- スタークス株式会社
- 取締役
- 大塚 真吾
脱・待ちのスコアリング!メルマガと郵送物を駆使した「攻め」のリードナーチャリング
〜課題の顕在化を待たず、ホットリードを積極的に「作り出す」。見込み顧客を育て、「決まる商談」だけに訪問する仕組みづくりを紹介〜
「何となく興味はあるけれど、今すぐはいらない…」商談の現場で、多くの営業マンが耳にしているお断りフレーズではないだろうか?
このような見込みの薄い顧客ではなく、成約確度の高い「今スグ客」とのみ商談を行うことで、効率的な営業活動を実現しているのが、物流 × テクノロジーの領域で事業を展開するスタークス株式会社だ。
その商材の特性上、同社があらゆるチャネルで獲得したリードの内、ホットリードは僅かに5〜10%ほどだという。
そのため「毎日のメルマガ」「月1の郵送ニュースレター」「3ヶ月に1度のカウンセリングコール」を通した積極的なリードナーチャリングを実施した結果、商談数が2.5倍に改善。
また、アポイント時に商談の目的と、必要な資料の準備を明確に握り合うプリフレームづくりを徹底した結果、成約数を2倍に成長させることに成功した。
今回は同社で取締役を務める大塚 真吾さんに、リードを積極的に育てる手法について、お話を伺った。
「何となく情報収集している」という緩いリードが非常に多い
弊社では、2015年に発送代行サービス「リピロジ」をリリースしました。
その後、リピロジをバージョンアップさせる形で、クラウド型の発送代行サービス「クラウドロジ」へとリニューアルし、現在では、コスメやサプリなどの通販企業に、累計500社ほどご導入いただいています。
クラウドロジは、在庫管理をする物流拠点を全国に分散させることで、配送コストの削減とリードタイムの短縮を実現するサービスです。
ただ「売上がすぐにアップする」というような商材ではないため、課題意識が顕在化していない顧客にアプローチしなければならない営業上のハードルがあります。
様々なチャネルからリストやリード(見込み顧客)を獲得していますが「今すぐに物流の切り替えを検討しているわけではないけれど、何となく情報収集している」という緩いリードが非常に多いんですね。
そのため、当社サイトへの訪問や資料請求といったその後の動きをスコアリングして、温まってきたら、インサイドセールスが電話をかけて商談へと進みます。
しかし、このような一般的なマーケティングオートメーションは、いわば「待ちのアプローチ」ですよね。すると、我々の商材の特性的に、なかなかホットリードを生み出しにくいんです。
そのため「毎日のメルマガ」に加えて、「月1の郵送ニュースレター」「3ヶ月に1度のカウンセリングコール」を通して、積極的なリードナーチャリング(育成)を行っています。
「課題」「解決策」「商品」の認識度合いで、リードを5つに分類
一連の流れとしては、まず、リード化した後、5分以内に電話をかけて、現在利用しているサービスや配送ボリューム・頻度といった顧客状況をヒアリングします。
「データベースの穴を埋める」という形で、インサイドセールスが顧客情報を把握していき「課題を認識しているか」「解決策を認識しているか」「具体的な商品を認識しているか」の3つの観点から、リードの温度感を探っていきます。
具体的には、
- 課題・解決策・商品を認識していない(課題意識なし)
- 課題は認識しているが、解決策・商品を認識していない(課題意識)
- 課題と解決策は認識しているが、商品は認識していない(解決意識)
- 課題・解決策・商品を認識している(商品意識)
- 課題・解決策と複数の商品を認識している(比較意識)
という風に、5段階で見込み度合いを分類しています。
最初から課題が顕在化していれば、すぐに商談へと進みますが、大抵の場合はそうではないので、その後はメルマガでの関係構築へと進みます。
実はリードの多くは、「何となく物流に問題を抱えているけれど、解決策がわからない」という②に該当するんですね。
そのため「あなたの問題って、こういうことなんだよ」「その解決策としてこういうものがあるよ」という風に、主に問題と解決策について説明するようなメールを送っています。
例えば、法律改正があった時に、お客様は法律の専門家ではないので、自分たちにとってどのような影響があるのかが分からないんですよ。
そこで、専門家や既に対応されているお客様にインタビューして、事例を紹介したりしています。
▼法律改正に対する考え方を説明するメルマガ
また、メルマガの大罪は「つまらないこと」だと考えているので、送信者のキャラクターが分かるような、お楽しみ系のコンテンツも配信しています。
例えば「結婚式に行って、プールに投げ飛ばされました」というような、日常のエピソードを紹介して、途中から物流に関する情報にも触れるという感じです。
コンテンツ作りのポイントとしては、半数は文末でクラウドロジを紹介していますが、残りの半数では全く触れずに、純粋にお客様に役に立つコンテンツを配信するということです。
そうすることで、売り込みをしすぎることなく、信頼関係を構築することを狙っています。
これらのメルマガを、数人の担当者が1本15〜30分位で書いて、お客様の配送業務が落ち着く14時頃に毎日送っています。
また、反響については、開封率が20%ほどなのですが、これが維持できていればOKという考え方をしています。
電話のキッカケ作りには、郵送ニュースレターが有効
こうして、日々のメルマガで関係を構築しつつ、3ヶ月に1度、インサイドセールスがカウンセリングコールを行い、リードの状態を把握していきます。
ただ、このような定期フォローをしよう思っても、インサイドセールスはなかなかお客様に連絡をする理由がなく、困ってしまうんですね。
そこで、自然に定期フォローを進めるための武器として、1年ほど前から月に一度、郵送でニュースレターを送付しています。
すると「読みましたか?」「営業担当が持っていきましょうか?」という会話のきっかけも生まれます。
ニュースレターでは、コンテンツの独自性を非常に意識しています。例えば、通販企業121社に1社ずつ訪問して、配送費の値上げにどう対応しているか? について取材したものをまとめたりしています。
通販に特化した情報って、基本的に本やネットには上がっていないので、このようなコンテンツはかなり喜ばれるんです。
商談時に「あの記事見ましたよ」「帰りの電車で読んでます」と言われることも多くて、とても効果を感じますね。
▼実際のコンテンツはこちら
商談への意識を高めるために、アポ取りトークにもルールを設ける
このようにカウンセリングコールを行い「問題の詳細も、解決策もわかってきた。けれど、どのサービスを選べばよいかわからない」という③のレベルまでナーチャリングが進めば、商談のアポイントをとります。
その際、相手に「自分の問題を解決できる」という意識で商談に参加していただくために、何となくアポをとるのではなく、商談の目的を握り合うことが重要です。
また、商談時に私たちがどれだけ役に立てそうかを説明できるようにするために、現在の物流状況がわかる資料をご準備いただくようにしています。
そうすることで、担当者が詳細を把握しておらず再訪しなければならない…という事態を防いでいます。
その上で「弊社がお役に立てるのであれば、サービスをご提案させていただいてもよろしいですか?」と確認してイエスをいただくまでをアポ取りの条件とすることで、成約率がとても高まります。
当然、商談時の営業トークも大切ですが、電話口でもお客様の意識を高めておくことが、受注確度の高いアポをとるためにとても大切なんですね。
顧客からの信頼を得るには、地道に続けること
このような取組を通して、商談数を2.5倍、成約数を2倍に成長させることができました。
また、ホットリードの約70%は、過去に獲得したリストとリードへのナーチャリングから生まれています。
常にコンテンツを作ってインサイドセールスがフォローコールをかけていくのって、とても大変です。
ただ、地道に続けた結果、企業としての信頼度が高まったのか、どんどん大企業へのアポが取れるようになりましたね。
今後も、お客様に役立つ情報を発信し続けることで「常に物流業界の最新情報を教えてくれるよね」「新しい解決策を提供してくれるよね」というポジションを確立していきたいです。
そして、通販業界において、圧倒的にナンバーワンの存在になることを目指したいと思います。(了)