保険制度から支払われる料金のこと。医療の進歩や経済状況を考慮した上で2年おきに改定される。

この時の改定により、オンライン診療の運用方法が明確に定義されることになったんです。それを受けて、私たちが事業運営する上でも、しっかりと気をつけなければならないポイントが多く出てきました。

これまで、高い期待値というマーケットの追い風に乗り、いわば「いけいけドンドン」でグロースしてきたのですが、これを機に「地に足をつけた」事業運営と、お客様への価値提供ができる体制づくりが求められるようになりました。

この大きな変化を乗り越えるため、組織体制などの変更を重ね、2018年7月からは私がオンライン診療事業の責任者に就任しました。

それからオペレーションを最適化し、最小工数でより多くのリターンを生んでいく体制づくりに取り組み始めました。

具体的には、顧客に関連する全データのSalesforceへの統合、オペレーションフローの見直し、徹底的なドキュメント化の推進などです。

以前ですと、例えばカスタマーサクセスチームでは、とにかく各メンバーが頑張って顧客とのコミュニケーション頻度を上げようというやり方でした。

すると、どうしても各々のコミュニケーションスキルに依存したり、オペレーション自体が属人化したりする部分が出てきてしまって。

またオペレーション面でも、1人ひとりが「気を利かせて」仕事をすることでミスなく回っていたのですが、ふたを開けてみると、業務のブラックボックス化やサイロ化が起こっていたんです。

今後を考えると、配置転換や退職時のリスクも大きくなってしまうため、この課題解決が急務でした。

「慣性の法則」から抜け出すため、理想イメージを描く

ですが、どんな物事であっても「慣性の法則」が働いてしまうんですよ。それは、オペレーションのフローやKPIの管理など、多くの場面で起こりがちだと思っていて。

実際、私が組織改革を始めたときも、まさにその慣性が働いていたような状態でした。そこで、まずリーダー陣やメンバー1人ひとりとしっかり話をしたんです。すると、誰も今のやり方がベストだとは思っていなくて、個々に何かしらの課題感を持っていることがわかりました。

ただ、その課題を解決するには、全員がそれを共通のものとして認識し、改善したいという意思をもつことが重要です。

そこで、より課題を深掘りしたところ、「業務がサイロ化されている」「フローが散らばっていてわかりづらい」といった声が出てきたんですね。それをどう解決していくか、対話をしながら、緩やかな合意形成をしていきました。

一方で、課題を検知することと、最適なオペレーションを構築できるかは、また別問題だと思っていて。実際には、この実装の部分でつまずく人が多いと思うんです。

そこで大事なのは、理想イメージに対する解像度が高い人が、それを全員に見えるような形で可視化することです。今回は私が、今までの経験からオペレーションの理想イメージを持っていたので、現場にガッと入って「オペレーションのプロトタイプ」を作りました。

具体的には、Salesforce上の項目、レポート、ダッシュボードを私自身が作成し、カスタマイズしました。その使い方を説明した上で、「こうすれば誰でも現状を把握できるようになるし、異変に気づけるようになるよね?」と頭の中のイメージを伝えました。

理想イメージをみんなに腹落ちしてもらうためには、言葉だけじゃ足りないんです。理論的に理解できるのか、手触り感をもって理解できるのかによって、イメージの度合いには大きな隔たりが出ます。

ここまで固まってしまえば、あとはリーダー陣と壁打ちをしながら日々改善をするだけなので、この最初のステップが肝心でしたね。

今、相手から「信頼ポイント」を獲得できているかどうか

また、マネジメントの立場として気をつけているのは、仮にメンバーがミスをしてしまった場合にその人自身を責めるのではなく、「そもそもなぜミスが起こってしまったのか?」「プロセスにはどんな問題点があって、それをどう改善すべきか?」を考えることです。

そして、基本的にマイクロマネジメントをしないということですね。私もそうなのですが、人ってマイクロに管理されると信頼されていないような気がして、モチベーションが下がってしまうと思っていて。

ただ、もちろん一方でしっかりと管理ができているということは重要です。その際に、「あれ、どうなってる?」と都度確認するような運用ではなく、現状を可視化する仕組みでカバーして、数値に異変が起こっている時だけ声がけするようにしています。

一方で、「嫌だな」とか「大変だな」といった感覚を放置したまま働いてほしくないので、何でも言いやすい空気づくりには気をつけているつもりです。

部下だから上司の言うことを聞くか、というとそうではなくて、すべては信頼関係だと思うんです。なので、私は今この人から「信頼ポイント」を獲得できているかな、ということを普段から意識しています。

特に体制変更をしたばかりの頃は、いきなり「オペレーションを変えよう」といっても難しいじゃないですか。なので、最初はプレゼンテーションやSalesforceに関する深い理解など、自分の得意領域で価値提供することで、みんなから「信頼ポイント」を獲得するということを結構意識していました。

結局、マネージャーの立場であっても「この人に何を言っても無駄だな」と思われたら終わりなんですよね。本当に小さいことで言えば、「加湿器がほしい」という話があったときにそれをちゃんと探すとか(笑)。そういうことの積み重ねかな、と思っています。

仕組みとマインドの両輪で、演者の「舞台」を高くしたい

私は、「この業界ってこうだよね」とか「うちの会社、事業ってこうだよね」みたいな言葉が嫌いで。そうした既成概念に囚われてしまうと、本質的なものが見えなくなってしまうと思うんです。

ただ、頭では理解していても、知らず知らずのうちに「これはこうだから」と言ってしまうことって、人間誰しもがありますよね。

そこで最近、私自身としても意識しているのは、「外の人に会う」ということです。それをメンバーに促すのもマネージャーの役割だと思っているので、意図的にイケてる会社や人を紹介したりもします。

なぜなら、同じ組織に長くいればいるほど、社内や事業部内のルールができてしまうんですよね。その固定観念を打開するためにも、意図的に新しい風は取り入れていく必要があるな、というのはすごく感じています。

この数ヶ月で改善してきた部分がある一方で、理想に対してはまだまだ2合目くらいだと思っていて。

私は、オペレーションもマインドセットも、両輪が揃っためちゃめちゃかっこいい組織を作りたいんです。最先端な仕組みで、生産性がものすごく高くて、さらに1人ひとりがそれを常に進化させていくようなチームを作りたいと考えています。

一方で、仕組み化した方が絶対にいいところと、ある程度の属人性を認める部分も必要だと思います。なので、すべてを仕組み化するというよりも、いろんな人が活躍できるステージの土台をできる限り高くしたい。その舞台上で、1人ひとりが自由に演じることができれば、最高のチームになると思うんです。

それは今の事業だけでなく、今後どんな場面でも生きるものだと思っているし、そういう「良い舞台」で演じたことがあるという経験は、メンバーみんなの財産にもなると思っていて。これからも、そうした仕組み作りにチャレンジしていきたいですね。(了)

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