- 株式会社マネーフォワード
- MF クラウドマーケティング本部
- 今井 義人
全員が未経験から立ち上げ!受注率2.5倍、MFクラウド経費のインサイドセールスとは
〜インサイドセールス導入から3ヶ月で、アポ獲得数2.2倍、受注件数2.5倍に!職種間の連携を重視した、マネーフォワード流のインサイドセールスとは〜
営業活動でもっとも重要な要素のひとつは、「顧客へのヒアリング」だ。
しかし、受注までに2回、3回と面談の場を設けて顧客の声を聞くことは、営業リソースが限られた中で、とても非効率的である。
そんな中で、近年勢いを増しているのが、電話やメールによって見込み顧客とコミュニケーションを取る「インサイドセールス」という役割の導入だ。
株式会社マネーフォワードでも、クラウド型経費精算・経費管理ソフト「MFクラウド経費」のチームの一部で、2017年4月にインサイドセールスのポジションを立ち上げた。
そして、見込み顧客への遠隔商談や、より詳細なヒアリング、顧客にあわせた営業メンバーのアサインが可能になったことで、3ヶ月でアポイント獲得数は2.2倍、受注件数は2.5倍を実現した。
今回は、インサイドセールス立ち上げや導入時のポイントについて、マーケティング・セールスプロセス構築に関わる今井義人さんと、インサイドセールスを担当する原彩香さんにお話を伺った。
インサイドセールスを外注するも、ヒアリングが表面的なものに…
今井 私は2015年の12月からマネーフォワードに入社し、「MFクラウド経費」を担当しています。
マーケティング担当として入社しましたが、ユーザーを知るために、最初はお問い合わせ対応も行っていました。
現在はプロダクトを見ながら、マーケティング、セールスプロセス構築に携わっています。
▼マーケティング・セールスプロセス構築に携わる今井さん
インサイドセールスの仕組みは、8ヶ月ほど前から導入しました。
それまでは、新規顧客の問い合わせがあった際は、まず営業のメンバーが自分で電話をかけてアポを取っていました。ですが、その部分を分業にしたら間違いなく効率が上がると思い、営業の一次対応を外注することにしたんです。
しかし、外部に委託したことで、今度は仮説検証が回せないことが課題として上がってきました。
また、外注の場合、お客様からのよくある質問には答えられるようになるのですが、そこからもう一歩踏み込んでヒアリングすることが難しいんですよね。
アポの件数自体は取れるのですが、ヒアリングの内容が、テンプレートを埋めていくような表面的なものだったんです。そのため、営業が事前に知ることができるお客様の情報が限られていました。
そこで今年の4月から、「インサイドセールス」のポジションの内部化を始めました。
内部化から3ヶ月で、アポ獲得数は2.2倍、受注件数は2.5倍に
原 私は、今年の4月からマネーフォワードでインサイドセールスを担当しています。
私たちの役割は、「受注までの訪問回数を1回にすること」です。そのため、イベントなどで獲得したリードに対して、初回訪問で聞くべきBANT(※)や現行業務、課題感を電話でヒアリングしています。
※BANT:Budget(予算)、Authority(決裁権)、Needs(必要性)、Timeframe(導入時期)のこと。営業の基本的なヒアリング事項にあたる。
▼インサイドセールスを担当する原さん
そうしてお客様の課題を事前に整理することで、フィールドセールス担当が解決策を持って初回訪問できる状態に持っていくんです。
今井 今回の内部化により、部署内でのアポ獲得数は以前の2.2倍に、受注件数は2.5倍になりましたね。
通常、受注までには、初回商談、2回目商談を経て、3回目で受注というケースが多くなっています。そのプロセスを短くできたことはとても大きいですね。
内部化のコツは、フィールドセールスなど各職種との連携
今井 今回、インサイドセールスの内部化が上手くいったポイントは、「職種間の連携」だと思っています。
現在多くのメンバーがMFクラウド経費を担当していますが、そこでいきなり導入するのではなく、営業数名の小規模チームで運用をはじめました。
通常インサイドセールスは、インサイドセールス1人につき、2、3人のフィールドセールスとユニットを組んで動くのが基本になります。
私たちのチームの場合も、このようなちょうど良いバランスの人数構成だったので、インサイドセールスとフィールドセールスとが密に連携できていると感じています。
原 また、内部化して良かったこととして、私がセールスメンバーのパーソナリティをよく知っていることで、お客様のタイプに合わせて最適なメンバーをアサインできていることが挙げられます。
具体的には、ITリテラシーが低いお客様には丁寧に説明できるメンバーを、会話のテンポが早いお客様にはテキパキ話すメンバーに商談をお願いしています。このように相性を見ることで、受注確度も変わってくる気がします。
ヒアリング項目の改善から、リード獲得施策の改善提案までが役割
今井 外注していた時は、インサイドセールスとフィールドセールスのやり取りは、「Salesforce」上でしか行われていませんでした。
現在もヒアリング内容はSalesforceに残して共有していますが、文字にしづらいお客様の雰囲気やパーソナリティについては、フィールドセールスメンバーと直接話すことも多いです。そうすることで、1回の商談の質が断然良くなってきていると思います。
原 フィールドセールスが商談から帰ってきたら「おかえり!今日の商談はどうでした?」と聞ける関係性なので、軌道修正がとてもしやすいですね。
例えば、「この案件は決裁者が同席してくださったから、決断が早かったよ」とフィードバックをもらってからは、コール時に決裁者同席かどうかを必ず聞くようにするといった形で、日々ヒアリング精度のブラッシュアップができています。
また、フィールドセールス以外に、マーケティングや企画のメンバーとも連携しています。リードの流入源によってお客様の温度感が違っていたりするので、それを企画担当にフィードバックしているんです。
あるサイト経由のリードの温度感が想定より低かった時には、広告表示のセグメントを、100人以上の会社の経営者や財務部に変更してもらうようお願いすることもありました。
インサイドセールスを、重要なポジションとして認識させる
今井 インサイドセールス導入にあたってよく陥りがちなケースとして、フィールドセールスとインサイドセールスの力関係ができてしまうことがあります。どういうことかというと、インサイドセールスが「御用聞き」のように捉えられてしまうんです。
そうすると、インサイドセールスメンバーのモチベーションが上がらず、ヒアリング精度もどんどん落ちていく、という悪循環に見舞われる可能性がありますよね。
しかし幸いなことに、私たちはこうした問題に直面しませんでした。その理由のひとつは、「チーム体制」にあると思っています。
ダイレクトセールスチームは、フィールドセールスとインサイドセールスだけではなく、企画・開発・マーケティング・カスタマーサポートなど、一連のステップに関わる各プレイヤーで構成されています。
そして、受注数や売上額といった目標に向けて、各職種が連携して進めています。
そのため、インサイドセールスという役割についても、ひとつの重要なポジションとして、メンバーに理解してもらえていますね。
原 そのような環境下なので、インサイドセールス初心者の私も「より効率的に精度高くヒアリングするためにどんな打ち手があるか」を考えながら、自発的にトライアンドエラーが回せています。
自動化が進み、効率よく回るようになると純粋に楽しいですし、フィールドセールスやチームメンバーから感謝されつつ仕事ができているので、やり甲斐もひとしおです。
今井 また、インサイドセールス立ち上げの担当者として、会計システムの開発に関わってきたというバックグラウンドがあり、一目置かれる存在である原をアサインしたことも大きかったと思っています。
Web商談や電話商談などで、受注までのフローを効率化
原 現在、私自身は1ヶ月で800件ほどのリードにアタックしています。
これは電話だけではなく、メールもあわせた数です。手当たり次第に電話をかけるのは非効率なので、まずメールを送り、それに対して開封やクリックで反応があった場合にはコールしています。
また、受注確度がそこまで高くないリードに関しては、最近だと「Web商談」に誘導するようにしています。具体的には、「bellFace(ベルフェイス)」というオンライン商談システムを使い、フィールドセールスのメンバーに商談してもらいます。
▼インサイドセールスシステム「bellFace」のホームページ
今井 理想は、フィールドセールスが契約書をもらいにいくだけの状態を作り出すことです。
単純に外に商談に行くのはコストが高いと思っていて。打ち合わせして戻ってきたら、それだけで3時間くらい使ってしまうじゃないですか。
オンラインであれば、その時間で3回も商談できますし、コールだったらもっと出来ますよね。
他にも、業務そのものの効率化も行っています。インサイドセールスの業務はルーティンワークも多いので、例えば、電話を終えた後の日時確認のメールを、「Marketo」から自動送信する仕組みを作ったりもしています。
インサイドセールスは、未経験者・ママ社員にもオススメ
今井 私は、インサイドセールスは非常に間口が広い職種だと思っています。
海外だとインサイドセールスはかなり進んでいて、「入って何ヶ月でキャッチアップできるか」といったデータが公開されているのですが、そこで言われていたのが「インサイドセールスは、セールスのバックグラウンドがなくてもキャッチアップしやすい」ということでした。
実際、今のインサイドセールスのメンバーはみんな未経験者です。社内にも誰も経験者がいなかったため、外から情報を持ってきて進めていきました。
また、インサイドセールスはお客様との接触頻度が多いことから、顧客やプロダクトへの理解が非常に早く進みます。そのため、営業配属のファーストステップとしても良いポジションではないかと感じています。
原 インサイドセールスは個人的に、ママ社員にもおすすめですね。前職では、外回りがあるとパンプスに履き替えていたのですが、今はお客様の前に出るわけではないので、スニーカーとデニムで通勤できて、子どもの送り迎えも楽になりました。
あと、お客様に電話するタイミングは基本的に9時から18時までなので、時間に限りがある人でも成果が出しやすいのではないかと思っています。働きやすさとやりがいなどが両立できていると感じています。
インサイドセールスを通じて、サービスをもっと広めていく
原 これからのチャレンジとしては、受注件数だけでなく「受注率向上」に向けて、リードの中でも商談が成立しそうなものだけを、選りすぐって営業にパスできるようにしていきたいと思っています。
今井 現在は、特定の顧客セグメントに対して、部分的にインサイドセールスを導入している形です。そして今後は、扱う顧客セグメントやチャネル、プロダクトを拡張していきたいと考えています。
インサイドセールスは、場所を選ばずにお客様と深いコミュニケーションを取れることがメリットです。これからは、全国各地の方々にもっと私たちのサービスを使ってもらうことで、個々人のお金に対する悩みや不安を軽減させ、日々の暮らしの改善や夢の実現を後押ししていきたいですね。(了)