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  • 永石 陽祐

リクルートの「休むことを特別視しない」風土づくり。男性育休の取得が拡大した理由とは

リクルートの「休むことを特別視しない」風土づくり。男性育休の取得が拡大した理由とは

ライフスタイルが多様化している時代の変化に伴い、働きやすさの向上を目的に新たな仕組みや制度を設ける企業が増えている。その一方で、男性社員の育児休暇(以下、育休)取得においては、さまざまなハードルがあり推進が難しいという声も聞かれる。

そんな中で、「誰もが自律的に自分の働き方や休み方をデザインしてほしい」という考えの元、「週休約3日」をはじめとした柔軟な働き方を実現しているのが、株式会社リクルートである。

同社は多様なテーマのひとつとして、2026年度までに「取得意向のある全ての従業員が育休(※1)を取得できている状態」を目指し、男性育休の取得を推進。

具体的には、育児に充てられる最大40日間の有給を付与する「出産育児休暇(※2)」の新設や、男性育休アンバサダーによる普及活動(2022年度まで実施)、1,600人を超える「リクルート子育てコミュニティ」の運営などを実施しているという。

それらの活動の結果、男性社員の育休取得率は2022年度には64%、今年度はさらに高い水準となっているそうだ。

今回は、実際に2度の男性育休を取得したグループマネージャーの永石 陽祐さんに、自身のキャリア設計やチームマネジメントにどのように育休経験を生かしているかを伺うとともに、DEI推進室の佐藤 麻里緒さんに、同社の柔軟な働き方の仕組みについて詳しくお話しいただいた。

編集部注:

(※1)本記事の育休とは、小学校入学前の子を持つ従業員のうち、法定の育児休業制度もしくは、出産・育児を目的としたリクルート独自の休暇制度のどちらか一方、もしくは両方の取得を指します。
また、育休取得率は、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」第71条の4第2号の育児休業等の取得割合を、該当年度を対象に算出しています。

(※2)同社が2021年4月に新設した「出産育児休暇」とは、妊娠期から子どもが12歳に達する日以後の最初の3月末までの間、子ども1人あたり最大40日間の特別休暇(有給)が付与され、最短1日から取得可能な休暇制度です。

週休約3日で「どのように働き、休むか」を自律的に計画できる環境へ

佐藤 リクルートでは長年、さまざまな事情やジェンダーにとらわれず全従業員が活躍できる環境の整備に取り組んできました。その流れの中で、私が所属するDEI推進室では多様なテーマのひとつとして「男性育休の取得」を推進しています。

今回は、2度の男性育休を経験している永石さんからリアルな体験談を話していただきますが、私からはその前提となる各種制度ついてご紹介できればと思います。

まず、男性育休を含むあらゆる人事制度は、弊社の人的資本経営のベースになっている「人材マネジメントポリシー」に基づいて設計しています。

▼同社の人材マネジメントポリシー(一部)

上図にも記載されている「価値の源泉は人」という考えは、ずっと以前から変わらずにリクルートの中核に置いて大切にしてきたものです。

その上で、2021年4月に国内の事業会社を統合した際に、一人ひとりの従業員に期待する「自律・チーム・進化」と、会社が約束する「3つのPROMISE」を具体化してアップデートしています。

▼人材マネジメントポリシー内の「会社が提供するもの(3つのPROMISE)」

この「3つのPROMISE」のうち2つ目に該当するのが、「リクルートで働く誰もが自律的に自分の働き方や休み方をデザインしてほしい」という考えの元で設計した各種制度です。

具体的には、原則として理由・回数を問わないリモートワークや、コアタイムなしのフレックスタイム制を導入しました。その結果、遠隔地居住をする従業員も出てきています。

また、取得日を自分で決められる「フレキシブル休日」も導入しました。このフレキシブル休日を含めて会社休日は年140日、さらに年次有給休暇の計画的付与による5日を加えて、年間の休みは145日あります。これによって、「週休約3日」を実現しました。

このような制度があり実際に活用されていることで、現在は育児や介護などに関わらず、全従業員が「どのように働き、休むか」を自律的に計画できる環境になっています。

※同社のワークスタイルの詳細については、こちらのページもご参照ください。

独自の出産育児休暇の新設や、男性育休アンバサダーなどの施策を実施

佐藤 ここから男性育休の推進にフォーカスしてお話ししますが、これまで育休を取得する女性社員はたくさんいたものの、男性社員の育休取得率は女性よりも大幅に低い状況でした​​。そこで、男性も当然のこととして育児を行いやすくなる風土醸成をしていきたいと考えて、さまざまな施策に取り組んできました。

そのひとつが、2021年4月に設けた育児のために取得できるリクルート独自の「出産育児休暇」です。

この休暇制度は、男性育休取得のハードルのひとつである「収入の減少」という不安を解消できるものとして、育児に充てられる最大40日間の有給を付与する内容となっています。

▼ライフステージが変化しても仕事と両立しやすい状態を目指す「独自の特別休暇」

加えて、2022年10月には「産後8週以内に5日以上の育休を取りましょう」という、会社としての男性育休の方針を掲げました。そして、2026年度までに、取得意向のある全ての男性従業員が育休を取得できている状態を目指しています。

この背景には、赤ちゃんが生まれてすぐの時期から父親として関わる時間を増やすことで、末長く家族みんなで協力しながら子育てを楽しんでいただきたいという想いが込められています。

とはいえ、「必ず○日間の休暇を取りなさい」と押し付けないのが弊社の人材マネジメントポリシーなので、自発的に休暇を取得したくなる風土づくりを必要とする点が、運営側としての悩ましいポイントです(笑)。

さらに、育児中の従業員をつなぐ目的でTeams上で運営している「リクルート子育てコミュニティ」は、リクルート最大級の従業員コミュニティとなり、現在は1,600人を超えるパパママが参加しています。ここでは社内の色々なお知らせを配信したり、参加者同士でおすすめの育児スポットや年代別の悩みにまつわる情報を共有したりしています。

この他の取り組みとして、「育休という機会 HAND BOOK」も制作し、社内向けに公開しました。

その中では、育休を取るメリットや、ロールモデルとなる男性社員がどのように不安を解消したのか、そして育休取得者をマネジメントする管理職向けのコンテンツなどを紹介することで、皆さんの疑問や不安をできる限り解消できるような内容にしています。

このハンドブック内にも登場する育休を経験した男性社員5人は、2022年度まで「男性育休アンバサダー」として、育児の魅力や育休取得の壁とその解決策、仕事との両立に関するノウハウなどを社内外に発信する役目を担ってくれていました。そのアンバサダーの1人として活動してくれたのが、永石さんです。

2度の男性育休を取得する中で、組織風土やサポート体制の進化を実感

永石 私は大学院を卒業後、外資系通信機器メーカーでネットワークエンジニアとして従事し、2014年にリクルートテクノロジーズ(現リクルート)に入社しました。その後は、グループ共通システムの企画や導入推進といったさまざまな業務を担い、現在はHR領域のプロダクトを企画・開発するチームでグループマネージャーを担っています。

私はこれまで、2人の子供が保育園に入園するまでの半年と8ヶ月の計1年2ヶ月、2度の育休を取得しました。その経験から「男性育休アンバサダー」の1人としても活動していました。

ここからは私自身の体験もふまえて、リクルートの男性育休の裏側についてお話しできればと思います。まず、1度目の育休は約8年前だったので、今とは社内の雰囲気も全然違っていて、周囲に検討していることを話すと「育休って男性も取れるんだね!」という反応でした。

当時も国の制度はありましたが、会社としての支援制度は今と比べると少なくて、育休取得について不安があれば人事に相談できる程度だったように思います。その時に、男性育休を取得した有志メンバーが開催していたイベントで生の体験談を聞けたことが、悩んでいた私の背中を押してくれました。

そして半年の育休を経て復帰した後は、育児を含めた家庭と仕事の両立が必要となり、想像以上に大きく働き方が変化しました。「これまでジャグリングだけに集中していれば良かったのに、玉乗りもしなきゃいけなくなった!」みたいな感じでしたね(笑)。

逆に言うと、頑張るべきことが2つになったので、何かを捨てる勇気やあきらめる覚悟が必要だということも分かって、その気付きは今も仕事をする上でとても役に立っています。

その後、子供が3歳になった頃には仕事の比重を少し増やせるようになったので、そのタイミングでキャリアチェンジに挑みました。一方、妻も同じタイミングで転職したため、自分の100%のパワーを何に、どのくらいの比重で割けるかを長期的にデザインする意識が強まりました。

そして、私が2度目の育休を取得した頃は、会社全体で男女問わず育休を取ることが当たり前の雰囲気ができていたので、特に悩むことはありませんでしたね。

その際に、1度目の育休と比較して大きく変化したと感じたのは、金銭的な懸念の減少でした。以前は収入面の影響を考えて育休取得を躊躇する人も多かったですが、今は「出産育児休暇」以外にも多様な有給休暇や休日があるので、それらを組み合わせて数ヶ月ほど休んでも生活水準を維持できます。この違いはすごく大きいですよね。

育休を取得する経験は、「キャリアを一歩前に進める機会」になり得る

永石 私が世の中の男性育休の普及において特に重要だと感じたことは、会社やチームが男性の育休取得者をイレギュラーとして捉えないことと、会社の課題と個人の課題をきちんと切り分けないといけないということです。

例えば、性別問わず育休でメンバーが不在になる時に、その人の業務を担うメンバーをどうアサインするかは会社の問題であって、取得する本人がそれを気にする必要はないと思います。

実際に、転勤や異動などが発生すると1ヶ月ほどで後任への引き継ぎができているわけで、半年ほど前から予定が分かる育休で他のメンバーに負担がかかるのはおかしいですよね。なので、育休に向けたリソースの最適配置は会社の責任だと思っています。

ただ、チームへの配慮や、後任が仕事をスムーズに進められる状態を作っておくことは長期で仕事から離れる人の役目です。そのため、私自身は自分の仕事を他の人に担ってもらう場合に必要な情報をドキュメンテーションに残して、常に再現性のある状態を作ることを心がけています。

また、育休を取ることでキャリアに傷がつくのではと悩む方もいるかもしれません。実際に世の中の人事の方がどう見るかは分かりませんが、私はこの先何十年も働く上で、その数ヶ月から1年程度の休職でビジネスパーソンとしてのスキルが大きく損なわれるとは感じませんでした。

それよりも、むしろ自分の意思で育休を取った経験があることが、チームのマネジメントにおいても強い武器になっているなと感じています。

というのも、メンバーから家庭や育児に対して理解があるマネージャーだと理解してもらえて、家庭のことやキャリアについて気軽に相談してくれるようになっているからです。また、実際にチームメンバーが育休に入った時も、自分自身が経験していたからこそうまくサポートできたと思いますね。

他にも、プレイヤー志向だったところから、育休で家庭のマネジメントを経験したことでマネージャーを目指すようになった人。育休によって忙しい日々のサイクルでは見えていなかった新たな気付きを得て、それを現場に持ち帰ったことで復帰後にさらに昇級した人など、好事例もたくさんあります。

このように、長期視点で見た時に育休を取ることで次のキャリアが開ける可能性も十分にあるので、キャリアの不安を抱えるよりも、それを一歩前に進める前向きなチャンスとして捉えてもらえたら嬉しいなと思っています。

もっと働きたい・休みたいという、双方のありたい姿を受容し合う風土へ

佐藤 今回お話しした男性育休は、「リクルートで働く誰もが自律的に自分の働き方や休み方をデザインする」という、私たちのありたい世界に対するひとつの事例でしかありません。

たくさんの仲間が集まっている組織なので、家庭に比重を置いて仕事を休む選択をする人もいれば、そこまで休みはいらないからもっと働きたいという人もいます。なので、会社としてはそれぞれの気持ちをきちんと尊重しながら、双方のありたい姿を受容し合うことが大事だと捉えています。

その考えを会社全体に広めて、組織の受容性を高めるべく、今年11月には元TBSテレビアナウンサーで、育児経験者でもある国山 ハセンさんをお招きし、弊社の事業責任者やリクルート出身のエンジニアの方も交えたイベントを開催しました。

その際は、「人生の中で仕事に100%打ち込むフェーズも、子育てなどのライフイベントのタイミングで仕事のペースを緩めるフェーズもあった。振り返ると、そのどちらも自分のキャリアにとっては大切な経験になっている」といった、それぞれの人生の多様性についてお話しいただきました。

このようなさまざまな施策を積み重ねてきたことで、育休を取得する男性社員は2022年度の64%から、今年度はさらに高い水準まで向上してきました。さらに、個々の体験談や気付きをnoteにまとめて組織内でシェアしながら、男性育休の取得をすすめるマネージャーも出てきています。

そのように徐々にボトムアップでも機運が高まっているので、男性育休を取得することが当たり前だという風土が根付き、その結果として、私たち男性育休を推進するチームの発展的解散に繋がれば嬉しいなと思います。

2026年度までに意向のある全員が育休を取得できている状態を目指す

永石 私自身の今後のチャレンジは、一部の個人が突出した成果を創出する組織ではなく、チーム一丸となって成果を出せる組織にしていくことです。

というのも、これまでの私の経験においてチームで大きく成果を出した時を振り返ると、超人的なプレーヤーが道を切り開き、それをみんなで形にしていく感じが多かったように思います。

なので、私自身がそういった超人になることを目指すより、みんなで正しく努力して、新しい道やより良いサービスを作っていくことにチャレンジしたいと考えています。

その上でテーマになってくるのは、キャリアの自律性だと思います。やはり自分を含めてどこか会社に甘えていたり、ある種の覚悟の足りなさが無自覚にあるメンバーもいると思うので、それと向き合って覚悟を持って前進できる組織を作っていきたいですね。

佐藤 私たちDEI推進室としては、今後さらに介護など育児以外の事情を抱えて働くメンバーも増えてくると考えているので、どのような制約があっても、能力を発揮していきいきと働き続けられるような支援をしていきたいです。

また、男性育休という観点では、取得することが当たり前だという風土ができてきた一方で、何らかの事情で育休を取りにくい方もいるので、その要因は何なのかということをクリアにしたいですね。そこを解消することで、2026年度までに取得意向のある全ての従業員が育休を取得できている状態を目指しています。

さらに、育児の有無などに関係なく、誰もが「働きやすさ」だけではなく「働きがい」も感じながらキャリアを重ねられる企業を目指していきたいです。それがきちんと仕事の成果にも繋がるようなスパイラルを築くことができたら、よりリクルートらしい世界観を叶えられると思っています。(了)

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