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組織のラーニングを最大化!LayerXが実践する「複利」で学び合うチームの創り方

〜毎日1時間、社内のナレッジ共有を行う「勉強会」を開催し、組織のレバレッジを効かせる。ブロックチェーンの社会実装に挑戦するLayerXが、急成長を遂げる仕組み〜

昨今注目を集める、既存産業のデジタルトランスフォーメーション(以下、DX)。そのDXを、ブロックチェーン技術を軸に推進しているのが、株式会社LayerXだ。

2018年8月に創業した同社では、「すべての経済活動を、デジタル化する。」というミッションの実現に向けて、「複利」の効く組織づくりとPRを推進しているという。

まず、R&Dを起点として、組織のラーニングサイクルを促進。その核となる施策が、創業初期から続く「勉強会」だ。

週次の全社定例がある月曜を除く週4日、1日1時間の枠を設けて各メンバーの知見を共有することで、情報の減衰を防ぎ、組織内での学習に複利を効かせているという。

さらに、研究開発の成果をホワイトペーパー等の形にまとめ、社外にも公開。「直感的にわかりやすいスライドを埋め込む」「技術ではなく解決できる課題を伝える」といった工夫により潜在顧客にリーチすることで、事業への巻き込みを加速しているそうだ。

今回は、同社でR&Dの担当役員を務める中村 龍矢さんと、人事・広報の担当役員である石黒 卓弥さんに、複利を効かせて事業と組織を成長させる方法をお伺いした。

R&Dをすべての基盤として「組織のラーニングサイクル」を回す

中村 僕は元々、Gunosyで機械学習やデータ分析などを担当した後、新規事業開発室に異動してブロックチェーンの研究をしていました。その一部署がスピンアウトする形で、2018年8月に設立されたのがLayerXです。

事業特性上、様々な業界の企業と提携してプロジェクトを行うのですが、ブロックチェーンや暗号をはじめとする技術をどう活用するかといったことをR&Dチームとしてサポートしています。

石黒 僕は2020年5月にLayerXに入社し、人事と広報を担当しています。前職のメルカリには社員が60名の頃に入社し、在籍した5年で1,800名規模まで組織が拡大する中で、HR領域の様々な経験を積みました。

LayerXが推進しているDXは、言ってみれば「産業のポテンシャルにレバレッジを効かせる」ということだと思っています。

それをいち早く実現するために、R&Dを基盤とした先端情報の社内外へのナレッジ共有と、スピード感の速さを重視しているところが、弊社の特徴かなと思います。

▼左:石黒さん、右:中村さん

中村 その点、僕が大切にしているのは、組織のラーニングサイクルですね。まず起点となるのがR&Dです。R&Dを組織的に活かす大前提として、会社の事業と相性の良さそうな技術に狙いを絞って研究開発をする、ということにこだわっています。

次に、R&Dチームとビジネスサイドの垣根を作らず、研究で得られた知見を事業に還元します。

事業サイドの課題を解決する筋の良さそうな方法を見つけたら、一緒に解決に向けて動きます。事業サイドのチームに「この技術が使えますよ」と投げて終わりにするのではなく、ある一定の期間は、一旦R&Dを止めてでもスクラムを組んで一緒に取り組むことが大切です。

このようにして、R&Dチームの技術や知識が他チームの誰か1人に伝わると、次はその1人も同じ語り手になれるので、1人、2人、4人、8人、という風に、倍々になって他のメンバーにも広まっていくんですよ。

すると今度は、他の案件にもこの研究内容が使えるんじゃないか、といったことが見えてくるので、それをまたR&Dにフィードバックし、次の研究テーマに活かす。そのサイクルを回しながら、組織的なラーニングを進めるようにしていますね。

週4日の「勉強会」に社員の8割が参加。社内のナレッジ共有を促進

中村 R&Dでは、社内で得られた成果を、社外の研究者に向けても積極的に発信しています。

というのも、小さな会社の小さな研究チームで、社内に閉じてやっていても良い開発ができないんですよね。海外の方が進んでいる領域でもあるので、最初からオープンにしてしまって、社外の有識者からフィードバックをもらって改善していく、というのを基本にしています。

そこで活用しているのが、論文です。論文は書くのに時間がかかりますが、研究者たちが試行錯誤を重ねてできたものが今のフォーマットなので、その形式に則ってしっかりアウトプットすることで研究開発の質が高まります。

また、論文で出して初めて、トップの研究者から貴重なフィードバックをもらうことができる。それをR&Dに活かすことで、小さなベンチャーでも最先端の技術開発を行えるようにしています。

さらに、R&Dで得た知見やメンバー同士のナレッジを共有するため、創業以来ずっと継続しているのが「勉強会」です。

現在の運用は、月曜以外の週4日、毎日14時から15時までを勉強会の時間としてデフォルトで設けています。発表は1人30分で、毎日2枠ある形です。

水曜は、毎週発行しているNewsletterの内容を話すことに決まっているのですが、それ以外の火・木・金の6枠については、テーマも発表する人も自由です。希望する人がSlackで宣言をして、当日までに準備をして発表する。参加も任意ですが、毎回、社員の7〜8割が参加していますね。

例えば、技術的なトピックを話すエンジニアもいれば、法律や物流、金融業界の歴史などを発表するビジネスサイドのメンバーもいます。それぞれの得意な領域をテーマにしているので、本当に内容は幅広いです。

今では、各メンバーが自発的に発表テーマを挙げてくれていますが、始めた当初は、発表者もテーマも事前に割り振っていました。ブロックチェーン技術をキャッチアップする目的で、週5日、全員強制参加でルールを決めて実施していました。

ですが、各自が発表経験を積むにつれ、どんなテーマだと盛り上がるのかがわかってきたり、発表してみんなに喜ばれると嬉しくなってきたりして。「またやりたい」というのが続いた結果、今ではルールではなく、カルチャーとして定着したのだと思います。

▼実際の勉強会の様子

石黒 よく勉強会というと、始業前やランチタイムに開催されたりすることも多いと思いますが、弊社では14〜15時という時間帯で、参加は自由だけれど明確に「業務の一環」として捉えています。

だからこそ、特にルールを設けなくても、発表する側は参加者にメリットのある内容で準備しますし、アウトプットの質が高くなるのかなと思います。

僕は、組織における情報伝達の問題は、人から人へと伝わっていくうちに情報が減衰することから生じると思っています。これが勉強会によって、0.9に減るどころか1.1に増えるかなと思うんですよ。

共通の知識をベースに、各々の得意分野からの意見や反応を乗せて伝えることができるので、情報伝達の量が増えていくように感じています。

「どんな質問をしてもOK」という心理的安全を、仕組みで担保する

中村 また、組織のラーニングを進めるためには「心理的安全性」も大切だと思っています。

というのも、例えば事業側で技術的な課題があった場合に、カジュアルに相談できるかどうかがすごく大事だと思うんですね。逆にR&Dチームも、そこまでビジネスが詳しくなくても「この技術をこういう風に使えませんか」と提案できるような関係性が大切です。

その心理的安全を担保する仕組みのひとつに、「#times_chimpan」というSlackチャンネルがあります。これは動物のチンパンジーからネーミングされているのですが、ビジネスでも法律でも技術でも、この部屋ではとにかくどんなアホな質問をしてもOK、というルールです。

また専用チャンネルに限らず、絵文字スタンプのチンパンジーをつけたり、質問の冒頭に「ちょっと僕、チンパンなんですが…」とつけると、何を質問しても許されるような文化がありますね(笑)。

石黒 この対極は「自分でググってね」ということだと思います。自律的に学ぶ文化があるという前提ではありますが、知識の差があるなら、それは早く埋めてもらった方が組織としての総合力に複利が効くことになります。

本人のキャッチアップが遅れれば遅れるほど、会社としては損失になるので、知らないのであれば早く知ってもらった方がいい。リモートワークだと「あの人に聞いてみて」が余計にしづらいので、チンパン部屋があると便利ですね。

また勉強会が、新しく入社したメンバーのオンボーディングになっている側面もあります。

他のチームの人がどんなことをしているか、というキャッチアップにもなりますし、本人も前職での経験などを発表することで、周囲のメンバーがその人の得意領域を知ることができます。

Slackで共有するよりも、実際に話してもらった方がその人のパーソナリティがすごく出るので、勉強会がメンバー同士の関係性づくりにも役立っているかなと思います。

プレスリリースは「技術」ではなく「解決できる課題」を伝える

中村 さらに、R&Dで得られた知見を社外の潜在顧客に向けて発信することで、事業の成長につなげています。

例えば先日、「Anonify」という次世代プライバシー保護技術のプレスリリースを公開しました。

実をいうと、これまでもR&Dチームが研究成果の概要を文章で書いただけのプレスリリースを出していたのですが、見事に無風だったんですね(笑)。

そこで今回は広報チームと作戦を練って、読まれるリリースにするために、直感的にわかりやすいスライドを埋め込む形にしました。

▼実際の「Anonify」のスライド

その内容も、以前は「どういう技術か」を書いていたのですが、今回は「どんな課題を解決するものか」を伝えるものに変えました。

研究者はよく技術の説明をしがちなのですが、これだと幅広い業界にいる潜在顧客に伝わらなくて。特に今回は、AIや機械学習といったような世の中に認知されている技術ではなく「Trusted Execution Environment」という比較的新しい技術を使った研究だったので、ストーリーを意識して出しました。

具体的には、スライドの冒頭でブロックチェーンの事例をいくつか紹介し、プライバシーの問題があることを提示した上で、Anonifyがそれを解決します、といった形です。

石黒 このリリースを出すにあたって、そもそもどういう人に読んでほしいかを議論したり、スライドの叩きを共有して他チームからもツッコミをいれてもらったりなど、デザイナーやビジネスサイドの目線も入れるようにしましたね。

その結果、リリースをきっかけにした問い合わせが大手企業から来たり、停滞しかけていた案件がまた動き出したりと、ビジネス的な成果としても手応えを感じました。

「複利」を効かせて、会社としての信用を積み上げていく

中村 僕は、ある新技術が社会を変えるフェーズに進むためには、その技術を使って実現できることや解決できる課題が「共通言語」になる必要があると思っています。

例えば機械学習であれば、「顔認識」や「自動翻訳」のように、聞いただけで便利だなと思うような単語が溢れているため、色々な業界の会社が「うちでも使えないか」と検討しやすい。一方で、ブロックチェーンは「改ざん耐性」のように、まだまだ耳慣れない、手触り感のない単語が多いじゃないですか。

これからは新技術の社会実装を続け、その成果を公開していくことで、この技術に触れたらきっとみんなが幸せになる、と思ってもらえるような共通言語をどんどん増やしていき、社会に大きな影響を与える研究開発をしたいと思っています。

石黒 LayerXは創業してまだ2年くらいで、会社がすごく若いんですよね。

でも、この世界観を実現していくためには、通常であれば5年、10年かかるような社会の信用が必要です。こういった「社会の信用」を、会社としてどう積み上げていくことができるかが、今の私の役割だと思っています。

そのためには、とにかく多くの人に認知され、応援してもらえるように、信頼につながる行動や発信をもう真摯にやり続けるしかないなと思っています。1.01でもいいから365日続ければ、それは最終的に38倍になるんですよね。つまり、これも複利の考え方と同じです。

将来のビジョンを明確にもった上で、そこに対して不足しているものを見定め、適切にアプローチしていくことが必要だと思っています。

今後も技術力を起点に組織を成長させていき、それを正しく世の中に伝えていきたいです。(了)

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