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面接官100名超の共通言語をつくる!「CX」の最大化を目指す、メルカリの取り組みとは

〜面接官の増加に伴い、採用の「仕組み化」が課題に。面接の構造化や面接官のトレーニングを実施し、CXを高めるメルカリの採用プロセスをご紹介〜

採用において、すべての候補者に良い体験を提供することは非常に難しい。

そんな中、CX(Candidate Experience)」の最大化を目的に、採用の仕組み化を推進しているのが、株式会社メルカリだ。

※Candidate Experience:応募から入社に至るまでの、採用プロセスにおける候補者体験のこと

直近1年で、連結ベースの従業員数が2倍近くに増加した同社では、面接官が増えていく中で従来の採用手法に対する限界を感じ、2019年1月から本格的に採用の仕組み化に着手。

ミッション共感・バリュー体現・カルチャーフィットを採用の3大ポイントとして、バリュー体現の判断基準を「3段階の行動レベル」で定義。また、選考プロセス全体においても「どの段階で・何を見極めるか」のガイドラインを作成したという。

さらに、面接官トレーニングを2019年3月から本格導入し、面接官同士によるフィードバックや事例共有を行うことで、面接の質を高めている。

今回は、同社グループで採用の仕組み化を設計・推進する林 まり子さんに、採用プロセスの全貌とCXを高める挑戦について詳しくお伺いした。

面接官が100名を超える中で、「採用の仕組み化」が課題だった

私は前職で、採用戦略の立案や制度設計などの採用コンサルティングや、アウトソーシング業務に10年ほど携わっていました。その経験を生かす形で、「メルカリの採用の仕組みをつくる」というミッションのもと、2019年の1月に入社しました。

現在は、Talent Acquisition Team(採用チーム)の一員として、メルペイも含めたグループ全社の採用の仕組み作りを担当しています。

弊社はこれまで、フリマアプリ「メルカリ」の成長や他事業の展開に伴い、積極的にメンバーを増やしてきました。連結ベースの従業員数は、この1年で約1.7倍に増え、現在は約1,800名となりました。(※2019年6月末時点)

こうした中で、コンテンツプラットフォーム「メルカン」などを通じて、社外への発信を率先して取り組んできたものの、社内の仕組み化という点ではまだまだ整っていない部分も多くありました。

特に、応募職種やポジションが増え、採用面接に関わるメンバーが100名を超える規模になってきた頃から、今までのような口頭伝承の形では限界があるな…と感じていたんですね。

入社して間もないメンバーが面接を担当する場面も増えてきたので、2018年10月頃から、面接の構造化や面接官のトレーニングに試験的に取り組んできました。

そして、私が入社したタイミングで、その取り組みを引き継ぎブラッシュアップする形で、正式に社内展開していきました。

バリューの体現をジャッジするため「3段階の行動レベル」を定義

メルカリは、組織の核となるミッション・バリューをとても大事にしているので、採用においても、ミッションへの共感、バリューの体現、そしてカルチャーフィットの3つを主な判断軸としています。

▼同社のミッション・バリュー(※画像は編集部にて作成)

そのうち、まず着手したのが「バリュー体現」のジャッジに対するガイドラインの作成です。

元々、社内においては、バリューの定義や具体的例について各自が考えたり議論するプロセスを大事にしているので、具体的な行動例はあまり明文化していないんですね。

ただそれだと、採用面接においては、メルカリに入社したばかりのメンバーもいる中で同じ目線で評価していくことが難しい、という声が聞かれるようになったんです。

そこで、バリューの定義を明文化し、行動レベルの基準を3段階で定義しました。例えば、Go Boldであれば「失敗を恐れず、前提に捉われることなく大胆に行動する」といった形で、バリューの解像度を一段引き上げるイメージですね。

行動レベルについては、正解例を示すものではなく、あくまで全社共通のガイドラインとして存在しています。

具体的にどのような行動がどのレベルに該当するかについては、これをベースに各ポジションの選考を担当する現場のメンバーで議論することを推奨しています。

このプロセス自体にも意味があると考えているので、「面接の仕組み化はしても、型化しすぎない」ということに気をつけていますね。

また、ガイドラインを作成する上では、周囲の意見を取り入れることも大切です。

実を言うと、はじめは行動レベルの基準を5段階で作っていたのですが、議論する中で「2と3や、4と5の違いって何?」といった声が出てきて。細かく定義しても「言葉遊び」みたいになってしまって運用がうまく回らないだろうという判断になり、3段階に落ち着きました。

これを面接の評価シートとも連動させることで、人事と面接官の目線合わせもよりスムーズにしていきたいと思っています。

「どの段階で、何を見極めるか」を整理し、選考プロセスを体系化

次に、選考プロセス全体の体系化にも、並行して取り組んでいきました。

メルカリの一般的な選考フローとしては、書類選考と(ポジションによって)技術選考、3回の面接を経て、オファー出しになります。

人事の役割としては、面接前後のコミュニケーションをサポートすることなので、基本的には現場のメンバーが面接官を担当します。そのアサインは、人事ではなく、募集ポジションのマネージャーが適したメンバーを選任する形です。

その中で、現場から「選考プロセスのどの段階で、何を見極めればよいのか」という声があがってきて。例えば、1次面接の時点でメルカリを使ったことのない人をどう評価するか、みたいな議論が結構あったんですね。

そこで、各プロセスにおいて、必ず確認したい項目といずれかのプロセスで確認する項目に整理しました。例えば、プロダクトへの関心やミッション共感については、2次面接以降で確認する項目になっています。

▼採用プロセスの全体像(※ポジションにより異なる)

またカルチャーフィットについては、すべての面接官が確認する一方で、やはり面接という場だけで判断するのはかなり難しいと思っていて。なので、入社前にどれだけ正しくカルチャーをお伝えできているか、が大事だと考えています。

特に、急成長中のキラキラベンチャーというイメージが強い候補者の方もいるので、そこは「想像以上にカオス(改善余地がたくさんある環境)ですよ」というメッセージを明確に伝えるようにしていますね。

面接官同士による「模擬面接」を実施し、質を高める

ただ、こうした仕組み化はあくまで補助的な位置付けになるので、面接官それぞれのスキルが重要になります。

そこで一定の質を担保するため、2018年より面接官トレーニングを導入し、2019年の3月からは正式に全社展開しました。7月からは必須参加として、月2回ほどのペースで開催しています。

内容は前後半に分かれていて、全体で1時間半ほどのプログラムになっています。前半では、面接における振る舞い方や時間配分、気をつけたいポイントなど、基本的な座学のレクチャーを行っています。

そして後半のメインパートは、参加した面接官同士で模擬面接のロールプレイングになります。なるべくリアルケースに近くなるように、同職種でペアを作り、例えば「Go Boldの観点から過去の経験を聞きましょう」といった状況設定をしています。

フィードバックをする際には、チェックシートの項目に基づいて、互いの目線から率直に伝えるようにしていますね。

例えば、態度・姿勢であれば「少しパソコンを打ちすぎていて気になりました」などを伝えることで、普段自分では見えない気づきを得ることができます。

▼フィードバック時にチェックする項目

また、面接のフィードバックだけでなく、実際の面接で困ったポイントや普段どういう感じで面接しているかを共有する場としても機能していますね。

例えば、ずっと話し続けている方に対してどうしたらいいかとか、答えがないですよね。だからこそ、それぞれの事例を聞くことで一参考になりますし、実際の参加者からも「他の人が普段どのように面接しているのかを知れて、いい機会になった」といった声を聞いています。

「メルカリの選考を受けてよかった」と思える体験を提供したい

一連の取り組みによって、現場との目線が擦り合ってきただけでなく、副次的に社内へのバリュー浸透やリファラルの促進にも効果があるなと感じています。

今後は職種ごとのガイドライン作成など、もう少し踏み込んだ形で施策に落とし込んでいけたらと思っていますね。

また、仕組みを作って終わりではなく、きちんと現場の社員や候補者の方々の声を踏まえてブラッシュアップを続けることが大事だと思っていて。

そもそも、こうした取り組みの背景として「CX(Candidate Experience)を最大化したい」という思いがあるんですね。

CXとは何かというと、候補者の方が応募から入社に至るまでの、すべての体験を指しています。

選考では、どうしてもお見送りになってしまう方が大半ですが、「メルカリの選考を受けてよかったな」と感じていただけたらと思っていて。そのために、面接というのはひとつの重要な体験だと思うんです。

そこで、面接官の質を高めるだけでなく、選考を終えた候補者の方にアンケートを実施し、その内容を踏まえて定期的に施策を見直しています。

このアンケートは2018年11月から始めた新たな取り組みですが、面接や選考前の情報などのフェーズごとに、メルカリの選考に対する満足度を質問する形で実施しています。

すべての方に良い体験を提供する、ということは本当に難しいテーマですが、今後も選考の質をあげられるような仕組みを改善していくことで、CXを高めていきたいですね。(了)

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