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  • COO・事業責任者
  • 佐藤 亮太

「すごい副業」はバズ狙いじゃない。YOUTRUSTの小さく始め、大きく実らせる企画の裏側

〜KPIは「採用成功」。話題づくりではなく、企業とユーザーのご縁を生むことにコミット。「確実性はなくてもまずやってみる」精神で、事業成長に大きく寄与した施策の全容〜

自社サービスの認知向上のため、話題性に富みながらも成果に繋がる企画を打ち出すには、どのようなスタンスと着眼点を持つことが重要なのだろうか。

信頼できる友達もしくは「友達の友達」からオファーが届く、キャリアSNS「YOUTRUST」を運営する、株式会社YOUTRUST。

同SNSでは、2020年5月時点で1万人だったユーザー数が、約半年で3倍に伸長。その急成長に大きく寄与したのが、業界を代表する方の隣で働くことのできる「すごい副業」や、その続編となる「かなう副業」といった企画だ。

SNS上で大きなバズを生んだ両企画だが、顧客企業の「採用成功」をKPIとして、獲得したいユーザー層の「白地」にソーシャルグラフを持つ著名な方との企画を組むことで、結果的に話題性と成果の両方を得ることができたという。

今回は、代表取締役の岩﨑 由夏さんと、COO(Chief Operations Officer)として企画設計や運営を担う佐藤 亮太さんに、話題の企画の裏側の取り組みや、大切にしているスタンスについて詳しくお伺いした。

コロナ禍で事業の潮目が変わった。事業拡大のための施策を開始

岩崎 私は、DeNAに新卒入社して採用を担当した後、子会社のペロリで経営企画を担いました。その後、2017年にYOUTRUSTを設立し、翌年4月にキャリアSNS「YOUTRUST」をローンチしました。

この事業を始めた背景には、当時感じていた「転職市場への違和感」がありました。

というのも、多くの方が利用する転職エージェントのビジネスモデルは、サービスを通じて入社した方の年収の何割かを成功報酬としてもらう形になっていて。そのため、優れた人材を獲得しようと企業が報酬割合を引き上げたり、特定の企業に紹介が偏ってしまったりするケースがあることを知ったんですね。

その仕組みへの違和感から、誰もがもっと本質的でフェアな転職が実現できるように、新たにスタンダードとなる転職チャネルを作ることを決意しました。

事業開始にあたり周囲に構想を伝えると、転職よりも副業のニーズが高まっていたことから、副業を入り口としたキャリアSNSという形でスタートしました。

しかし、副業したい方は多い一方で、ローンチ当時は副業人材を採用している企業が少なかったので、「企業の登録社数」に課題がありましたね。結果的に、数年間はユーザー獲得の優先順位を上げず、口コミで登録者数が増えていく形でした。

その潮目が変わったのが、2020年です。コロナ禍で世の中の価値観が大きく変化してリモート勤務が当たり前になり、経営における固定費を減らす観点でも、業務委託での採用が急増した1年だったと思います。

私たちは市場開拓に5年はかかると考えていましたが、それが一気に短縮されたのを機に、事業拡大に向けて様々な施策をスタートしました。

まず最初に行ったのが、顧客企業に対するプライシングの変更です。

それまでは「数万程度の月額利用料と採用1名につき何十万」といった成果報酬型の料金プランでしたが、契約に繋がりやすい一方で、あまりサービスを活用していただけない企業が少なくありませんでした。

それに対し、ユーザー心理としては「そのうち良い案件があればいいな」という感覚の方が多かったので、企業側からアクションを起こしてマッチングが生まれるような仕組みに変えなければと考えたんですね。

そこで、複数の価格帯でセールスする中で適正価格を探り、最終的には成果報酬をなくして月額利用料を引き上げたプランに変更しました。

これによって、積極的にサービスを活用いただけるようになり、きちんと優秀な人材の採用が決まることで顧客満足度が高まっていきました。また、顧客単価が変更前の約3倍にUPするという成果にも繋がりましたね。

新規ユーザー獲得に向けて。著名人と組む「すごい副業」をリリース

佐藤 私は、リクルートに新卒入社して採用や新規事業開発を経験した後、YOUTRUSTに副業でジョインし、2020年1月に正式入社しました。現在はCOOとして、顧客企業へのセールスやカスタマーサクセス、マーケティング領域を担当しています。

プライシング変更に伴う営業活動では、「副業人材の採用意欲が高いスタートアップ企業」にサービスがマッチしやすいことが分かってきました。

そのため、より多くのスタートアップ企業に認知していただくために、2020年5月頃からメディア露出を増やしたり、国内最大級のスタートアップカンファレンス「Infinity Ventures Summit 2020」で結果を残すことに注力したりしました。

その甲斐あって企業の登録社数は増えていきましたが、今度は顧客のニーズに対してユーザー数が足りないという状況になって。そこで、2020年8月から新規ユーザーの獲得に舵を切りました。

月ごとのユーザー獲得目標数を立てて、友達紹介キャンペーンなど数多くの施策にチャレンジした中で、事業のブレイクスルーに繋がったのが「すごい副業」という企画でした。

具体的には、副業という形で業界を代表する方の隣で一緒に働いたり、レアな体験をしたりできるというものです。newn代表の中川さんから始まり、DeNA代表取締役会長の南場さんなどが募集した「すごい副業」の数々がSNSでのバズを生み、多くの新規ユーザー獲得に繋がりました。

▼実際の「すごい副業」の募集画面(一部)

副業というと、投資やコンテンツ作成のように在宅で手軽に始められるものも多いですが、我々がメインで提供できるのは「企業で働く副業」です。その機会が身の回りにあると思っていない方が多いのではないか、という着想からこの企画が生まれました。

そして、ターゲットユーザーとしては、インターネット業界に勤めている方や、その業界で働きたいという意欲がある方。副業で収入を増やしたい方というよりは、この企画を「面白そう」と感じてくださる好奇心旺盛な方に応募していただきたいという狙いがありました。

企画のKPIは「採用成功」。小さく試し、実績を伴って拡張する

佐藤 すごい副業の企画においては、YOUTRUSTのユーザーとの親和性から「SNSで拡散されやすい企画にする」ことは意識していましたが、最初から「バズ」を狙っていたわけではありませんでした。

まずは小さく試してみようと、株主の方や岩崎が繋がりを持っている方にお声がけさせていただき、隔週ペースで副業案件を打ち出していきました。

その後も、私たちが獲得したいユーザー層の「白地」に対してマッチしそうな方を探し、紹介経由でその方に辿り着くという形で地道に輪を広げていきました。

この企画において特に起点となったのは、DeNAの南場さんの副業案件です。リリース初期はスタートアップ企業における一般的な副業内容に近い案件が多かったのですが、南場さんから「普通にやっても面白くないよね」とおっしゃっていただいて。そこから、運動不足と知識習得を掛け合わせて「ウォーキングパートナー」という内容に行き着いたんです。

南場さん自身への注目度と斬新な内容が相まって、一気に企画の認知が広まり、「すごい副業に人材を募集する側として出たい」と言ってくださる著名人の方も増えましたね。

▼DeNA南場さんの「ウォーキングパートナー」募集画面

元々は新規ユーザー獲得を目的に企画しましたが、きちんと採用に繋がることが大切だと考え、企画のKPIとしては「採用成功」に置いていました。

なので、応募や採用に繋がりやすくなるような「見せ方」を公募者と一緒に練ったり、応募が殺到して現場を混乱させないように、公募者や公募内容に合わせて応募フォームを変更したりといったフォローアップも行いました。

この取り組みを通じて、副業だけではなく正社員採用に繋がる事例が多く出てきましたし、ただ話題性を狙って新規ユーザーを増やすのではなく、そこで良いご縁を生むことにコミットしたことは非常に重要なポイントだったかなと思いますね。

岩崎 最近では、小嶋 陽菜さんや本田 圭佑さんといった著名人にも参加していただいています。この時も、「事業運営をしている方」「私たちが取れていないSNSのソーシャルグラフを持っている方」「私たちがきちんと価値貢献できる方」という3つの軸を掛け合わせて、ご協力いただきたい方を探していきました。

それまで参加いただいた皆さんが一様に「応募者のレベルがとても高い」と評価してくださり、採用実績が伴っていたので、どんな方に対しても自信を持って「良い人に出会えます」と言えるようになったのは大きかったですね。

企画で話題を生んで終わりにしない。事後レポートで成果まで公開

佐藤 すごい副業の企画・運営と併行して、2020年10月に開始したのが「かなう副業」です。すごい副業が「人軸」の企画だったのに対して、かなう副業ではD2Cブランドといった「企業軸」で副業人材を募集する企画としました。

この企画には「小さい頃やりたかったことを副業という形でチャレンジして、夢を叶えよう」というコンセプトがあって。すごい副業とかなう副業では伝えたいメッセージや世界観が違うので、画面のデザインや表現も意図的に変えています。

▼実際の「かなう副業」の募集画面(一部)

すごい副業には応募する自信がなかったという方でも、かなう副業であればエントリーしやすいようで、新規ユーザーの獲得にはかなう副業の方が寄与しているかなと思います。

私たちがこのような企画をする際に大事にしているのは、まず、日当のような何らかの「金銭インセンティブ」をフックにしないということです。それは、YOUTRUSTでは、仕事におけるやりがいや一緒に働く人とのご縁といった「お金を稼ぐこと以上の価値」を提供したいといった想いがあるからです。

岩崎 また、「企画を世に出して終わりじゃなくて、その結果を公開すること」「参加いただく方々にとって、気持ちが良い・居心地が良い場になっていること」も大切にしていますね。なので、ただバズを狙って企画を打つということはしていません。

実際にアフターインタビューという形で、選考や副業の実体験をレポートさせていただいているのですが、こういった発信によって、世の中の方に副業を身近に感じていただける機会になると嬉しいですね。

ユーザー数が急増。日常的に使いたくなるキャリアSNSを目指す

岩崎 このような取り組みの積み重ねで、2020年5月に1万人だったユーザー登録数を、10月に2万人、12月に3万人へと一気に増やすことができました。

振り返ってみても、狙ってスパン!と当たる企画を打ち出したというよりは、チームで愚直にめちゃくちゃ施策を打った中のひとつを、大きく実らせていった形かなと思います。

佐藤 特にすごい副業は、きちんと考えたらGOできない企画だった気がするんですよね(笑)。「うまくいくか分からないけど、まずやってみよう」という心持ちが本当に大事で、想定より跳ねたらより良い形で積み上げていく。その繰り返しですね。

岩崎 長期的な目線で私たちが成し得たいのは、「求職者様のための転職市場を作る」ということです。そのためにも転職市場のスタンダードを変えていきたいので、転職するタイミングでなくても日常的に使っていただけるキャリアSNSになるというのが、私たちの次のチャレンジだと思っています。

佐藤 私も、転職活動における考え方はどんどん変化して「常にチャンスを探しておく」という世界観になっていくと考えています。その時にユーザーの皆さんがストレスなく、最良の機会を得られるようなサービスに磨いていきながら、働く上でのなくてはならないサービスになっていけたらなと思います。(了)

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