- Groupe PSA Japan株式会社
- 広報室 PRマネジャー
- 森 亨
PRにも「インバウンド」思考を。広報効果測定指標のひとつ「AVE」5倍に貢献したニュースルーム運用とは
【Sponsored by 株式会社100】「インバウンドマーケティング」 とは、企業が見込み顧客にとって有益なコンテンツを提供することで、自社製品やサービスへと惹きつけ、顧客へと転換するマーケティング・コンセプトだ。
このインバウンドという考え方を広報・PRにも適用し、大きな成功を収めているのが、Groupe PSA Japan株式会社だ。同社はフランスの3つの自動車ブランド、プジョー、シトロエン、DSオートモビルと、ドイツのオペルの日本における輸入・販売を行っている。
Groupe PSA Japanでは、フランス車ゆえの「Web上に情報が少なすぎる」という課題を解決するために、インバウンドのメソッドをPRに取り入れることを目論み、それまでにあった「プレス向け」のWebサイトを一新。
もともとインバウンドマーケティングのソフトウェアとして生まれた「HubSpot」を用い、プロのプレスのみならず、同社や同社のクルマに関心のある人たちに対しても開かれたデジタルPRプラットフォームとしての「ニュースルーム」を構築した。
同ニュースルームは、1)各種リリースの配信、2)プレスキットの配布といった基本的な広報機能を持ちつつ、他に、3)広報車両の管理・リクエストを行える、と、プレス向けにも使いやすい仕様に。
そして 1) 2) に関しては、プロのジャーナリストやメディアに閉じるものではなく、PSAグループのクルマに興味のある人たち全てに対して情報をオープンにし、コンテンツもその方針にあわせて制作を行っている。
また、ジャーナリストやメディア関係者だけでなく、一般の顧客やファン、及びクルマ関係のインフルエンサー(YouTuberやブロガーなど)もPSAグループからの情報発信に触れやすいように、「購読者」としてプレスリリースなどのニュースをメールで受け取れるような仕組みも導入している。
つまり、従来の「プレス向けに働きかける」広報活動だけでなく、「自社製品に興味を持っている人」との双方向型のコミュニケーションを実現し、情報を欲している人たちに対して、適切に情報を届ける仕組みにもなっているのだ。
結果として、インフルエンサーやファンが、自分たちのYouTubeチャンネルや日常的に使っているソーシャルメディアなどで、同社の情報をシェアし、ネット空間の中で同社の情報が拡がっていくことを期待している。こうしたことから、今回の試みが「インバウンドなPR」であるということが理解できるだろう。
こうした試みを実施し始めてから、3年前と比較して「AVE(※Advertising Value Equivalency:広告換算値・PR成果指標のひとつ)」は5.43倍に。またニュースルームのアクセス数も、以前のプレスだけを意識した広報サイトの時代に比べ、6倍以上に達しているのだという。
今回は同社の「ニュースルーム」
過去には「インバウンド」で採用課題を解決した取り組みも
森 私の社会人としてのキャリアは、大学2年生のときに始めたストリートファッション誌のライターからスタートしました。そこから30代にいたるまで、フリーの編集兼ライターとして雑誌やWeb媒体で活動していました。
その後、男性ラグジュアリーライフスタイル誌の編集や、PR・制作系の個人事務所の経営などを経て、前職ではフィットネス系事業を展開する株式会社ベンチャーバンクで経営企画をしていました。
そして、3年前にお誘いをいただき、Groupe PSA Japan(当時プジョー・シトロエン・ジャポン)にPRマネジャーとして入ったという流れになります。
▼Groupe PSA Japan株式会社 広報室 PRマネジャー 森 亨さん
高広 私は株式会社スケダチとして独立し、マーケティング領域を中心としたコンサルティングを展開して10年以上になります。最近はマーケティングだけではなく、事業開発や広報など、幅広い領域で支援を提供しています。
森 最初はソーシャル上やイベントで私淑させていただいていたのですが、初めて高広さんと一緒に仕事をさせていただいたのは前職のベンチャーバンク時代です。
当時抱えていた採用の課題を解決するために、インバウンドマーケティングの考え方が採用活動に適用できるのではないか? と思いつきまして。HubSpotを使って採用サイトを構築して、転職活動をしている人、同社で働きたい人が自らサイトにやってくるような「インバウンド・リクルーティング」の仕組みができないものかと、高広さんにご相談をさせていただきました。
高広 「インバウンド」という概念を採用するという意味では、今回の取り組みと基本的には同じ考え方でしたね。
「フランス車の情報が少ない」PRの課題もインバウンドで解決できる?
森 Groupe PSA Japanに来て、PR視点で一番大きな問題だと感じていたのが「PSAのクルマに関する情報が少なすぎる」ことでした。
実はフランス車には、色々と問題があるんですよ。まずひとつは、日本やドイツと比較すると、フランスのメーカーは技術資料をあまり出さないこと。そうなると、ネタがないので媒体上の記事も少なくなり、それらの記事を引用するソーシャルの声も少なくなってしまう。
もうひとつは、フランス車が持たれているイメージ。「フランス車=壊れる、安全性が低い」という、いわば都市伝説が根強くあるんですね。20年前であればたしかに否定しませんが、ここ5年10年は全くそんなことはありません。けれど、Web上では未だにそういった声もとても多かったんです。
日本市場におけるフランス車のシェアよりも、ネットの上のコンテンツのシェアはさらに少ない。これでは人々の目にも触れず話題にもなりにくいため、ショッピングリストにも入らないだろうと。
こうした状態をなんとかしたいと考えたときに、高広さんもよく言っている「WPO(※)」 が足りないのではないかなと。
※Web Presence Optimization
検索エンジン最適化(SEO)が検索結果の上位を狙うのに対し、検索結果での自社コンテンツのシェアやインターネット全体上でのプレゼンス(存在)を最適化するという考え方
(詳しくはこちらの記事もぜひご覧ください:「SEOのその先+これが本当のコンテンツマーケティング。WPO = Web Presence Optimization という考え方について」)
その打ち手のひとつとして、ベンチャーバンク時代と同様に、HubSpotを使ったインバウンドマーケティングの思想をPRメソッドとして転用できるのではないかと考え、高広さんにご相談させていただきました。そして、技術的な部分をサポートいただく会社として、株式会社100(ハンドレッド)さんもご紹介いただきました。
高広 このコンセプトの背景を簡単に説明させていただくと、まずPR活動というのは基本的に「リアクティブ」なものと「プロアクティブ」なもの、2つに分かれると思うんですね。
▼株式会社スケダチ 代表 高広 伯彦さん
「リアクティブ」なものというのは、メディアなどからの問い合わせに対応すること。つまり、外部のアクションに依存しているもの。一方で「プロアクティブ」なものというのは、自分たち自身で先回りして積極的にコミュニケーションの機会を獲得していこうとするもの、です。
このプロアクティブなPR活動において、従来は大手のメディアやジャーナリストにリリースを送る、ロードショーなどのメディアリレーションを行う、あるいはデジタルPRプラットフォームを活用するなどが働きかけの対象でした。
さらに最近では、発信力や影響力を備えたインフルエンサーもその対象でしょう。ただ、これらの活動というのは、「相手が自社製品に興味があるかどうかに関わらず働きかけ、取り上げてもらえばラッキー」という動き方です。
一方でインバウンドマーケティングは、「興味のある人がサイトに来る」「興味のある人に情報を提供する」という考え方からスタートします。この考え方はPR活動においても、同じように適用できるはずなんですね。
大手のメディアやインフルエンサーが自社製品に興味を持ってくれるかというと、必ずしもそうではありません。彼らにとっては「ニュースバリューがあるかどうか」とか「自分たちのフォロワーに興味を持ってくれるかどうか」が基準です。
なので、そうした人々に興味をもってもらうための活動をしなければいけないわけですよ。これ、例えば営業活動に置き換えると、もともと商材に興味のない人に営業をかけてもクロージング率が低いのと同じで、興味のない人々にいくらリリースを送ったところで、彼らが使いたい情報としてのプライオリティは単純には上がらない。
もちろん「興味を持ってもらえる情報」に加工するのもPR活動においては重要。しかし、そもそも「興味のある人たち」に情報を提供するべし、という視点が、これまでのPR活動にはなかったように思います。
このあたりが、PRにもインバウンドの考え方を持ち込む最大の理由です。メディア関係者、インフルエンサー、自動車ファン、オーナーなどが含まれる「興味のある人たちのリスト」を作って、その人たちに「定期的に情報を送る」ことで、記事や自分たちの公式チャネルやあるいは個々のソーシャルメディアでの投稿などで取り上げてもらえることを目論むというのが「インバウンドPR」の考え方です。
プレス向けサイトを「ニュースルーム」に一新し、3ブランドを統合
森 このインバウンドPRを実現するために行ったのが、プレス向けサイトのリニューアルです。元のサイトは本当に古く、IDとパスワードを入力してプレスサイトに入り、テキストリンクをクリックするとプレスリリースをPDFでダウンロードできるだけのものでした。
要するに、「限られた、決められたメディア関係者にだけ情報が届けばいいでしょう」という考え方だったんだと思います。けれどいまはもうそういう時代ではなく、「オーディエンス(サイト訪問者等)やバイヤー全て=コンテンツクリエイター」です。
興味を持ってくれるすべての方に、一次ソースとしてきちんと情報を提供する形にしたい。そこでプレスサイトではなく、「ニュースルーム」という形でサイトを構築し直すことにしたんです。個人的には「プレスサイト」から「ニュースルーム」へという名称の変更そのものが、コンセプトの違いを表していると思っています。
高広 「プレスリリース」はあくまでもプレス向けのものですが、「ニュースリリース」は誰でも読むことができるものです。メディアやインフルエンサーだけではなく、興味を持ってくれる一般のコンシューマーまでをカバーできます。その方々は自分たちで情報発信をされていたりするので、その一次ソースの「ニュース」として使ってもらえるように、ということですね。
森 Groupe PSA Japanの中には来年日本で展開するオペルも含め4つのブランドがあるので、具体的に要件を詰めていくにあたってその見せ方は悩みました。
それぞれをブランドとしては見た目を独立させたい一方で、メディアや車好きの方からすれば、横串で検索や比較ができるほうが良いですよね。ここは高広さんや100社さんとも相談して、やはりGroupe PSA Japanのニュースルームとして、横串を通した方が絶対に嬉しいよね、ということになりました。
高広 結果的に、各ブランドごとにブログ形式のニュースサイトを構築した上で、それらを集約したGroupe PSAのニュースサイトがある、という構造をHubSpotを使って実現しました。
▼同社のニュースルームのURL構造(SELECK編集部にて作成)
高広 イメージで言うと、「バインダー」とかラベルの付いた「フォルダ」のようなものです。
Groupe PSA Japanという大きなバインダーに情報が入っていて、そのバインダーから、例えば「プジョー」に関する情報が欲しいということで「プジョー」と書かれたものを引っ張ってくると、「プジョー」というラベルの付いた「フォルダ」を取り出すことができるという。そしてその「フォルダ」の中には、「プジョー」に関する過去の情報が詰まっているというような。
そしてそれは、タグ付けされた情報であればそのキーワードに基づいて情報がまとまった「フォルダ」を引っ張り出せるような構造になっているので、「Aエンジン」のようなマニアックな情報が欲しい人でも、その「Aエンジン」というラベルが付いた「フォルダ」を取り出せる。
そのように、縦軸でも横軸でも、読みたい人の興味関心に合わせて情報を引っ張ることができるようにしてあるのも、インバウンド的な思想によるコンテンツ構造です。
広報はサービス業。コンテンツ作成のハードルを徹底的に下げる工夫を
森 2020年3月にプロジェクトをスタートし、9月に新しいニュースルームを公開しました。機能は、主にプレスリリースとニュースの配信、プレスキットの提供、広報車リストの掲載です。
加えて、プレスイベントなどの招待メールとLPでのイベント参加申込機能があり、さらにサブスクライバーとして登録すると、定期的に更新情報などをメールで受け取ることができます。
私がもともと雑誌のライターや編集をしていた人間ということもあって、コンテンツを書いてくれる方にとっての利便性を究極的に高めていきたいと考えました。ですので、プレスリリースはPDFだけではなくそのままコピペできるhtml形式で配信していますし、高解像度の画像もダウンロードできるようにしています。
先ほどお伝えした課題感ともつながるのですが、とにかく「コンテンツを作ってもらうことに対する障壁」をなるべく低くしたいんです。いまの時代、リリースを出したら2時間後にはもうニュースなっているようなスピード感ですから、メディアの方も本当に苦労されていると思うんですよ。
高広 いくら良い情報でも、「めんどくさいな」と思われたら記事を書いてもらえないですよね。
私は2003年頃に別の自動車会社で、いわゆるブランデッドコンテンツの制作を担っていたことがあります。当時は「インバウンドPR」という言葉もありませんでしたが、施策のひとつとして、メディアやジャーナリスト向けにプレスリリースを配信する広報用のスペシャルサイトを作ったんですよ。
そのサイトは、ジャーナリストやメディア関係者に限ってアクセスできるようになっていて、そのサイトには、使用してもらえる画像サンプルと共に記事のサンプルも準備していました。
「例えば100文字の場合はこんな感じ、400文字の場合はこんな感じ」と記事の長さに応じて数種のサンプルを、そのサイトの中で公開しておいたわけです。この記事サンプルを用意した理由は、メディアやメールニュースに取り上げてもらいやすくするため、でした。
箇条書きの情報を渡して、「はい、これでお願いします」と書き手に渡しても、「なんかめんどくさい…」と思われてしまうかもしれない。そのため、当時の主要な媒体やメールニュースにおける記事の文字数を調べて、いくつかの傾向がわかったので、それに応じた文字数の記事サンプルを用意したわけです。
それを参考にしてもらい記事化してもらうのであれば、掲載されやすいと考えたんですが、これはうまくいき、結構な数が出ました。
森 私も新モデルについてのプレスリリースを書くと、1万文字を超えてしまうこともザラにあります。というのも、メカニカルなことを記事にしたいメディアさんはここを引用してください。デザインはここ、お客さまはここ…と全部入れていくと、結局、1万文字になっちゃうんです。
4ブランドで文体も変えていますし、言い回しや修飾的な部分も含めて、いわゆるオーセンティックなプレスリリースからはちょっと逸脱している部分もあります。それは意図的に、各メディアに転載されたときにも違和感がないように、またメディアの方がニュース記事としてアレンジしやすいように意識しているためです。
高広 編集やライティングを知っているからこそ、できる動きですね。情報の受け手のことを考えると、こうしたマーケティング的な発想になるはずですが、それが足りていない会社も多いと思います。
森 広報の仕事って、サービス業ですよね。そしてそのお客さまが誰かというと、メディアであれ個人であれ、コンテンツを書いてくれる人。そういった意味で、インバウンドマーケティングに用いるオウンドメディアと、インバウンドPRのためのニュースルームは、情報の流れが完全に相似形だと思っています。
カスタマーやバイヤーとのエンゲージメントを高める、という点と、メディアやオーディエンスとのエンゲージメントを高める、という点もまた相似形ですね。
AVEは5倍、アクセス数は6倍。一般のお客さまとの関係構築にも
森 私がGroupe PSA Japanに入社して3年になりますが、こうした活動を続けてきたことで、AVE(広告換算指標)は5.43倍になりました。個人的にこの指標自体はあまり好きではないのですが、わかりやすい成果だと思います。また、サイトのアクセス数も6倍以上になりました。
ほかにも面白いのが、ニュースルームのサブスクライバーの方の属性です。登録の際に「メディア関係者」「一般のお客さま」といった属性をお聞きしているのですが、その「一般のお客さま」がとても増えていて、15%を超えているんです。ここまでの伸びは予想していませんでした。
一般のお客さまには更新ごとにメールは送らず、金曜日の夕方に週次でまとめているのですが、登録から1ヵ月後に「他のメールもすべて購読されますか」とご案内するようにHubSpotのワークフローを設定しています。すると、半数ほどの方が「すべて欲しい」と回答されるんですよ。
高広 やはり、「興味を持ってくれている人」をしっかりと集められているからですよね。「(メールニュースの)購読者」のお客さまには、PSAの車の所有者が多いのも、一番興味を持ってくれている人だからかもしれない。
森 皮膚感覚としては、やはりPSAの車を持っている方が多いと思います。Twitterを観測していると、ニュースルームの記事をシェアしてくれている人も所有者の方が多い印象です。
高広 そういえば昔、アメリカで行われたメディアマーケティングに関する調査で、「自動車のCMで一番反応率が高いのは、その車を買った人」というものを見たことがあります。
やはり人は、自分の選択が正しかったのかどうかに不安はある。いまのニュースルーム経由で発信されている情報は、お客さんにとって所有車に対する満足度を高める機能を実は持っているんじゃないかなと。きっと、メールニュースを読んでニュースルームに来ることで、「自分が買った車は間違いなかった」って、確信したいんじゃないかな。
そういう意味では、いわゆる「リレーションシップ・マーケティング」としても機能しているんじゃないかなと思います。
森 ほかにも、HubSpotを使ってサイトを構築したことで、運用の効率がとても上がりました。
以前はExcelで管理していたメディア関係者さんのリストも、いまはHubSpotの中にセグメント分けされてデータベース化されているので、プレス発表会の開催時などには自動車メディアや報道系というように必要なリストだけに向けて案内メールをお送りしています。
イベントのランディングページもHubSpotで簡単に構築できますし、参加者のリストも自動で生成されるので、かなり業務の自動化、省力化ができていますね。なにより使い勝手やデザインが改善されたことで、受け手側の体験も圧倒的に良くなっていると思います。
今後は、ニュースルームの機能もより充実させていきたいです。例えばチャット機能の実装はできているので、商品に関する簡単な質問の対応や広報車の予約などをチャットで対応できるようにしたいですね。HubSpotの中にデータベースを作って、広報車の予約を自動化することも考えています。
どんな企業でも、自社の専門領域ではプロのコンテンツメーカーになれる
森 いまはなかなか手が空かずに取り組めていないのですが、本当はもっと小ネタと言いますか、「広報トーク」としてより多くのストーリーを発信していきたいですね。
例えば車メーカーで初めてミニカーを作ったのは、シトロエンなんです。その際に「パパ、ママ、シトロエン」というキャッチフレーズを使って、子ども世代からファンになっていただこう、という狙いを持っていたんですよ。
こうしたストーリーを発信することで、メディアの方にもお客さまにも発信のきっかけをお渡しできると思うので、ニュースリリースに留まらないコンテンツを提供していきたいですね。
個人的には、オウンドメディアに掲載されるようなマーケティングコンテンツも、ニュースリリースも、一緒に発信していっていいんじゃないかなと思っていて。
高広 どちらも目的は一緒ですよね。「なんかしらのWebサイトに訪れる」ということはほぼ合目的的に行われている。「偶然ふらっと興味もなくサイトに来た」なんて人は少ないでしょう。何かしらの興味を持っていないとサイトなんてこないわけですから。
本来はオウンドメディアというものは、ある情報に興味を持っている人たちが集まる場所にした方がビジネスに結びつきやすい。でも、単にサイトにトラフィックを生み出すためだけのバズるコンテンツを作ってしまって、結局自分たちのターゲットとする人たち以外が多数集まり、「ターゲット含有率の低いメディア」になってしまい、なんの役にも立っていない…ということはよくあると思います。
どんな企業であっても、モノやサービスを作っている限りその分野のプロフェッショナルのはずなんですよ。なので、そのプロフェッショナルが持っている情報というものを活用すれば、その分野の専門誌というコンテンツメーカーにもなれるはずなんです。
しかし多くの企業では、ライティングや編集の能力、つまりコンテンツの切り口を作る力が足りていない。なので「オウンドメディアをやろう」「コンテンツマーケティングに取り組もう」と考えるのであれば、コンテンツマーケターを雇うよりも、編集者を雇う方が私はよっぽどいいと思います。
プロとして専門のメディアを作って、情報の受け手がちゃんとバインダーで取り出せるような形にしておけばいいんですね。で、向こうから情報を得たいという流れ、つまり「インバウンド」の流れを作る。
「ニュースルーム」というのは、デジタルで情報の流れが変わり、情報の発信者がプロに限らない時代において、企業が行うべきコミュニケーション活動の一形式だと思います。(了)