• 株式会社10X
  • Co-Founder, 代表取締役CEO
  • 矢本 真丈

Twitterはアプリ「外」のコミュニティ。タベリーが6ヶ月でフォロワー数を50倍にした方法

〜カギは「UGC発生数」を増やすこと。潜在ユーザーにリーチし、アプリの「入口」かつ「出口」となるためのTwitter運用術〜

献立が10秒で決まる「献立アプリ」として2017年12月にリリースしたタベリー。2019年5月にはさらに、食材がすぐに買える「オンライン注文機能」をリリースし、話題となった。

▼タベリーの「オンライン注文機能」

同サービスの公式Twitterアカウントは、2018年12月から本格的な運用をスタートし、わずか6ヶ月でフォロワー数が500人から2万7千人に増加した(※2019年5月現在)。

運営会社である株式会社10Xの代表を務める矢本 真丈さんは、「Twitterは関心のつながりを飛び越えて潜在層にリーチでき、圧倒的にスケールする唯一のアテンションチャネル」だと話す。

実際の運用においては、UGC(※)の発生率を最も大切にし、「誰でも真似しやすい」投稿内容を「生っぽく」発信することを意識しているのだという。

※User Generated Contents。企業が作成した広告ではなく、SNSでの投稿など、ユーザー自身が作成したコンテンツのこと。

今回は矢本さんと、同社でTwitter運用を担当する向谷 果歩さんに、タベリーのTwitter運用について詳しくお話を伺った。

「10倍いいものをつくり、届ける」ために10Xを創業

矢本 創業の経緯としては、もともと僕自身、日常の課題を解決する良いプロダクトを作りたいなという思いがあって。暮らしの中で、自分の気付きをまとめているアイデア帳があるんですね。

そこには常に30個くらいのリストがあるのですが、その中の1個がタベリーの元ネタでした。

以前に30日間の育休を取得して、あえて家事をすべて引き受けてみたことがあるんですよ。そのときにすごく面倒くさかったのが、献立を考えることで。

料理って、世の中にすごくたくさんのソリューションがありますよね。でも、それでは自分の問題が解決されなかった。それに気付きを得て、検証を始めたのがタベリーのスタートです。それを会社としてやっていこうと決めて、創業しました。

社名は、最初はサービス名にしていました。でも、僕たちは特定の課題に対する執着があるわけではなくて、献立アプリだけを運営したいわけでもないんです。あくまでも、多くの人の課題を確実に解決していきたい。

そこで、「10倍いいものをつくる」「10倍いいものをちゃんと人に届ける」という意味合いで、10Xという社名にしました。現在はフルタイムの社員は7名で、エンジニア5名、デザイナー1名と自分という構成になっています。ビジネスサイドは絶賛募集中です(笑)。

向谷 私はもともとメディアの編集やSNSマーケターをしていて、その中で矢本と一緒に仕事をする機会があったんです。当時から彼の「矢本語録」があるほど個人的にも尊敬していたので、一緒に働いてみたいなという思いがありました。

そんな中、10Xで「これからTwitterを頑張っていく」というタイミングがあり、2018年10月に業務委託としてジョインした形になります。

業務内容は…Twitterのすべてです(笑)。フォロワー数が500ほどだった頃から運用を担当しています。

人のつながりや関心を飛び越えて情報を届けられるのがTwitter

矢本 僕はもともと、アプリやWebプロダクトで新規のユーザーを獲得していくときに、スケールしようとするとすぐにサチる(※飽和状態になる)という課題を感じていました。

要するに、あっというまに獲得コストが「見合わない」数字になってしまうんですね。なのでタベリーのプロモーションをするにあたっては、「ステージング」をちゃんと管理しないといけないと思っていて。

ステージングというのは、ユーザーと自分たちのプロダクトの間の関係性です。

最初は、人が自分たちのプロダクトのことを知らないところからスタートしますよね。そこから、プロダクトを知ってもらう、知ってもらった上で関心を向けてもらう、関心だけではなくて理解してもらう、といった形で、ステージが変化していきます。

ですが新しいプロダクトの広告を打つとなると、みんないきなりユーザー獲得にコストをかけがちです。それをやると、はじめは適切な効果を得られるかもしれませんが、すぐにサチってしまってROIが限界に達する。

そうではなくて、最初は自分たちできちんとユーザーのアテンション(認知)を得て、ステージを上げる。その上で獲得に向かうと、ものすごくROI高くユーザー獲得を進めることができます。

アテンションを獲得する手法は様々です。例えばインフルエンサーを起用してもいいし、メディアにPR記事を出してもいい。ただその中で一番スケールするチャネルが何か、と考えたときに、圧倒的にTwitterだったんですよね。

今、日本で一番伸びてるメディアはインスタだと思うのですが、インスタって、圧倒的に「インタレストグラフ(※)」だけで作られたメディアなんです。

※人の趣味や嗜好、興味関心を軸としてつながる仕組みや関係性のこと

例えば、バスケが好きで週末は山に行く人だったら、インスタのタイムラインにはバスケと山のことしか出てこない。自分の関心から外に自分の投稿が出ていかない、ということがインスタの特徴です。

これだと、マスに対してアプローチすることがすごく難しい。初期はわりと頑張って運用していたのですが、これだとチャネルとして合わないなと。

他方でTwitterは、ユーザーの65%が「プライベートグラフ(※)」で使っていると言われていて。要はフォロー数やフォロワー数は限られていて、基本、友達とのやり取りに使われている事が多い。

※ビジネス的なつながりではない私的な人間関係やその関係性のこと

それ以外の人はインタレストグラフに近くて、自分の興味があるコンテンツを発信している人をフォローしている。例えば起業に興味がある人が、起業家をフォローしているようなイメージです。

ただ、その自分のプライベートグラフとインタレストグラフの中に、突然自分の関心がないコンテンツが届くのがTwitterなんですよね。バズった投稿などがタイムラインに出てくるのが、わかりやすい例かと思います。

僕自身も、自分の子どもの病気のことをツイートしたときに、それがすごくバズって230万インプレッションまで伸びたんです。これって、ほぼマスメディアですよね。これをきっかけに、全くつながりのない人からフォローされたりもしました。

要するに、プライベートグラフや関心のつながりを越えて情報を届けられるのがTwitter。普段は届かないような潜在層に、Twitterだけはたまに飛び越えて届くことができる。

これはすごく面白いなと思っていて、アテンションチャネルとしてTwitterを一番ハックしていこうという考え方をしています。

「真似しやすい」ツイートを追求し、UGCを増やしていく

向谷 Twitter運用に関して、一番大事にしてるのはUGCの発生数です。「タベリー」のワードでUGC発生をカウントしています。

矢本 僕たちが重視しているのは、「トラックできる口コミ」を追うことなんです。UGCが出ていれば、その後ろにいるフォロワーさんの10分の1くらいには届くだろうと考えていて。

そしてUGCを出すためには、まずインプレッション数が大事です。その前段になるファネルはフォロワーで、フォロワー数を増やすために必要なのは、ひとつひとつの投稿のインプレッションやエンゲージメントを高めていくこと。

なので全体としては、広告などを使ってフォロワー数をのばしつつ、アカウントの運用自体を工夫してインプレッションやエンゲージメントを高める。広告と運用と合わせて数値を出していく、という感じです。

向谷 そのため、運用においては基本的にはウィークリーのインプレッション数を見ています。さらに、UGCが生まれやすくするために心がけているのが、「誰でも簡単に真似できるようなツイートをする」ということです。

例えば、シンプルに2行の文章とタベリーアプリのスクショを組み合わせる。このくらい簡単にすると、誰でも真似しやすいですよね。

インスタの料理の投稿って、めちゃくちゃキラキラしているじゃないですか。あれをできるのって、本当に限られた人たちで。そっちに寄せていくとUGCは出なくなります。

そこで、できるだけ日常と言うか、タベリーのメインユーザーと近しい「普通の主婦」のようなツイートを心がけているんです。完成食を撮るのは難しいので、食材の写真だけで投稿するようなこともありますね。

そして投稿ごとにカテゴリ分けをして「真似された率」をスプレッドシートにまとめています。「真似されやすい型」を探しているんです。

▼カテゴリごとに投稿数とUGCをカウント

お弁当をアップしてみたり、「今からごはん作るよ」という実況をスレッドでやってみたり、色々試して、結果的にどのくらいUGCが生まれたのかをチェックしています。

Twitterのコミュニティはアプリの入口でもあり出口でもある

向谷 また、なるべく「生っぽさ」を出すようにしています。トーストが焦げたら、焦げたものそのままアップするみたいな(笑)。

例えば過去に「献立アプリの中の人なのに、ご飯まだ作ってないし、今夜ぐらいお惣菜で良いんじゃないかって…」とツイートしたことがあって。

そうしたら、すごく温かいコメントをたくさんいただいたんです。このくらい生っぽく、基本的には「あるがままの自分」を出していますね。

SNSはあくまでも、コミュニケーションの場だと思っています。なので基本は「今作ったら今出す」という感じで、リアルタイムに投稿します。予約投稿をするのは情報提供系のコンテンツくらいで、全体の2割ほどです。

リツイートやフォロー返しも積極的にしていて、少しずつコミュニティの関係性を強くしていている感覚です。特に今は「タベリー」に言及したツイートのインプレッションを大事にしているので、タベリーに関する投稿の9割はリツイートしていますね。

また、タベリーアプリのことをツイートしてくださった方に「感謝状」を贈っています。例えば「献立ソムリエ」「飯テロの天才」といった形で、アトランダムに出しています。こちらからも「見ていますよ」ということをしっかり伝えていくということですね。

▼「献立ソムリエ」の感謝状

運用スタート直後はUGCも1日に1、2個出るか出ないかくらいだったのですが、今では1日に70〜80個くらいまで増加しています。

最近は少しずつ、リーチ先を広げるための実験をしていて。例えば、投稿の幅を広げて、それに合わせて細かくハッシュタグを変えています。韓国が好きな方とつながるために #チーズハットクを付けてツイートする、いったイメージです。ターゲットを少しずつずらすことで、つながりを増やしていっています。

矢本 またプロダクト側からも、自然とUGCが滲み出るような機能を増やしていっています。例えば、今月何をどれだけ作ったか、レパートリーがどれだけ増えたか、といったことを可視化してくれる機能があり、それをそのままTwiitterでシェアできるようになっています。

▼アプリ画面からTwitterでのシェアが可能

向谷 Twitterが、アプリの入口と出口の両方となる感じですよね。アプリの外にコミュニティを作っていっているイメージで、私も運用をしています。

次のスケールに向けて、新たなチャレンジへと進んでいく

矢本 もう少しプロダクトの状態を整えてからにはなりますが、今後はやはりスケールにチャレンジしていかなければいけないですね。

例えば今はフォロワーが2万7,000くらいいて、月間のインプが2,000万くらいのアカウントですが、これを10倍、100倍にしていきたい。これはTwitterの文脈でもそうですし、アプリを使ってくれるユーザー数も同じです。

これをどうやって実現するかは、またちょっと質の違うチャレンジになると思っていて。ユーザーをどうアテンションして情報を届けていくか、まだ試していないこともたくさんあるので、そこにチャレンジしていくということになると思います。

向谷 Twitterに関しては、これまでどおり、熱量の高いコミュニケーションとコミュニティを作っていきます。すごく抽象度の高い言い方になるのですが、タベリーアプリを「神」にしたくて(笑)。

料理って「ちょっと今日、この味の気分じゃない」とか、人によってズレが若干あるじゃないですか。でも「タベリーアプリが提案してるんだからこれが正解なんだ」って思えるような(笑)、そのくらいのアテンションをTwitter内で作っていくためにどうやっていこうかな、と考えているところです。

例えば、ライブ配信とかも面白いんじゃないかなと思っていて。熱量の高いコミュニティを作っていくために、新しいことにもどんどんチャレンジしていきたいと思っています。(了)

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